Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

Gothic

Unto Others - Strength

Artist Unto Others
A-9659017-1626179506-8042.jpeg

Album 『Strength』
CS846337-01A-BIG

Tracklist
01. Heroin
04. No Children Laughing Now
05. Destiny
06. Little Bird
07. Why
08. Just A Matter Of Time
09. Hell Is For Children [Pat Benatar cover]
10. Summer Lightning
11. Instinct
12. Strength

オレゴンはポートランド出身のゴシック・ロックバンド、Idle Handsが大手メジャーレーベルのロードランナーに引き抜かれたのを境に、Unto Othersと改名して発表された本作の2ndアルバム『Strength』は、80年代に一世を風靡したニューウェイブ/ポスト・パンクの系譜にあるゴシック・ロック然としたビートを刻む若手バンドで、そのサウンドも流石に大手メジャーレーベルに引き抜かれるだけあって、いわゆる“ゴシック”から連想されるダークなイメージというよりは、現代のアリーナロックを代表するモンスターバンドことVolbeatにも通ずる、いわゆるMTV世代ならガッツポーズ不可避の古き良きヘヴィメタル/ハードロックを展開している。


MVの映像やメンバーの衣装を筆頭に、バンドの中心人物であるガブリエル・フランコによるフェルナンド(Moonspell)顔負けの雄々しくもダンディな咆哮、80年代のヘビメタを象徴するツインギターの叙情的なソロワークやツインリード、80年代のニューロマンティックな綺羅びやかなシンセ、そして80年代仕込みのサウンド・プロダクションまでも、とにかく楽曲的な面でもビジュアル的な面でも一貫してHR/HM全盛の80sスタイルを現代にリバイバルさせているバンドで、それらの何から何まで80年代愛に溢れすぎている意図してダサい要素以上に、彼らの80年代愛をより強固なものとするその最たる部分こそ、80年代に名を馳せた女性ハードロッカーの原点であるレジェンド=パット・ベネターのカバー曲(#8)の存在に他ならない。

もっとも面白いのは、アメリカのバンドなのに往年のゴシック・ロック然とした哀愁と官能に満ちたメランコリックなリフレイン/メロディを大胆に聴かせるそのギャップをはじめ、そして何より本作のプロデュース/エンジニアとしてGhosteManePower Trip、そしてCode Orangeなどの各シーンの“顔”となるバンドの作品に数多く関わっているアーサー・リザークを迎えている点からも、いかに彼らがロードランナーに激推しされているバンドなのかがわかるし(現に前作比で楽曲の強度が歴然の差)、そしていかに「ポスト・ヴォルビート」の座に向けて育てていくか、否が応でも今後も注目せざるを得ない期待の大型新人バンドと言える。

しっかし、これまでロードランナーの“ゴシック”を背負ってきたレジェンド=Type O Negativeの後継者としてIdle Handsを指名するとか・・・さすがRR、目の付け所が違うなって。少なくとも、未来のシン・ゴシックシーンを牽引すること請け合いのバンドです。また、本作は毛艶が黒光りしたGⅠ級のダークホース的なジャケがカッコ良すぎるのも含めて、とにかくMoonspellの名盤『Extinct』が好きな人やライト版Tribulationとしてオススメしたい、間違いなく今年のダークホースアルバムとなる一枚です。

Moonspell 『Hermitage』

Artist Moonspell
0022557767_10

Album 『Hermitage』
a0523341189_16

Tracklist
01. The Greater Good
04. Hermitage
05. Entitlement
06. Solitarian
08. Apophthegmata
09. Without Rule
10. City Quitter (Outro)

めっきり最近は「誰がエンジニアなのか?」または「誰がプロデューサーなのか?」で音源を聴くようになってしまい、それが果たして良いことなのか、はたまた悪い事なのかなんて話はさて置き、少なからずMoonspellの約4年ぶりとなる13thアルバム『Hermitage』を聴く限りでは「良いこと」だと思った。というのも、ゴシック・メタル界の重鎮でのある彼らは、“テイラー・スウィフトのマブダチ”で知られるイェンス・ボグレンをプロデューサーに迎えた前々作の11thアルバム『Extinct』を発表し、バンドとしてもうワンランク上の高みへと上り詰めた事は今も記憶に新しい。前作の12thアルバム『1755』では、過去作でもお馴染みのテッド・ジェンセンをプロデューサーとして再起用し、壮大なクワイアなどのシンフォニックメタル的な側面を強調し、そして全編にわたり母語のポルトガル語やスペイン語を交えた歌詞で展開する、そのイェンス流メタルメタルした前作とは一転して歴代最高にコンセプト色を強めた作風となった。

何を隠そう、通算13枚目となる本作のプロデューサー兼エンジニアを担当している人物こそ、今やイェンス・ボグレンの正統後継者と言っても過言じゃあない、南米コロンビア出身のハイメ・ゴメス・アレリャーノで、このようにテッド・ジェンセンは元より、イェンス・ボグレンからのハイメ・ゴメスというメタルプロデューサー/エンジニア界におけるトレンドの王道路線を歩んできている時点で、今の自分にとって彼らは信頼感しかないメタルバンドの一つと断言できる。近年、ハイメが手がけた主な作品というと、それこそゴシックメタルの元祖であるParadise Lostの近作が最も馴染み深いと思うのだけど、そのパラロスもパラロスでイェンス・ボグレン→ハイメ・ゴメスラインで後期の作品を積み重ねてきているバンドの一つで、そう考えたら同じくゴシック・メタル界の重鎮を担うこのMoonspellがレジェンドの影響を受けないはずもなかった。というより、前作の『1755』が全編ポルトガル語〜スペイン語の作品だったのは、次作=本作で同じスペイン語圏であり南米出身のハイメと邂逅する伏線だった・・・?事実、本作ではまるでお互いのことを古くから熟知する親友のような化学反応を起こしている。

個人的なハイメの印象っていうと、端的に言ってしまえばそのバンドが持つ「裏の顔」を引き出すプロデューサーだと思ってて、例えばベテランバンドが長年培ってきたスタイルに敬意を払いながらも、一方でこれまで見せたことのないようなバンドの一面を引っ張り出して、芸歴ウン十年の大御所すらも全く新しい存在として生まれ変わらせる天才、そんなイメージだ。それを証明するかのように、彼の才能が遺憾無く発揮された本作の『Hermitage』は、どの過去作とも似ても似つかないような一枚となっており、それこそ本作のリード曲を担う#2“Common Prayers”に代表されるように、まるで「北欧の吉井和哉」に対抗して「ポルトガルの吉井和哉」を襲名するようなエロス全開の官能的なクリーン・ボイス主体のフロントマン=フェルナンド・リベイロは、近年のDark Tranquillityにおけるミカエル・スタンネをはじめ、DTと同じスウェーデン出身のSoenのジョエル・エケロフやKATATONIAのBサイドを連想させるとともに、そのリフ回しすら近年DTSoen、そしてIn Mourningなどのモダン・メタル〜プログレ・メタルの影響下にある、言うなれば僕たちスウェディッシュ・メタル大好き芸人で〜すと言わんばかりのスウェディッシュ・スタイルを展開している。また、ボーカルパートの面では過去一でクリーンクリーン青空しているので、従来のブラック・メタルとも共鳴するフェルナンドのガナリボイスが激減しているのも事実。これは賛否両論と言うよりは、本作の作風そのコンセプト的な意味で意図してそうなっている可能性が高い。

そして何と言っても、その官能的なロマンチズムとナルシシズムに満ち溢れたクリーンパートのみならず、80年代のニューウェイブ/ポストパンクに精通するシンセの音色も本作を象徴する一つで、直感的にボーカルの自己主張が著しく弱くなった分、相対的にキーボードやギターを中心とした楽器隊に焦点が当てられている印象。その楽器隊主導を象徴するインストの#6“Solitarian”の存在感からも分かるように、それこそゴリゴリのゴシック・メタルというよりは、ミドルテンポ中心の楽曲で政則泣き不可避のゲイリー・ムーアばりのクサいソロワークや近年DTの影響下にあるATMSなシンセや新味としての打ち込み、そして壮麗なストリングス・アレンジなど、いわゆるメタル的なヘヴィネスよりもバンドの特色である内省的かつ繊細な独特の色気をまとった幽玄な音世界すなわち“ゴシック”その一点にフォーカスした、これまでバンドが挑戦してこなかったワンランク上のアレンジを新しい波=ニューウェイブとして楽曲に持ち込んでいる。もちろん、いわゆるゴシック・メタルの“メタル”をイメージして聴くと音が軽いのは否定しようもない事実だけど、逆にゴシック・メタルの“ゴシック”をイメージして聴くなら十分満足のいく作品だと思う(それこそKATATONIAのメタルサイドとBサイドの関係性に近い)。これまで築き上げてきた“ゴシック・メタル”という音楽ジャンルの概念を刷新するかのような、著しい革新性を内包した“シン・ゴシック・メタル”の世界を繰り広げており、単純にMoonspellってこんな攻めた事もできるんだと感心すること請け合いの、そして本作における革新性を寄与した最大のキーマンであるハイメ・ゴメス・アレリャーノという“ポスト-イェンス・ボグレン”の才能に屈服する一枚となっている。

しっかし改めて、この手のゴシック・メタル界の重鎮とハイメがタッグを組んだ良作が立て続けに続くと、もしもハイメとKATATONIAがタッグを組んだら、もしも日本のDIR EN GREYあたりと絡んだら一体どうなるんだろうと俄然妄想が捗りすぎる件について・・・!

Swallow the Sun 『Songs From The North I, II & III』

Artist Swallow the Sun
new_sts2-800

Album 『Songs From The North I, II & III』
10421537_10153599067289362_6270937685292795290_n

Disc I [Songs From The North I]
Cover

Tracklist 
01. With You Came The Whole Of The World's Tears
02. 10 Silver Bullets
04. Heartstrings Shattering
05. Silhouettes
06. The Memory Of Light
07. Lost & Catatonic
08. From Happiness To Dust

Disc II [Songs From The North II]
12036684_10153599067404362_3440876301124457902_n

Tracklist
01. The Womb Of Winter
02. The Heart Of A Cold White Land
03. Away
04. Pray For The Winds To Come
05. Songs From The North
06. 66°50´N,28°40´E
07. Autumn Fire
08. Before The Summer Dies

Disc III [Songs From The North III]
12036424_10153599067274362_3835708858204058752_n

Tracklist
01. The Gathering Of Black Moths
02. 7 Hours Late
03. Empires Of Loneliness
04. Abandoned By The Light
05. The Clouds Prepare For Battle

イェンス・ブーム ・・・スウェーデンのDraconianと並んでメロドゥーム界を牽引するフィンランドのSwallow the Sunも、00年代後半のメタルシーンに突如として巻き起こった【イェンス・ブーム】、そのビッグウェーブに乗ってイェンス・ボグレン【No 実質 Jens!! プロデューサー】に起用した2009年作の4thアルバムNew Moonで、いわゆるメタル界の迷信を説き明かす事に成功したバンドの一つだ。しかし、間もなくイェンスから離れ、再び地元フィンランド人中心の人選でレコーディングされた次作の5thアルバムEmerald Forest And The Blackbirdでは、従来のOpethリスペクトやシンフォブラックなどの他に、アコースティック/フォーク・ミュージックの要素を大胆に取り入れ始めていた。しかし、如何せんイェンス・マジックによって生まれた傑作『New Moon』と比べると、元Nightwishアネット・オルゾンとのフィーチャリング以外これと言って特に見所はなかった気がする。そんな彼らの約三年ぶりとなる6thアルバム『Songs From The North I, II & III』は、何を血迷ったのかCD三枚組トータル約二時間半、軽く映画越えしちゃう超特大ボリュームとなっている。



『Ⅰ』 ・・・まずは一枚目の『Songs From The North I』。幕開けを飾る#1”With You Came The Whole Of The World's Tears”は、まるでX JAPAN”Voiceless Screaming”を彷彿とさせる、寂寥感を煽る80年代のフォーク・ソング顔負けのしみったれたアルペジオから始まり、前作を踏襲したまるでオーロラの如くエメラルドグリーンに、いや瞳のように透き通ったエメラルドブルーに煌めくキーボード、デプレブラック流れのノイズ感というかモダンだが粗暴な轟音ヘヴィネスからはポストブラックとも取れるアプローチを垣間見せ、鬱屈かつ荒涼とした空間が支配する一種のドゥームゲイズが、フィンランドという名の極寒の地に蠢くカオティックな狂気を浮き彫りにする。一枚目のリード・トラックとなる#3”Rooms And Shadows”では、フロントマンであり"ニット帽おにいさん"ことミッコの寂寥感溢れるボーカル・メロディからは、フォーク・ミュージックや北欧民謡の名残を漂わせるし、アウトロのGソロではX JAPAN”THE LAST SONG”に匹敵する泣きメロっぷりを発揮。ex-KATATONIAのノーマン兄弟が加入した事でも知られる、バンドの中心人物であるギタリストJuha RaivioのサイドプロジェクトTrees of Eternityでお馴染みのAleahとフューチャリングした#4”Heartstrings Shattering”、ドイツ出身のSarah Elisabeth Wohlfahrtとフィーチャリングした#6”The Memory Of Light”と#7”Lost & Catatonic”などの女性ボーカルをフューチャーした楽曲は、氷上の女神を司った今作のフェミニンなアートワークを象徴するかのよう。そして、ケルティックな音色とストリングスが優美に氷上を舞い踊るイントロから、雪の結晶の如し繊細なメロディに魅了される”From Happiness To Dust”で、美しくも清らかなエンディングを迎える。

懐メロ ・・・この一枚目は、前作を踏襲したフォーキーなアプローチ、俄然アンビエントな音響空間を意識したより幅広いアレンジが施されたキーボード、LantlôsAlcestをはじめとしたフレンチ産ポスト・ブラック勢からの強い影響下にある轟音ヘヴィネス、そして昭和歌謡を経由したX JAPANばりの歪んだ泣きメロを全面にフューチャーした叙情性と極寒の地の厳しさや孤独感を露わにする暴虐性、その静と動のコントラストを強調した、要するにこれまでのSWSらしいゴシック・ドゥームの王道的な作風となっている。その持ち味とも呼べる静から動への転換がプログレ並にスムーズで、安直に「いつものSWS」とか言いながらも、音の細部には確かな進化を伺わせる。これはフィンランド映画の巨匠アキ・カウリスマキの映画に使われている音楽を聴いて思ったんだが、フィンランド人の音楽的嗜好って日本を含む東アジアの歌謡曲が持つ民謡的で情緒的なメロディに近い、極めて親和性が高いというか、少なくともこの『Ⅰ』の音には、このSWSもそのフィンランド人特有の"懐メロスキー"の継承者である事を証明する、と同時にスオミ人の知性と(気候とは裏腹に)心温かい情念が込められている。

『Ⅱ』 ・・・今時、メタルバンドがアコースティック路線に傾倒する例は決して珍しくない。この手のバンドで代表されるところでは、スウェーデンのKATATONIAやリヴァプールのANATHEMAがそうだ。その時代の流れに取り残されんとばかり、この『Ⅱ』の中でSWSはアコギやピアノ主体のフォーク・ミュージックを展開している。川のせせらぎと共に、真夜中の浜辺でただ独り佇むような悲しみの旋律を奏でるダークなピアノインストの#1”The Womb Of Winter”で幕を開け、アルペジオを駆使した優美でフォーキーなサウンドがフィンランドの雪景色のように純白の心を映し出すような#2”The Heart Of A Cold White Land”KATATONIAのヨナスきゅんや中期ANATHEMAのヴィンセントリスペクトなミッコのボーカル・メロディが俄然フォーキーに聴かせる”Away”、そしてフィンランドのSSWで知られるKaisa Valaとフューチャリングした表題曲の”Songs From The North”では、Kaisa『叙事詩カレワラ』に登場する『大気の処女イルマタル』となってフィン語で優しく歌い上げることで俄然民謡チックに聴かせ、この三部作のハイライトを飾るに相応しい一曲となっている。その後も、Alcestもビックリのリヴァーヴを効かせたデュリーミーな音響空間とトリップ・ホップ的なアレンジを施したオルタナ風のオープニングから、緯度"66°50´N,28°40´E"に位置する北国の幻想的な白夜の静けさを音(インスト)だけで描き出し、An Autumn for Crippled ChildrenHypomanie、そしてCold Body Radiationをはじめとしたダッチ産シューゲイザー・ブラック顔負けの吹雪くような美メロをフューチャーした#7”Autumn Fire”、そしてラストの”Before The Summer Dies”までの後半の流れは、決して「いつものSWS」ではない、言わば新機軸とも呼べるモダンなアプローチや音使いをもって情緒豊かに聴かせる。もはや「こいつらコッチ路線のがいい曲書くんじゃネーか?」ってくらい、モダンな要素と持ち前の懐メロ感を絶妙な具合にクロスオーバーさせている。

『Ⅲ』 ・・・一枚目の『Ⅰ』では「いつものSWS」を、二枚目の『Ⅱ』では「新しいSWS」を、そして三枚組の最終章に当たる三枚目の『Ⅲ』では、メロディを極力排除したフューネラル/デス・ドゥームメタルの王道を展開している。さっきまでの美メロ泣きメロの洪水とは打って変わって、アートワークの下等生物を見下すドSな女神に「もう許して...許してクレメンス・・・」と懺悔不可避な容赦ない破滅音楽っぷりを見せつけ、さっきまでの夢の世界から一転して惨憺たる絶望の淵へと追いやられる。曲の中にも静と動の緩急を織り交ぜるだけでなく、アルバム単位でも音の強弱やギャップを効かせた演出を織り交ぜた謎のスケール感を強調する。

大気の処女イルマタル ・・・やっぱり、この三枚組で最も面白いのは二枚目だ。隣国のスウェーデン人の音楽と比べると、どうしても不器用さが気になってしまうフィンランド人の音楽だが、この二枚目ではフィンランド人なりの器用さを垣間見せている。それこそ、今作のアートワークを冠した女神『大気の処女イルマタル』が身にまとった大気(Atmospheric)を体外に放出するかの如く、とにかく真珠が煌めくような音響空間に対する意識の高さが尋常じゃない。この二枚目で目指した理想像でもある、KATATONIA『Dead End Kings』をアコースティックに再構築したDethroned & Uncrownedとほぼ同じ作風とアレンジだが、Alcestリスペクトな音響/音像をはじめ民謡風のメロディだったり、フィンランド人の根幹にある民族的な土着性とフォーク/アコースティックなサウンドとの相性は抜群で、さすがにヨナスと比較するのはヨナスに失礼かもしれないが、ミッコのボーカル・メロディに関してもイモ臭さは程々によく練られているし、歌い手としてのポテンシャルを過去最高に発揮している。

臨界点 ・・・この手の界隈で比較対象にされるDraconianと同郷のAmorphisイェンス・ボグレンデイビッド・カスティロを起用した、いわゆる【勝利の方程式】を説き明かして今年2015年に勝ちに来た一方で、このSwallow the Sunはこの三枚組の中で、メロドゥームとしての王道路線で対抗すると共に、KATATONIAANATHEMAなどの先人たちにも決して引けを取らない、モダンでアコースティックな路線でも対等に勝負できることを証明した、どの方向性、どのジャンルにも一切の妥協を許さない攻めの姿勢に僕は敬意を表したい。失礼だが、フィンランド人だけでここまでの仕事ができるなんて思ってなかったし、新作が三枚組だと聞いた時は血迷ったなって全く期待してなかったから、いい意味で裏切られた。ある意味、未だ誰も超えたことがなかったスオミ人としての臨界点を超えたと言っていいかもしれない。正直スマンかった。
 
Songs From the North I & II & III
Swallow the Sun
Century Media (2015-11-13)
売り上げランキング: 6,741

Draconian 『Sovran』

Artist Draconian
draconian-20150726104149

Producer David Castillo
David Castillo
Mixing/Mastering Jens Bogren
Jens Bogren

Album 『Sovran』
_SL1500_

Tracklist

01. Heavy Lies The Crown
02. The Wretched Tide
03. Pale Tortured Blue
04. Stellar Tombs
05. No Lonelier Star
06. Dusk Mariner
07. Dishearten
08. Rivers Between Us
09. The Marriage Of Attaris
10. With Love And Defiance

実質プロデューサー ・・・ゴシック・ドゥーム界を代表するスウェーデンのDraconianも、他に漏れず「イェンスと組んだ一作目は名作になる」という"メタル界の迷信"を、いわゆる"実質プロデューサー"現象を4thアルバムTurning Season Withinという傑作の中で既に証明していて、続く2011年作の5thアルバムA Rose for the Apocalypseでは、念願叶ってイェンス・ボグレンを本当の"プロデューサー"として迎え入れる事に成功していた。しかし、まさかそれが紅一点ボーカルLisa Johanssonの遺作になるなんて想像もしてなかった。正直、このドラコニアンのセールス・ポイントと言ったら、男Voのアンダース・ヤコブソンのデス声とリサ・ヨハンソンの美しすぎる歌声が織りなす、この世の儚くも美しい部分と破滅的な醜い部分の絶妙なコントラスト/コンビネーションで、そのバンドのキモであるリサが脱退したというニュースを聞いた時は、それはもうガチで終わったというか、それこそドラコニアン解散すんじゃねーかくらいの衝撃だった。しかし、新しくドラコニアンの記事を書いているということは、つまりはそういうことで、バンドの希望であったリサを失った彼らは、直ぐさま新しい嬢として南アフリカ出身のSSWで知られるHeike Langhansを迎え入れ、目出度く約4年ぶりとなる6thアルバム『Sovran』をリリースした。

【勝ち確】 ・・・今のメタル界隈には、イェンス・ボグレンという優勝間違いなしの名将だけじゃあ飽きたらず、その相棒であるデイビッド・カスティロも同時に指名して、いわゆる【勝利の方程式】を解き明かそうと必死で、このドラコニアンもこのビッグウェーブを追従するようにプロデューサーとしてデイビッド・カスティロ、録音エンジニアとしてイェンス・ボグレンを起用するという、まさしく【勝ち確】なメンツで制作されている。だけあって、今作は【勝ち確】と評する以外ナニモノでもない模様。それはイントロからEarthらUSドローン/ドゥーム界隈を彷彿とさせる#1”Heavy Lies The Crown”のメロドゥーム然とした慟哭不可避のメロディから、その#1とシームレスで繋がる#2”The Wretched Tide”のストリングスによる耽美的なメロディと紅一点ヘイケによるWithin Temptationのシャロン顔負けの慈悲なる歌声を聴けば分かるように、ウリである泣きのメロディ・センス、バンドの中心人物であるヨハン・エリクソンのライティング能力は4年経っても不変で、もはやリサ脱退の影響を微塵も感じさせない、むしろ冒頭の三曲でリサの存在を忘れさせるくらいの凄みがある。

【KATATONIA feat.】 ・・・そして今作のハイライトを飾る#7”Dishearten”は、リズムやアレンジ、リフから曲調まで、いわゆる【勝利の方程式】の基礎である『The Great Cold Distance』以降のKATATONIA、中でも『死の王』”Hypnone”リスペクトな一曲で、あの頃のKATATONIAを知り尽くしているデイビッドだからこそ『説得力』が生まれる曲でもあるし、もうなんか【KATATONIA feat. シャロン】みたいになっててウケる。ともあれ、一度は誰もが妄想したであろうこのコラボを擬似的ながらもやってのけた彼らの度胸に僕は敬意を表したい。その流れで本当にUKバンドCrippled Black Phoenixのスウェーデン人シンガーDaniel Änghedeとフィーチャリングしてしまう#9”Rivers Between Us”では、ダニエルの色気ムンムンな男性ボーカルとヘイケの美声がアンニュイなハーモニーを聴かせる。新ボーカルのヘイケは、前任者リサのようなオペラティックなソプラノ歌唱ではなくて、その声質やメロディの作り方からも往年のシャロン・デン・アデルを意識したようにクリソツで、それにより俄然ゴシック℃マシマシな印象を受けるし、より大衆的というか、往年のWTに通じる今のWTが失ったいわゆる"female fronted"なメインストリーム系のメタルへとバンドを昇華させている。少なくとも、いわゆるドゥーム・メタルやゴシック・メタルとかいうサブジャンル以前に、バンドのメタルとしての能力を限界まで引き出すイェンス・プロデュースによる特性が(良くも悪くも)顕著に出ていた前作よりは、まるで教科書通りと言わんばかり、これまでの"ゴシック/ドゥーム・メタル"として本来のドラコニアンらしさへ回帰した佳作だと。
 
Sovran
Sovran
posted with amazlet at 15.11.17
Draconian
Napalm (2015-10-30)
売り上げランキング: 2,136

Moonspell 『Extinct』

Artist Moonspell
new_n-moonspell-479-4

Producer/Mixing/Mastering Jens Bogren
Jens Bogren
Recording (guitar, bass) 
David Castillo
David Castillo

Album 『Extinct』
Extinct

Tracklist
04. Domina
05. The Last Of Us
06. Malignia
07. Funeral Bloom
08. A Dying Breed
09. The Future Is Dark
10. La Baphomette
11. Until We Are No Less (Bonus Track)
12. Doomina (Bonus Track)
13. Last Of Them (Bonus Track)
14. The Past Is Darker (Bonus Track)

勝利の方程式 ・・・ポルトガルの英雄、Moonspellが2008年にリリースした傑作『Night Eternal』MVは、いつ見てもメタル史に残る名MVだと思うのだけど、続く2012年作の10thアルバム『Alpha Noir』は、ボーナスアルバム『Omega White』を含む二枚組の大作のわりには、個人的にイマイチのめり込めなかったのが正直な所で、その前作から約三年ぶりとなる11thアルバム『Extinct』は、近作のプロデュースを担当していたチュー・マッドセンから離反し、遂にイェンス・ボグレンとの初タッグが実現、そしてレコーディングエンジニアとしてデイビッド・カスティロを起用、すなわち【イェンス・ボグレン×デイビッド・カスティロ=勝利の方程式】が実現している。ともあれ、これにて目出度くイェンス童貞を卒業した、というわけ。元々、このMoonspellは初期の頃こそブラックメタルやってたバンドで、それこそスウェーデンの皇帝KATATONIAの音楽遍歴を辿るように、作品を重ねる毎に徐々にゴシック・メタル路線へとその音楽性をシフトしていったが、近年ではシンフォニックなアプローチを積極的に取り入れたスタイルへと流動的にその姿を変えている。そして、その流動的な変化は、メタル界の必殺仕事請負人ことイェンス・ボグレンを招き入れた本作品で、更なる化学反応を巻き起こしている。そう、何を話そうこの『Extinct』は、まさしく「イェンスと組んだ一作目は名作になる」というメタル界の迷信をまた一つ裏付けるような大傑作なのだ。
 

中東ロマン ・・・幕開けを飾る#1"Breathe (Until We Are No More)"から、フロントマンFernando Ribeiroによる男のフェロモン全開の低音ボイスをフューチャーしながらも、しかし北欧メロデスを経由したエピカルなキザミリフとドスの入ったフェルナンドのダミ声が織りなす終末的かつ刹那的なサビ、そして今や絶滅危惧種となったParadise Lost直系の幽玄なGソロからアウトロの壮麗優雅でアラビックなオーケストラまで、もうなんか「イントロからクライマックス」感あって、禿げ上がるほどクソカッコイイ。続く表題曲の#2"Extinct"は、鍵盤奏者Pedro Paixãoが奏でるアート・ロック顔負けの可憐な美メロとイェンスとOpethが初タッグを組んだ傑作『Ghost Reveries』リスペクトなリフ回し、そしてサビはキャッチーなクリーンボイスという存外シンプルな構成で聴かせる。そして、イントロからエスニックな芳ばしい香り漂う#3"Medusalem"では、キュアーをはじめとした往年のUKニューウェーブ/ポストパンク/ゴシックリスペクトなフェルナンドのフェミニンな低音エロボイスと、こちらもイェンス一族の仲間入りを果たした某イスラエルのバンドを彷彿と...って、それもそのはず、今作にはOrphaned Landのギタリストであり、僕のツイッターのフォロアーでもある (えっ)Yossi Sassiがゲストで参加しており、そのOR直系の中東音楽/民謡風のオリエンタルな旋律を奏でる、まるでインド映画の如く今にも踊り出しそうな情熱的かつ扇情的なオケが織りなす灼熱の中東ロマン、それこそ80年代のUKミュージックと現代のイェンス・ミュージックが邂逅した歴史的瞬間だ。それはまるで、欧州メタル界最後の砦であるMoonspellが中東音楽に支配された瞬間、それすなわち現在の欧州における中東問題を皮肉るかのよう。ただ"面白い"のはそれだけじゃあない、終盤怒涛の転換から僕のフォロワーことYossi Sassiが奏でる民族楽器ブズーキとMahafsounなるイランの女性モデルによるナレーション、そして疾走感溢れる叙情的なGソロへと繋がるクライマックスの展開には→yes!!yes!!Jens!!という雄叫びとともにガッツポーズ、そしてこの瞬間、僕は『Extinct』の傑作を確信するのだった。



イェンス・マジック ・・・ノスタルジーを誘うフォーキーな美旋律を奏でるイントロのギターを皮切りに、最初から最後まで優美なギター・メロディに酔いしれる#4"Domina"、ここにきて完全にHIM顔負けのゴスロック化する"ラスアス"こと#5"The Last Of Us"、と思ったら今度はThe Birthday Massacreばりのキラキラインダストリアル・ロック化する#6"Malignia"、ツーバスドコドコ超絶epicッ!!ナンバーの#7"Funeral Bloom"、そして今作のハイライトを飾る曲で、トリップ・ホップ/アトモスフェリックなイントロとギターの美旋律がとにかくメランコリックで号泣不可避な#9"The Future Is Dark"、まるで世界崩壊後の荒廃した街の寂れたバーで世界崩壊前の出来事を老人がフランス語で語りかけるような本編ラストの#10"La Baphomette"まで、大袈裟な話、近年イェンスがプロデュースした作品の中でもイチニを争うレベルの傑作です。ここまで笑っちゃうほど興奮したアルバムは久々かもしれない。ここまでくるともはやあざとい。それこそ『Night Eternal』のシンボルである女帝が終焉した世界で装束を全て引剥され悪魔化したような、毎度お馴染み盟友SepticfleshSpiros Antoniouが描き下ろしたスプラッターなジャケのイメージどおり、HIMThe Birthday Massacreみたいなインダストリアル/ゴスロックとして聴けちゃう懐の広さがある。それならば、この『Extinct』MoonspellなりのParadise Lost『Host』なのか?と聞かれたらまたちょっと違った代物かもしれない。とは言え、この"ゴスロック化"の伏線は過去既にあって、正式には【ボーナスアルバム】という位置づけだった前作『Omega White』のゴス路線を更に深いところまで突き詰めたような作風で、それを証明するかのように、今作のボーナストラックにはKATATONIAで言うところのBサイド的な、最近のDIR EN GREY界隈が好きそうなインダストリアル/ノイズやアコースティック/オルタナ等のアレンジを施したリミックス音源が収録されている。そもそも、このMoonspellにオルタナ化する器量があるなんて微塵も思ってなかったから、色々な意味で驚きと笑いに満ち溢れたアルバムだった。当然、ブラック・メタルやってた頃の面影は皆無だし、フロントマンのフェルナンドにいたっては一流に洗練されたクリーンなボーカル・メロディを中心に歌い上げ、ここにきてボーカリストとしての才能とV系的ナルシストとしての才能を開花させている。しかしそれ以上に、今作は鍵盤奏者Pedro Paixãoの存在感に脱帽してしまう。今作での彼は、言うなればDark Tranquillityの10thアルバムConstructにおけるMartin Brändströmと同じ役割を果たしている。要するに→結成から20年を超えるメタル界の大ベテランをワンランク上のNEXT-ステージへとブチ上げている。もはや別バンドに聴こえるほどの化学変化を巻き起こしているし、しかしどう聴いてもこれはMoonspell以外ナニモノでもないのが意味不明過ぎて笑えるし、そうか...これがイェンス・マジックなのかって。あらためて、僕はもっともっとイェンスの事が知りたいし、もっともっとイェンスの事を『理解』したくなった。

その男、イェンス・ボグレン ・・・なんだろう、ゴシック・メタルとかシンフォニック・メタルとかブラック・メタルとかいうサブジャンルとして以前に、そのバンドの根幹にある本来の"メタル"としての普遍的なカッコ良さを抽出し、それを幾倍にも肥大化させてしまうイェンス・ボグレンのプロデュース能力、その良さが分かりやすく顕著に出たアルバムだと思う。正直、この傑作の国内盤がリリースされない所を見ると、まだまだ日本はメタル後進国なんだとシミジミしてしまう。ちなみに、限定版にはイェンス・ボグレンとメンバーのインタビューを交えたアルバム制作の現場を収めた、約1時間半に渡るドキュメンタリー映像が収録されており、このドキュメンタリーを観るだけでも、いかに今作がプロデューサーであるイェンスとの相当な話し合いを経て、相当に作り込まれた、相当な苦労を重ねて完成したレコードだと言う事がわかるハズだ。あとイラン人女性が美人過ぎる。しっかし、中東音楽と80sUKゴシックを何食わぬ顔で平然と邂逅させちゃうイェンス・ボグレンとかいう男・・・天才かよ。この男...やはり恐るべしッ! 

Extinct
posted with amazlet at 15.09.30
Moonspell
Napalm (2015-03-17)
売り上げランキング: 62,983
記事検索
月別アーカイブ
アクセスカウンター
  • 累計: