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墓っ地・ざ・ろっく!

Djent

Spiritbox - Eternal Blue

Artist Spiritbox
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Album 『Eternal Blue』
Spiritbox-Eternal-Blue-Artwork

Tracklist
01. Sun Killer
03. Yellowjacket [feat. Sam Carter]
04. The Summit
06. Silk In The Strings
08. Eternal Blue
09. We Live In A Strange World
10. Halcyon

私は熊と格闘したことがあることIwrestledabearonceの元メンバーであり夫婦でもある二代目ボーカリストのコートニーとマイクを中心にカナダはブリティッシュ・コロンビアで結成された4人組=Spiritboxの1stアルバム『Eternal Blue』は、それこそPeripheryTesseracTあるいはAnimals As Leadersに代表されるDjent以降のモダン・ヘヴィネス/エクストリーム・メタルコアで、そこは流石の出自がex-Iwrestledabearonceだけあって、『amo』以降のBMTHみたいなエクスペリメンタルな打ち込みを効かせた音響意識の高いアレンジを軸に、00年代以降に流行ったマスコアと10年代以降のジェントすなわち総称すると“テクニカル・メタル”、その一つのジャンルの時代の変遷を辿ってきたフロントウーマンのコートニーによるスペンサー・ソーテロ顔負けのエグいスクリーム、さしずめ「女版ダニエル・トンプキンズ」みたいな叙情的なフィメールボイス、そしてVildhjarta級の鬼ヘヴィネスやGojira級のスラッジーなヘヴィネスを内蔵した極悪ブレイクダウンのエゲツない重厚感が高次元レベルで均衡したサウンドスケープを繰り広げている。


ex-Volumesのダニエル・ブラウンシュタインがプロデュース/エンジニアを手がけ、メタルコア界の雄Architectsのサム・カーターを迎えた#3やCrystal LakeのRyoとフィーチャリングしたリミックス版が公開されている#7、そしてマスタリングにイェンス・ボグレンを迎えている案件の時点で、そんじょそこらのモブではない界隈きっての期待の新星として認識すべき事がわかるし、現にジェント以降のメタルコア/新世代メタルとして、その完成度は既に折り紙付きと言っていい。中でもゴリゴリの打ち込み主体の#9“We Live In A Strange World”をはじめ、本作のハイライトを飾る#11“Circle With Me”では今はなきVERSAThe Birthday Massacreを連想させるモダンなゴス/ダークウェイブの影を感じさせて完全に優勝する。


しかしながら、PassCodeに新加入した有馬えみりをはじめ、「アイドル界のIwrestledabearonce」こと神激涙染あまねや新世代ガールズロックバンド玉冷え。もとい花冷え。ユキナに代表される日本のラウドル(kawaiicore)に触発されてか、本家Iwrestledabearonceの二代目ボーカリストのコートニー“ジョジョメタル”ことLucreciaジャッキー・グラバーちゃんという新星の登場からも、昨今この「新世代叫ぶ女」界隈がアツすぎるってレベルじゃない件について。これもう皆んな集めて『kawaiicore』フェス開くしかなくね?(呼び屋募集)

BBTSことBroken By The Screamの“ダブル・ジョージ”が叫びすぎな件について


「元祖叫ぶ女」ことアンジェラ・ゴソウの正統後継者であるパスコのちゆな勇退、そのちゆなの後釜として指名された有馬記念もとい有馬えみりは、JK時代からアチエネや現アチエネのボーカル=アリッサの古巣であるThe Agonistをはじめ、他にもSuicide SilenceBMTH、国内ではDIR EN GREYのデスボイスカバーを動画サイトに公開してきた実績のあるガチメタル女子で、このように現代のアイドルシーンにおいてヘヴィなメタルサウンドとスクリームやデスボを組み合わせたスタイルは珍しくもなくなり、世はまさに「デスボ系アイドル」の群雄割拠と言わんばかりだ。


パスコのちゆながここまで引退を惜しまれる理由って、その他に類を見ない独自性の高いシャウトのオリジナリティに尽きると思う。ひとえに「叫ぶ女」といっても、高域寄りのシャウトか低域寄りのデスボか、それとも地声の延長線上にある似非シャウトか、それぞれ個人の性質によって得意とする声域や声の出し方も大きく変わってくる。例えば、神激こと神使轟く、激情の如く。のデスボ担当である涙染あまねは、その「V系顔の理想」であるヴィジュアル面からもV系を代表するDIR EN GREYの京やLynch.の葉月リスペクトなシャウターかと思いきや、その実は昨年脱退したデスボ担当妖精かなめのシャウティングを『ルックバック』してきた、ラウドル界を代表するシャウターの一人であり、僕の推しメンでもあるw


このメタル系スクリーミングアイドルの通称BBTSことBroken By The Screamは(こんな名前の海外バンドいた気がする)、それこそDeafheavenジョージ・クラーク顔負けの金切り声を持つカグラと、デスメタルの始祖カニコージョージ・フィッシャー顔負けの低音グロウルを持つイオ、そのUSメタルシーンを代表する二大バンドのフロントマン、すなわち“ダブル・ジョージ”の正統後継者を襲名するかのようなカグラとイオの“ジョージ姉妹”が放つスクリーム/グロウルに、いわゆるブルデスやデスコアを基調とした殺傷能力の高い暴虐的なサウンドが組み合わさった、あのメタルゴッドちゃんもビックリのエクストリーム・メタルは、“ジョージ姉妹”以外のメンバーであるヤエとアヤメのクリーン担当の存在によって、かろうじて“アイドル”の体をなしている。

わざわざ「かろうじて」と念頭に置かざるを得ないほど、その“ジョージ姉妹”の叫び声を中心に想像を超えたアグレッシヴかつブルータルな本格派メタルを繰り広げる。中でも往年の北欧メロデス/デスラッシュばりにソリッドな単音リフは、そのカニコーの血みどろジャケットリスペクトな血なまぐさい音楽性を更に硫酸ドロドロなんでも溶かす。また、DIR EN GREYの京の声帯が分裂したかのようなブラックメタル的な高域デスとデスメタル的な低域デスを配している点やモダンなデスコアっぽい部分はAbigail Williamsを、また近未来型Djentやジャズ/フュージョンにも精通する超絶テクニカルなギター/ソロワークからは、あのBorn of Osirisを彷彿とさせた。正直、ここまでエクストリームなメタルやってるなら、今後の楽曲に通称“イヤイヤ期”のDFHVN的なブラックゲイズ成分やトレモロなんか取り入れたりしたらもっと楽曲の幅が広がりそう。

もはや「とんでもねぇアイドル」としか形容しようがないラウドルがBBTSで、しかしイオの(地声の乗らない)グロウルは一体どうやって発声しているのか、完全に想像を超えた世界の領域。それこそ、通称デスのお兄さんの言う通り耳を疑うレベルのデスボで笑う↓

DIR EN GREYの新曲『人間を被る』を聴いた

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ようやく聴いたDIR EN GREYの新曲『人間を被る』。もう2ヶ月前のシングル発売日の時、DIR EN GREY公式のインスタにMeshuggahの最新作『The Violent Sleep of Reason』のTシャツを着た薫くんのクールな姿がアップされたのって、そういう意図あるいは伏線があったんだなって、この”人間を被る”を聴いてみたら本当に今更になって理解することができた。

それというのも、DIR EN GREYのギタリストの薫くんってもうずっとメシュガー好きのヲタクで、それこそ8thアルバムの『DUM SPIRO SPERO』から7弦ギターを使い始めたのもメシュガーの影響された説あって、しかし一方のDieは7弦ギター否定派との噂もあったり、虜の中には「7弦ギターを使い始めてからディルは終わった」みたいな論調も一部で生まれていた事も忘れてはならない。とにかく、それくらい7弦ギターがDIR EN GREYに(主に楽曲面で)与えた影響は計り知れなくて、近年のDIR EN GREYに起きた後にも先にもない大きな「転換期」だったと言える。

2010年代のメタルシーンでは、以前よりメシュガーが独自に展開していたフレドリック・トーデンダルによる7弦ギターと複雑な変拍子を刻むリズム隊が織りなす変態的なエクストリーム・メタル、そのメシュガーの音楽性から派生した”Djent”とかいうジャンルが産声を上げた。このように、メシュガーは00年代以降のメタルシーンに最も影響を与えた偉大なバンドである。ここ最近でも、同郷のPain of Salvasionメシュガーをリスペクトした奇跡の復活作をリリースしたのが記憶に新しい。

DIR EN GREYは、その偉大なメシュガー以上にUSのデブ豚ことDeftonesにも強い影響を受けていて、何を隠そうデブ豚の6thアルバム『Diamond Eyes』メシュガニキに対するUS側からの回答に他ならなくて、ガニキの7弦スタイルを”現代のモダン・ヘヴィネス”あるいは”現代のオルタナティブ・メタル”と解釈して”自分たちのヘヴィロック”に落とし込んだのがデブ豚である。その『Diamond Eyes』の中で聴かせるガーガガ ガーガガ ガーガガ ガーガーガーと延々とガーガー鳴らすもはやガーガー連呼厨みたいなオールフリーならぬオールガーで展開する頑固なリフ回しこそ、7弦ギターならではの専売特許みたいなもんで、平気な顔してこれができるデブ豚ってやっぱ天才だなって再確認させられたもの事実。そして、その両者に影響を受けているDIR EN GREYがこの『人間を被る』を発表するのは、もはや時間の問題だったのかもしれない。

ご存知のとおり、8thアルバム以降のDIR EN GREYはもうずっと7弦ギター大好き芸人なのだけど、個人的にDIR EN GREYと7弦ギターが一番ハマった曲って実はミニアルバム『THE UNRAVELING』”Unraveling”だと思ってて(この曲が先日のBESTアルバムに収録されなかったのは疑問)、この曲って要するにさっき書いたガー主体のリフ回しとDjent顔負けのリズムを刻む、メタル界屈指の「ガー族」の族長であるデブ豚ガニキに対する、その子供DIR EN GREYからの回答だった。

その”Unraveling”は、実際にはガニキデブ豚というより、あくまでもDjent的なモダンなアプローチで展開する言うなればPost-Djent的な方向性だったが、この”人間を被る”はそれ以上にモロ出しDjentで、それこそデブ豚『Diamond Eyes』を彷彿とさせる、いわゆるガー族の血脈を受け継ぐガー主体のリフ回し、つまり7弦ギターの魅力を過去最高に発揮させている。メインリフのほぼ全てをガーでキメるギターヲタク丸出しの曲調は”Unraveling”の正統後継者と言えるし、無論この曲は”Unraveling”のPost-Djentという伏線があったからこそ生まれた曲だ。その”Unraveling”はバッキングの”リズム”でDjentを刻んでいたけど、この”人間を被る”では”リフ”でDjentを刻んでいる、そのアプローチの違いは一つのポイントでもある。それらの→Djent_Post-Djent_ガニキ_デブ豚←この辺の微妙で繊細な関係性を理解していないとなかなか難しい話かもしれないが、薫くんはソコを知っている変態なので、、、すき。

この手の7弦ギターを応用したガニキ_スタイルで最も重要なのは、実はリフではなく音作りだと思うのだけど、7弦化以降のDIR EN GREYって7弦は7弦でもいわゆるDjentやガニキとは一線をがした、いわゆるヘヴィロック的な音作りで、9thアルバム『ARCHE』はまさに国内のチンカスラウドロック勢を地獄へ葬るかのような、7弦型ヘヴィロックの最高峰に君臨する傑作だった。しかし、その7弦ヘヴィロックに特化した『ARCHE』やPost-Djentの”Unraveling”でもやってこなかった7弦ギターを司る象徴的な音像が今作にはある、それが「ギョン」だった。

「ギョン」・・・それは漫画『ガンツ』に出てくるXガンの発射音ではない(ギョーン)、それは主にモダンなDjentバンドが鳴らす7弦ギターの音である。この”人間を被る”からは、Djentの代名詞であるゴムみたいにウネる、モダンがかったギョンの音が聴こえる。この新曲で一番驚いたというかちょっと感動したのは、DIR EN GREYってこの手のギョンのギター音出せるんだってこと。それくらい珍しいというか、これまでは7弦ギターなのに7弦ギターっぽく聴こえない独特な音作りがいい意味でも悪い意味でも”らしさ”や”こだわり”だったと思うのだけど、この曲に限っては明確にDjentの音作りをフォローしにきててバビった。

ここで改めて、こいつらスゲー器用なバンドだなって思ったのは、8thアルバム以降に確立した”自分たちの7弦ヘヴィロック”的な音作りと、Djentをはじめとした海外7弦勢のカドが立つようなガー系の音作りを絶妙な配合で混ぜ合わせたような、つまり”自分たちの7弦ヘヴィロック”の中にDjentを象徴するギョンの音像すなわちギョン像を、ピンセットで摘むようにして繊細な面持ちで落とし込む、その鬼ババみたいな器用さ。その唯一無二の音作りはDIR EN GREYではなく何よりも薫くんのギターリストとしての”こだわり”と言えるのかもしれない。ちなみに、ウォークマンZX300IE800Sなら僕が力説するギョンの音像はしっかりと感じ取れます。iPhoneや付属のイヤホンとかだとギョンは掴みづらいかも。恐らく、Campfire Audioの新作イヤホンのAtlasでもギョン余裕(ギョンユー)だと思うので、実際に試してみたいので誰か僕にAtlas買ってくださいw

【グロ注意】


Post-系のアルペジオから静かに幕を開け、初っ端のドラムこそ”激闇”を彷彿とさせるけど、全体的なサウンド・アプローチやインダストリアルなアレンジはアルバム『ARCHE』の世界観を素直に踏襲していて、メインリフとなるガーリフをキザミながら徐々にテンポアップしつつ、そしてサビへの繋ぎ方も『ARCHE』以降、前作シングルの”詩踏み”をフォローしている。今作を象徴するガーリフだけじゃなくて終盤の展開もイカす。とにかく、これまでは特定のジャンルやバンドを想起させない、唯一無二のオリジナリティを確立してきたバンドでもあったから、だからこそ色々と露骨に、メンバーというより薫くんの趣味嗜好がむき出しとなったこのシングルには驚きと素直な感動があって、それこそ『ARCHE』のレビューにも書いた今のDIR EN GREYは外に開かれているという僕の言葉を裏付けるような曲でもあった。

一応はカップリング扱いとなる”Ash”は、中期DIR EN GREYみたいなクロスオーバー/ハードコア的なテンションを保ちつつ、アコギのアルペジオからの”人間を被る”にはなかったGソロを見せ場に、とにかく緩急を織り交ぜながら目まぐるしくスピーディに展開していく曲で、実はこっちのが”シングル”っぽいと感じるほど、もはや両A面シングルでも良かったんじゃねぇかくらいの完成度(アルバムに向けて相当気合入れてきてんな!)。なんだろう、現在進行系DIR EN GREYによるシンプル至極な”人間を被る”と、アルバム『ARCHE』によって”呪い”が解かれた旧Dir en greyによる複雑怪奇な”Ash”みたいな対比あるいは解釈も可能。しかしこうなってくると、そろそろ出そうな10thアルバムの内容がどうなるのか、正直全く読めない。唯一心配なのは、このガーリフを薫くんとDieが実際にライブで弾けるのかということ・・・(余計なお世話)。

TesseracT 『Sonder』

Artist TesseracT
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Album 『Sonder』

Sonder

Tracklist
01. Luminary
02. King
03. Orbital
04. Juno
05. Beneath My Skin
06. Mirror Image
07. Smile
08. The Arrow

実質初代ボーカリストのダニエル・トンプキンスくんの復帰作となる、かのKscopeから発表された3rdアルバム『Polaris』の中でTesseracTがやってのけたのは、A Perfect Circleの2ndアルバム『Thirteenth Step』の影響下にある”オルタナティブ・ジェント”で、しかしそのTesseracTを裏で操っていた黒の組織・・・それが「秘密結社K」の創始者スティーヴン・ウィルソンと映画音楽界の巨匠ハンス・ジマーだった事を、あの日の僕たちはまだ知らない。

あらためて、前作の『Polaris』って一体どんなアルバムだったのか?まず、1stフルアルバム『One』の後にダニエルくんが脱退し、その後のEP『Perspective』では新ボーカルにエリオットくんを迎えるが、その翌年にエモボーイのアッシュ・オハラくんを迎えた2ndアルバム『Altered State』をリリースする。そのアルバムでは、Djent史上最も”エモ”くてスパイス・ガールズみたいな”アイドル”顔負けのポップでキャッチーなアプローチを強め、それによりDjentとかいうアンダーグラウンドのメタルをオーバーグラウンドのエモキッズの耳に届けることに成功、今では本国最大のダウンロードフェスの常連となっていることからも、その成功はバンドの未来にとってもDjentの未来にとっても歴史的な快挙だった。

そのアルバムから一転して、ダニエルくんの復帰作となった3rdアルバムの『Polaris』は、正直はじめは駄作かと思ったけど、次第に「でもなんだこの得体の知れない感覚」みたいになって、遂にはTesseracTが変拍子の数式で作り出した四次元立方体の中で”TTポーズ”してたら誰かに見られているような気がして、その四次元立方体の外側にある”本棚の裏”という名の五次元空間をチラッと覗いてみたら、スティーヴン・ウィルソンハンス・ジマーが仲良く”TTポーズ”をしていたんだ。それこそニーチェの「深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ」の理論を地で行くような、それこそ劇伴をハンス・ジマーが手がけたSF映画『インターステラー』ばり五次元空間=本棚の裏にほっぽり出されたような、あるいは「それは人類が宇宙に進出して数百年後の世界、地球から二万光年離れた『惑星ポラリス』を舞台に”引力、即ち愛”を描く壮絶な物語」、そんな超絶epic!!な世界観があって、その作風的にも徹底した繰り返しの美学、徹底したミニマリズムの追求を目論んでいた。

ダニエルくん復帰第二弾となる今作の『Sonder』は、そんな「得体の知れない何か」みたいな予測不能のヤバさのあった、言うなれば”オルタナ系ジェント”すなわち”オルタード・ジェント”やってた前作の『惑星ポラリス』とは打って変わって、もはや現存するギターが鳴らせる低域の底が抜けたんじゃねぇかくらいのDjent史上最高に重厚なヘヴィネスを轟かせる、言うなれば”ジェント・ドゥーム”すなわち”ジェンドゥー”、あるいはスラッジ×ジェント=スラッジェントと称すべきメタルの新ジャンルを開拓している。そして、今作は過去最高に”ヘヴィ”なサウンドであると同時に、その一方でダニエルくんのボーカルは過去最高に”ポップ”な2ndアルバムに回帰している印象もあって、つまりヘヴィなのにポップで、相変わらず一般人を理詰めで論破するインテリヲタクのようで、要するにわかりやすくシンプルにTesseracTの魅力が37分に凝縮された作品となっている。



その、アルバム『Sonder』を構成する”重さ””ポップさ”という二大キーワードを象徴するのが、幕開けを飾る1stシングルの”Luminary”、そしてアルバムのリード曲で2ndシングルの”King”だ。その”重さ”=”絶望”を司るドゥーミーで鬼ヘヴィな七弦ギターと、”ポップさ”=”希望”を司るダニエルくんの時に激しいシャウトを交えたボイス・パフォーマンス、その”ポップ”と”ヘヴィ”の対比/コントラストをより強調した曲構成は、アルバム冒頭から今作の作風/コンセプトを明確に表している。

ハンス・ジマーが劇伴を手がけた映画『インターステラー』のメイン楽曲である”Cornfield Chase”、その名曲が奏でる主旋律の刹那的かつエモーショナルなメロディをフラッシュバックさせたのが、前作の2曲目に収録された”Hexes”に他ならなくて、まぎれもなくその系譜にある3曲目の”Orbital”は、もはやJulianna Barwick顔負けのアンビエント・ポップみたいな、とにかくSF映画ばりに超スペクタクルなアトモスフィアとダニエルくんによる”ボーカル講師”ならではの感情/表現力豊かな美声に謎の感動を覚える。【ボーカル講師兼テッせのフロントマン】という彼の肩書きは今作でも健在。

一転して再びドゥーミーなヘヴィネスとリーダーのアクルくんお得意のスラップ奏法を披露する4曲目の”Juno”、また一転して前作の名曲”Tourniquet”の系譜にある曲で、それこそAlcest『KODAMA』を彷彿とさせるノスタルジックな夢幻世界の中で、ダニエルくんのスピリチュアル・ボイスと洗練された美しすぎるボーカルが輝き放つ5曲目の”Beneath My Skin”、続く6曲目の”Mirror Image”は序盤から前作譲りのミニマルなアプローチを効かせながら、ダニエルくんのメインストリームのポップスをフォローしたメジャー感溢れるボーカル・メロディとともに安らかに展開し、そして中盤以降のスラッジ・メタルばりの無慈悲な轟音ヘヴィネスから怒涛のドゥーム展開へと繋がる、まさに今作イチのギャップ萌えな曲だ。この手のメシュガーがルーツの現代的なモダン・ヘヴィネスのスタイルでドゥームやったのって、それこそKATATONIA『Night Is the New Day』が初めてだと思うのだけど、この曲ではそのスタイルを更に重くアップデイトしている。先行公開された7曲目の”Smile”もシングルと同じ今作の”重さ”を量るキートラックの一つで、もうなんか重力を超越してドローンみたいな音の壁ができそうなくらいのヘヴィネスに脳が揺さぶられること必須。ラストを飾る8曲目の”The Arrow”は、7曲目の実質アウトロ的な役割を果たしている。

やってることは本当にシンプルで、2ndアルバムのポップなキャッチーさと前作のSF映画の劇伴およびアンビジェント/アトモスフィアを絶妙にブレンドしつつ、そこへ鬼ごっついヘヴィネスをプラスαして、曲単体だけでなくアルバム全体にも音の強弱とメリハリを与えている。完成度は前作以上だが、しかしその驚きは想定外ではなく想定内だ。確かに、「得体の知れない何か」=「未知との遭遇」のような驚きは少ないが、万人におすすめできる安定感抜群の良作には間違いない。聴きやすさという点では、それこそDjent入門書としても全然入りやすいので、このアルバムを期にそろそろ来日しそうな雰囲気もなくはない(皆んなで一緒に”TTポーズ”もといウェイ!!したい)。つうか、SWが来日決めた時点でもう何があっても驚かないです。ちなみに、国内盤には今作の3Dバイノーラルミックス盤が収録されており、手持ちのヘッドホニャイヤホンを使って生のスタジオライブのような臨場感溢れる、よりフラットでオーガニックなサウンドが楽しめる。

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Animals as Leaders 『The Madness of Many』

Artist Animals as Leaders
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Album 『The Madness of Many』
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Tracklist

02. Ectogenesis
03. Cognitive Contortions
04. Inner Assassins
05. Private Visions Of The World
06. Backpfeifengesicht
07. Transcentience
08. The Glass Bridge
10. Aepirophobia

昨今の洗脳ブームの火付け役といえば、M A S A Y Aに洗脳されたX JAPANToshiこと出山ホームオブハート利三だが、最近では朝ドラ女優の能年玲奈が生ゴミおばさんこと女版M A S A Y Aに洗脳されて「のホームオブハートん」に改名した事が記憶に新しい。その能年玲奈「のホームオブハートん」に改名したことで、能年玲奈と今や世界的なギタリストとなったトシン・アバシのジェントユニット「あにまるず・あず・りーだーずっ!」はコンビ解消を余儀なくされ、その傷心した想いをアルバムに込めたと語る、トシン・アバシ率いるAnimals as Leadersの通算4作目となる『The Madness of Many』は、「生身の人間は裏切る!二次元なら・・・いや、AI(アンドロイド)なら僕を裏切らない!」という、数理物理学を極めすぎて頭がおかしくなった天才物理学者の歪んだ愛情と苦悩が、まるで古代エジプトの迷宮の如し複雑怪奇に描かれている。

その天才物理学者の「数字恐怖症」が臨界点に達する時、出口のない迷宮の入り口が開かれる#1Arithmophobia、今度は8bit系レトロゲームみたいな電脳世界へと誘うミニマルなエレクトロニカがヒトの脳幹部に侵入し、そこから身体の神経回路へと、そしてヒトの遺伝子情報を書き換えていく、それこそ「遺伝子組み換え音楽」としか例えようがない#2”Ectogenesis”、更に深いところでスピリチュアルな電脳世界を構築していく#3”Cognitive Contortions”、前作The Joy of Motion”Ka$cade”をPost-Djent化したような#4”Inner Assassins”、気分を一転して西海岸系の爽やかでオシャンティなギター・メロディの中にMeshuggahGojiraばりの鬼グルーヴ/モダン・ヘヴィネスを織り込んだ#5”Private Visions of the World”、基本的なジェント・リフとモダン・ヘヴィネス、エレクトロニカとアトモスフェリックなATMSフィールドを駆使して目まぐるしくスリリングに展開する#6”Backpfeifengesicht”、前半プログレ・メタルっぽくて後半ジャズっぽくオシャンティに展開する#7”Transcentience”トシン・アバシの流麗なソロワークが際立つ#8”The Glass Bridge”、アコギの流麗なメロディをフィーチャーした#9The Brain Dance、この出口のない迷宮の中で深層心理を操られ記憶も遺伝子も書き換えられた天才物理学者は、「この世界はループループしているのか?」という宇宙の真理にたどり着き、絶望した彼は「無限恐怖症」へと陥り、そしてゴールド・エクスペリエンス・レクイエムのスタンド攻撃を喰らって「終わりがないのが終わり」と悟り精神崩壊してしまう最後の”Aepirophobia”まで、まるでヒト=ニンゲンがAIチップならぬ音チップを脳に埋め込まれ、ヒトからアンドロイドへと変わっていく様を精密機器の如く繊細緻密に描き出していく、それこそ人工知能の脅威をリアルに描いたアリシア・ヴィキャンデルちゃん主演の傑作SF映画『エクス・マキナ』を彷彿とさせる、人工知能の発達によりニンゲン社会が徐々に侵食され、徐々に歪んでいく一種の恐怖映像を見せられているかのよう。

AALって、奇数ナンバリングの比較的わかりやすい(わかるとは言ってない)プログ・メタル/ジェント主体のパワー系路線と2ndアルバムWeightlessみたいな難解至極なインテリキチガイ系路線に分類できるのだけど、偶数ナンバリングとなる本作は、2ndアルバムのPost-Djentならぬソフト-ジェント路線を素直にアップデイトさせた作風で、エレクトロ志向が更に強まった事で俄然ゲーム音楽っぽくなってる。コンセプティブなギミック面とジェント/モダン・ヘヴィネス成分のバランスとまとまりが良くて、ハッキリ言って2ndよりも格段に完成度が高いです。とにかく、某都市伝説芸人が「信じるか信じないかはあなた次第です」とか言いながら聴いてそうな音楽ですw
 
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