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墓っ地・ざ・ろっく!

Folk

40 Watt Sun - Perfect Light

Artist 40 Watt Sun
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Album 『Perfect Light』
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Tracklist
01. Reveal
02. Behind My Eyes
03. Until
04. Colours
05. The Spaces In Between
06. Raise Me Up
07. A Thousand Miles
08. Closure

90年代から00年代にかけて活躍したUKトラディショナル/ドゥーム・メタルバンド、Warningの中心人物であるパトリック・ウォーカーのソロプロジェクトとして始動した40 Watt Sun。彼らが2011年に発表した伝説のデビュー作『The Inside Room』といえば、古巣のWarningを基にした古典的なドゥームメタルの系譜にありながらも、USテキサスのTrue Widowを彷彿とさせるスロウコアやシューゲイザー的なノイズ要素、そして90年代に一斉を風靡したUKフューネラル/ドゥームメタル然とした内省的かつ叙情的な泣きのメロディをクロスさせた名盤で、その5年後には2ndアルバム『Wider Than The Sky』を発表すると、そこではドゥームメタルから足を洗い、俄然スロウコアの方向性に舵を切ったサウンドを展開していた。

パトリック以外のバンドメンバーが全員脱退し、名実ともに完全なるシンガーソングライターの立場から放たれる本作の3rdアルバム『Perfect Light』は、愛用のエレキギターを窓からぶん投げて、代わりにアコースティック・ギターを手にしたフォーク・ミュージックmeetスロウコアと称すべき作風となっており、音数を最小限に抑えたミニマルスティックな曲調と90年代にUKドゥーム御三家の一角として活躍した(Kscope時代の)ana_themaの影響下にある耽美的なポストロックが邂逅した、美しくも儚いメランコリックな天上の音楽を繰り広げている。まるで慈悲を乞うかのように、ただ繰り返されるだけの和音のアルペジオと優美なピアノが織りなす、聖水のごとし浄化作用を内包したアトモスフェリックなフォーク・ミュージックと、言わば“宅録系おっさんSSW”として震える声を絞り出すように歌い上げる、その中年くたびれ親父の背中から加齢臭と共に滲み出る情熱的なパッションとあゝ無情なエモーション、そんな中年オヤジの激シブな姿にただただ男泣きすること請け合い。

確かに、本作において鳴らしている音楽性にはドゥームメタルの片鱗も残されていないが、アイデンティティである初期のドゥームメタル時代に培った泣きメロの資質そのものは不変で、むしろ今回アコギを主軸とした事により一層その泣きメロにリソースを全振りしている印象。そもそも、伝説のデビュー作の時点でスロウコアをはじめとするミニマル・ミュージック寄りの気質を持ち合わせていた事を考えれば、今回のアコースティックなスタイルへの変化はごく自然で、あくまで流動的な変化でしかない。それこそ過去二作のアルバムジャケットが示すように、嵐の如く暗雲に覆われた荒涼感と死臭を醸し出すジャケの魑魅魍魎がクリーンに浄化されて徐々に光が差し込んでくる様は、まさに40 Watt Sunがこの10年の間に歩んできた音楽性の変遷を視覚的にメタしている。また、パトリックは今年のRoadburn FestivalにてロサンゼルスのSSWことEmma Ruth Rundleとのコラボを予定しており、メタルシーンのみならずオルタナ界隈からも高い支持を得ているのがわかる。

40 Watt Sunが1stアルバム→2ndアルバム→3rdアルバムで歩んできた音楽的変遷は、それこそドゥームメタル→オルタナ→ポストロックという風な音楽的変遷を辿ったana_themaを彷彿とさせ、中でもana_themaが過去作をアコースティック・アレンジで再構築した『Hindsight』のサウンド・スタイルが最もシックリくる。特にこの『Perfect Light』を象徴するかのような、ポストロック然としたアルペジオ・ギターと後期ana_themaに直結する耽美的なATMSフィールドがリリカルに、しかしドラマティックに広域展開する#2“Behind My Eyes”、ミニマリストを極め過ぎたギタリストが奏でる和音のアルペジオとアンビエント・ポップ的なピアノが至極シンプルに美しい#5“The Spaces In Between”、中期Anathema的なオルタナ味を感じる#7“A Thousand Miles”は本作のハイライトと言える。個人的に、この手の癒やし系アコギ作品と言えば、知る人ぞ知る伝説のフォークバンドことTrespassers Williamを要所々々でフラッシュバックさせる本作の凄みったらない。

Marika Hackman 『I'm Not Your Man』

Artist Marika Hackman
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Album 『I'm Not Your Man』
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Tracklist

02. Good Intentions
03. Gina's World
05. Round We Go
06. Violet
07. Cigarette
08. Time's Been Reckless
09. Apple Tree
10. So Long
11. Eastbound Train
12. Blahblahblah
13. I'd Rather Be With Them
14. AM
15. Majesty

new_スクリーンショット (34)「こんばんは、稲川VR淳二です」

new_スクリーンショット (34)「今宵は、私が体験した音楽にまつわる身の毛もよだつ恐怖話について語りたいと思います」

new_スクリーンショット (34)「実は私ねぇ、子供の頃からフォークソングが大好きでしてね、ちなみに最近のイチオシはイギリスはハンプシャー出身のマリカ・ハックマンというシンガーソングライターで、彼女が2015年に発表した1stアルバム『We Slept at Last』が私の怪談朗読用BGMに打ってつけの、それこそ「コン コン コン コン 釘を刺す」といった感じの地獄少女的なインディフォークで、そのアルバムは今でも愛聴盤なんですよねぇ」

new_スクリーンショット (34)「そんでもって、そのマリカ・ハックマンが約二年ぶりに新作を発表したっていうんでね、さっそく音源を再生してみたら、いきなりインディロックみたいな音が聴こえてきて、(妙に変だなぁ?)って。だっておかしいじゃない、マリカと言ったらアコギを片手に語り弾きするスタイルなのに、まるでアンプに通電された電子的なギターが聴こえてくるんだもん」

new_スクリーンショット (34)「いやいや、そんなはずないと思って、改めて目を閉じて音に集中して聴いてみたんですよ。するとねぇ、遂にはマリカの肩の辺りに4人の女の背後霊みたいなのがスッと浮かんできて、(うわぁ~~~嫌だなぁ~怖いなぁ~って)、全身に鳥肌がグワ~~~~!!って立った瞬間...私ねぇ、気づいちゃったんですよ」

「あぁ、これThe Big Moonだって」
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リアルにこんな感じで、一曲目の”Boyfriend”からオルタナ/インディロック然としたギターが聴こえてきて、「聴く音源間違えたか?」と思ったら、直後にどう見てもマリカの「あの声」にしか聴こえない倦怠感むき出しの歌声が聴こえてきて、これにはマリカだけにマジカってなった(えっ)。それもそのはず、今作の『I'm Not Your Man』は、マリカがティーンエージャーの頃に夢中になっていた伝説のバンドNirvanaに対する懐かしい「思ひ出」と強い「憧れ」を実現させるために、いま最も注目されているロンドンのガールズバンドことThe Big Moonをバックバンドに迎えて制作された、過去最高にマリカのパーソナルな部分が反映されたアルバムとなっている。 

イギリスはハンプシャー出身、グレーター・ロンドンを拠点に活動する1992年生まれのマリカ・ハックマンは、カバーアルバムや複数のEPをリリースした後、22歳の時にalt-Jを手掛けたチャーリー・アンドリューをプロデューサーに起用した1stフルアルバムのWe Slept at LastDirty Hitから発表すると、その卓越したソングライティングと例えるなら「女版スティーヴン・ウィルソン」の如しマルチプレイヤーとしての才能が一部のSSW界隈で話題を呼んだ。それから約18ヶ月の間に、マリカは新しいマネージャー探しと大手ユニバーサル傘下のAMF Recordsに移籍して、身の回りの全てを一新して24歳になったマリカ・ハックマンは、再びチャーリー・アンドリューをプロデューサーに迎え、私はあなたのモノじゃない的な意味深なタイトルを掲げた2作目の『I'm Not Your Man』で僕たちに一体ナニを訴えかけるのだろう。 

そもそも、マリカ本人がティーン時代の非モテ喪女に扮する「ポップ」なアートワークからして、「足フェチ」ならジャケ買い必須だった前作のフェティッシュかつダークなアートワークをはじめ、その内容も「UKの森田童子かよ」あるいは「山崎ハコの呪い かよ」ってツッコミ不可避な、アコギ一本で語り弾くような陰鬱かつアンチ・ポップ的な本来の作風とはかけ離れたものとなっている。今作の大きな特徴であるThe Big Moonとの邂逅、すなわち"バンド・サウンド "とマリカの邂逅、実はその伏線というのは既に前作の"Open Wide "という、アコギではなくエレクトリックなギターをフィーチャーしたWarpaint顔負けの楽曲にあって、端的な話、今作はそのバンド・サウンド的な方向性を推し進めたスタイルで、前作の時に「女版スティーヴン・ウィルソン」やら「Storm Corrosion」やら「Trespassers William」やらの名前を出して、それこそThe Cure『Faith』を神と拝める2:54Esben and the WitchをはじめとしたUKロックとの親和性の高さに言及したとおり、もはや完全に俺得な音楽性になっていた。そしてもう一つ、今作を語る上で欠かせないポイントがあって、それは今作がアメリカではSub Pop Recordsからリリースされている所で、ご存じSub PopといえばNirvanaの歴史的名盤『Nevermind』をはじめ、今はなきクリス・コーネルSoundgardenらと共に90年代のグランジ・ムーヴメントを作り出した一番の立役者である。

実はというと、マリカはハタチの頃に『Free Covers EP』なる、その名の通りカバーアルバムをリリースしていて、それこそ、そのカバーアルバムが本作における二大キーワードとなる「Nirvana」「Warpaint」、それらと今のマリカを繋ぎ合わせる 「原点」と呼べるものであり、その中でもニルヴァーナからの強いインフルエンスは、2曲目のリフ回しからボーカル・メロディをはじめ、それこそニルヴァーナ屈指の名曲"Come As You Are"のカバー曲かと思うほど、特にバックのサウンド面から顕著に現れており、思えば1曲目の"Boyfriend"のサビのバッキングは名曲"Smells Like Teen Spirit"を彷彿させるし、3曲目の"Gina's World"に至ってはWarpaintのEP『Exquisite Corpse』リスペクトなリズム&グルーブ感溢れるドリーム・ポップで、今作のコンセプトとなる「原点回帰」はアルバムの序盤から惜しげもなく発揮されている。

陰鬱なシンガー・ソングライターから一転して、バンド体制という自らがやってきたことへの根底を揺るがしかねない大きな変化が起こって、一体どうなるもんかと思いきや、そこはもともとオルタナ/インディ・フォークとしての側面を持ち合わせているだけあって、バックのThe Big Moonが奏でるオルタナティブなバンドサウンドと自然に共振する部分は思いのほか沢山あって、事実マリカの憂鬱な歌声はこの手のダウナー系のグランジ/オルタナ系のサウンドと驚くほど違和感なくマッチする。もはや、馴染みすぎて逆にこれまでフォークソング歌ってた人間には思えなくて、にこやかな顔で互いに笑顔を振りまきながら、仲良くセッションしている様子が浮かんでくるような息の合ったファミニンなグルーヴ感は、既に本当に実在する五人組のロックバンドのようなライブ感を放っている。つまり、マリカの音楽的な根っこの部分は何一つ変わっちゃあいないし、紛れもなくマリカにしかなし得ない「呪いの音楽」である。そして人々は、このアルバムをレディオヘッドとウォーペイントの間にある音楽と呼んだ。

その「不変的」な部分、それは前作でも垣間見せたスティーヴン・ウィルソンとも共振する、いわゆるPost-Progressiveなセンスおよび叙情的な雰囲気は、3曲目の”Gina's World”を皮切りに、今作を象徴するかのようなインディ・ポップ然とした4曲目の”My Lover Cindy”を間に挟んで、山崎ハコ系の5曲目の”Round We Go”や森田童子系の”Violet”、再び”らしさ”に溢れた”Cigarette”というインディフォークナンバーを間に挟んで、そして今作のハイライトを飾る、ウォーペイント最大のクソ曲こと”Disco//Very”リスペクトかと思いきや中盤でPost-化する8曲目の”Time's Been Reckless”や初期ウォーペイント然とした10曲目の”So Long”などの、決して一筋縄ではいかない曲構成はまさにこれぞマリカ節といった感じだし、むしろ今回バンドサウンド中心になったことで、よりそのPost-感というのが立体的に表面化し、結果的に音の強弱、いわゆる静と動のコントラストというマリカの武器に更なる磨きがかかっている。同時に、ザ・ビッグ・ムーンを交えたユルくて賑やかなコーラスワーク、こだわり抜かれたミニマルなフレーズ、前作でも垣間見せたマルチミュージシャンとして更に洗練された多彩なアレンジ、そしてPost-系ならではの楽曲構成力とダウンテンポからアップテンポまで何でもござれな底知れぬソングライティング、それらマリカの無理難題にも近いハイスペックな要求に対して、このザ・ビッグ・ムーンは「バックバンド」だからと言って一切の手抜きをすることなく、持ちうる力の100%いや120%の力で答えている。つまり、今作はマリカとザ・ビッグ・ムーン、双方の強い信頼関係により成り立っている作品とも言える。

確かに、前作で獲得した暗鬱フォークフアンからは「脱フォーク化」したと非難轟々かもしれないが、しかしマリカは今作に対して「これもまた私の脳の一部」であると語っており、僕はこの言葉を聞いて「これぞオルタナティブアーティストならではの考え方だ」と彼女を賞賛するしかなかった。それはマリカが過去最高に感情を表に爆発させる実質ラストの”I'd Rather Be With Them”という曲一つ取ってみても、それこそ「私はあなたのモノじゃない」というタイトルの意味が全てを物語っていて、実際にこれ聴いちゃったらもう前作のが良かったなんて軽々しく言えないです。むしろ逆に、チャーリー・アンドリューという名高いプロデューサーと今話題のガールズバンドがバックに付いてて傑作以外のモノを作るほうが難しいというか、正直こんなに贅沢なアルバムってなかなかお目にかかれないと思う。こう言っちゃあなんだけど、今年リリースされたザ・ビッグ・ムーンの1stアルバムより良いし、正直今のウォーペイントよりよっぽどウォーペイントらしいことしてます。

とにかく、その二組の偉大なる「裏方」の協力によって、マリカの「ミュージシャンとしての才能」は元より、「フロントウーマン」としての才能が花開いたのも事実で、つまりこのアルバムには「マリカ・ハックマン」の名をここ日本の(ホステス界隈を中心とした)音楽リスナーに知らしめるには十分過ぎる、マリカの「オルタナティブ」な魅力と質の高い楽曲とユニークなアイデアに満ち溢れた作品だ。しっかし、自分自身なんでこんなにマリカ・ハックマンの歌声に魅了されるんだろうと疑問に思って、もしやと思ってマリカの誕生日を調べてみたらやっぱり「2月生まれ」でマリカってなった(えっ)

アイム・ノット・ユア・マン
マリカ・ハックマン
Hostess Entertainment (2017-06-21)
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Gris 『À l'âme enflammée, l'äme constellée...』 レビュー

Artist Gris
Gris

Album 『À l'âme enflammée, l'äme constellée...』
À l'âme enflammée, l'äme constellée...

Track List
Disc I
01. L'Aube
02. Les Forges
03. Samsara
04. Igneus
05. Dil

Disc II
01. Moksha
02. Seizième Prière
03. Sem
04. Une Épitaphe De Suie
05. Nadir

『ポストブラックの分類』・・・そもそも、いわゆるポストブラックとかいうジャンルは、大雑把に3つのタイプに分類する事ができるんだが→まず1つ目は【マイブラ系もも色シューゲ×激情系HC】のDeafheavenタイプ、2つ目は【ポストロック/ドリームポップ×ブラゲ】のAlcestLes Discretsタイプ、そして3つ目は【ネオフォーク/アンビエント/ATMS×デプレ・ブラック】のAgallochさんを筆頭とした初期Ulver初期KATATONIAタイプの三種類あって、このカナダを拠点に活動するIcare氏とNeptune氏による二人ポストブラックことGrisは、その分類の中で言うとAgallochタイプとAlcestタイプの美味しいとこ取りした感じのブラックで、その手の好き者に高く評価された1stフルの『Il Était Une Forêt...』から約六年ぶり通算二作目となる本作の『À l'âme enflammée, l'äme constellée...』、しかも二枚組の幕開けを飾る#1”L'Aube”から只ならぬ情緒感を醸し出すアコギナンバーで、そして約15分ある長尺の#2Les Forgesを聴けば理解できるように、スーサイド願望に満ち溢れたIcareによる悲痛な叫びと、アコギを中心に琴や尺八などの和楽器やチェロやヴァイオリンを擁した壮麗優美なストリングスが、まるで初期Opethを思わせる”美と醜”の対比を強弱を効かせながら表現していく、わかりやすい話→スウェーデンのShining直系のジジジジ...ノイジーなデプレブラックに、本作のジャケを手がけたFursy Teyssier率いるLes DiscretsAlcestを連想させるオリエンタルなフレフレフレンチ感や、USのポストブラックレジェンドAgallochさん直系のタンビ(耽美)エントな要素がしなやかかつエレガントに交錯する、要するにみんな大好きATMS系ポストブラックやってるわけ。ちなみに、アルバムタイトルや曲目を見ればわかるように、全編フランス語の歌詞となっている。

 やはり今作の大きなポイントとして→キュルキュル♪と弦の音が生々しく鳴り響く、ほのかにメランコリックで麗しげなアコギを筆頭に、オーストラリア産のネ・バブリシャス(Ne Obliviscaris)顔負けの、天空を駆け巡るように超絶epicッ!!なヴァイオリンによるネオクラシカルなメロディセンスだろう。もはやこのバンド最大の持ち味と言っていい、それらのアコギやストリングスは、Disc1&2共に約40分トータル80分という作品全編に渡って美しく幻想的に、そして優雅に曲を彩っていて、その中でもDisc1とDisc2最後を締めくくる”Dil”と”Nadir”は涙なくして聴けない。あと#4”Igneus”のアウトロとか聴いたら、マジでネ・バブリシャスと対決させたくなる。で、基本的にDisc1と2も似たような構成で、【オープニング→大作→短いインスト→再び大作→泣きのアコギ】みたいな流れで、どちらも完成度が高く甲乙つけ難い。

 このバンド、単なるAgallochや初期Alcestのコピーバンドというわけではなくて、特に一枚目の名曲#2”Les Forges”の7分以降の展開や、二枚目の#2”Seizième Prière”あたりで垣間見せる、Rosettaなどのポストメタル勢からの影響を巧みに昇華した部分も聴きどころの一つとなっていて、もはやこの手の界隈を代表するその二組に引けをとらない、ヘタしたらそれ以上のポテンシャルを誇っている。間違いなく、今年のポストブラック界隈ではマストな一枚。
 
L'ame Enflammee, L'ame Constellee
Gris

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Orphaned Land 『All Is One』 レビュー

Artist Orphaned Land
Orphaned Land
Mixed/Mastered Jens Bogren
Jens Bogren

Album 『All Is One』
All Is One

Track List
02. The Simple Man
05. Through Fire And Water
06. Fail
07. Freedom
08. Shama'im
09. Ya Benaye
11. Children

『Orphaned Land×イェンス・ボグレン=oh...Jesus Christ!』

イスラエル出身の五人組、Orphaned Landの約三年ぶり通算五作目となる『All Is One』なんだけど、2004年作の3rd『Mabool』でその人気に火がつき、その3rdに感銘を受けたPTSW先生をプロデューサーとして迎えた前作の4thThe Never Ending Way of ORwarriORでは、Opethの名盤『黒水公園』のイスラエルVerをやってみせた彼らだが、今回はもはや当然いや必然であるかのように俺たちのイェンス・ボグレンをミキシング/マスタリングとして迎え入れ...つーか、なんかもう「イェンス・ボグレンはSW先生を超えた」とでも言いたいぐらい、ここ最近の”イェンス祭り”には只々笑うしかないんだけど、まぁ、それはそうとして、本作は名盤3rdや前作の4thで確立した【Orphaned Land=イスラエルのオペにゃん】といったイメージつまりデス/プログ・メタル的な要素は希薄...というより、もはや皆無となっていて、それは本作の【キリスト/ユダヤ/イスラム】という3つのアブラハムの宗教を題材としたコンセプティブな世界観を映像化したMVが見所の#1All Is Oneを耳にすれば理解ッできるように、イスラエルという土地柄を強く匂わせる、伝統的なアラビアン・ミュージックをベースとしたオリエンタルなフォーク・ロックを展開していて、カーヌーンなどのアラブを代表する民族楽器を中心に壮麗優美な旋律(シンフォニー)を奏でるオーケストラやクワイヤ、より一段とクリーンボイスに磨きがかかったフロントマンKobi Farhiによる情緒感に溢れた歌声やアルト/ソプラノ/テノールを駆使した女性ボーカルなどの多彩な演出によって、それこそ映画『アラビアのロレンス』を観ているかのような空前のスケールで描かれる、シネマティックかつドラマティックな世界観を築き上げ、より身近な例え方だと「ようこそクラブ『アラビアンナイト』へ」的な夜の世界へと、ある種の非現実的な空間へと迷い込んだかのような、そんなスパイシーかつエスニックな気分にさせてくれる、とにかく香ばしく味わい深~い作品。で、少なくとも、SW先生によって半ば強制的に『黒水公園』を”やらされてた”感がなくもなかった前作よりは全然違和感なく聴けるというか、まるで「あの頃の僕たちは少しおかしかったのさ。やりたくないことを強制的にやらされていたんだ。あいつらはまるでナチスのようだったよ・・・」もしくは「俺たちはオペにゃんのモノマネ芸人なんかじゃないんだッ!」とジーザスに訴えかけるような、むしろ自分達が本当にやりたかったオリジナル(土着)の音楽やってる感がスゴい。ちなみに、本作のアートワークはMetastazisによるもので、コンセプトのキリスト教=十字架、ユダヤ教=六芒星、イスラム教=三日月というアブラハムの宗教のシンボルマークが合体したものとなっている。

  『Orphaned Landはキリストを超えた』

 本作、彼らに対して何を求めるかによって、その評価というのが大きく変わってきそう。名盤の3rdや4thのプログレ/デス路線を期待している人には総スカンを食らいそうだが、リフそのものは至ってシンプルな作りで、過去最高に民族性を強調したバリバリの歌モノ歌謡曲やってる所からして、いわゆるクサメタル好きにはウケが良さそうな感じはする。特に#9”Ya Benaye”以降は昭和の時代にタイムスリップしたかのような、まるでさだまさしを聴いてるかのような錯覚を憶えるほど、いい意味で古臭くもありどこか新しくもある、まるでイスラエル人としてのアイデンティティが開放された時のような”生命エネルギー”が宿りし民謡音楽は、もはや『Orphaned Landはキリストを超えた』とかいう超新約聖書を執筆しながら「キリスト復活の時間だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」とかナントカ隆法総裁の如く叫びたいナニがある。

 「イェンス・ボグレンはSW先生を超えた」

 ハッキリ言って、SW先生のミックスよりもイェンス兄さんが手がけたミックスのが相性いいです。SW先生が手がけた前作の音には妙な”違和感”というのがあったけど、今回はイェンスが得意とするオーガニックな音作りとOrphaned Landのオリエンタルな音楽性との相性が驚くほど抜群で、もはやある種の洗練さというか大物感すら感じられるほど。その運命的な出会いは、まるで『アダムとイヴ』のような関係性だ。それにしても、今やメタル界一の売れっ子エンジニアとなったイェンスのここ最近の仕事っぷりを拝見して彼ら、間違いなく「oh...Jesus Christ!(おお...神よ!)」と思っただろうね。つうか、なんかアレだな、このタイミングでイェンスを迎えるってのも過去のオペにゃんと丸っきり同じなんだよなぁ・・・分かりすい話→オペにゃんの名盤『Still Life』=『Mabool』スティーヴン・ウィルソン先生に見っかっちゃった結果→そのSW先生をPに迎えた次作の『黒水公園』=『The Never Ending Way of ORwarriOR』でその名声を確固たるものとし、そして『Ghost Reveries』=本作の『All Is One』で目出度くイェンス・墓愚連隊の一員となる...というお話。なんだ、やっぱオペにゃん大好きなんじゃんw

All Is One
All Is One
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Orphaned Land
Century Media (2013-06-25)
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Xanthochroid 『Blessed He With Boils』 レビュー

Artist Xanthochroid
Xanthochroid

Album Blessed He With Boils
Blessed He with Boils

Track List
01. Aquatic Deathgate Existence
02. Blessed He With Boils
03. Winter's End
04. Long Live Our Lifeless King
05. Deus Absconditus: Part I
06. Deus Absconditus: Part II
07. The Leper's Prospect
08. In Putris Stagnum
09. "Here I'll Stay"
10. Rebirth Of An Old Nation

USはカルフォルニア州レイクフォレスト出身の五人組、その名もXanthochroidの1stフル『Blessed He With Boils』がヤバ過ぎる件。自身でも”Cinematic/epicッ!!-Black Metal”と謳っているように、Blind Guardianもビックリの大仰なクワイア&シンフォニックな肉厚のサウンドスケープが超絶epicッ!!かつ超絶壮大に演出する、EmperorDimmu Borgir直系のノルウェイゲン・シンフォブラ/メロブラを基本の世界に、そこへ露骨に『Still Life』期のOpeth大好き♥なアコギやフルートのフォーキーな音色が醸し出す郷愁の香りを自然な形で溶け込ませた、”静と動”のメリハリを効かせたいわゆる”オペにゃんスタイル”を展開すると同時にAgallochライクなアトモスブラック/ポストブラック的な要素も持ち合わせ、そして極めつけにあのイェンス・ボグレンがマスタリングを担当するという、まさにUS版Ne Obliviscarusという他に例えようがないエクストリーム・プログレッシブ・ブラックを繰り広げている。で、本作の内容はなんつーかもう”コイツらスゴ過ぎィ!”としか言い様がない傑作です。去年聴いてたら間違いなくBESTに入ってたというか、俺の中でNe ObliviscarusBorknagarの新譜を超えた。今コレ聴かなきゃ他にナニ聴くのってレベル。それぐらいブッ飛んでる(ゴメンちょっとだけ盛った)。 Opethを筆頭にICS Vortex=BorknagarWintersunIhsahn...要するにありとあらゆる”ソレ系”のバンドを連想させる楽曲ばっかなんだけど、もはやモノマネがどうとかなんて事はどうでもよくなるレベルの説得力があって、もはや”オリジナル”とその”フォロワー”という概念を超越した先の世界にいるのが、この”愛すべきバカメタル”ことXanthochroidなんだ。

 まるで『スカイリム』や『ダークソウル』、剣と魔法のファンタジー映画『指輪物語』さながらの圧倒的なスケール感と幻想的な世界観を構築するイントロの#1”Aquatic Deathgate Existence”=”病み村”に迷い込んだ結果→”人間性”を失った主人公は亡者となり、そのイントロに次ぐ#2”Blessed He With Boils”を耳にした瞬間に”ファッ!?”とかいう衝撃を受ける。出足からメロブラ然とした暴虐性を惜しげもなくさらけ出し、”オペにゃん”大好き♥なアコギやフルートが織りなす哀愁のハーモニーが目まぐるしい展開の中で自然に溶け込む中盤からの~突如”ICS Vortex化”する終盤のハイトーンボーカルに全てを持っていかれる、超絶ドラマティックかつ超絶epicッ!!な名曲。で、この衝撃は全盛期の”オペにゃん”の曲を初めて聴いた時のような感覚に近いナニがあった。アコギとフルートそして民謡的なボーカルが織りなす郷愁のハーモニーが、壮絶な戦いが待ち受ける過酷な旅路の途中で、一時の安らぎと癒しを施すかのような#3”Winter's End”、エクストリーム系プログレ・メタル風のリフと鳴り止むことのないエレクトリカルかつヒロイックなkeyの音色が激しく狂喜乱舞する勇姿にEmperorやIhsahnの影を嫌でも連想させ、そして一番の聴こどころとなる中盤からの不安感を煽るようなアトモス/アンビエント世界に精神が侵食される#4”Long Live Our Lifeless King”、再びアコギ主体の幻想的な曲で今度はAgallochやFenらのポストブラ勢を連想させる#5からの~可憐に響き渡るkeyと壮麗なクワイヤがキ・モ・チをウキウキに高める#6までの組曲”Deus Absconditus”は本作のハイライト。そして壮絶な幕切れに相応しい#10”Rebirth Of An Old Nation”の泣きメロとドラマティックな展開に感極まった主人公は遂に”人間性”をトレモロスッ!!・・・だいたいこんな感じの物語。で、不思議な魅力を醸し出す恵まれたこのジャケから恵まれたこの楽曲...う~ん、スバラスイィィ~。US産とは言えど音は完全にEUモノのクッサイクッサイ系のソレで、そのギャップがばくわら。それじゃあ皆で、あの葉加瀬太郎の満面の笑みが脳裏に浮かんできそうな”情熱大陸メタル”ことNe Obliviscarusよりも、愛すべきバカのXanthochroidをドヤ顔で推して通な人になろう(提案) なにはともあれ、昨年に衝撃的なデビューを飾ったこの二組の若武者の登場は、ブラックメタル界にとって非常に大きな朗報だったに違いない。同時になんつーか、やっぱボグボグってスゲーわ、って。言わずもがな、この手のジャンルが好きならマストなんで、気になった人は彼らのBandcampで全曲聴いて、どうぞ。ちなみに、EPのオススメは三曲目。



Blessed He With Boils
Blessed He With Boils
posted with amazlet at 13.01.25
Erthe and Axen Records (2012-12-21)
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