Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

ambient

Whitearmor - In the Abyss: Music for Weddings

Artist Whitearmor
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Album 『In the Abyss: Music for Weddings』
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Tracklist
01. Wedding Bells
02. Could be us
03. Kisses and Hugs
04. Eternal hills highest crest
05. Smile (reprise)
06. tar feathers
07. Cold Nights pt 2
08. Slow Dance
09. Gåvor
10. Outro

スウェーデンはストックホルムのDJ/プロデューサーであるLudwig Rosenbergの音楽プロジェクト、Whitearmorの1stアルバム『In the Abyss: Music for Weddings』は、それこそ純白のウエディングベールとドレスを身にまとった新婦の花嫁が将来の結婚生活という茨の道、その深淵を暗示する意味深なアートワークからして優勝案件だが、逆に解釈すれば邪悪な棘や新郎のセフレや元カノの生霊から花嫁を守護する魔除けの意味合いとしての“ウエディングベール”を身に着けているって事でもある。しかし、そんな俗話や不吉な前触れを他所に、いざ蓋を開ければめちゃくちゃ幸福感溢れるアンビエント/エレクトロニカを繰り広げている件について。

まるで婚姻届を役所に提出した瞬間における「幸せ」の押し売り、もとい“おすそ分け”とばかりに幸福のベールに包まれる冒頭の#1“Wedding Bells”からして、喜多郎さながらのシンセが織りなすファンタジックかつノスタルジックなニューエイジ/アンビエントのサウンドスケープを張り巡らせたかと思えば、一転して新郎新婦がこれまで経験してきたキスやハグなどの(などの)思い出をフラッシュバックさせながら、トクマルシューゴ顔負けの鍵盤打楽器的な(スウェーデン産のポストロック勢にも通じる)瑞々しいポップなメロディが新郎新婦を盛大に祝福するフォークトロニカの側面を垣間見せる#3“Kisses and Hugs”、披露宴の目玉の一つである両親への感謝を伝える号泣不可避のシーンで流れてそうな#6“tar feathers”、まるで春ねむりのトラックを彷彿とさせる崇高かつ神聖さに満ち溢れた一種の「祈り」にも近い#7“Cold Nights pt 2”、そして披露宴のクライマックスを飾る#10“Outro”では、何このハッピーウエディングソングみたいな雰囲気で新郎新婦が永遠の愛を誓い合う。

この披露宴に参加している京都出身の女性は「(はぁ?隣の新郎、ウチの元セフレやで!つまりアンタとウチは竿姉妹や!)」と京都女らしい腹黒い心裏を覗かせ、ある一人の独身中年男性は「幸せをおすそ分けしてくれるなんざありがた迷惑な話や、死ぬまで一生幸せでいやがれ!」みたいにキザを気取ったりする中、いざ「幸せのおすそ分け」を象徴するブーケトスが始まると、さっきまで宴に無関心だったセフレや元カノの生霊が死物狂いでブーケを奪い合い、最終的に彼氏いない歴年齢のメガネ喪女がウエディングブーケを掴み取るオチまで完璧なストーリー展開。

この手のDJ出身らしいIDM的なアレンジを効かせたチルいアンビエント・ポップは、ブルックリンのJulianna Barwickやポートランド出身のLiz HarrisによるGrouperと同じ感覚で聴けると思うので、これから暑くなる季節的にもピッタリなんで本当にオススメ。

Carbon Based Lifeforms - Stochastic

Artist Carbon Based Lifeforms
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Album 『Stochastic』
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Tracklist
01. 6EQUJ5
02. Holding Time
03. Hello from the children of planet earth
04. Probability Approaches Infinity
05. Stókhos
06. Mycorrhizal Network
07. Delsjön
08. Sphere Eversion
09. Eigenvector
10. Finite State Space

スウェーデンのアンビエントユニット、Carbon Based Lifeformsのスタジオアルバムとしては2017年作の『Derelicts』から約4年ぶりとなる『Stochastic』は、CBLがこれまで一貫してきたアンビエント~サイビエント~ニューエイジラインの環境音楽然としたリラクゼーション効果の高いチルい音楽は不変で、それこそ幕開けを飾る#1“6EQUJ5”からして、自然豊かな地球が発する川のせせらぎや小鳥のさえずりをはじめ、(初期のテクノ/エレクトロニカ路線の名盤『Interloper』ではなく)近作の延長線上にあるハンス・ジマーばりのスペース・アンビエント然とした環境音と、死海さながらの赤く淀んだ海の波を繰り返し描く「デュ~~~~~ン」としたドローンな重力音が量子もつれを起こす。それはまるで死海の底の底にある海淵で交互にこだまする未知の音楽、つまり人類の魂の浄化を目的とした『人類補完計画』におけるセカンドインパクト「海の浄化)」、その計画の最終段階となるフォースインパクト「魂の浄化」を描いた作品が本作なんですね(しかし尺がクソなげぇ)。

Alora Crucible ‎– Thymiamatascension

Artist Alora Crucible
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Album 『Thymiamatascension』
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Tracklist
01. Livanomancy in Jasper
02. Synaxarion of John Isangelous
03. Synaxarion of John Abject
04. Bottomless Madrugada
05. Barriers Hymn
06. Psalloed Illusions

Alora Crucibleって誰かなぁ?と思ったら、あのVauraKayo Dotの中心人物として知られるトビー・ドライバーの新しい通名と知って驚いた。何が驚いたって、トビーといえば本家Kayo Dotではアヴァンギャルドmeetブラックメタルを、サイドプロジェクトのVauraではニューウェイヴmeetブラックゲイズを、Toby Driver名義のソロプロジェクトではストリングをフィーチャーしたネオクラシカルを、そして今回新たに始動した本プロジェクトでは、これまでの各プロジェクト同様に実験的は実験的ながらも、いわゆるニューエイジやアンビエントに振り切った、より音響的なアプローチを強めた音楽性を終始一貫して追求している。それこそ本作の『Thymiamatascension』は、ノルウェーのレジェンド=Ulverも在籍するレーベルのHouse of Mythologyからリリースされている事実が全ての答え合わせと言っても過言じゃあない。

いわゆるポストロックやスロウコア的なミニマル・ミュージックに、チェンバー・ミュージック然とした静謐的なストリングスや喜多郎顔負けのニューエイジ/アンビエントならではの幻想的なシンセが、まるで雨の日に傘から滴り落ちる水玉のようにこまだするインスト中心の楽曲における、それこそ彼がソロ名義で2018年に発表した『They Are The Shield』の延長線上にある、まるで現世の慈悲深さに慟哭するかの如しストリングスの音色は、Ulverが本国のオーケストラとコラボした『Messe I​.​X​-​VI​.​X』と否応なしに共鳴すると同時に、その自然な流れから日本のSSWシーンを代表する青葉市子岡田拓郎らが音楽的なバックグラウンドとして持つニューエイジの側面とも重なって聴こえる。なんだろう、ソロ名義よりも俄然ストリングスの鳴り方が日本の伝統音楽である雅楽はもとより、それこそ韓国のJambinaiをイメージさせる民族楽器風の荘厳な音色を奏でている。

もちろん、過去の関連プロジェクトと比較すると曲の抑揚や展開は最小限に抑制されており、あくまで“繰り返しの美学”を追求したミニマル地獄という名の、要は断捨離が好きなミニマリスト向けの癒やしの音楽を提示している。それこそ、ソロ名義の流れを踏襲したギターのリフレインがフェードインして始まる#1“Livanomancy in Jasper”からして、Ulver『Messe I​.​X​-​VI​.​X』における名曲“As Syrians Pour In, Lebanon Grapples With Ghosts Of A Bloody Past”をフラッシュバックさせ、俄然ポストロックmeetUlverな#2“Synaxarion of John Isangelous”、イントロから儚くも美しい悲哀を帯びた#3“Synaxarion of John Abject”、アジアの伝統楽器さながらの荘厳かつ優美なストリングスをフィーチャーした#4“Bottomless Madrugada”、トビーがボブ・ディラン顔負けのダーティな語り弾きオジサンと化す本作唯一のボーカル曲であり、またSSWやマルチプレイヤーとしての才能以前に彼(US版岡田拓郎として)のギターリストとしての才能が炸裂する#5“Barriers Hymn”、そしてニューエイジ指数の高い流行りのダンジョン・シンセを駆使した#6“Psalloed Illusions”まで、派手さのない地味な音楽ながらも幻想的かつ叙情的な世界観をバックに奏でられる、美しくも聡明なストリングスの音色に汚れた心が浄化されること請け合いの一枚。個人的にはソロ名義よりも好きな作風。

Wolves In The Throne Room - Primordial Arcana

Artist Wolves In The Throne Room
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Album 『Primordial Arcana』
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Tracklist
02. Spirit Of Lightning
03. Through Eternal Fields
04. Primal Chasm (Gift Of Fire)
05. Underworld Aurora
06. Masters Of Rain And Storm
07. Eostre
08. Skyclad Passage [bonus]

「姉さん事件です!」って、あの自然大好きDIY系USBMの雄ことWolves In The Throne RoomがRelapse Records/Century Mediaと契約した時ほど叫ばなかった言葉はなくて、だって映画『もののけ姫』のサン顔負けのスピ/リチュアルなDIY精神を貫き通してきた、約20年のキャリアを誇るあのWITTが故郷であるワシントン州の森の中から離れて、コンクリートの壁に覆われたオフィスで現代メタルシーンを代表するレーベルと契約、そしてこの最新作でIsis(アーロン・ターナー)界隈でもお馴染みのMatt Coltonをエンジニアとして迎え入れ、それこそDFHVNもビックリの現代的なポストメタル~ポスト・ブラックメタルをレコーディングするとか一体どんな風の吹き回し?それこそ「姉さん事件です!」ってならない方がおかしい。

いわゆるLiturgy=典礼あるいは儀式=Ritualな、と言っても次期総理候補の高市早苗ちゃんがハマってそうな胡散臭いスピ系に頭がやられちゃった人ではなく、それはまるで真っ当に自然を愛する心を持つDIY精神と、彼らの原典と称すべき初期の荒涼感溢れるアトモスフェリック・ブラックメタルが、いわゆる文明の利器すなわち現代のテスラ・テクノロジーによって著しくモダンに洗練された事で未知なる化学反応を起こし、ソーシャルのソの字もない幽玄かつ神秘的な森の中で動物や自然と一体化して暮らす“アンダーグラウンド”なニューエイジャーと、カリフォルニア州はサンフランシスコなど人々が密集する都市部で『マスク』と『サンバイザー』を着用しながら生活する“メインストリーム”な現代人の魂をつなぎ合わせる“イコン”即ちシシ神様の代弁者として、ソーシャルディスタンスが強制され都市部の一極集中が見直されつつある時代に、この『Primordial Arcana』という名の儀式(Ritual)を通して生きてるって何だろ 生きてるってな~に?の意味を人類に問いかけるかのよう。


それこそアイルランドのブラック・メタルバンド=Primordialばりに勇壮で超絶エピックな、そしてヘヴィでメタリックなATMSUSBMを繰り広げる#1“Mountain Magick”からして「Relapseと契約した結果」を示し、民謡的なフォーク・ミュージックとシンセが奏でる幻想的なシンフォニーがプログレスに交錯しながら自然崇拝の儀式を執り行う#2“Spirit Of Lightning”、その荘厳な“儀式”に必要不可欠となる未開の部族だけに伝わるトライバリズムをフィーチャーした曲で、ボーカルにTrap ThemGalen Baudhuinを迎えた#3“Through Eternal Fields”、US版森メタルに棲む妖精の立場から都市部に奏でるポストメタルの#4“Primal Chasm (Gift Of Fire)”、再び住む森に帰り水辺に佇むシシ神様を呼び起こす#5“Underworld Aurora”、そして自然界で暮らす人々の魂を浄化するシンフォニックなATMSBMと、都市部で暮らす人々の魂を浄化するAltar Of Plaguesさながらの現代的なポストメタル、その分断された二つの魂が一つに邂逅する#6“Masters Of Rain And Storm”は本作のハイライトで、WITTがアイデンティティとしている喜多郎リスペクトなアンビエントやニューエイジと呼ばれる環境音楽的なスピ系インストの#7“Eostre”を最後に、本編は幕を閉じる。そして、本編における自然崇拝と対をなす悪魔崇拝、すなわち邪教的な儀式という名の『人類はっぱ隊計画』による魂の浄化、すなわち『エヴァ・チンフィニティ』を完了させるボートラの#8“Skyclad Passage”まで、いわゆるアンビエント主体の抽象的(ファンタジー)な音楽に逃げず、とにかく過去イチでクソ真面目に現実的かつ叙情的な「(ブラック)メタル」やってるギャップが最高の1枚。要するに「AoP化」ですね。

Spectral Lore - Ετερόφωτος

Artist Spectral Lore
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Album 『Ετερόφωτος』
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Tracklist
01. Ατραπός
02. The Golden Armor
03. Initiation Into The Mystery
04. The Sorcerer Above The Clouds
05. Apocalypse
06. Ετερόφωτος
07. Terean

昨年、USBMのMare Cognitumとのスプリットアルバム『Wanderers: Astrology Of The Nine』という2時間映画並の超大作を発表するやいなや、アンダーグランドメタルシーンで一躍大成功を収めた、ギリシャ人のAyloss氏による独りブラック・メタルプロジェクト=Spectral Loreのオリジナル・アルバムとしては2014年作の4thアルバム『Ⅲ』から約7年ぶりとなる本作の5thアルバム『Ετερόφωτος』は、アートワークに模されたギリシャ神話に登場する巨人神族の一人であるプロメテウスが人類を創造し、その人類に火という名の知恵を与えたように、混迷を極めし現代の腐敗と堕落にまみれた終末人類に対して、それすなわち“主”の代弁者として革新的かつ革命的な叡智を授けるような、まさに「超越的なブラック・メタル」すなわち“transcendental black metal”の傑作となっている。

アルバムの幕開けを飾る#1“Ατραπός”からして、冒頭からスプリットアルバムの延長線にある荒涼感あふれるブラック・メタルの精神性とプログレ・メタルの構成力、そしてUSレジェンド=TOOL『Lateralus』を経由したJambinai『ONDA』を彷彿とさせる呪術的なウネリを効かせたリフ回しと密教的なボイスが織りなすオルタナティブな革新性がエクストリーム合体した曲で、この時点で大成功を収めたスプリットアルバムとは一線を画す代物である事がわかる。

その大袈裟に言うと“ブラック・メタル化したTOOL”を象徴するのが、TOOLの約13年ぶりとなる復活作『Fear Inoculum』に対するブラック・メタル側からの回答と言わんばかりの#3“The Sorcerer Above The Clouds”で、イントロからTOOLの復活作を司る“Invincible”が間違って始まったかと錯覚するレベルの、それこそ呪術廻戦おっ始めようってんじゃなかろうもんのTOOL然としたリフとギターワークの(オマージュってレベルじゃない)オマージュに笑う(アウトロも同様に)。結局、このアルバムの何が凄いって、神話上の巨人族であり人類を創造した始祖プロメテウスと、その“主”から超越的な叡智を授かった『進撃の巨人』のメタファーであるTOOL『Fear Inoculum』という二体の巨人をバチバチに共鳴させている点で、他にもImperial Triumphantばりのアヴァンギャルド・ブラックを展開する#5“Apocalypse”、そのアヴァンギャルドな流れを引き継いだ#6“Ετερόφωτος”では、再びTOOLならではのトライバルなアプローチとデレッデレッと複雑怪奇にウネるリフが織りなすクリーンパートを披露する。

そしてラストを飾る約20分に及ぶ#7“Terean”では、本家TOOLを凌駕する一寸の光もない“暗黒森林”を繰り広げるダーク・アンビエントで、それこそ『エイリアン』シリーズの前日譚である映画『プロメテウス』のように、紀元前32億年前の「無」状態の地球にプロメテウスを模したエンジニアが降臨し、自らのDNAを拡散し人類の誕生を促す瞬間みたいな、そんな新人類の誕生を描き出すような神秘的かつ密教的な典礼(Liturgy)の中から次世代のシン・エイリアンもといシン・人類が生まれちゃうやつ・・・!

実は、翻訳できない謎の古代文明文字繋がりでもあるATVMのデビュー作に引き続き、本作もコリン・マーストン案件と聞いてなるほどガッテンする完成度の高さで、確かにKralliceの新譜も『エイリアン』チックなSF要素満載の傑作だったけど、やっぱクラリスすげぇな・・・なんて話はさて置き、ヘタしたら本家TOOL『進撃の巨人』を超えてんじゃねえかくらいの、人によっては例のスプリットアルバムよりも気に入ること必須の一枚。
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