Artist Wolves In The Throne Room

Album 『Primordial Arcana』

Tracklist

Album 『Primordial Arcana』

Tracklist
01. Mountain Magick
02. Spirit Of Lightning
03. Through Eternal Fields
04. Primal Chasm (Gift Of Fire)
05. Underworld Aurora
06. Masters Of Rain And Storm
07. Eostre
08. Skyclad Passage [bonus]
08. Skyclad Passage [bonus]
「姉さん事件です!」って、あの自然大好きDIY系USBMの雄ことWolves In The Throne RoomがRelapse Records/Century Mediaと契約した時ほど叫ばなかった言葉はなくて、だって映画『もののけ姫』のサン顔負けのスピ/リチュアルなDIY精神を貫き通してきた、約20年のキャリアを誇るあのWITTが故郷であるワシントン州の森の中から離れて、コンクリートの壁に覆われたオフィスで現代メタルシーンを代表するレーベルと契約、そしてこの最新作でIsis(アーロン・ターナー)界隈でもお馴染みのMatt Coltonをエンジニアとして迎え入れ、それこそDFHVNもビックリの現代的なポストメタル~ポスト・ブラックメタルをレコーディングするとか一体どんな風の吹き回し?それこそ「姉さん事件です!」ってならない方がおかしい。
いわゆるLiturgy=典礼あるいは儀式=Ritualな、と言っても次期総理候補の高市早苗ちゃんがハマってそうな胡散臭いスピ系に頭がやられちゃった人ではなく、それはまるで真っ当に自然を愛する心を持つDIY精神と、彼らの原典と称すべき初期の荒涼感溢れるアトモスフェリック・ブラックメタルが、いわゆる文明の利器すなわち現代のテスラ・テクノロジーによって著しくモダンに洗練された事で未知なる化学反応を起こし、ソーシャルのソの字もない幽玄かつ神秘的な森の中で動物や自然と一体化して暮らす“アンダーグラウンド”なニューエイジャーと、カリフォルニア州はサンフランシスコなど人々が密集する都市部で『マスク』と『サンバイザー』を着用しながら生活する“メインストリーム”な現代人の魂をつなぎ合わせる“イコン”即ちシシ神様の代弁者として、ソーシャルディスタンスが強制され都市部の一極集中が見直されつつある時代に、この『Primordial Arcana』という名の儀式(Ritual)を通して「生きてるって何だろ 生きてるってな~に?」の意味を人類に問いかけるかのよう。
それこそアイルランドのブラック・メタルバンド=Primordialばりに勇壮で超絶エピックな、そしてヘヴィでメタリックなATMSUSBMを繰り広げる#1“Mountain Magick”からして「Relapseと契約した結果」を示し、民謡的なフォーク・ミュージックとシンセが奏でる幻想的なシンフォニーがプログレスに交錯しながら自然崇拝の儀式を執り行う#2“Spirit Of Lightning”、その荘厳な“儀式”に必要不可欠となる未開の部族だけに伝わるトライバリズムをフィーチャーした曲で、ボーカルにTrap ThemのGalen Baudhuinを迎えた#3“Through Eternal Fields”、US版森メタルに棲む妖精の立場から都市部に奏でるポストメタルの#4“Primal Chasm (Gift Of Fire)”、再び住む森に帰り水辺に佇むシシ神様を呼び起こす#5“Underworld Aurora”、そして自然界で暮らす人々の魂を浄化するシンフォニックなATMSBMと、都市部で暮らす人々の魂を浄化するAltar Of Plaguesさながらの現代的なポストメタル、その分断された二つの魂が一つに邂逅する#6“Masters Of Rain And Storm”は本作のハイライトで、WITTがアイデンティティとしている喜多郎リスペクトなアンビエントやニューエイジと呼ばれる環境音楽的なスピ系インストの#7“Eostre”を最後に、本編は幕を閉じる。そして、本編における自然崇拝と対をなす悪魔崇拝、すなわち邪教的な儀式という名の『人類はっぱ隊計画』による魂の浄化、すなわち『エヴァ・チンフィニティ』を完了させるボートラの#8“Skyclad Passage”まで、いわゆるアンビエント主体の抽象的(ファンタジー)な音楽に逃げず、とにかく過去イチでクソ真面目に現実的かつ叙情的な「(ブラック)メタル」やってるギャップが最高の1枚。要するに「AoP化」ですね。