
いや別に、別に、ステージ上で歌うフロントマンの幸子がBoom Boom Satellitesの川島さんと重なって見えたとか、正直その手のクサい話には一切興味がなくて、でもその『繋がり』を一切無視するなんて事は最新作の『ETERNALBEAT』が許さなくて、それらの諸々のことを含めて色々な想いはあるけれど、それよりも今回のツアーで一番気になる所といえば、Boom Boom Satellitesから受け継いたエレクトロな打ち込みを大胆に取り込んだ新曲陣をライブでどう『表現』し、そしてライブでどう『再現』するのかに他ならなかった。
確かに、前作の『VISION』はねごとのバンド・サウンドを極めたような傑作で、特にベースの佑とドラムの小夜子のリズム隊が織りなす極上のグルーヴとアンサンブルが、横にも縦にもノラせる一種の魔法のような化学反応を起こしていた。これは仕方ないことだが、そのねごとを支えるキモと言っていい二人の存在は、一転して新作の『ETERNALBEAT』では作風的にも『VISION』ほどの存在感というのはなくて、となるとライブでもバンドの生命線であるグルーヴ&アンサンブルが消滅し、つまり「ロックバンド」としてのブレが生じてしまうのではないか、という一抹の不安は無きにしもあらずだった。が、ライブの幕開けを飾るゆるふわ系の”PLANET”から、ねごとの「特異点」である”DESTINY”から”Ribbon”までの序盤の流れを聴いたら、その不安は一瞬にして吹き飛んだ。二年ぶりに目にしたねごとは、全てが「変わった」ように見えて、何も変わっちゃあいなかったんだ。確かに、新作で「変わった」ところは変わっているのだけど、でもねごとの「ロックバンド」としての根幹の部分は何一つ変わっちゃあいなかった。
新作の『ETERNALBEAT』は、「ロックバンド」としてのねごとを幾倍にも成長させると同時に、一方で「ライブバンド」としてのねごとを目覚めさせたアルバムでもあったんだ。序盤からベースの佑はシンセベースを駆使してバインバインとフロアを揺らすし、ドラムの小夜子は頭まで使ってタイトなドラム鳴らすし、ギターの瑞紀は二年前と比べると「ロックギタリスト」として貫禄が出てきた。そして、このライブで一番印象に残ったシーンは、中盤のハイライトとなる”mellow”の時に、マイクスタンドを外してステージ上を「自由」に動き回って何時にもなく感情的に歌い上げる幸子が、そのバラードな曲調的にも全盛期の大塚愛にしか見えなくて、多分二年前のライブでは「マイクスタンドのまま歌う幸子」という固定の位置でしか見たことなかったから、その「曲中に動く幸子」はもの凄く新鮮だったし、正直その「動く幸子」を見てたら不思議と鳥肌立ったというか、何故か泣きそうになった。その光景は、まさに新作の『ETERNALBEAT』がねごとを「ライブバンド」としてNEXTステージへとブチ上げた一つの証明でもあって、つまり「ロックバンドはこうじゃなきゃいけない」とか「ねごとはこうじゃなきゃいけない」とか、そういった「固定概念」から解放されたねごとのシン化した姿そのものだった。
新作の『ETERNALBEAT』は、ねごとの楽曲面での表現の幅と可能性を大きく広げたアルバムであると同時に、ねごとのライブ面での表現の幅と可能性を無限に広げるようなアルバムでもあったんだ。ライブ序盤はいつも通りの、それこそ二年前と変わらない、彼女たちのウリである「どんとこい横ノリ縦ノリ」なバンド・サウンドが炸裂する曲でテンポよく、コールやクラップを曲の一部としてオーディエンスとの一体感をもってノリノリに盛り上げていくのだが、自分はてっきり『ETERNALBEAT』ツアーだから一曲目から表題曲や”アシンメトリ”を持ってくるセトリだろうと予想してたから、こう序盤~中盤と「二年前とほぼ変わらないねごと」を見せられたことに面食らった。しかし、ライブで聴くと俄然好きになった中盤の”cross motion”から、先ほどの「固定概念」から解放されて「自由」を得たねごとが露となる”mellow”を皮切りに、シティポップみたいな幸子の歌と楽器隊のコーラスワーク、そして照明演出が冴え渡る”君の夢”を聴いたら改めて今のねごとの比較対象って相対性理論だよなって思うし、その流れで新作の鍵を握る曲の一つである”シグナル”を披露して「おやおや?妙に変だなぁ・・・?」ってなって、この次に前作の”endless”を挟んで、からの”アシンメトリ”のイントロがendlessにループし始めて、その瞬間この「ライブハウス」は「クラブハウス」でもあったという真実に気付かされ、そのまま最後に”ETERNALBEAT”の鳴り止まないビートをエンドレスに刻んでいく。
もうなんだろう、「あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!俺はねごとのライブを観ていたと思ったら いつの間にか宇宙にいた」ってくらい、新作の『ETERNALBEAT』に込められた『魂』のビート、本日名古屋クワトロでねごとが放ったendlessに鳴り止まないビートは、まさに【2015年5月13日】に名古屋クワトロで観たBoom Boom Satellitesのライブで『体感』した『衝動的』なビート、そして【2015年9月01日】に恵比寿リキッドルームで観たANATHEMAのライブで『体験』した『黄金』のビートと全く同じ波長のビートを刻んでいたんだ。僕は、このライブハウスという不均衡な四次元立方体の中で、ねごとが放つ音の粒子が作り出した三次元と五次元へを繋ぐワームホールの中で、僕が『過去』に観た中野さんと川島さんが歌う姿、そしてANATHEMAが「Satellites」を描き出した『過去』のライブを再演していた、というより、もはや僕の『魂』はこのライブハウスという名のワームホールの中で、ねごとが編み出した『サテライツ・ミュージック』を介して『過去』に行っていたんだ。だから今日、僕が観たねごとのライブの中では川島さんは確かに歌っていたし、僕が観たこの約100分ほどのライブの中では確かに命を繋いでいたんだ。しかし、僕マシュー・マコノヒーが『過去』に行って感傷に浸っていた頃、ねごとは自らの『過去』を顧みず、あまりにも前向きで、あまりにもポジティブな、そしてあまりにも眩いくらいの『未来』を見据えていた。
とにかく、二年前とは比べ物にならないくらい激しさマシマシのロックバンド然としてて、ねごとは紛れもなく「ロックバンド」であり、これからも「ロックバンド」としてシン化し続けるバンドだと自己申告するかのようなアツいライブだった。最後のMCで瑞紀も言ってたけど、アルバム毎に変わり続けるねごと、その変わった後の『今のねごと』は『今』しか味わえないし、それこそ「オルタナティブバンド」としてのねごとのシンの姿なんだって。だから、『今のねごと』は絶対に『今』観ておかないと損すると思うし、少なくとも今日のライブは今年の年間BESTライブ確定です(KATATONIAが来日しない限りは)。正直、『今のねごと』ほど追ってて「面白い」と感じるバンドって、少なくとも今の日本にはいなんじゃあないか。
とにかく、二年前とは比べ物にならないくらい激しさマシマシのロックバンド然としてて、ねごとは紛れもなく「ロックバンド」であり、これからも「ロックバンド」としてシン化し続けるバンドだと自己申告するかのようなアツいライブだった。最後のMCで瑞紀も言ってたけど、アルバム毎に変わり続けるねごと、その変わった後の『今のねごと』は『今』しか味わえないし、それこそ「オルタナティブバンド」としてのねごとのシンの姿なんだって。だから、『今のねごと』は絶対に『今』観ておかないと損すると思うし、少なくとも今日のライブは今年の年間BESTライブ確定です(KATATONIAが来日しない限りは)。正直、『今のねごと』ほど追ってて「面白い」と感じるバンドって、少なくとも今の日本にはいなんじゃあないか。
セトリは新作『ETERNALBEAT』と『アシンメトリ e.p.』中心のセトリだが、過去の曲も違和感なく馴染んでたと思うし、アンコールではバンド結成10周年とのMCと繋げて”ループ”と新作からラストチューンの”凛夜”を披露した。ところで、新作の『ETERNALBEAT』って中野さんがプロデュースした楽曲が目に見えて「実験的」なイメージを与えるけれど、実は今のねごとにとって新作で最も「実験的」な曲って他ならぬ”凛夜”なんじゃねーかって、今日のライブで聴いてみて俄然そう強く感じたというか、この曲でもマイクスタンドを外して歌う幸子やアコギを靡かせる瑞紀だったり、この曲ほどねごとのNEXTステージ、ねごとの『未来』を予感させる「新機軸」な曲って他にないと思ったくらい。しかし、”endless”から”アシンメトリ”の流れは粋ってレベルじゃないし、独りで「繋がってるぅ!繋がってるってばあああああああああ!!つつ繋がったあああああああああ!!」ってなった。
相変わらずベースの佑は一番小さいのに一番ノリノリで楽しそうにピョンピョンしてたし、ドラムの小夜子も何か新しい試みっぽいことしてたし、ギターの瑞紀もやっぱスゲー存在感あったし、でも今回ばかりは幸子の存在感サマサマな所があったのは間違いない。自分はフロア後方から真正面に幸子が見えるポジションから観てた事もあって、特にマイクスタンドを外して歌った”アシンメトリ”や”ETERNALBEAT”、”mellow”や”凛夜”での幸子は本当にエモ過ぎたし、とにかく今日の幸子のパフォーマンスはガチでグッときた。中でも”mellow”聴いた時とか、「ちょっと待って、幸子めっちゃエモいやん!」ってなった。あと幸子がインタビューで「いいメロディを作る、いい曲を作る」と語るとおり、新作の【ダンスミュージック×ねごと】という目に見えて新しい『変化』に注目するのもいいが、それよりも改めてねごとが持つメロディセンスに注目すべきライブなんじゃあないかって。あと今日の幸子見てたらいつかガチでツインドラムやり始めるだろこれって思った。
名古屋クアトロありがとうございました!!
— マスダミズキ (@negotomizuki) 2017年3月20日
また会おうね。名古屋のバイブス感じまくったぜ、、そしてギターがマジかっこいいのでみんな見てください。🤳
photo by @Lily0141 #ねごと #eternalbeat #zemaitis pic.twitter.com/bWlS2gR7UJ
ちなみに、今日のライブで瑞紀が使ってたギターはかのZEMAITISで、ZEMAITISといえばご存じBAND-MAIDの当て振り鳩女こと小鳩ミクちゃんもZEMAITIS使いなのだが、瑞紀がZEMAITISを持って弾いている時の「型」と当て振り鳩女がZEMAITISを持ってアテフリしてる時の「型」、同じZEMAITISでもこうも違うのかよと、それこそ「プロの型」と「ドシロウトの型」というか、「本物」と「ニセモノ」の違いというか、やっぱりギタリストってギター抱える立ち絵=「型」だけでその人の技量が雰囲気として出ますね。今日のバッリバリの「ロックギタリスト」としてシン化した瑞紀の「型」と比べると、当て振り鳩女はその辺の量産型アイドルに初めてギターを持たせたみたいな立ち絵のソレで、そもそも瑞紀と当て振り鳩女を比べること自体瑞紀に失礼なんだが、要するに同じZEMAITIS使いとして当て振り鳩女は瑞紀にギター教えてもらえよ。つうか、ねごとのツアーファイナル行って勉強してこいよ。わかったか、当て振り鳩女。いや、でも、やっぱ瑞紀推せるわ~と再確認。
【3/20】セットリスト
01. PLANET
02. DESTINY
03. Ribbon
04. holy night
(MC)
05. 天使か悪魔か
06. school out
07. シンクロマニカ
08. cross motion
09. mellow
(MC)
10. メルシールー
11. 君の夢
12. シグナル
13. endless
14. アシンメトリ
15. ETERNALBEAT
(MC)
16. ループ
17. 凛夜