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墓っ地・ざ・ろっく!

Post-Rock

deathcrash - Return

Artist deathcrash
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Album 『Return』
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Tracklist
01. Sundown
02. Unwind
03. Horses
04. American Metal
05. Matt's Song
06. Wrestle With Jimmy
07. Metro I
08. Slowday
09. Was Living
10. What To Do
11. Doomcrash
12. The Low Anthem

UKはロンドン出身のdeathcrashの1stアルバム『Return』が掘り出し物で凄い。いわゆる90年代のemo(イーモゥ)の影響下にある寂寥感むき出しのアルペジオ・リフと内省的という概念を超えた衰弱した小動物のように弱々しい倦怠感むき出しのボーカルが支配するウェットな雰囲気、一方でポストハードコアならではの感情的な側面、そしてポストロックならではのリリシズムを内包したセンチメンタルなスロウコアを展開しており、例えるならスコットランドのレジェンドMogwaiの名盤『Rock Action』あたりの作品に精通するハードコアmeetポストロックをスロウコアmeetエモ寄りに振り切ったようなイメージで、その90年代のオルタナ愛に溢れたサウンド・プロデュースは1stアルバムにして既に非凡な才能を開花させている。

モグワイ顔負けのポストロック~スロウコアラインのローテンポな気怠い雰囲気から、ギア転調を繰り返してエモ~ポストハードコアラインへとプログレスに場面を切り替えていく自己紹介がてらの#1“Sundown”を皮切りに、常にローテンションの陰キャが全力で腹から声出した結果みたいなUKバンドらしいエモいボーカルメロディをフィーチャーした#2“Unwind”、オルタナ志向の強い#3“Horses”、ゴリゴリのアメリカンメタルと見せかけてゴリゴリリカルなポストロックの#4“American Metal”、ローファイ宅録系アコギ男子みたいな#5“Matt's Song”、内側に溜まりに溜まった鬱屈した感情を外側に全て吐き出すかのようなハードコア然とした咆哮すらも存在感(影)の薄い#6“Wrestle With Jimmy”、Bennett Theissenなる人物のボイスを導入した#7“Metro I”も実にモグワイ的というか、あるいは後期のana_themaを彷彿とさせるし、これが本当のアメリカンメタルとばかりのポストメタル然としたヘヴィネスと静寂パートのコントラストに面舵いっぱい切った#9“Was Living”、2010年に自ら命を絶ったUSインディロック・バンドSparklehorseのマーク・リンカスの(自死の引き金となった“Gun”のワードを捉えた)肉声インタビューを収録した#10“What To Do”、彼の自死に対する孤独と哀しみに苛まれるセンチメンタルな序盤から一転、この終わりのない悪夢のような世界に絶望するドゥームメタル然としたヘヴィネスを叩き込む後半の流れは何とも示唆的で、それは同時に彼らの内に秘めた危うさをも浮き彫りにしている。

一見、陰キャのイギリス人男性ならではのヒョロガリ系オルタナサウンドとは裏腹に、それこそバンド名のdeathcrashや“American Metal”はもとより、#11の“Doomcrash”というタイトルが示す絶望感に苛まれた重厚感溢れるメタル然としたサウンドも陰キャを構成するアイデンティティの一つで、そのモグワイ的なノイズ/ハードコアネスおよびオルタナイズムの繊細かつ内向きな側面と、90年代に活躍し2020年に復活を遂げたUSオルタナのHum40 Watt Sunを連想させるドゥーム/ポストメタル的な破天荒かつ外向きな側面が表裏一体化した、そんな彼らなりの存在証明が記された傑作です。見方によってはHumの亜種として認識できなくもないし、同じく初期のドゥームメタルを経て新作でスロウコア化した40 Watt Sunと聴き比べたいタイムリーな逸品。間違いなく今年の年間BEST級。

40 Watt Sun - Perfect Light

Artist 40 Watt Sun
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Album 『Perfect Light』
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Tracklist
01. Reveal
02. Behind My Eyes
03. Until
04. Colours
05. The Spaces In Between
06. Raise Me Up
07. A Thousand Miles
08. Closure

90年代から00年代にかけて活躍したUKトラディショナル/ドゥーム・メタルバンド、Warningの中心人物であるパトリック・ウォーカーのソロプロジェクトとして始動した40 Watt Sun。彼らが2011年に発表した伝説のデビュー作『The Inside Room』といえば、古巣のWarningを基にした古典的なドゥームメタルの系譜にありながらも、USテキサスのTrue Widowを彷彿とさせるスロウコアやシューゲイザー的なノイズ要素、そして90年代に一斉を風靡したUKフューネラル/ドゥームメタル然とした内省的かつ叙情的な泣きのメロディをクロスさせた名盤で、その5年後には2ndアルバム『Wider Than The Sky』を発表すると、そこではドゥームメタルから足を洗い、俄然スロウコアの方向性に舵を切ったサウンドを展開していた。

パトリック以外のバンドメンバーが全員脱退し、名実ともに完全なるシンガーソングライターの立場から放たれる本作の3rdアルバム『Perfect Light』は、愛用のエレキギターを窓からぶん投げて、代わりにアコースティック・ギターを手にしたフォーク・ミュージックmeetスロウコアと称すべき作風となっており、音数を最小限に抑えたミニマルスティックな曲調と90年代にUKドゥーム御三家の一角として活躍した(Kscope時代の)ana_themaの影響下にある耽美的なポストロックが邂逅した、美しくも儚いメランコリックな天上の音楽を繰り広げている。まるで慈悲を乞うかのように、ただ繰り返されるだけの和音のアルペジオと優美なピアノが織りなす、聖水のごとし浄化作用を内包したアトモスフェリックなフォーク・ミュージックと、言わば“宅録系おっさんSSW”として震える声を絞り出すように歌い上げる、その中年くたびれ親父の背中から加齢臭と共に滲み出る情熱的なパッションとあゝ無情なエモーション、そんな中年オヤジの激シブな姿にただただ男泣きすること請け合い。

確かに、本作において鳴らしている音楽性にはドゥームメタルの片鱗も残されていないが、アイデンティティである初期のドゥームメタル時代に培った泣きメロの資質そのものは不変で、むしろ今回アコギを主軸とした事により一層その泣きメロにリソースを全振りしている印象。そもそも、伝説のデビュー作の時点でスロウコアをはじめとするミニマル・ミュージック寄りの気質を持ち合わせていた事を考えれば、今回のアコースティックなスタイルへの変化はごく自然で、あくまで流動的な変化でしかない。それこそ過去二作のアルバムジャケットが示すように、嵐の如く暗雲に覆われた荒涼感と死臭を醸し出すジャケの魑魅魍魎がクリーンに浄化されて徐々に光が差し込んでくる様は、まさに40 Watt Sunがこの10年の間に歩んできた音楽性の変遷を視覚的にメタしている。また、パトリックは今年のRoadburn FestivalにてロサンゼルスのSSWことEmma Ruth Rundleとのコラボを予定しており、メタルシーンのみならずオルタナ界隈からも高い支持を得ているのがわかる。

40 Watt Sunが1stアルバム→2ndアルバム→3rdアルバムで歩んできた音楽的変遷は、それこそドゥームメタル→オルタナ→ポストロックという風な音楽的変遷を辿ったana_themaを彷彿とさせ、中でもana_themaが過去作をアコースティック・アレンジで再構築した『Hindsight』のサウンド・スタイルが最もシックリくる。特にこの『Perfect Light』を象徴するかのような、ポストロック然としたアルペジオ・ギターと後期ana_themaに直結する耽美的なATMSフィールドがリリカルに、しかしドラマティックに広域展開する#2“Behind My Eyes”、ミニマリストを極め過ぎたギタリストが奏でる和音のアルペジオとアンビエント・ポップ的なピアノが至極シンプルに美しい#5“The Spaces In Between”、中期Anathema的なオルタナ味を感じる#7“A Thousand Miles”は本作のハイライトと言える。個人的に、この手の癒やし系アコギ作品と言えば、知る人ぞ知る伝説のフォークバンドことTrespassers Williamを要所々々でフラッシュバックさせる本作の凄みったらない。

The World Is A Beautiful Place & I Am No Longer Afraid To Die - Illusory Walls

Artist The World Is A Beautiful Place & I Am No Longer Afraid To Die
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Album 『Illusory Walls』
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Tracklist
1. Afraid To Die
4. Blank // Drone
5. We Saw Birds Through The Hole In The Ceiling
6. Died In The Prison Of The Holy Office
7. Your Brain Is A Rubbermaid
8. Blank // Worker
9. Trouble
10. Infinite Josh
11. Fewer Afraid

フィラデルフィアはペンシルバニアを拠点に活動する、コネチカットはウィリマンティック出身の5人組ことThe World Is A Beautiful Place & I Am No Longer Afraid To Dieは、それこそ90年代のエモシーンを象徴するMidwest emoを産み出した中西部生まれだけあって、そして西海岸サンフランシスコを代表するDeafheavenとレーベルメイトのエピタフ系ならではの伝統的なemo(イーモウ)/ポスト・ハードコアの精神性および「死」にまつわるリリックを軸に、ポストロックならではのリリカルでミニマルな叙情性とプログレ/オルタナならではのアトモスフェリックでドラマティックな楽曲構成、そしてボーカルのデヴィッドと紅一点ケイティからなるツインボーカルの絶妙な距離感が保たれた奇跡的なバンドで、そんな彼らの約4年ぶりとなる4thアルバム『Illusory Walls』は、これまで地域性に根付いた情緒豊かな音楽性を貫いてきた彼らが、ここにきてemo(イーモウ)というイチジャンルを超越したスケールのデカいバンドとして覚醒している。


それこそ幕開けを飾る世界は美しい、もう死ぬのは怖くないというバンド名を冠する#1“Afraid To Die”からして、中西部ネイティブらしいアルペジオ・ギターのメロディがAlcestの1stアルバムに通ずる映画『エコール』ばりに幻夢的なおとぎ話のロリータ世界に誘うと、一瞬暗転してダイナミックなバンドサウンドが合流して近年のBTBAM顔負けのプログレっぷりを垣間見せる。紅一点ケイティのケロケロボニトばりにバブルガムみのあるポップな歌声をフィーチャーした#2、Rolo Tomassiのエヴァみのあるケイティのボーカルとサイケ/アトモスフェリックなシンセを効かせたヘヴィ・プログレ志向の高い#3、バンドの持ち味の一つである優美なストリングスをフィーチャーしたインディ指数の高い#4、その流れを引き継いでストリングスを駆使したアトモスフェリックな静謐的空間を形成する前半から、SWソロみのあるヘヴィ・プログレ然としたギターリフを駆使しながら後半にかけて徐々に強度を上げていく、確実にdredgの正統後継者を襲名しにきてる#5、夜空に煌めくシンセとギターが織りなすポストロック然としたスペーシーな叙情性が織りなす冒頭から一転して、メロコア風に疾走したりヘヴィなギターを駆使したりと転調を効かせながらダイナミックに展開していく、もはや確実にBTBAMの正統後継者を襲名しにきてる#6、その喜劇的な流れを引き継いで壮麗なオーケストレーションとヘヴィなギターとケイティのフィメールボイスをフィーチャーした#7、フィラデルフィアを代表するThe War on Drugsリスペクトなインディロックの#8、本作で最もポスト・ハードコア気質の高い#9、そして本作のハイライトを飾る約16分におよぶ#10“Infinite Josh”と約20分におよぶ#11“Fewer Afraid”という二大超大作まで、バンド史上最長となるアルバムトータル70分超えに耐えうる作品としての強度のみならず、一曲の長さとしても最長を立て続けに更新するこの二つのポストロック大作は、まさに本作を司るコンセプチュアルなロリータ物語の解像度を著しく高める真珠の名曲と言える。物語が結末を迎える#11では、バンド名のThe World Is A Beautiful Place & I Am No Longer Afraid To Dieがメインコーラスの歌詞としてガッツリ引用している点も、冒頭の“Afraid To Die”で起こったこの物語の起承転結を暗示している。

なんだろう、アルバムと楽曲の尺までフルアーマープログレ仕様となった本作を例えるなら、メタル界で言うところのBTBAMがマクロな存在だとすると、このThe WIABP&IANLATDはemo(イーモウ)界におけるミクロなBTBAM的な存在というか。端的に言ってしまえば、完全にコッチ側の領域に足を踏み入れてきた作品であることは確か。それはメタル耳にも確実に刺さるギターの音作りやトリッキーなリフメイクを耳にすれば一瞬でセンスの塊と理解できるくらいに。リアルな話、『普通の堕落した人間の愛』あたりのDFHVNに影響を与えた張本人なんじゃねぇかって、そして昨今のトレンドとは真逆をゆく一時間超えの音源を久々に途中で飽きずに最後まで聴いた気がするほど、本作はとにかく楽曲の強度が尋常じゃなく高い。もはやBTBAMと一緒にツアー回っても全然おかしくないレベルだし、とにかく一昔前の洋楽ロックのステレオタイプみたいな雰囲気、あるいは初めて洋楽聴いた時の懐かしさだったりノスタルジーを誘うメランコリックなメロディが最高のバンドだから聴いて。とりあえずというかなんでもBTBAMが好きなら絶対に聴いて。

Devil Sold His Soul 『Loss』

Artist Devil Sold His Soul
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Album 『Loss』
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Tracklist
01. Ardour
02. Witness Marks
04. Tateishi
07. Signal Fire
08. Acrinomy
09. But Not Forgotten
10. Loss

BMTHBullet for My Valentine、そしてLostprophetsなどのエモ〜メタルコア系のUKバンドが新世代メタルの代名詞として祭り上げられていた、それら00年代を象徴する懐かしい3組のUKメインストリームロックの影に隠れて、一部のアンダーグランドシーンでポストハードコア界のレジェンドとして崇められ続けてきたバンドがロンドン出身のDevil Sold His Soulで、てっきり自分の中では既に解散したものだと思っていた伝説のバンドが奇跡の復活を遂げた。

初期のBMTHBFMV、そしてロリペドもといロスプロなどの主要なUKバンドの作品を抱えているイギリスのレーベルVisible NoiseからデビューEPを発表し、その後もかのHoly Roar RecordsやCentury Mediaから作品を発表してきた彼らが、2012年作の3rdアルバム『Empire Of Light』から約9年の時を経てドロップした復活作となる4thアルバム『Loss』は、まさかのメタル総本山であるNuclear Blastからリリースとのことで、その内容もNuclear Blastのイメージとは真逆のギャップ萌えに溢れた、長いブランクを微塵も感じさせないDSHSらしいハードコアを繰り広げている。

今や絶滅危惧種となった感のあるコテコテのエモエモのハイトーンボイスをはじめ、現在のBMTHBFMVが失くした“当時のコアさ”を現代に引き継いでいるのがこのDevil Sold His Soulという皮肉はさて置き、いわゆるポストロックやポストハードコアラインの王道を突き進んでいた過去作から一転して、流石にあのNuclear Blastが拾うだけあって本作の『Loss』は、00年代に流行った伝統的なUKエモ/ハードコアの“らしさ”と、(そのポストメタル然としたアートワークからもわかるように)IsisCult Of Lunaに代表されるポストメタルやアトモスラッジなどのメタリックな現代ヘヴィネスとも共振するアグレッシヴなメタルパートをふんだんに盛り込んでおり、いわゆるエモ系キッズが今にもシコりだしそうなナヨナヨした感じよりも、あくまで硬派なポストメタル然としたヘヴィネスを軸に、言ってしまえばゴリゴリのメタルとして聴けちゃう一枚となっている。

過去作との大きな違いを示す本作における“ヘヴィネス”、例えば#2“Witness Marks”や#3“Burdened”や#9“But Not Forgotten”のようなポストメタルの王道的なリフ/ヘヴィネスを耳にして何を思い出したかって、それこそ“10年周期で全く新しいヘヴィネスを更新し続ける系ヘヴィロックバンド”でお馴染みのDeftonesに他ならなくて、彼らは00年代のポストメタルとDevil Sold His Soulも影響を与えたPeripheryに代表されるDjentという10年代を象徴するヘヴィネス、その00年代と10年代のDecadeを象徴する2つのヘヴィネスを経由していながらも、しかし厳密に言えばどちらとも相反する“20年代のヘヴィネス”を更新してみせたのが2020年に発表したアルバム『Ohms』だった。

何を隠そう、今作の『Loss』における過度にモダンに寄せ過ぎない程よいモダンさを帯びたヘヴィネスは、なんだろう空白の9年の間に降り注いた雨のお陰で地固まるじゃないけど(UKバンドだけに)、それこそLoatheに代表されるUK新世代を真っ向から叩き潰す勢いの中ボスっぽい重厚なヘヴィネスは、まさしくDeftones『Ohms』の中でヘヴィ・ミュージック・シーンに示した“20年代のヘヴィネス”に肉薄するソレで、それは同時に本作が「そのレベルの領域にある作品」である事を意味している。つまり、彼らはBMTHBFMVロスプロなどの00年代のUKロックを象徴する“過去”の懐メロハードコアと同じことをやって当時のファンをノスタルジーに浸らせるためにわざわざ復活したわけではなく、むしろDeftones『Ohms』Hum『Inlet』に象徴される“20年代のヘヴィネス”の流れを着実に汲んだ、ノルタルジックな懐メロとは真逆の最先端のヘヴィ・ミュージックであるということ。

しかし、まさかこのDSHSが復活作でそんな事をやってくるなんて想像もしてなかったというか、でもそこに彼らが一部でレジェンドと称される所以が集約されてるんじゃないかって。かつてはレーベルメイトだった一角のBMTHが今やネット炎上芸人と化し、もう一角のBFMVが謎の筋肉お化けと化し、そして最後の一角となるロスプロが刑務所にブチ込まれている最中、唯一アンダーグラウンドの道を歩み続けてきたDSHSが最先端の現代ヘヴィネスと直結する展開は流石にエモ過ぎるでしょ・・・。しっかし、つい最近でもDVNEPUPIL SLICERなどの次世代を担うUKバンドの登場、その新世代と00年代のアングラシーンで活躍したレジェンドが復活して互いに高め合ってる感からも、今マジでUKがアツい・・・!

またしても俺たちのニュークリア・ブラストが最高の仕事をやってのけた」←正直この一言に尽きる。バンドのフロントマンであるエド・ギブスのエモエモしたハイトーンのボイスを、2013年に加入したポール・グリーンのプチエモいイケボで中和しているお陰でエモ特有のナヨナヨ感が大幅に低減、またポストハードコアの常套手段であるシンガロングパートも皆無となっているのもプラスに働いている。そのように、ニュークリア・ブラストに所属する他のメタルバンドのファン層にも理解が得られるような、ガチメタラーにも耳馴染みのいい要素の取捨選択が上手くいった結果の傑作だと思う。別に思い出のバンドの復活作だから贔屓しているのではなくて、シンプルに現代的なポストメタルとしてのトレンドを抑えた、音作り的な意味でもソングライティング的な意味でも過去最高を更新してきた問答無用の傑作です。改めて、これが“復活請負人”ことニュークリア・ブラストの真髄か・・・ありがとうニュークリアブラスト!フォーエバーニュークリアブラスト!

Mogwai 『As The Love Continues』

Artist Mogwai
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Album 『As The Love Continues』
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Tracklist
01. To The Bin My Friend, Tonight We Vacate Earth
02. Here We, Here We, Here We Go Forever
03. Dry Fantasy
05. Drive The Nail
06. Fuck Off Money
07. Ceiling Granny
08. Midnight Flit
09. Pat Stains
10. Supposedly, We Were Nightmares
11. It's What I Want To Do, Mum

COVID-19の影響により無期限活動休止という名の事実上の解散を発表したリヴァプール出身のana_thema、そんな彼らの遺作となった11thアルバム『The Optimist』といえば、スコットランドはグラスゴー出身のポストロック・レジェンドことモグワイや日本のくるりの作品でもお馴染みのトニー・ドゥーガンフランク・アークライトという二人のエンジニアを迎えた、実質的な遺作にしてバンド史上最高にオルタナ〜ポストロックへの憧憬が極まった作品で、中でも彼らの“モグワイ愛”を象徴するような曲がリード曲の“Springfield”だった。また、その二人以外にもモグワイにとって欠かせない人物がプロデューサーであり元マーキュリー・レヴのデイヴ・フリッドマンの存在で、フリッドマンといえば日本のナンバガをはじめUSのBaronessHaimの新作にも参加しているエンジニア/プロデューサーで、それこそ彼がプロデュースしたBaroness『Gold & Grey』は、大袈裟に言ってモグワイがブラックゲイズ化したようなノイズ〜オルタナラインのサウンド・プロダクションを展開する、最高傑作と呼ぶに相応しい天才的なアルバムだった。


そのようにして、90年以降のオルタナシーンは元より、今ではUKバンドや日本のバンドのみならず世界中の音楽に影響を与えまくっているポストロックの代名詞と言っても過言じゃあないレジェンド中のレジェンドであるモグワイの新作は、それこそana_themaをはじめ、これまでにモグワイが影響を与え続けてきたフォロワーたちへの一種の回答であり、またana_themaのように志半ばでバンドの道を閉ざした者たちへのレクイエムであるかのような、そんな一枚となっている。

タイトルにあるTo The Bin My Friend, Tonight We Vacate Earthと呟く、臨死体験に成功した老人らしき人物が語る妄言もとい思い出らしきモノローグから幕開けを飾る#1からして、「This is Post-Rock」すなわち「This is Mogwai!!」な静謐な音響空間の中で凛と佇むピアノと単音ギターが優しく紡ぎ出す「アダンの風」を、ほぼほぼUKポストメタル/シューゲイザーのJesuへの回答とばかりのドローン〜ドゥームゲイズばりの轟音でテュポーンと吹き飛ばす、その静謐的な音響パートとハードコアなダイナミズムならびにスケール感を押し出していく轟音パートの対比、それすなわち「This is Mogwai!!」な一曲と言える。


一転して、今度はオートチューン全開のいわゆる“ロボ声”をフィーチャーした、それこそ65daysofstaticへの回答と言わんばかりの8bitのゲーム音楽チックな電子的な打ち込みとTorcheばりのハードコアなダイナミズムが交錯する、いい意味でモグワイらしからぬドストレートなロックンロールを繰り広げる#2“Here We, Here We, Here We Go Forever”、かと思えば今度はUSポストロックのIf These Trees Could Talkへの回答とばかり、それはまるでジブリ映画のサントラの如し心が浄化されていくような、波浜辺美波(浜辺に寄せては返す美しい波)の如しゆらり揺らめく蜃気楼を描き出すアンビエントなATMSフィールドをバックに、猛烈な愛=LOVEをまとったリリカルでノスタルジックな“和”の美旋律がメランコリックでエモーショナルな美メロの洪水となって襲いかかり、ポストロックならではのエピックでドラマティックな構成美が幻想的な『ノスタルジア』を形成する#3“Dry Fantasy”、今度はUSポスト・シューゲイザーのNothingへの回答とばかりの倦怠感むき出しのボーカルと、あるいはデイヴ・フリッドマン的な意味でBaronessの新作とも共振するノイズロック然とした#4“Ritchie Sacramento”、今度は現代プログレ界隈の重鎮ことスティーヴン・ウィルソンの2ndアルバム『Grace for Drowning』SWのサイドプロジェクトであるNo-Manを彷彿とさせる、浜辺美波()のようにウェイブする耽美なシンセと湿り気のあるギターがイギリスの空模様のように妖しげな雰囲気を映し出し、その不穏な空模様に突き刺す一筋の稲光のようなハードコアな轟音が瞬く#5“Drive The Nail”、中期ANATHEMAにも影響を与えたモグワイの専売特許=ヴォコーダーボイスからして安心感しかないSFチックな#6“Fuck Off Money”、ポストロック“バンド”としてのアグレッシヴでオーガニックなパンク魂を打ち出した#7“Ceiling Granny”、SF映画のサントラすなわちハンス・ジマー顔負けのミニマルなエレクトロをフィーチャーした#8“Midnight Flit”は、それこそana_themaの遺作を象徴する“Springfield”と共振するかのような、一段また一段と徐々に次元の壁を超えていく極限的なミニマリズムと後期ana_themaもビックリの壮麗なオーケストレーションが恍惚や銀河を超えた先にある高次元空間を切り拓いていくようなアセンションナンバーで、もはやアナセマの穴にモグワイが潜っちゃった感じはドチャクソ超絶エピックで(意味わからん)、とにかく実質解散宣言を発表したアナセマへのレクイエムだと考えただけで泣ける。で、この曲を聴いて確信した事が一つだけあって、それは本作が後期ana_thma〜Baronessの新譜から地続きで繋がってるアルバムということで、しかも楽曲のノリというか熱量が完全にメタルのそれな時点で、これはもう一種の「モグワイなりのポストメタル」と解釈すべき一枚であると。つまり「モグワイはメタル」

アルバム終盤も、モグワイらしいセンチメンタルなリフでポストロックの王道を組み立てていく#9“Pat Stains”、再びNo-Man顔負けのミニマルなシンセをフィーチャーしたエレクトロ・ポップな#10“Supposedly, We Were Nightmares”、モグワイをリスペクトしてやまないフォロワーの第一人者であるUSブラックゲイズのDeafheavenへの回答であるかのような、そんな彼らの“Glint”を想起させるイントロの寂寥感に苛まれるリフやUSオルタナのJuniusをイメージさせる荘厳な世界観を形成するシンセ、そしてana_themaの遺作から“Wildfires”をオマージュしたような轟音ノイズと、中期ANATHEMAをフラッシュバックさせるアウトロの耽美的なギターが別れの挨拶にしか聞こえなくて俄然泣かせるラストの#11“It's What I Want To Do, Mum”まで、それこそ「ちょっと待って、モグワイってこんなシューゲイザーっぽかったっけ?」となるくらい、とにかく一聴してわかるのは「メロディめっちゃある!」という事で、しかし「ここまで様式美的なメロディ鳴らすバンドだったっけ?」となるのも事実。

要するに、いい意味でめちゃくちゃシンプルで王道的なロックやってるというか、いい意味でモグワイらしからぬ、いい意味でモグワイフォロワーのフォロワーを本家モグワイがやってみたような感覚。この手のフォロワーに対する回答的なアルバムにめっぽう弱い自分としては、ポストロック界のレジェンドが原点に、基本に立ち返るじゃないけど、ポストロックの基本、オルタナティブの基本を、レジェンドとなった今あえて初歩的でベタな事やってて俄然エモカッコよ過ぎて泣けるというか、泣きながら「これもう赤ペン先生だろ・・・」ってなった。少なくとも、ここ最近のアルバムの中では最もモグモグワイワイしたくなること請け合いの一枚です。
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