Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

Gothic

Unto Others - Strength

Artist Unto Others
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Album 『Strength』
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Tracklist
01. Heroin
04. No Children Laughing Now
05. Destiny
06. Little Bird
07. Why
08. Just A Matter Of Time
09. Hell Is For Children [Pat Benatar cover]
10. Summer Lightning
11. Instinct
12. Strength

オレゴンはポートランド出身のゴシック・ロックバンド、Idle Handsが大手メジャーレーベルのロードランナーに引き抜かれたのを境に、Unto Othersと改名して発表された本作の2ndアルバム『Strength』は、80年代に一世を風靡したニューウェイブ/ポスト・パンクの系譜にあるゴシック・ロック然としたビートを刻む若手バンドで、そのサウンドも流石に大手メジャーレーベルに引き抜かれるだけあって、いわゆる“ゴシック”から連想されるダークなイメージというよりは、現代のアリーナロックを代表するモンスターバンドことVolbeatにも通ずる、いわゆるMTV世代ならガッツポーズ不可避の古き良きヘヴィメタル/ハードロックを展開している。


MVの映像やメンバーの衣装を筆頭に、バンドの中心人物であるガブリエル・フランコによるフェルナンド(Moonspell)顔負けの雄々しくもダンディな咆哮、80年代のヘビメタを象徴するツインギターの叙情的なソロワークやツインリード、80年代のニューロマンティックな綺羅びやかなシンセ、そして80年代仕込みのサウンド・プロダクションまでも、とにかく楽曲的な面でもビジュアル的な面でも一貫してHR/HM全盛の80sスタイルを現代にリバイバルさせているバンドで、それらの何から何まで80年代愛に溢れすぎている意図してダサい要素以上に、彼らの80年代愛をより強固なものとするその最たる部分こそ、80年代に名を馳せた女性ハードロッカーの原点であるレジェンド=パット・ベネターのカバー曲(#8)の存在に他ならない。

もっとも面白いのは、アメリカのバンドなのに往年のゴシック・ロック然とした哀愁と官能に満ちたメランコリックなリフレイン/メロディを大胆に聴かせるそのギャップをはじめ、そして何より本作のプロデュース/エンジニアとしてGhosteManePower Trip、そしてCode Orangeなどの各シーンの“顔”となるバンドの作品に数多く関わっているアーサー・リザークを迎えている点からも、いかに彼らがロードランナーに激推しされているバンドなのかがわかるし(現に前作比で楽曲の強度が歴然の差)、そしていかに「ポスト・ヴォルビート」の座に向けて育てていくか、否が応でも今後も注目せざるを得ない期待の大型新人バンドと言える。

しっかし、これまでロードランナーの“ゴシック”を背負ってきたレジェンド=Type O Negativeの後継者としてIdle Handsを指名するとか・・・さすがRR、目の付け所が違うなって。少なくとも、未来のシン・ゴシックシーンを牽引すること請け合いのバンドです。また、本作は毛艶が黒光りしたGⅠ級のダークホース的なジャケがカッコ良すぎるのも含めて、とにかくMoonspellの名盤『Extinct』が好きな人やライト版Tribulationとしてオススメしたい、間違いなく今年のダークホースアルバムとなる一枚です。

Moonspell 『Hermitage』

Artist Moonspell
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Album 『Hermitage』
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Tracklist
01. The Greater Good
04. Hermitage
05. Entitlement
06. Solitarian
08. Apophthegmata
09. Without Rule
10. City Quitter (Outro)

めっきり最近は「誰がエンジニアなのか?」または「誰がプロデューサーなのか?」で音源を聴くようになってしまい、それが果たして良いことなのか、はたまた悪い事なのかなんて話はさて置き、少なからずMoonspellの約4年ぶりとなる13thアルバム『Hermitage』を聴く限りでは「良いこと」だと思った。というのも、ゴシック・メタル界の重鎮でのある彼らは、“テイラー・スウィフトのマブダチ”で知られるイェンス・ボグレンをプロデューサーに迎えた前々作の11thアルバム『Extinct』を発表し、バンドとしてもうワンランク上の高みへと上り詰めた事は今も記憶に新しい。前作の12thアルバム『1755』では、過去作でもお馴染みのテッド・ジェンセンをプロデューサーとして再起用し、壮大なクワイアなどのシンフォニックメタル的な側面を強調し、そして全編にわたり母語のポルトガル語やスペイン語を交えた歌詞で展開する、そのイェンス流メタルメタルした前作とは一転して歴代最高にコンセプト色を強めた作風となった。

何を隠そう、通算13枚目となる本作のプロデューサー兼エンジニアを担当している人物こそ、今やイェンス・ボグレンの正統後継者と言っても過言じゃあない、南米コロンビア出身のハイメ・ゴメス・アレリャーノで、このようにテッド・ジェンセンは元より、イェンス・ボグレンからのハイメ・ゴメスというメタルプロデューサー/エンジニア界におけるトレンドの王道路線を歩んできている時点で、今の自分にとって彼らは信頼感しかないメタルバンドの一つと断言できる。近年、ハイメが手がけた主な作品というと、それこそゴシックメタルの元祖であるParadise Lostの近作が最も馴染み深いと思うのだけど、そのパラロスもパラロスでイェンス・ボグレン→ハイメ・ゴメスラインで後期の作品を積み重ねてきているバンドの一つで、そう考えたら同じくゴシック・メタル界の重鎮を担うこのMoonspellがレジェンドの影響を受けないはずもなかった。というより、前作の『1755』が全編ポルトガル語〜スペイン語の作品だったのは、次作=本作で同じスペイン語圏であり南米出身のハイメと邂逅する伏線だった・・・?事実、本作ではまるでお互いのことを古くから熟知する親友のような化学反応を起こしている。

個人的なハイメの印象っていうと、端的に言ってしまえばそのバンドが持つ「裏の顔」を引き出すプロデューサーだと思ってて、例えばベテランバンドが長年培ってきたスタイルに敬意を払いながらも、一方でこれまで見せたことのないようなバンドの一面を引っ張り出して、芸歴ウン十年の大御所すらも全く新しい存在として生まれ変わらせる天才、そんなイメージだ。それを証明するかのように、彼の才能が遺憾無く発揮された本作の『Hermitage』は、どの過去作とも似ても似つかないような一枚となっており、それこそ本作のリード曲を担う#2“Common Prayers”に代表されるように、まるで「北欧の吉井和哉」に対抗して「ポルトガルの吉井和哉」を襲名するようなエロス全開の官能的なクリーン・ボイス主体のフロントマン=フェルナンド・リベイロは、近年のDark Tranquillityにおけるミカエル・スタンネをはじめ、DTと同じスウェーデン出身のSoenのジョエル・エケロフやKATATONIAのBサイドを連想させるとともに、そのリフ回しすら近年DTSoen、そしてIn Mourningなどのモダン・メタル〜プログレ・メタルの影響下にある、言うなれば僕たちスウェディッシュ・メタル大好き芸人で〜すと言わんばかりのスウェディッシュ・スタイルを展開している。また、ボーカルパートの面では過去一でクリーンクリーン青空しているので、従来のブラック・メタルとも共鳴するフェルナンドのガナリボイスが激減しているのも事実。これは賛否両論と言うよりは、本作の作風そのコンセプト的な意味で意図してそうなっている可能性が高い。

そして何と言っても、その官能的なロマンチズムとナルシシズムに満ち溢れたクリーンパートのみならず、80年代のニューウェイブ/ポストパンクに精通するシンセの音色も本作を象徴する一つで、直感的にボーカルの自己主張が著しく弱くなった分、相対的にキーボードやギターを中心とした楽器隊に焦点が当てられている印象。その楽器隊主導を象徴するインストの#6“Solitarian”の存在感からも分かるように、それこそゴリゴリのゴシック・メタルというよりは、ミドルテンポ中心の楽曲で政則泣き不可避のゲイリー・ムーアばりのクサいソロワークや近年DTの影響下にあるATMSなシンセや新味としての打ち込み、そして壮麗なストリングス・アレンジなど、いわゆるメタル的なヘヴィネスよりもバンドの特色である内省的かつ繊細な独特の色気をまとった幽玄な音世界すなわち“ゴシック”その一点にフォーカスした、これまでバンドが挑戦してこなかったワンランク上のアレンジを新しい波=ニューウェイブとして楽曲に持ち込んでいる。もちろん、いわゆるゴシック・メタルの“メタル”をイメージして聴くと音が軽いのは否定しようもない事実だけど、逆にゴシック・メタルの“ゴシック”をイメージして聴くなら十分満足のいく作品だと思う(それこそKATATONIAのメタルサイドとBサイドの関係性に近い)。これまで築き上げてきた“ゴシック・メタル”という音楽ジャンルの概念を刷新するかのような、著しい革新性を内包した“シン・ゴシック・メタル”の世界を繰り広げており、単純にMoonspellってこんな攻めた事もできるんだと感心すること請け合いの、そして本作における革新性を寄与した最大のキーマンであるハイメ・ゴメス・アレリャーノという“ポスト-イェンス・ボグレン”の才能に屈服する一枚となっている。

しっかし改めて、この手のゴシック・メタル界の重鎮とハイメがタッグを組んだ良作が立て続けに続くと、もしもハイメとKATATONIAがタッグを組んだら、もしも日本のDIR EN GREYあたりと絡んだら一体どうなるんだろうと俄然妄想が捗りすぎる件について・・・!

Paradise Lost 『Obsidian』

Artist Paradise Lost
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Album 『Obsidian』
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Tracklist
03. Ghosts
04. The Devil Embraced
05. Forsaken
06. Serenity
07. Ending Days
08. Hope Dies Young
09. Ravenghast
10. Hear The Night
11. Defiler

Paradise Lostの新譜のとある海外レビューにDIR EN GREYの名前が挙げられてて、一体何事かと思って約3年ぶり通算16作目となる『Obsidian』を聴いてみたら、「なるほど納得」したのが今回の話。

90年代初頭にムーブメントを起こしたゴシック/ドゥーム・メタルの先駆者といえば、80年代後半にデビューしたUKウェスト・ヨークシャーはハリファクス出身のParadise Lostや同郷のMy Dying Bride、そしてリヴァプール出身のANATHEMAに代表されるUK御三家が、ゴシック・メタルシーンを築き上げてから約30年の月日が経過した現代、そんな彼らUKゴシック/ドゥーム界の正当後継者と呼べるバンドが遠く離れたUSから現れた。それがPallbearerである。というのも、パラロスがニュークリア・ブラストに移籍して発表した2017年作の15hアルバム『Medusa』は、レーベルの後輩(先輩)でありUKドゥーム・メタルをこよなく愛すPallbearerに対するUKドゥーム王からの回答と呼ぶべき、初期Pallbearer顔負けのブルースをルーツとするトラディショナル・ドゥーム/ヘヴィロック的な作風であったこと。それすなわち、自身のフォロワーである若手ドゥームメタラーへの一種の親心に近い関心の高さ、要するに一見老害と揶揄されがちなベテランの考え方とは一線を画した、常に現代シーンの動きに過敏なほどの対応力および適応力の高さを発揮し、それらへのアンテナとシーンへの目配りがしっかりあるからこそ、初期の頃から一貫して自身の作品に反映し、証明し続けている流動的な音楽的変化すなわち結果へと繋がっている。

デビューしたての90年代前半は、その名の通り『Gothic』を冠する初期の傑作を皮切りに、『Icon』『Draconian Times』などのゴシックメタル界の金字塔とも呼べる歴史的名盤を立て続けに発表するも、90年代後半に入ると時代の流れに翻弄されるようにニューウェイブやインダストリアルなオルタナへと舵を切り、従来のファンから総スカンを食うも、00年代に入り2005年に表題作を発表すると再びバンドは原点回帰という名の軌道修正を図り始める。そして00年代も終わりを迎えようとしていた頃、既にマンネリ感に悩むベテランとなっていた彼らに最大の転機が訪れた。それこそ当時のメタルシーンのトレンド的な存在だった、エンジニア兼プロデューサーであるイェンス・ボグレンとの運命的な出会いだった。

当時のメタルシーンには欠かせない存在となっていたイェンス・ボグレンに抱かれる、例えるなら男の趣味に影響される女みたいな、つまりイェンス色に染められる女となって2009年に発表された12thアルバム『Faith Divides Us - Death Unites Us』は、床上手なイェンスのチャイルドプレイにより従来のパラロスにはないプログレスな転調を効かせたキレとメリハリのある動きとコマーシャル性という名の色気が寄与されたことで、まるでデビュー直後の新人バンドのような若々しさと柔軟性を取り戻し、そして初期からのファンだけでなく中間層のメタラーをも取り込んでファン層の著しい拡大に成功した。

しかしイェンスに抱かれて完全復活を遂げたからといって、そのままイェンスにプロデュースをぶん投げるわけじゃないのがこのバンドの凄さで、2013年に発表された13thアルバム『Tragic Idol』を最後にイェンスとは円満離婚が成立すると、今度はUlverやポスト・ブラックメタル界のレジェンドで知られるAltar of Plaguesの歴史的名盤『Teethed Glory and Injury』を世に送り出したコロンビア出身のジェイミー・ゴメス・アレラロを新しいプロデューサーに迎え、2015年にリリースしたのが14thアルバム『The Plague Within』だった。そのアルバムでは、いわゆるピッチフォーク系のポスト・ブラック/メタルを筆頭に、イマドキのエクストリーム/アンダーグラウンド・メタルに精通するジェイミー・ゴメス・アレラロらしい(メシュガー~Djent以降の)モダンなヘヴィネスやUSクラスト的なコアさを取り入れた作風で、引き続きジェイミーと共に制作された次作の15thアルバム『Medusa』では、先述したようにフォロワーでありアングラ界を牽引するPallbearerに対して「ドゥームとはなんたるか」を、言うなればドゥームメタル界の“親”“子”に芸歴ウン十年の貫禄を見せつけるような、その模範的回答を示した。

そのようにして、10代に入ると彼らはUSアンダーグラウンドシーンの動きや、イェンス・ボグレン→ジェイミー・ゴメス・アレラロというメタルエンジニア界のトレンドの変遷を正確に捉え、今思えばメタルシーンの中心にいた初期の頃(厳密にいえば90年代後半)から一貫して“Paradide”Lost“という体裁を保ちつつ“対外的”な視点から自分たちの音楽を客観的に見つめ続けてきた。00年代の終わりにイェンスに抱かれてからというもの、古き良き時代から歴史を築き上げてきた時代の先駆者がフォロワーや若手から逆に刺激という名の影響を受けるフレキシブルな柔軟性、そしてアンダーグランドのシーンで今何が流行っているのか?何が時代のトレンドなのか?を正確に分析しディグる審美眼、まるでティーンエイジャーの生き血を喰らう吸血鬼の如く“若さ”に執着し続ける彼らは、例えるならジョジョ3部終盤でジョセフの生き血を吸ったDIO、あるいは「まだまだ若いもんには負けてられん!」でお馴染みなほど感性が若い、若すぎる。確かに、若者言葉とか若者のトレンドにやけに詳しいジジイとか普通にキモいけど、このパラロスだけは例外にカッコいい。しかし考えれば考えるほど、このバンドのインテリな頭の良さが垣間見えてくる。


こうやって冷静にパラロスの歴史を紐解いていくと、冒頭に記した日本のヴィジュアル系を代表するDIR EN GREYの名前が、一見まるで関連性のなさそうなParadise Lostのレビューに登場することの必然性を理解する事ができた。極端な話、“DIR EN GREY=Paradise Lost”なんじゃねぇか説が芽生えるぐらいには理解できた。まず1997年にヨシキプロデュースでデビューしたDIR EN GREY。一方で1988年にデビューしたパラロスは、90年代後半にデペッシュ・モードマッシブ・アタックに代表される80年代のニューウェイブに影響された『Host』をリリースして批判を呼んだ。デビュー当時はバチバチのV系だったデロリアンは、2000年を境に当時の海外メタルシーンのトレンドだったヌー・メタル/インダストリアル/メタルコアの要素を著しく“対外的”に取り込み始めると、時を同じくしてパラロスも2000年代を境にオルタナティブ/インダストリアルに迎合した作品を発表する。そしてデロリアンパラロス、お互いに転機となったのが2009年に起きたある出来事だった。パラロスイェンス・ボグレンをプロデューサーに迎えた名盤 Faith Divides Us - Death Unites Us』をリリースすると、奇しくも同じくしてデロリアンイェンス・ボーグレンをエンジニアに迎えて制作したシングルの“激しさとこの胸の中で絡みついた灼熱の闇”を発表する。その“激闇”は、00年代前半のデロリアンにはないコマーシャル性とオーガニックなメタルイズムを宿していた。もさいギターテックのプレイをもさく感じさせないよう限りなく高度に調節するリカバリー技術を垣間見て、改めて「やっぱイェンスって天才だわ」と思った記憶がある。ちなみに、デロリアンの最高傑作と名高い2008年作の『UROBOROS』を象徴する“VINUSHKA”は、他ならぬイェンス・ボーグルソン“テイラー・スウィフトのマブダチ”に成り上がるまでの売れっ子エンジニアへの道、その第一歩として大きなキッカケを作ったOpeth『Ghost Reveries』にインスパイアされた楽曲である事は、ファンの間でも周知の事実である。噂では、あくまでも噂ではイェンスがミキシングを施した『UROBOROS』が現存するとかしないとか。

10年代を迎えると、デロリアンはポストメタルをはじめメシュガーゴジラなどの10年代のメタルを象徴するバンドからの影響を取り入れたアルバムを発表すると、同じくして10年代のパラロスジェイミー・ゴメス・アレラロを迎えてモダンな側面を打ち出したイマドキな作品を発表する。このように、V系時代に始まって徐々にメタルやハードコアをはじめ、その時代その時代のヘヴィ・ミュージックのトレンドを自身のスタイルに組み込んでいくデロリアンのオルタナティブな発想は、まさにゴシックメタルの伝説として歴史を築きながらも、時に世間がオルタナティブに靡き始めた時代に迎合する作品だったり、時にメシュガー以降のオルタナティブなヘヴィネスを取り入れたパラロスと全く同じ発想にあると言える。そういった意味では、実はゴシックメタル界のレジェンドであるパラロスこそメタル界一のオルタナバンドと呼べるのかもしれない。そして何より互いに共通するのは、芸歴30年近い大ベテランにも関わらず、その感性は吸血鬼並みに若いということ。何が若いって、本作は(前作も)Bandcampでもデジタル配信しているという、もはや映画『ベンジャミン・バトン/数奇な人生』のブラピばりの幼児退行バンド説ある。


90年代および00年代、そして10年代、一切無関係に見えた2組のバンドは、この2020年に入ると更に強固な繋がりを見せ始める。ジェイミーとタッグを組んでから著しく加速したデスメタル回帰路線は、3作目にして過去最高のケミストリーが発生している。それを象徴するかのような#1“Darker Thoughts”からして、2020年某国某日のクライシスによって荒廃した失われた楽園=Lost Paradiseの朽ち果てた広場で佇む焚き火の前でアンプラグドなアコギを片手に語り弾くフロントマン=ニック・ホルムズの寂寥感溢れる歌声から始まり、近年パラロスのデスメタル回帰の終着点とも呼べるBehemothネルガル様に匹敵するニックの妖艶なデスボイスを引き連れて、シンフォニックなストリングスをバックにバンドサウンドが合流、そしてバンドのカギを握るギタリスト=グレッグ・マッキントッシュによる人類の歴史を辿るような抒情的でドラマティックなギターソロでクライマックスを飾る。

何を隠そう、この曲のアウトロや#3“Ghosts”が物語るように、全編にわたってフィーチャーされている80年代のポストパンク/ニューウェイブをルーツとするゴシカルな耽美性を内包したリフレーンは、今作最大のパンチラインであり、他ならぬ当時のニューウェイブ/ニューロマンティックムーブメントから派生した90年代ヴィジュアル系という日本独自の音楽ジャンルに繋がり、それは必然的に現代のV系を代表するDIR EN GREYへと繋がる。80年代風だから『Host』時代に回帰したというわけでは決してなくて、あくまで近年のスタイルを堅実に踏襲しつつ、あくまでも調味料的なアクセントとして、芸歴30年におよぶチョイ枯れオヤジの背中から滲み出す色気と哀愁を内包したメランコリーな美旋律をトッピングしている。

このアルバムには対外的な要素は何一つとしてない。気づけば対外的な立ち位置から自身を客観視してきた彼らが、新時代の幕開けを飾る20年代を迎えたこのタイミングで、それはまるで対外的な側面を対内的に再構築したような、デビューから30年積み重ねてきたパラロスの歴史、その歴史は歴史でも90年代後半の黒歴史時代を、20年が経過した今改めて見つめ直し真正面から肯定するかのような、常に時代に抱かれて、時代の荒波に翻弄されながら時代とともにバンドの歴史を紡いできた過去の歴史を否定するのではなくて、黒歴史として闇に葬り去られごっそり抜け落ちた空白の歴史を、時代の勝者によって改竄された歴史さえも四半世紀が過ぎ去った現代に正史として組み込むかのような、ある意味では90年代後半から続く、自らが作り上げたドゥーム/ゴシックメタルの固定概念(Icon)との戦いに30年越しに打ち勝った真実の作品と言える。これはまさに“歴史”という名の“年期”に裏づけられた『黄金のキングダム』であり、ゴシック王の帰還に相応しい傑作である。

この黒歴史に近い、今すぐ記憶から消し去りたい「過去」を現代になって肯定する考えは、まんま10年代のDIR EN GREYと同じで、もちろんデロリアンは音的にも“痛み”を伴う精神面でも(パラロスからの直接的な影響はないにしろ)ドゥーム・メタルと共振するゴシック/ダークな側面がないとは言えないし、それこそ今作におけるニューロマンティックなリフレーンはギタリストのDIEが弾いてても全然違和感ないくらい。そんなことより僕がいいたいのは、コード・オレンジの新譜にもパラロスの新譜にもピックアップされる、デロリアンというメタルシーンにおいて切っても切り離せない確かな存在感な。そういった繋がり的な意味でも、今作のエンジニアでもあるジェイミー・ゴメス・アレラロは、今のデアロリアンの音楽と相性良さそうな唯一のエンジニアと思えるだけに、一度でいいからタッグ組んでほしい願望がずっと前から自分の中にはある。

改めて、約30年前にデビューして以来、ほぼ休まずコンスタントに作品を積み重ねてきたストイックなバンドでありながら、90年代は『Icon』『Draconian Times』、00年代は『In Requiem』『Faith Divides Us - Death Unites Us』、10年代は『The Plague Within』、その年代その年代で定期的に傑作を輩出するポテンシャルは未だ衰え知らずの現役バリバリなレジェンドは、20年代の1発目から自らの歴史を“対内的”な視点から見つめ直した、まさに全世代の全パラが一挙に集結した映画『アヴェンジャーズ/エンドゲーム』ばりの集大成にして最高傑作レベルの作品となっている。長年“対外的”な立ち位置でやってきたのは、全てこの日のためだったと想像したら余計に泣けるし、改めて歴史が証明する力、その偉大さに感銘を受けた。

このデスメタル回帰のサウンドとオリエンタルラグ風のアートワークの組み合わせを見て、アモルフィス『Under the Red Cloud』を連想したのは自分だけじゃないはず。それはともかくとして、グレッグの幽玄なソロワークといい、ニックのデスボイスといい、とにかく中老間近とは思えないメンバーのポテンシャルの高さがエグい。加齢臭とは違うジジイの色気がハンパない。また、彼らの歴史を知ってしまうと「なんて面倒見のいいオヤジたちなんだ・・・」ってなって俄然泣ける。やっぱダメだなこのジジイ、カッコ良すぎて反則だわ。

Swallow the Sun 『Songs From The North I, II & III』

Artist Swallow the Sun
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Album 『Songs From The North I, II & III』
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Disc I [Songs From The North I]
Cover

Tracklist 
01. With You Came The Whole Of The World's Tears
02. 10 Silver Bullets
04. Heartstrings Shattering
05. Silhouettes
06. The Memory Of Light
07. Lost & Catatonic
08. From Happiness To Dust

Disc II [Songs From The North II]
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Tracklist
01. The Womb Of Winter
02. The Heart Of A Cold White Land
03. Away
04. Pray For The Winds To Come
05. Songs From The North
06. 66°50´N,28°40´E
07. Autumn Fire
08. Before The Summer Dies

Disc III [Songs From The North III]
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Tracklist
01. The Gathering Of Black Moths
02. 7 Hours Late
03. Empires Of Loneliness
04. Abandoned By The Light
05. The Clouds Prepare For Battle

イェンス・ブーム ・・・スウェーデンのDraconianと並んでメロドゥーム界を牽引するフィンランドのSwallow the Sunも、00年代後半のメタルシーンに突如として巻き起こった【イェンス・ブーム】、そのビッグウェーブに乗ってイェンス・ボグレン【No 実質 Jens!! プロデューサー】に起用した2009年作の4thアルバムNew Moonで、いわゆるメタル界の迷信を説き明かす事に成功したバンドの一つだ。しかし、間もなくイェンスから離れ、再び地元フィンランド人中心の人選でレコーディングされた次作の5thアルバムEmerald Forest And The Blackbirdでは、従来のOpethリスペクトやシンフォブラックなどの他に、アコースティック/フォーク・ミュージックの要素を大胆に取り入れ始めていた。しかし、如何せんイェンス・マジックによって生まれた傑作『New Moon』と比べると、元Nightwishアネット・オルゾンとのフィーチャリング以外これと言って特に見所はなかった気がする。そんな彼らの約三年ぶりとなる6thアルバム『Songs From The North I, II & III』は、何を血迷ったのかCD三枚組トータル約二時間半、軽く映画越えしちゃう超特大ボリュームとなっている。



『Ⅰ』 ・・・まずは一枚目の『Songs From The North I』。幕開けを飾る#1”With You Came The Whole Of The World's Tears”は、まるでX JAPAN”Voiceless Screaming”を彷彿とさせる、寂寥感を煽る80年代のフォーク・ソング顔負けのしみったれたアルペジオから始まり、前作を踏襲したまるでオーロラの如くエメラルドグリーンに、いや瞳のように透き通ったエメラルドブルーに煌めくキーボード、デプレブラック流れのノイズ感というかモダンだが粗暴な轟音ヘヴィネスからはポストブラックとも取れるアプローチを垣間見せ、鬱屈かつ荒涼とした空間が支配する一種のドゥームゲイズが、フィンランドという名の極寒の地に蠢くカオティックな狂気を浮き彫りにする。一枚目のリード・トラックとなる#3”Rooms And Shadows”では、フロントマンであり"ニット帽おにいさん"ことミッコの寂寥感溢れるボーカル・メロディからは、フォーク・ミュージックや北欧民謡の名残を漂わせるし、アウトロのGソロではX JAPAN”THE LAST SONG”に匹敵する泣きメロっぷりを発揮。ex-KATATONIAのノーマン兄弟が加入した事でも知られる、バンドの中心人物であるギタリストJuha RaivioのサイドプロジェクトTrees of Eternityでお馴染みのAleahとフューチャリングした#4”Heartstrings Shattering”、ドイツ出身のSarah Elisabeth Wohlfahrtとフィーチャリングした#6”The Memory Of Light”と#7”Lost & Catatonic”などの女性ボーカルをフューチャーした楽曲は、氷上の女神を司った今作のフェミニンなアートワークを象徴するかのよう。そして、ケルティックな音色とストリングスが優美に氷上を舞い踊るイントロから、雪の結晶の如し繊細なメロディに魅了される”From Happiness To Dust”で、美しくも清らかなエンディングを迎える。

懐メロ ・・・この一枚目は、前作を踏襲したフォーキーなアプローチ、俄然アンビエントな音響空間を意識したより幅広いアレンジが施されたキーボード、LantlôsAlcestをはじめとしたフレンチ産ポスト・ブラック勢からの強い影響下にある轟音ヘヴィネス、そして昭和歌謡を経由したX JAPANばりの歪んだ泣きメロを全面にフューチャーした叙情性と極寒の地の厳しさや孤独感を露わにする暴虐性、その静と動のコントラストを強調した、要するにこれまでのSWSらしいゴシック・ドゥームの王道的な作風となっている。その持ち味とも呼べる静から動への転換がプログレ並にスムーズで、安直に「いつものSWS」とか言いながらも、音の細部には確かな進化を伺わせる。これはフィンランド映画の巨匠アキ・カウリスマキの映画に使われている音楽を聴いて思ったんだが、フィンランド人の音楽的嗜好って日本を含む東アジアの歌謡曲が持つ民謡的で情緒的なメロディに近い、極めて親和性が高いというか、少なくともこの『Ⅰ』の音には、このSWSもそのフィンランド人特有の"懐メロスキー"の継承者である事を証明する、と同時にスオミ人の知性と(気候とは裏腹に)心温かい情念が込められている。

『Ⅱ』 ・・・今時、メタルバンドがアコースティック路線に傾倒する例は決して珍しくない。この手のバンドで代表されるところでは、スウェーデンのKATATONIAやリヴァプールのANATHEMAがそうだ。その時代の流れに取り残されんとばかり、この『Ⅱ』の中でSWSはアコギやピアノ主体のフォーク・ミュージックを展開している。川のせせらぎと共に、真夜中の浜辺でただ独り佇むような悲しみの旋律を奏でるダークなピアノインストの#1”The Womb Of Winter”で幕を開け、アルペジオを駆使した優美でフォーキーなサウンドがフィンランドの雪景色のように純白の心を映し出すような#2”The Heart Of A Cold White Land”KATATONIAのヨナスきゅんや中期ANATHEMAのヴィンセントリスペクトなミッコのボーカル・メロディが俄然フォーキーに聴かせる”Away”、そしてフィンランドのSSWで知られるKaisa Valaとフューチャリングした表題曲の”Songs From The North”では、Kaisa『叙事詩カレワラ』に登場する『大気の処女イルマタル』となってフィン語で優しく歌い上げることで俄然民謡チックに聴かせ、この三部作のハイライトを飾るに相応しい一曲となっている。その後も、Alcestもビックリのリヴァーヴを効かせたデュリーミーな音響空間とトリップ・ホップ的なアレンジを施したオルタナ風のオープニングから、緯度"66°50´N,28°40´E"に位置する北国の幻想的な白夜の静けさを音(インスト)だけで描き出し、An Autumn for Crippled ChildrenHypomanie、そしてCold Body Radiationをはじめとしたダッチ産シューゲイザー・ブラック顔負けの吹雪くような美メロをフューチャーした#7”Autumn Fire”、そしてラストの”Before The Summer Dies”までの後半の流れは、決して「いつものSWS」ではない、言わば新機軸とも呼べるモダンなアプローチや音使いをもって情緒豊かに聴かせる。もはや「こいつらコッチ路線のがいい曲書くんじゃネーか?」ってくらい、モダンな要素と持ち前の懐メロ感を絶妙な具合にクロスオーバーさせている。

『Ⅲ』 ・・・一枚目の『Ⅰ』では「いつものSWS」を、二枚目の『Ⅱ』では「新しいSWS」を、そして三枚組の最終章に当たる三枚目の『Ⅲ』では、メロディを極力排除したフューネラル/デス・ドゥームメタルの王道を展開している。さっきまでの美メロ泣きメロの洪水とは打って変わって、アートワークの下等生物を見下すドSな女神に「もう許して...許してクレメンス・・・」と懺悔不可避な容赦ない破滅音楽っぷりを見せつけ、さっきまでの夢の世界から一転して惨憺たる絶望の淵へと追いやられる。曲の中にも静と動の緩急を織り交ぜるだけでなく、アルバム単位でも音の強弱やギャップを効かせた演出を織り交ぜた謎のスケール感を強調する。

大気の処女イルマタル ・・・やっぱり、この三枚組で最も面白いのは二枚目だ。隣国のスウェーデン人の音楽と比べると、どうしても不器用さが気になってしまうフィンランド人の音楽だが、この二枚目ではフィンランド人なりの器用さを垣間見せている。それこそ、今作のアートワークを冠した女神『大気の処女イルマタル』が身にまとった大気(Atmospheric)を体外に放出するかの如く、とにかく真珠が煌めくような音響空間に対する意識の高さが尋常じゃない。この二枚目で目指した理想像でもある、KATATONIA『Dead End Kings』をアコースティックに再構築したDethroned & Uncrownedとほぼ同じ作風とアレンジだが、Alcestリスペクトな音響/音像をはじめ民謡風のメロディだったり、フィンランド人の根幹にある民族的な土着性とフォーク/アコースティックなサウンドとの相性は抜群で、さすがにヨナスと比較するのはヨナスに失礼かもしれないが、ミッコのボーカル・メロディに関してもイモ臭さは程々によく練られているし、歌い手としてのポテンシャルを過去最高に発揮している。

臨界点 ・・・この手の界隈で比較対象にされるDraconianと同郷のAmorphisイェンス・ボグレンデイビッド・カスティロを起用した、いわゆる【勝利の方程式】を説き明かして今年2015年に勝ちに来た一方で、このSwallow the Sunはこの三枚組の中で、メロドゥームとしての王道路線で対抗すると共に、KATATONIAANATHEMAなどの先人たちにも決して引けを取らない、モダンでアコースティックな路線でも対等に勝負できることを証明した、どの方向性、どのジャンルにも一切の妥協を許さない攻めの姿勢に僕は敬意を表したい。失礼だが、フィンランド人だけでここまでの仕事ができるなんて思ってなかったし、新作が三枚組だと聞いた時は血迷ったなって全く期待してなかったから、いい意味で裏切られた。ある意味、未だ誰も超えたことがなかったスオミ人としての臨界点を超えたと言っていいかもしれない。正直スマンかった。
 
Songs From the North I & II & III
Swallow the Sun
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Draconian 『Sovran』

Artist Draconian
draconian-20150726104149

Producer David Castillo
David Castillo
Mixing/Mastering Jens Bogren
Jens Bogren

Album 『Sovran』
_SL1500_

Tracklist

01. Heavy Lies The Crown
02. The Wretched Tide
03. Pale Tortured Blue
04. Stellar Tombs
05. No Lonelier Star
06. Dusk Mariner
07. Dishearten
08. Rivers Between Us
09. The Marriage Of Attaris
10. With Love And Defiance

実質プロデューサー ・・・ゴシック・ドゥーム界を代表するスウェーデンのDraconianも、他に漏れず「イェンスと組んだ一作目は名作になる」という"メタル界の迷信"を、いわゆる"実質プロデューサー"現象を4thアルバムTurning Season Withinという傑作の中で既に証明していて、続く2011年作の5thアルバムA Rose for the Apocalypseでは、念願叶ってイェンス・ボグレンを本当の"プロデューサー"として迎え入れる事に成功していた。しかし、まさかそれが紅一点ボーカルLisa Johanssonの遺作になるなんて想像もしてなかった。正直、このドラコニアンのセールス・ポイントと言ったら、男Voのアンダース・ヤコブソンのデス声とリサ・ヨハンソンの美しすぎる歌声が織りなす、この世の儚くも美しい部分と破滅的な醜い部分の絶妙なコントラスト/コンビネーションで、そのバンドのキモであるリサが脱退したというニュースを聞いた時は、それはもうガチで終わったというか、それこそドラコニアン解散すんじゃねーかくらいの衝撃だった。しかし、新しくドラコニアンの記事を書いているということは、つまりはそういうことで、バンドの希望であったリサを失った彼らは、直ぐさま新しい嬢として南アフリカ出身のSSWで知られるHeike Langhansを迎え入れ、目出度く約4年ぶりとなる6thアルバム『Sovran』をリリースした。

【勝ち確】 ・・・今のメタル界隈には、イェンス・ボグレンという優勝間違いなしの名将だけじゃあ飽きたらず、その相棒であるデイビッド・カスティロも同時に指名して、いわゆる【勝利の方程式】を解き明かそうと必死で、このドラコニアンもこのビッグウェーブを追従するようにプロデューサーとしてデイビッド・カスティロ、録音エンジニアとしてイェンス・ボグレンを起用するという、まさしく【勝ち確】なメンツで制作されている。だけあって、今作は【勝ち確】と評する以外ナニモノでもない模様。それはイントロからEarthらUSドローン/ドゥーム界隈を彷彿とさせる#1”Heavy Lies The Crown”のメロドゥーム然とした慟哭不可避のメロディから、その#1とシームレスで繋がる#2”The Wretched Tide”のストリングスによる耽美的なメロディと紅一点ヘイケによるWithin Temptationのシャロン顔負けの慈悲なる歌声を聴けば分かるように、ウリである泣きのメロディ・センス、バンドの中心人物であるヨハン・エリクソンのライティング能力は4年経っても不変で、もはやリサ脱退の影響を微塵も感じさせない、むしろ冒頭の三曲でリサの存在を忘れさせるくらいの凄みがある。

【KATATONIA feat.】 ・・・そして今作のハイライトを飾る#7”Dishearten”は、リズムやアレンジ、リフから曲調まで、いわゆる【勝利の方程式】の基礎である『The Great Cold Distance』以降のKATATONIA、中でも『死の王』”Hypnone”リスペクトな一曲で、あの頃のKATATONIAを知り尽くしているデイビッドだからこそ『説得力』が生まれる曲でもあるし、もうなんか【KATATONIA feat. シャロン】みたいになっててウケる。ともあれ、一度は誰もが妄想したであろうこのコラボを擬似的ながらもやってのけた彼らの度胸に僕は敬意を表したい。その流れで本当にUKバンドCrippled Black Phoenixのスウェーデン人シンガーDaniel Änghedeとフィーチャリングしてしまう#9”Rivers Between Us”では、ダニエルの色気ムンムンな男性ボーカルとヘイケの美声がアンニュイなハーモニーを聴かせる。新ボーカルのヘイケは、前任者リサのようなオペラティックなソプラノ歌唱ではなくて、その声質やメロディの作り方からも往年のシャロン・デン・アデルを意識したようにクリソツで、それにより俄然ゴシック℃マシマシな印象を受けるし、より大衆的というか、往年のWTに通じる今のWTが失ったいわゆる"female fronted"なメインストリーム系のメタルへとバンドを昇華させている。少なくとも、いわゆるドゥーム・メタルやゴシック・メタルとかいうサブジャンル以前に、バンドのメタルとしての能力を限界まで引き出すイェンス・プロデュースによる特性が(良くも悪くも)顕著に出ていた前作よりは、まるで教科書通りと言わんばかり、これまでの"ゴシック/ドゥーム・メタル"として本来のドラコニアンらしさへ回帰した佳作だと。
 
Sovran
Sovran
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Draconian
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