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Gojira

Knocked Loose - A Tear In The Fabric Of Life

Artist Knocked Loose
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EP 『A Tear In The Fabric Of Life』
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Tracklist
01. Where Light Divides The Holler
02. God Knows
03. Forced To Stay
04. Contorted To The Faille
05. Return To Passion
06. Permanent

【ゴジラ+メシュガー=メシュゴジラ】という“10年代メタル王様ランキング”の上位ツートップがシーンに示した、いわゆる“10年代のヘヴィネス”と2020年以降の“20年代のヘヴィネス”を紡ぎ出す後継者としての新世代メタルを代表するコード・オレンジやボストン・ハードコアのvein、そして現にゴジラのツアーサポートとしてフックアップされているケンタッキー州はオールダム出身のKnocked LooseのEP『A Tear In The Fabric Of Life』は、彼らの専売特許であるビートダウン連発のデスウィッシュ系ハードコア・パンク/メタルコア側から、ライバルのveinに負けじとゴジラに代表される10sヘヴィネスの継承者を名乗り出るかのような一枚となっている。


何せ、Every Time I Dieveinの作品でもお馴染みのプロデューサー兼エンジニアのウィル・パットニーお抱えのバンドって時点で色々と察せなくもない立ち位置にいるバンドではあるが、中でも筆頭すべきは精神的な根っこはゴリゴリのハードコアながらも、スラッシュメタル王のスレイヤーの影響下にある殺傷力の高いソリッドなリフやHatebreedのジェイミー・ジャスタもビックリの無慈悲な脳筋ヘヴィネスをはじめ、特に20年代初の作品となるこのEPに限っては、往年のゴジラが生み出した白鯨が引き起こす大津波級のヘヴィネスはもとより、ライバルのvein的なインテリジェンス溢れるマス系のヘヴィネスとEPならではの実験性を垣間見せる、俄然スラッシーかつメタリックな過去イチで“メタル”やってる作風となっており、もはやいつロードランナーに引き抜かれるか状態にある。

出自がボストン・ハードコア系のveinといい、出自がガチデスウィッシュ系のコード・オレンジといい、ゴッリゴリのハードコア文脈から徐々にメタルへシフトしていく一連の動きはこの界隈における既定路線みたいなもんで、ここにきて若手ハードコア界の大本命が新世代メタルと邂逅してきた事に対しては、メタラー的には素直に歓迎したい所存ではある。そんな彼らの“新世代メタル化”を象徴する、まだ“生みの親”であるスラッシュメタル四天王の影響下にあった時代の白鯨を20年代仕様にアップデイトさせたような、Knocked Looseにとってある種の“生みの親”である白鯨への回答としての2“God Knows”は、1stアルバムの“Deadringer”でもお馴染みの急な転調から謎のムード歌謡ブッ込みギミックを踏襲している。ともあれ本作は、間違いなくバンドの底上げとなること必須の作品であり、それすなわちバンドの未来を指し示す、彼らの今後の方向性を暗示するかのような作品でもある。

Gojira 『Fortitude』

Artist Gojira
Gojira-2021

Album 『Fortitude』
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Tracklist
04. Hold On!
05. New Found
06. Fortitude
08. Sphinx
09. Into The Storm
10. The Trails
11. Grind

この時代にシングルを5枚も出すほどの「今最も景気の良いメタルバンド」であり、Deftones主催のフェスではローレン・メイベリー率いるチャーチズと共演し、そしてディズニー映画『アナと雪の少女』の主題歌でも知られるノルウェーの歌姫AURORAからも支持されている、言うなれば「世界一モテるメタルバンド」が今現在のGojiraだ。

1stシングル「Another World」

度重なるアップデートによってクソゲーから神ゲーへと進化したゲーこと『No Man’s Sky』を想起させる、そのゲーム風のアバターと化したゴジラメンバーが宇宙へと旅立つフランスらしいアニメ仕立てのSFチックなMVからして(ラストは映画『猿の惑星』オマージュ)、小島秀夫監督の『デス・ストランディング』や『サイバーパンク2077』からも垣間見れるように、昨今のトレンドの一つと言っても過言じゃないゲーム音楽界隈とヘヴィ・ミュージック界隈のコラボレーションを的確にオマージュしつつ、そのサウンドもフランスメタル界のレジェンド=Gojiraがフランスのプログレ界を代表するレジェンド=Magmaをエクストリーム・メタルの解釈で再構築したような前作の6thアルバム『Magma』の流れを素直に踏襲した、あのTOOLに肉薄する“ポスト・キザミ”を駆使した要は「ポスト・スラッシュの行き着く先」、その最終地点であるかのようなエクストリーム・プログレを展開する(Spotifyだとこの曲だけ音量デカい説)。

2ndシングル「Born For One Thing」

Gojiraほど近年のメタルシーンに影響を与えたバンドは他にいないんじゃないかって。中でも、彼らの最高傑作と名高い2008年作の『The Way Of All Flesh』と2005年作の『From Mars To Sirius』が後のメタルシーンに与えた影響力というのは凄まじいものがある。例として挙げると、10年代メタルシーンのトレンドの一つだったDjentを代表するTesseracTや20年代の新世代メタルを象徴するVein、彼らは00年代最高のメタルソングの一つと称されるGojira屈指の名曲であり、X JAPANの“Art Of Life”と双璧をなすクラシック狂想曲こと“The art of dying”のカバー曲レベルのリスペクトソングを書いている。また、彼らの影響力の高まりがピークに達した事を決定づける出来事といえば、いわゆる「メジャーなメタル」を代表するBring Me the Horizonがメインストリームのポップスやってのけたアルバム『amo』には、前作『Magma』に収録された“The Cell”のメシュゴジラ化を象徴するリフ/ヘヴィネスを引用したと思われる楽曲が見受けられた。本作『Fortitude』の幕開けを飾るこの2ndシングルは、“メタル総選挙ランキング同率1位”でお馴染みのMeshuggahとの同化政策や、レーベルメイトのコード・オレンジに代表される現代モダン・ヘヴィネス勢との相互関係をはじめ、そして何よりフロントマンであり世界一かっこいい「GOッ!!」を叫ぶ男ことジョセフ・デュプランティエによる合言葉から、彼らのシンボルでありアイデンティティでもあるキュルキュルしたクジラの鳴き声リフを交えたDjent〜メシュガーラインの変拍子が大海原に轟く後半のブレイクダウンパートは、もはやVeinに影響し返されたんじゃねぇかと思うほど、つまり影響を与える側が逆にフォロワーから影響を受ける一種の“回答ソング”と解釈できなくもない(#5“New Found”の冒頭は女DjentのDestiny Potatoのオマージュっぽく聴こえるのも面白い)。とにかく、00年代以降の全メタルバンドに影響を与えていると言っても過言じゃあない「メタルの基本」、その中心点がGojiraだった事は歴史的事実なのである。

3rdシングル「Amazonia」

本作について、バンドは(ジョー・デュプランティエの古巣でもある)カヴァレラ兄弟擁するブラジリアン・メタル界のレジェンド=Cavalera Conspiracyをリスペクトしていると語るように、そもそも「アマゾニア」というタイトルからも2秒で察しがつくように、その楽曲も南米アマゾンの未開の地に生息する未接触部族的なトライバリズム溢れる世界観を構築しており、これは前作のオルタナティブな側面その広義の解釈が進んだ結果と言えるのかもしれない。そのサウンド・アプローチもヌー・メタルやオルタナ・メタルならではの独特のグルーヴとウネりが特徴的。しかし、本作における仏教的というか木魚みたいなポンポンシー♪なパーカッションなどの俄然トライバリックな要素って、別に本作が初出というわけでもないし、それこそバンド屈指の名曲“The art of dying”もトライバルなイントロから始まるという点では、ある意味で“全ての始まりであり原点”がそこにあるのかもしれない。

4thシングル「Into The Storm」
4thシングルは、彼らがメシュゴジラ化を象徴する前作の“The Cell”と5thアルバム『L'Enfant Sauvage』が融合したような曲。なんだろう、ここまで来ると前作までには少なからず存在していた革新性というのは皆無となり、特にソングライティングの面で前作のイメージを引きずり過ぎているキライが目立つ印象。それは、この作品特有のオリジナリティの欠如を意味し、既に確立された音楽性から脱却することは偉大なる彼らをもってしても不可能であることをマザマザと見せつけられた気分だった。リフ不足をはじめ、フレーズ不足、ポスト・キザミ不足、あらゆる面で引き出しの少なさが露呈してしまっている。あと何よりもサウンド・プロダクションがTriviumの某アルバムみたいにモコモコした、要するに自分の嫌いな「音が死んでる」メタルの音質で(ドラムの音は特にドイヒー)、そういった意味でも過去最悪に推せないアルバムです(これぞアンディ・ウォレスクオリティw)。

5thシングル「The Chant」

トライバリズム溢れる本作を象徴するチベット密教系ナンバーである表題曲の“Fortitude”との組曲であり、これまた前作から“The Shooting Star”のセルフカバー曲かな?と勘違いしそうな5thシングルでは、BaronessTrue WidowなどのUSストーナー/スロウコア的なポスト・ヘヴィネスと雄大なチベット高原にこだまするコーラスワークは、世界中の少数民族を鼓舞するかの如し。しかし、本作はCavalera Conspiracyからインスパイアされたと言うわりには、いかんせん肝心のアマゾニア成分が著しく乏しい気がするというか、どうせならもっと思い切って大胆にアプローチすべきだったと思う。なんかどれも中途半端になっちゃってるというか、それこそトライバルとヘヴィ・ミュージックの代表的なのといえばTOOLだけど、そのTOOLとは天と地の差を感じるし、それっぽい実験的な側面を含んでいた前作とそこまで印象は変わらないというか、まだ前作のが創造性豊かにミックスできていた気もする。本作は「変化」という点でも過去最高に乏しく、皮肉っぽい事を言えばメンバーの服装がH&Mばりにカジュアルになったら「音」もソリッド感ゼロのカジュアルになり、そこで初めて僕らはH&MがHEAVY METALの略称じゃなかった事を知るのであった(←当たり前だ)。

なんだろう、そろそろGojiraを持ち上げてツウぶれる時代は10年代で終わりを告げた事を意味するような一枚。少なからず、前作まではまだメタルシーンに影響力のある擁護可能な作品だったけど、本作に至っては後世に与える革新性および影響力というのは皆無、それこそ新世代メタルバンドもフォローしようとは到底思えないような、確かに一聴するとフォロワー回答アルバムに聴こえなくもないけど、実は単なるフォロワーに降参アルバムになっちゃってる。例えば、今のゴジラができるスーパーキュルキュルアタックもといエクストリーム・メタルの持ちうる全てを凝縮した、アルバムの最後を飾る“Grind”では、新世代ロードランナーメタルの後輩コード・オレンジに年季の違いを見せつけようとしたら、逆に返り討ちにされちゃった感じ(まるで気分は伝説の白鯨vs.顔面炎上サイコ野郎)。なんだろう、そのコード・オレンジVeinらの新世代メタルと現役トップメタルバンドであるGojiraがそれぞれ相互作用の働いた曲同士でタイマンを張るも、見るも無残にもゴジラ側が引導を渡されていく姿はあまりに悲しすぎる。

これまでの彼ららしいインテリジェンスのカケラもない「駄作」と呼ばれてもしょうがない一枚。確かに、近年のメタルシーンに多大なる影響と功績を残した偉大なバンドの新作に対して「駄作」と言っちゃいけない雰囲気ってどうしてもあるけど、でもそこは勇気を持って「これは駄作」と言ってあげた方がGojiraのためだと思う。皮肉だけど、ちょっと売れて調子に乗ると駄作が出来上がる、露出すればするほどつまらなくなる典型みたいな構図はメタルの王道っちゃ王道で、その歴代メタル王が繰り返してきた「メタルあるある」の伝統芸能を現代メタルの頂点に君臨するゴジラがしっかりと受け継いでいるのは、なんだろう歴史は繰り返す感しかなくて逆に微笑ましくなる。いかにもそろそろ駄作出してきそうな雰囲気の中で、満を辞してその期待に全身全霊で答えるかのような駄作を出してくるあたり、それすなわち紛れもなくGojiraが時代のトップに君臨していた事を裏付ける決定的な証拠となっている。駄作は駄作だけど「愛すべき駄作」と呼ぶべきかもしれない。

そして改めて思ったのは、「これが噂のロードランナータイマーか・・・」ということ。何を隠そう、10年代に入るとスリップノットと同じ“ロードランナーバンド”となって久しいゴジラだが、そのRRからリリースした1発目の5thアルバム『L'Enfant Sauvage』からUSメタルコア的なモダンさと独自のポストスラッシュ〜プログレ路線に著しく傾倒し始め、前作の6thアルバム『Magma』でワンクッション置いてから、RRデビュー3作目となる本作『Fortitude』で遂にソニータイマーならぬ“ロードランナータイマー”が発動し、過去イチで「メジャーなメタル(=メインストリーム・メタル?)」に品種改良されて大衆向けに聴きやすくした結果の駄作なんですね。確かに、メタリカをはじめとする80年代の著名なメタルバンド以外に、00年代以降のメタルシーンを背負って立つ現役バリバリのバンドでこの立ち位置を任されるのって彼らの他にいないのも事実、つまり替えのきかない存在であると考えた時に、あくまで本作は「メジャーなメタル」への登竜門、その通過儀礼に過ぎず、この結果はむしろ必然的というか、逆にニッチなメタルをメインストリームに届けてくれている事に感謝すべきと共に、最大限にリスペクトすべきだとは思う。しかし、それ(立場)とこれ(作品)の内容が比例しないのがこの話の難しいところ。だから本作は今年のワーストメタルアルバムに違いないし、レジェンド級のモンスターバンドが一度この手の露骨な駄作を出すと2度と復活の見込みがないのも定説だけに、個人的に今作に対するショックは計り知れないものがある。

過去最多にシングルカットされた曲のMVに関しても、アマゾンの熱帯雨林破壊(あるいは森林火災)とか、インド・チベット問題(反中思想)とか、いかにも彼ら(フランス人)らしいリベラリズムを垣間見る事ができて大変素晴らしいと思うのだけど、しかし残念ながらそのイメージが先行し過ぎて曲の内容が追いついていない印象。今回のMVのコンセプトから察するに、そういった思想的な部分で(ローレン・メイベリーやAURORA、そしてアンソニー・ファンタノなどのリベラル界隈)から支持されている面も多少なりともあるのかもしれない。昨今の世界情勢における人権問題や環境問題などの点で、ゴジラの根っこにあるグリーンピース精神もといインテリ思想とポスト・コロナの世界がカチッとフィットした感じ。本作は、それらの出来事や以前までの世界とは異なる=“Another World”に対するゴジラなりの“祈り”と“慈悲”を乞うかのような作品であることを重々承知した上での厳しい評価と思ってもらいたい。

Slipknot 『We Are Not Your Kind』

Artist Slipknot
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Album 『We Are Not Your Kind』
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Tracklist
01. Insert Coin
03. Birth Of The Cruel
04. Death Because Of Death
07. Liar's Funeral
08. Red Flag
09. What's Next
10. Spiders
11. Orphan
12. My Pain
13. Not Long For This World
14. Solway Firth

10年代の終わりを前にして、ふと「10年代の“メタルバンド総合ランキング1位”って一体どのバンドだろう?」って考えた時に、まず真っ先にNo. 1候補に挙がったのがスウェーデンのメシュガーに他ならなくて、それを証明する最大の根拠としてあるのが、13年ぶり(厳密に言えば4,868日ぶり)となるアルバムを発表したTOOL『Fear Inoculum』が、この10年代の終わりに“10年代の音”=“メシュガーの音”を総括するような実質“ポスト・メシュガー”と言っても過言じゃない傑作を出してきた事で、もしメシュガーの影響がなければ“イェンス・ボグレンのマブダチ”こと歌姫テイラー・スウィフトとの米ビルボードチャートの首位争いに敗れていたかもしれないと考えたら、そんな元フィジカルモンスターバンドTOOL=ギタリストのアダム・ジョーンズに多大な影響を与えちゃってるメシュガーは、まぎれもなく10年代のメタルを象徴するバンドの一つであり、それこそ“10年代メタル総合ランキング1位”と断言しても不満を述べるメタラーは誰一人としていないはず。しかし、そんなメタル殿堂入り不可避のメシュガーに唯一対抗できるメタルバンドが世界で1組だけ存在する。それがフランス出身のGojiraだ。このGojiraがいかに“10年代のメタル”を象徴する“10年代メタル総合ランキング1位”に相応しいメタルバンドなのか?その理由を各界隈の著名人が証言してくれた。

  • 証言その1 ローレン・メイベリー(チャーチズ)
以下のツイートは、デブ豚ことDeftones主催のフェスでゴジラローレン・メイベリー擁するチャーチズが共演すること(その出演順=格付け)に対して、メタル界一の問題児で知られるHatebreedジェイミー・ジャスタが苦言を呈したディスツイートに対するローレンのリプライで、その反論ツイートにはウチな、地元のグラスゴーでゴジラのライブ観たことあんねんという実質“ローレン・メイベリーはメタル”説を本人が実証するかのような一文が記されていて、あの小島秀夫監督の新作『デス・ストランディング』のエンディング曲に抜擢された“テラスハウス芸人”、もといチャーチズの大天使がゴジラのライブでヘドバンしてる光景を想像(妄想)しただけで萌え死んだ。僕はゴジラのライブを観ているローレンたそを観たい。


てなわけで、ここでその“ローレン・メイベリーはメタル説”“必然性”を僕なりに考察していきたいと思う。まずゴジラのライブを観たというローレンの地元スコットランドのグラスゴーって、(恐らく揚げマーズバーが原因で)イギリスの中でも特に平均寿命が短い地域、それすなわちバッリバリのブルーカラー=労働者階級が住む工業地帯である。その一方で“ヘヴィ・メタル”の開祖で知られるブラック・サバスの故郷、つまり“メタルの聖地”であるイギリスのバーミンガムも工業地帯の中心地で、グラスゴーと同じく数多くの労働者階級が生活する工業都市だ。つまり、ローレンはイギリスの階級社会=格差社会におけるフェミニストとしての立場は元より、古くは産業革命により目覚ましい発展から著しい衰退を遂げた地元グラスゴーとメタルの聖地バーミンガム、その2つの都市の歴史的な背景やヘヴィな土地柄および地域性的なものにシンパシーを感じているからこそ、被差別音楽ジャンルのメタルに対する偏見が皆無なんじゃねぇかって。そう考えたら、もしかしたらローレンって“世界一信用できるメタラー”なんじゃねぇかって(ローレンマジ愛す)。

面白いのは、主催のDeftonesも10年代の始まりを飾る2010年作の『Diamond Eyes』で盟友TOOLと同じようにいち早く“ポスト・メシュガー”な音を取り入れたバンドの一つで、そんなメシュガーに長年『恋の予感』を抱き続けてきた10年代のデブ豚が、自身が主催するフェスにメシュガーではなくゴジラを招待したのは、もちろんメシュガーは音楽的にもビジュアル的にも硬派なイメージを貫く必要があるので、チャーチズをはじめ他ジャンルのアーティストと共演なんて“もってのほか”だから仕方がない面も少なからずある一方で、ゴジラの面々は他ジャンルとの異種格闘技戦にも積極的に参加する柔軟なフレキシブルさがある。その音楽性についても、4thアルバム『The Way of All Flesh』までは欧州のモンスターバンドとしてその名を轟かせていたが、転機となったのは数多くの大物メタルバンドを輩出している大手ロードランナーに移籍した5thアルバム『L'enfant sauvage』で、それこそUSメタルコア界の神ことLamb of God的な“コア”っぽい新機軸を打ち出し、欧州のみならずUS市場をも飲み込んで一気に世界的なギガモンスターバンドへと駆け上がっていった。その柔軟な動きを可能にするバンドの柱=デュプランティエ兄弟のしたたかなインテリジェンスはメタル界屈指と言える。

  • 証言その2 マイルズ・ケネディ(Alter Bridge)
まず「このバンド(Alter Bridge)ってNapalmみたいなコテコテの欧州メタルレーベルに所属するようなバンドだったっけ・・・?」って割と驚いた話はさて置き、このUSハードロックバンドのフロントマン=マイルズ・ケネディゴジラについて現代で最も重要なメタルバンドとつい最近のインタビューで証言していて、更には彼らが2019年に発表した6thアルバム『Walk The Sky』に収録されたNative Sonのリフは、まさにゴジラを聴いている最中に書いた紛れもなくゴジラに影響された曲と発言している。事実、そのリフはもはやエクストリーム・メタルに精通するヘヴィなリフで、「え、Alter Bridgeってこんなヘヴィな音も出すんだ」みたいに感心したと同時に、コテコテのメタルレーベルから新作をリリースした謎にも至極納得がいった。このように、ゴジラのようなエクストリーム系のバンドとは少し逸れたハードロック系のバンドにもガッツリ影響を与えている事からも、ゴジラの音楽性、その魅力はメシュガーと並んでメタル界随一と言える。

  • 証言その3 Djent界代表TesseracT
10年代のメタルシーンを語る上で欠かせないのが“Djent”なる“メシュガーの産物”、そういった意味では“ポスト・メシュガー”と呼べるバンドが大量生産された時代とも言える。しかし、Djentの生みの親であるメシュガー「ジェントみたいな粗悪品を生み出しちゃってサーセンw」的な立場を取っている。そのように、Djentって生みの親であるメシュガーが自責の念を表明するほど、根っからの“メシュガーの音”の系譜にあるメタルのサブジャンルなんだけど、とはいえDjentを代表するUKのTesseracTは親のメシュガーと同等レベルに影響を受けているのがゴジラに他ならなくて、特に彼らを代表するDeception Pt 2ゴジラの名曲“The Art of Dying”の影響下にあるのがその証拠だ。

  • 証言その4 新世代メタル代表Vein
そのゴジラ史上最高の名曲“The Art of Dying”がメタルシーンに与えた影響は計り知れず、その中でもボストンハードコアをルーツとする新世代メタルのVeinのデビュー作にもその名曲のカバー曲かと錯覚するレベルの曲があって、俄然面白いのはその次の曲がメシュガーっぽいという・・・これぞまさに“10年代のメタル”を象徴する二大バンドが産んだ新世代メタルといった感じで微笑ましい。そして同じく、10年代の新世代メタルを代表するバンドと言っていいDeafheavenも3rdアルバム『シン・バミューダ』の中でスラッシュ・メタル然としたソリッドな“キザミ”を取り入れ、中でも4曲目の“Come Back”ゴジラに影響受けてんじゃねぇかぐらいのヘヴィネスが印象的な曲だ。US市場をも飲み込んだゴジラは、あのピッチフォークも認めるデフヘヴンやハードコア寄りのアンダーグランドな若手バンドにも幅広く影響を与えている。その世代を超えて受け継がれるゴジラのメタル精神は、メシュガーを退けて“10年代メタル総合ランキング1位”に推薦されるには十分過ぎる理由だ。

  • 証言その5 Mastodonの“キザミ”
ゴジラと最もよく比較されるバンドがUS中世代メタルを代表するMastodonで、某グリーンピース大好き芸人もといクジラ大好き芸人でも知られるゴジラは、そのエクストリーミーな音楽性的にもクジラ大好き芸人的にもマストドンに色々とパクられ・・・もとい影響を与えまくっている。例として挙げると、メタル界の歴史的名盤とされる2009年作の『Crack The Skye』“キザミ王”であるTOOLの影響ではなく、たった一年前後の作品ながらゴジラの2008年作の4thアルバム『The Way of All Flesh』と激しく共鳴する、いわゆるポスト・スラッシュをルーツとする黄金のキザミアルバム”だという説が今では主流となっている。新世代メタルのみならず中世代メタルのにも真似されるゴジラ is God・・・。

  • 証言その6 Slipknotの最新作『We Are Not Your Kind
そして最後の証言者こそ、他ならぬゴジラのレーベルメイトであり、約5年ぶりとなる6thアルバムWe Are Not Your Kindを発表したスリップノットだ。(来年、日本でも『ノットフェスジャパン』開催が決まった)この新作に伴う北米ツアー『KNOTFEST Roadshow』VolbeatBehemothなどの怪物と共に怪獣ゴジラも帯同しており、そこでもゴジラの出演順がVolbeatの格下扱いされてて、それによりスリップノットゴジラとかいう欧州とUSを代表する二大メガモンスターバンドに挟まれる形となったVolbeatが、案の定ライブ中にスリッペキッズから不当な扱いを受けたらしくて軽く同情した(じゃあデブ豚ゴジラに挟まれたチャーチズは・・・ローレンたそは僕が守る!)。それはそうと、USのヌーメタル界を代表するDeftonesSlipknotチャーチズとヴォルビートよりも格下 というナメた扱いを受けるゴジラ、もとい二大ヌーメタ勢と当たり前のように共演するゴジラ“格”“ベヒーモス以上チャーチズ未満”、もといその“ゴジラ”という名前を世界に普及させた功績を称え、元ネタである本家ゴジラを生んだ東宝が終身名誉賞を与えるべき偉大なレジェンドであることにもはや疑いの余地はない。


ここまで6つの証言を集めてきた理由、それがシングルの#2“Unsainted”のメインリフにゴジラが“コア化”した『L'enfant sauvage』“Explosia”のキュルゥリフとダブった所にあって(もしかしてイントロのクワイアってヴォルビートと同じハーレム・ゴスペル・クワイアかな?とか、中盤の歌メロがマシへロブ・フリンっぽいなとか)、珍しくスラッシーなキザミ主体の#5“Nero Forte”ゴジラ感あるし、珍しくメロデスっぽい#14“Solway Firth”とか、これヘタしたら過去一でメタルやってるアルバムなんじゃねぇかって(#10,#12はスティーヴン・ウィルソンっぽい)(コリィが言うにはデヴィッド・ボウイ風らしい)。

実はこのアルバム、ゴジラの他にもう一つ自分の記憶の中でフラッシュバックしたアルバムというか曲があって、それこそDIR EN GREYの8thアルバム『DUM SPIRO SPERO』“「欲巣にDREAMBOX」あるいは成熟の理念と冷たい雨”で、特に6曲目の“Critical Darling”が何というかギターのリフ回しは元より、ラウド~ヘヴィロック系のギターの音作りがほほほぼデロリアン“「欲巣にDREAMBOX」~”っぽいというだけの話なんだけど(これは#8や#11も)。もちろん、デロリアン自体スリプクノットの影響受けまくってるのは周知の事実だけど、その逆パターンはなかなか珍しくてちょっと面白いなって。そう言った意味では、来年日本で開催されるノッフェスにゴジラデロリアンが来たら激アツじゃね?って。

このアルバムの出来とか正直どうでもよくて(でも過去一でメタルやってるから普通に好き)、結局のところは「ゴジラすごい」←この一言に尽きる。やっぱりゴジラの凄さを知らずして10年代のメタルは語れない。だから2010年代の終わりに僕がどうしても言いたかったこと、それがゴジラこそ“10年代メタル総合ランキング1位”のバンドだと証明することだった。このトンデモナイ怪獣を前にしたら、スリプクノットガニキトオルデブ豚デロリアンも全部ガッズィーラより“格下”ですw

ウィー・アー・ノット・ユア・カインド
スリップノット
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Vein 『errorzone』

Artist Vein
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Album 『errorzone』
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Tracklist
02. old data in a dead machine
03. rebirth protocol
04. broken glass complexion
05. anesthesia
06. demise automation
08. untitled
09. end eternal
11. quitting infinity

おいら、DIR EN GREY薫くんファンクラブ会員2号なので、薫くんが好きそうな音楽にはめっぽう目がなくて、例えば先日初来日公演を行ったPower Tripが昨年発表した2ndアルバム『Nightmare Logic』は、まさに中期Dir en grey薫くんがライブの開演前BGMに流しそうなクロスオーバーの名盤だと思った。そして今年、薫くんファンクラブ会員2号の僕が新たに「あ、これ薫くん絶対好きなやつや」と思ったバンドこそ、USハードコア・シーンの聖地ボストン出身のVeinだ。そんな彼らの1stフルアルバム『errorzone』は、さすがに”ポスト-パワー・トリップ”とまではいかないものの、しかし昨年のPower Tripがメタルシーンに与えた衝撃と限りなく近い”バズり”を予感させた。



とりあえずグロいジャケと曲タイトルが全て小文字表記の所から、こいつらが普通じゃないヤベーやつらだってことを分かりやすく視覚化してて、まるで「この世の全てがバグってる」とばかり、一曲目の”virus://vibrance”から初っ端のリフ「デデッ デッ ドゥ~ンw」「ドゥ~ンw」の部分が『ARCHE』以降のDIR EN GREYを、からの「亮くんこれ聴いてヘルニア悪化させた説」が自分の中で生まれたくらい、それこそマキシマムザホルモンのビンビンに殺気立った(折りたたみ式ヘドバン不可避の)ライブ・ステージングを、そして突如として襲いかかるグラインドコア顔負けのカオティックな転調/変拍子をブチかます展開はConvergeTDEPを、とにかく開始早々にDIR EN GREYホルモンとかいう国内二大ヘヴィ・ロックバンドを連想させる、いわゆる典型的なヌー・メタル/ヘヴィ・ロックとマスいハードコアがクロスオーバーしたハイブリッドなスタイルからして、「やっぱこいつらタダ者じゃねぇ」とド肝抜かれる。ちなみに、亮くんホルモンのライブでPower TripのTシャツを着てたりするので、そんなヘルニア静養中の亮くんにこそ、是非このVeinのアルバムを聴いて欲しい。

その一曲目と二曲目の曲間をギャップレスで繋ぐアルバム構成はConvergeの常套手段だし、その#2”old data in a dead machine”のウネりを効かせた病んだリフ回しは中期のDir en grey的だし、そして「Code Orangeぶっ生き返す!」勢いのスラッジ・メタルばりに鬼ヘヴィなブレイクダウンもエグい。#3”rebirth protocol”では「約1分のFear Factory」やったかと思えば、続く#4”broken glass complexion”ではデブ豚『Diamond Eyes』リスペクトなモダン・ヘヴィネスを披露したかと思えば、今度は「約1分のGojira」とばかりキチガイじみたエクスペリメンタルな側面を垣間見せる#5”anesthesia”、今作のハイライトを飾るスラッジーなメタルコアの#7”doomtech”、今度は再び「約1分のデブ豚」やってのける#8”untitled”、ここまではSOAD以降のヌーメタ、ディルやホルモン等の国産ヘヴィロック、同郷のConvergeTDEP等のマスコア、MastodonGojira等のプログレッシブ/スラッジ、Fear Factoryなどのインダストリアルをはじめ、様々なジャンルやバンドの影響がたった1,2分という短い尺の中に圧迫祭りの如くギュウギュウに敷き詰められていて、例えるならヘヴィロック化したコンヴァージ?それとも演奏がバチクソ上手くなってハードコアに振り切ったディル?確かに、どのジャンルにも属さない=”カテゴライズ不能かつ不要”のエクスペリメンタルな唯一無二の存在感は俄然ディルっぽい。

とにかく、どんだけ自分らConverge『Jane Doe』好きなん?ってくらい、いわゆる”ボストン・ハードコア”の正統な継承者と見せかけて、ありとあらゆる影響の中で最たる存在なのが同郷のConvergeじゃなくて、実は欧州フランスのGojiraだったりするのがこのバンドの面白さで、その証拠に表題曲の”errorzone”ではGojira屈指の名曲”The Art Of Dying”をカバー曲かと勘違いするレベルにリスペクトしている。もちろん、Gojira自身もUSのConvergeLamb of Godに強く影響されてるし、GojiraといえばDIR EN GREYというかと関わりのあるバンドでもあって、そういった意味でも薫くんは絶対にこいつら好きでしょ(特にインダストリアルなアプローチが)。そもそも、今作はメタルコア系の作品でお馴染みのスタジオGraphic Nature Audioでレコーディング、そして同スタジオお抱えのプロデューサーWill Putneyとともに制作されており、何を隠そうWill PutneyGojira『Magma』にもエンジニアとして関わっていて、そういった面でも彼らの「ゴジラ好き」は確信犯なほど役満で、回り回って最終的にそのGojiraがインスパイアされている「コンヴァージ凄い」という結論に行き着く。なので、皆さん来年の2月に開催されるコンヴァージニューロシスのツーマンに行きましょう。で、アルバムを締めくくる#11”quitting infinity”では「実は俺らメシュガーも好きやねんwww」とカミングアウトしてて、その最初から最後まで「好き」を隠さない姿勢がメチャメチャ可愛い。涙目のルカの目玉をペロペロしちゃいたいくらい。

この手のごった煮カオティック系マスかきヌーメタっつーとUKのSikTh、ならぬ”USのSikTh”と例えるのはまたちょっと違うかもだけど、少なくともSikThの2ndアルバムを初めて聴いた時と同じ規模の衝撃はあった。このギターとドラムのプロダクションと肉厚の重厚感はちょっとクセになるし、それこそThe Human AbstractWill Putneyが同スタジオでプロデュースした遺作『Digital Veil』やミルウォーキーのMisery Signalsを思い出して俄然好きになる。その辺の懐かしい作品や”ハードコア”なバンドがピンズドで好きな人はマストです。なんだろう、”新世代メタルコア”なんて言ったら少しチープに聞こえるけど、少なくとも今やキッズコアと化したCode Orangeなんかより全然かっこいいし、オレンジ野郎なんかより全然メタル知ってます。もしかしたらDeathwish本家からの引き抜きもあるかもしれない(いや、既にか)。とにかく、昨年のPower Tripから地続きで押し寄せる”新世代”の波がッ!センセーショナルを感じろッ!

Errorzone
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Vein
Closed Casket Records (2018-07-20)
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Gojira 『Magma』

Artist Gojira
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Album 『Magma』
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Tracklist
01. The Shooting Star
03. The Cell
04. Stranded
05. Yellow Stone
06. Magma
07. Pray
08. Only Pain
10. Liberation
 
東宝の人気特撮シリーズ『ゴジラ』から名付けられた、デュプランティエ兄弟率いるフランスのGojiraといえば→今作に伴うツアーのサポートに抜擢されたUKのTesseractなどのDjent界隈をはじめ、海外もとい日本国内では「GJ!」「Good Job!」の略ではなく「GJira」「GJ!」だと言うくらいのBABYMETALやゴジラと間接的に関わりのあるDIR EN GREY、そして今をトキメクUSのDEAFHEAVENにも強い影響を与え、時代や世代を超えて常に「現代エクストリーム・ミュージックのキホン」あるいはその「象徴」としてシーンの頂点に君臨し続ける獣王だ。

そんな彼らを伝説の巨大クジラ『白鯨』としてその名を世界に知らしめる事となった、2005年作の3rdアルバム『From Mars to Sirius』では、この手のエクストリーム・ミュージック界の旗手として欧州での人気を確固たるものにした。そして欧州の覇者となった呉爾羅が次に襲来したのがアメリカだった。2008年作の4thアルバム『The Way of All Flesh』では、現レーベルメイトのLamb Of GodGODZILLAと同じく「クジラ大好き芸人」のMastodonをはじめとした、現代のアメリカを代表する「アメリカのメタル」を一飲で喰らい尽くし、そしてレーベルをロード・ランナーに移して発表された2012年作の5thアルバム『L'enfant sauvage』では、4thアルバムに引き続きアメリカ流の「モダン・コア化」が著しく進行し、徐々に本来のデス・メタルをルーツとしたスタイルからの脱却を図ろうとしていた。それらUSを代表する猛獣を喰い尽くすことに飽き飽きした怪獣ゴジラが次なる獲物として目をつけたのが、他ならぬUSのプログレ/ヘヴィ・ミュージック界の”タブー”こと『邪神』Toolだった。



4年ぶりに地上へと姿を現した巨大怪獣は、何もかも全てが新しい『シン・ゴジラ』へと突然変異という名の進化を遂げていた。その『変化』は、幕開けを飾る#1”The Shooting Star”から顕著で、『The Hunter』Mastodonを彷彿とさせる、地に足の着いたモダンでポストスラッジーな轟音ヘヴィネスやフロントマンジョー・デュプランティエのサイケデリックなクリーンボイス、そして刻んでるのか刻んでないのかすらわからない空キザミからしても、これまでの「世界一美しくセンセーショナル」と称されたジョーの獣性むき出しの咆哮や「エクストリーム・ミュージックのキホン」とも謳われた粗暴さや速さが抑えられた、意図的に暴虐性なアグレッションや持ち前のスラッシュ・メタル的なキザミ要素を排除したミドルテンポの曲となっている。
 


そのMastodonLamb Of Godがエクストリーム合体したようなモダン・メタルコアの#2”Silvera”デュプランティエ(弟)ことマリオのインテリズムが炸裂する変則的なドラムビートに乗せて、高速テンポで小刻みに刻むスリリングなキザミで始まり、気づけばゴジラの同胞でありインテリキチガイの一角を担うMeshuggahDeftonesなどの現代モダン・ヘヴィネスをも体内に取り込んでいた#3”The Cell”、もはや「スラッシュ・メタルへのアンチ・テーゼ」とも取れるインテリ気取ったリード・シングルで、『ゴジラ』という名の巨大クジラが起こす巨大津波の衝撃波のようなリフから、オーディエンスにシンガロングさせるボーカル・メロディとオーガニックなヘヴィメタルスタイルのリフで展開し、そして今は亡きAgalloch直系の哀愁ただようクリーン・パートへと繋がる#4”Stranded”は、まさに【反知性主義】万歳の暴虐性と叙情性のコントラストを効かせたプログレ然としたナンバーだ。

イラストレーターのHibiki Miyazaki氏が手がけたアートワークのように、一向に捕鯨を禁止しようとしない日本に対する『怒り』が爆発、つまりマグマのように頭が噴火し、遂にインテリこじらせすぎて頭パープリンになってしまったゴジラを、インテリ系エクストリーム・メタルバンドの境地へと、それこそ「フランスのトゥール」と呼ばざるをえない絶対的な存在へと押し上げたのが、他ならぬ表題曲の”Magma”だ。チャルメラ屋さんの例の音頭が謎の妖術によってラリったようなギターの旋律が、まるでフランスのアニメ映画『ファンタスティック・プラネット』ばりに70年代風サイケデリックかつ幽玄な世界観を構築し、前作で培った出自がスラッシュ・メタル畑だからこそ成せる黄金のキザミ』をはじめ、近年のBaronessを彷彿とさせるソロワークや楽曲構成力からは、それこそマストドンの名盤『Crack the Skye』に匹敵する凄みを感じさせる。ある意味、この曲このアルバムは、フレンチ産プログレッシブ・ロック界のレジェンドであるMagmaに対するGojiraなりのリスペクトなのかもしれない。今思うと、Lamb Of Godに近づいてアメリカ市場に本格参入した本当の目的は、アメリカのヘヴィミュージック界の最高権力者であるToolに接近する為の布石でしかなかったんだ、ということ。
 

その未開の部族の妖しげな宴に導かれるように、フルートの音色を擁するオリエンタルなイントロから、メシュガーの”Bleed”直系のリフをはじめ、それこそメシュガーの産物であるDjentにも、しまいには『ADHD』期のRiversideなどのモダン・ヘヴィネス勢の影響を垣間見せる#7”Pray”や#8”Only Pain”、気づけば北欧ノルウェーの獣神Enslaved(のエルブラン・ラーセン)も喰らっていた#9”Low Lands”、そしてアコギとパーカッションの組み合わせに一瞬耳を疑う#10”Liberation”のインスト最後に、この映画『シン・ゴジラ』は幕を下ろす。

これは『怒り』を原動力にしていた初代のゴジラでもなく、魔改造されたメカニカルでテクニカルなメカゴジラでもなく、『インテリ』を気取った平成の呉爾羅でもなく、アメリカ産のGODZILLAでもない。今の時代に突然変異して産まれた『シン・ゴジラ』である。どの組織にも、どのジャンルにも属さない、当然(ポスト)スラッシュ・メタルでもなければ、もはやエクストリーム・ミュージックですらないが、しかし現代的(モダン)であり一方でクラシックでもある。これまでエクストリーム・ミュージックの舞台で戦ってきたゴジラとは一線を画した、特に『Crack the Skye』以降のマストドンをはじめ、ここまであらゆる方面からの『影響』を直に感じさせる作品は歴代のゴジラの中でも初めてだ。もちろん賛否両論はあるが、ある意味もの凄く実験的なアルバムというか、これは世界の獣神を喰らい尽くし、もう喰らうモノがなくなった末、つまり極限まで飢えに飢えたゴジラが辿り着いた一つの境地と言える。同時に全てが『新しい』ようにみえて、全てが『過去』のオマージュでもある。個人的に、これはこれで「面白い」と思うし、むしろ正統な進化なのかもしれない。

『変化』には代償が付き物だ。その『変化』を恐れず『シン・ゴジラ』へと変貌した勇気は素直にリスペクトできるし、そこが本作を面白くしている一番の要因でもある。『変異』というと、北欧のEnslavedOpeth、そしてKATATONIAなども同じような『変異』を遂げた。今作ではテッド・ジェンセンをマスタリングに迎え、ジョーがセルフでミキシングしている。このモダンなメタルやりたいのかプログレやりたいのかハッキリしない曖昧なプロダクションをはじめ、まるで死の灰を撒き散らす『シ・ゴジラ』みたいな死鳥をシンボルとして掲げたKATATONIA『死の王』を彷彿とさせる、灰色の荒廃した世界観にあの時のトラウマが蘇って「うっ、頭が・・・!」ってなる。でもインテリこじらせすぎてインディ・フォーク化する最後の曲とか、もう一体何のバンド聴いてんのかわけわからなくなるし、それこそ「これはもうシン・ゴジラだ」としか他に例えようがなかった。KATATONIA『死の王』は紛れもなく駄作だったが、この『Magma』KATATONIA『死の王』でやりたかった事を自由にやってると感じた。

最後に従来のファンの目線を代弁すると→やっぱりGojiraといえばゴジラの鳴き声SEのように、Gojiraの専売特許である、クジラが尖頭銛でぶっ刺された時に鳴き叫ぶような「キュルルゥゥ!!」というあの鳴き声ギターが俺たちは聞きてぇンだよ!今のインテリ気取ったGojiraにはクジラの血が足りねぇ!もっともっと日本は捕鯨しろ!そしてモリを片手にこう叫べッ!

「KILL 'EM WHALE!!
 
MAGMA
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