Artist MØL

Album 『Diorama』

Tracklist

Album 『Diorama』

Tracklist
01. Fraktur
02. Photophobic
03. Serf
04. Vestige
05. Redacted
06. Itinerari
07. Tvesind
08. Diorama
UKを代表する気鋭のインディーズレーベル、Holy Loar Recordsの創始者であるアレックス・フィッツパトリックがやらかした結果、レーベルに所属する気鋭の才能を持つ数多くのバンドが路頭に迷う事となったわけなんだけど、このデンマーク出身の新世代メタルバンドであるMØLもHoly Loarを背負って立つ有望株だったのは確かで、しかし奇遇にも悲運に見舞われたこのタイミングで(代表が新レーベルのAtomic Fireを立ち上げた)業界最大手のNuclear Blastに引き抜かれたのは何の因果か。しかし、本作を聴き終えた今思えば、結果的に新作をリリースするタイミングで半ば不可抗力的に引き抜かれたのは彼らにとって非常に幸運であり好都合な出来事だったのかもしれない。
そんな、フィッツパトリックに見出され鳴り物入りでHoly Loar Recordsからリリースされた1stアルバム『JORD』から約3年ぶりとなる2ndアルバム『Diorama』は、ヘヴィミュージック界を代表する重鎮テッド・ジェンセンをエンジニアに迎え、その楽曲自体も元レーベルおよびフィッツパトリックの趣味嗜好であるAlcestやDeafheavenの影響下にあるブラックゲイズ~ポストメタル、あるいは新世代メタル界のホープとしての“らしさ”を前作から正統に引き継ぎつつも、まるでフィッツパトリックから喧嘩を吹っかけられたBFMVの新譜『BFMV』に加勢するかの如し、それこそフィッツパトリックへの手向けとしてMØLなりの「ご愁傷様」のお気持ちが込められた、心機一転そんな著しく洗練されたメジャー感を打ち出したエクストリーミーなサウンド、そのワンランク上の強度の高さからは確かな正当進化を伺わせる。
『ジオラマ』を冠する本作の幕開けを飾る#1“Fraktur”からして、Alcestの『Kodama』やEsben and the Witchを連想させるUKオルタナ気質に溢れた幻想的なオープニングから、Deafheavenのジョージ・クラークリスペクトな金切り声を皮切りに、バンドの出自がホーリーシーもといホーリーロアーであることを裏付けるようなカチコミ不可避の超絶エピックな洗練されたメロディ、そしてアウトロの音響意識までもDFHVNの正統後継者を襲名すれば、DFHVNの『シン・バミューダ』の影響下にあるブラストビート全開のブラゲを軸としつつイーサリアルなクリーンパートを織り込んだ#2“Photophobic”および#3“Serf”、皮肉にもレーベルメイトとなったDark Tranquillityのミカエル・スタンネもビックリの、ヒマワリ畑が目の前一面に広がる超絶エピックなリフレインを響かせる#4“Vestige”、DFHVNの『普通の堕落した人間の愛』における“Worthless Animal”から一部引用した#5“Redacted”、さしずめ“サンフランシスコ・ネイティブ”ならぬ“スカンディナヴィア・ネイティブ”として覚醒した北欧ならではの叙情的なメロディセンスを垣間見せる#6“Itinerari”および#7“Tvesind”、そして女性ボーカルをフィーチャーしたドラマティックなポストロックを展開する表題曲の#8“Diorama”は本作のハイライトで、改めてDFHVNが今年リリースした『Infinite Granite』において脱メタルしたこのタイミングで、その大きな穴を埋めるようにフォロワーのMØLがDFHVN化の著しい作品を発表するという神展開。とにかく、前作比で著しく上下の奥行きと立体感を増した楽曲面での内的要因と不可抗力(ホーリーシー)による外的要因、その全てにおいてタイミングの良さとバンドの「運」も含め極めて高い完成度を誇る、そして「やっぱりニュークリアブラストがナンバーワン!」と唸ること請け合いの1枚。