Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

Atmospheric

Dream Unending - Tide Turns Eternal

Artist Dream Unending
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Album 『Tide Turns Eternal』
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Tracklist
01. Entrance
02. Adorned In Lies
03. In Cipher I Weep
04. The Needful
05. Dream Unending
06. Forgotten Farewell
07. Tide Turns Eternal

カナダのデスメタルバンド=Tomb MoldのギタリストであるDerrick Vellaとボストンのデスメタルバンド=Innumerable FormsのドラマーであるJustin DeToreの二人がタッグを組んだ新プロジェクト、その名もDream Unendingの音楽性を端的に言ってしまうと(それこそバンド名に「Dream Unending=終わらない夢」と名付けるだけあって)ドリーミーなデス/ドゥーム・メタルのソレで、それこそ90年代のPeacevilleが誇るAnathemaMy Dying Brideに代表されるゴシック御三家の影響を公言するロマンチシズムに溢れた叙情的なドゥームメタルを繰り広げている。要するに、本作のエンジニアであり今をときめくアーサー・リザークとPeaceville時代のAnathemaと現代アンダーグラウンド/デスメタルシーンを支える20 Buck Spinの黄金トライアングルが完成している時点で既に勝ち確なんですね。

そんな彼らの記念すべき1stアルバム『Tide Turns Eternal』は、彼らのドリー夢ーな音楽を司る夢世界の入り口へと聞き手を誘う#1“Entrance”を皮切りに、もはやピンク・フロイド級に音響意識の高いリヴァーブを効かせたギターのアルペジオ/幽玄なリフレーンとトラディショナルなデス/ドゥー夢メタル然とした邪悪ネスが悪夢の中で邂逅する#2“ Adorned In Lies”、キュアーばりに官能的なギターの肌触りに淫夢を感じる#3“In Cipher I Weep”、もはや在りし日のCynicや前身のPortalが創造するスピリチュアルなイーサリア夢の世界にアセンションする#4“The Needful”、デスメタル然とした悪夢のような前半パートから一転して内省的な泣きのメロディに慟哭不可避な後半パートのギャップ萌えに“名は体を表す”かの如し大作の#5“Dream Unending”、HR/HM界の伝説的なギターヒーローであるゲイリー・ムーア級の泣きのギターインストを披露する#6“Forgotten Farewell”、そして(#4の伏線回収とばかり)最後の最後でイーサリア夢なアルペジオをバックに女性ボーカルをフィーチャーした約10分におよぶ表題曲の#7“Tide Turns Eternal”まで、幻夢や淫夢やイーサリア夢など様々なドゥー夢の世界が無限に広がり続け、やがてカオナシそっくりの未知なる生命体と遭遇する、そんな「終わりのないのが終わり」みたいな明晰夢の無限ループって怖くね?

そのPeaceville全盛期リスペクトなドゥーム志向のみならず、フロイドはもとより往年のニューロマンティックを彷彿とさせる魅惑のリフレーンや幽玄なソロワーク、中でもHR/HM界のギターレジェンド=ゲイリー・ムーアとシンクロするかのような泣きのギターソロも本作における見せ場の一つだ。と同時に、#3,#4,#5におけるダイナミックかつプログレスでありながらもシームレスな展開力にも尋常じゃないセンスを伺わせ、とにかくバンド以前にプレイヤーおよびコンポーザーとしてのスキルが伴ってなければ実現不可能な楽曲構成をはじめ、そのウェッティな音作りの面でもオリジナリティの確立および作品の完成度に驚愕する。あとUKチックな泣けるドゥームと言えば、個人的に40 Watt Sunの伝説的な1stアルバムを思い出した。最近ではThouEmma Ruth Rundleのコラボアルバムが比較的シックリくるか。

The World Is A Beautiful Place & I Am No Longer Afraid To Die - Illusory Walls

Artist The World Is A Beautiful Place & I Am No Longer Afraid To Die
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Album 『Illusory Walls』
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Tracklist
1. Afraid To Die
4. Blank // Drone
5. We Saw Birds Through The Hole In The Ceiling
6. Died In The Prison Of The Holy Office
7. Your Brain Is A Rubbermaid
8. Blank // Worker
9. Trouble
10. Infinite Josh
11. Fewer Afraid

フィラデルフィアはペンシルバニアを拠点に活動する、コネチカットはウィリマンティック出身の5人組ことThe World Is A Beautiful Place & I Am No Longer Afraid To Dieは、それこそ90年代のエモシーンを象徴するMidwest emoを産み出した中西部生まれだけあって、そして西海岸サンフランシスコを代表するDeafheavenとレーベルメイトのエピタフ系ならではの伝統的なemo(イーモウ)/ポスト・ハードコアの精神性および「死」にまつわるリリックを軸に、ポストロックならではのリリカルでミニマルな叙情性とプログレ/オルタナならではのアトモスフェリックでドラマティックな楽曲構成、そしてボーカルのデヴィッドと紅一点ケイティからなるツインボーカルの絶妙な距離感が保たれた奇跡的なバンドで、そんな彼らの約4年ぶりとなる4thアルバム『Illusory Walls』は、これまで地域性に根付いた情緒豊かな音楽性を貫いてきた彼らが、ここにきてemo(イーモウ)というイチジャンルを超越したスケールのデカいバンドとして覚醒している。


それこそ幕開けを飾る世界は美しい、もう死ぬのは怖くないというバンド名を冠する#1“Afraid To Die”からして、中西部ネイティブらしいアルペジオ・ギターのメロディがAlcestの1stアルバムに通ずる映画『エコール』ばりに幻夢的なおとぎ話のロリータ世界に誘うと、一瞬暗転してダイナミックなバンドサウンドが合流して近年のBTBAM顔負けのプログレっぷりを垣間見せる。紅一点ケイティのケロケロボニトばりにバブルガムみのあるポップな歌声をフィーチャーした#2、Rolo Tomassiのエヴァみのあるケイティのボーカルとサイケ/アトモスフェリックなシンセを効かせたヘヴィ・プログレ志向の高い#3、バンドの持ち味の一つである優美なストリングスをフィーチャーしたインディ指数の高い#4、その流れを引き継いでストリングスを駆使したアトモスフェリックな静謐的空間を形成する前半から、SWソロみのあるヘヴィ・プログレ然としたギターリフを駆使しながら後半にかけて徐々に強度を上げていく、確実にdredgの正統後継者を襲名しにきてる#5、夜空に煌めくシンセとギターが織りなすポストロック然としたスペーシーな叙情性が織りなす冒頭から一転して、メロコア風に疾走したりヘヴィなギターを駆使したりと転調を効かせながらダイナミックに展開していく、もはや確実にBTBAMの正統後継者を襲名しにきてる#6、その喜劇的な流れを引き継いで壮麗なオーケストレーションとヘヴィなギターとケイティのフィメールボイスをフィーチャーした#7、フィラデルフィアを代表するThe War on Drugsリスペクトなインディロックの#8、本作で最もポスト・ハードコア気質の高い#9、そして本作のハイライトを飾る約16分におよぶ#10“Infinite Josh”と約20分におよぶ#11“Fewer Afraid”という二大超大作まで、バンド史上最長となるアルバムトータル70分超えに耐えうる作品としての強度のみならず、一曲の長さとしても最長を立て続けに更新するこの二つのポストロック大作は、まさに本作を司るコンセプチュアルなロリータ物語の解像度を著しく高める真珠の名曲と言える。物語が結末を迎える#11では、バンド名のThe World Is A Beautiful Place & I Am No Longer Afraid To Dieがメインコーラスの歌詞としてガッツリ引用している点も、冒頭の“Afraid To Die”で起こったこの物語の起承転結を暗示している。

なんだろう、アルバムと楽曲の尺までフルアーマープログレ仕様となった本作を例えるなら、メタル界で言うところのBTBAMがマクロな存在だとすると、このThe WIABP&IANLATDはemo(イーモウ)界におけるミクロなBTBAM的な存在というか。端的に言ってしまえば、完全にコッチ側の領域に足を踏み入れてきた作品であることは確か。それはメタル耳にも確実に刺さるギターの音作りやトリッキーなリフメイクを耳にすれば一瞬でセンスの塊と理解できるくらいに。リアルな話、『普通の堕落した人間の愛』あたりのDFHVNに影響を与えた張本人なんじゃねぇかって、そして昨今のトレンドとは真逆をゆく一時間超えの音源を久々に途中で飽きずに最後まで聴いた気がするほど、本作はとにかく楽曲の強度が尋常じゃなく高い。もはやBTBAMと一緒にツアー回っても全然おかしくないレベルだし、とにかく一昔前の洋楽ロックのステレオタイプみたいな雰囲気、あるいは初めて洋楽聴いた時の懐かしさだったりノスタルジーを誘うメランコリックなメロディが最高のバンドだから聴いて。とりあえずというかなんでもBTBAMが好きなら絶対に聴いて。

Wolves In The Throne Room - Primordial Arcana

Artist Wolves In The Throne Room
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Album 『Primordial Arcana』
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Tracklist
02. Spirit Of Lightning
03. Through Eternal Fields
04. Primal Chasm (Gift Of Fire)
05. Underworld Aurora
06. Masters Of Rain And Storm
07. Eostre
08. Skyclad Passage [bonus]

「姉さん事件です!」って、あの自然大好きDIY系USBMの雄ことWolves In The Throne RoomがRelapse Records/Century Mediaと契約した時ほど叫ばなかった言葉はなくて、だって映画『もののけ姫』のサン顔負けのスピ/リチュアルなDIY精神を貫き通してきた、約20年のキャリアを誇るあのWITTが故郷であるワシントン州の森の中から離れて、コンクリートの壁に覆われたオフィスで現代メタルシーンを代表するレーベルと契約、そしてこの最新作でIsis(アーロン・ターナー)界隈でもお馴染みのMatt Coltonをエンジニアとして迎え入れ、それこそDFHVNもビックリの現代的なポストメタル~ポスト・ブラックメタルをレコーディングするとか一体どんな風の吹き回し?それこそ「姉さん事件です!」ってならない方がおかしい。

いわゆるLiturgy=典礼あるいは儀式=Ritualな、と言っても次期総理候補の高市早苗ちゃんがハマってそうな胡散臭いスピ系に頭がやられちゃった人ではなく、それはまるで真っ当に自然を愛する心を持つDIY精神と、彼らの原典と称すべき初期の荒涼感溢れるアトモスフェリック・ブラックメタルが、いわゆる文明の利器すなわち現代のテスラ・テクノロジーによって著しくモダンに洗練された事で未知なる化学反応を起こし、ソーシャルのソの字もない幽玄かつ神秘的な森の中で動物や自然と一体化して暮らす“アンダーグラウンド”なニューエイジャーと、カリフォルニア州はサンフランシスコなど人々が密集する都市部で『マスク』と『サンバイザー』を着用しながら生活する“メインストリーム”な現代人の魂をつなぎ合わせる“イコン”即ちシシ神様の代弁者として、ソーシャルディスタンスが強制され都市部の一極集中が見直されつつある時代に、この『Primordial Arcana』という名の儀式(Ritual)を通して生きてるって何だろ 生きてるってな~に?の意味を人類に問いかけるかのよう。


それこそアイルランドのブラック・メタルバンド=Primordialばりに勇壮で超絶エピックな、そしてヘヴィでメタリックなATMSUSBMを繰り広げる#1“Mountain Magick”からして「Relapseと契約した結果」を示し、民謡的なフォーク・ミュージックとシンセが奏でる幻想的なシンフォニーがプログレスに交錯しながら自然崇拝の儀式を執り行う#2“Spirit Of Lightning”、その荘厳な“儀式”に必要不可欠となる未開の部族だけに伝わるトライバリズムをフィーチャーした曲で、ボーカルにTrap ThemGalen Baudhuinを迎えた#3“Through Eternal Fields”、US版森メタルに棲む妖精の立場から都市部に奏でるポストメタルの#4“Primal Chasm (Gift Of Fire)”、再び住む森に帰り水辺に佇むシシ神様を呼び起こす#5“Underworld Aurora”、そして自然界で暮らす人々の魂を浄化するシンフォニックなATMSBMと、都市部で暮らす人々の魂を浄化するAltar Of Plaguesさながらの現代的なポストメタル、その分断された二つの魂が一つに邂逅する#6“Masters Of Rain And Storm”は本作のハイライトで、WITTがアイデンティティとしている喜多郎リスペクトなアンビエントやニューエイジと呼ばれる環境音楽的なスピ系インストの#7“Eostre”を最後に、本編は幕を閉じる。そして、本編における自然崇拝と対をなす悪魔崇拝、すなわち邪教的な儀式という名の『人類はっぱ隊計画』による魂の浄化、すなわち『エヴァ・チンフィニティ』を完了させるボートラの#8“Skyclad Passage”まで、いわゆるアンビエント主体の抽象的(ファンタジー)な音楽に逃げず、とにかく過去イチでクソ真面目に現実的かつ叙情的な「(ブラック)メタル」やってるギャップが最高の1枚。要するに「AoP化」ですね。

Spectral Lore - Ετερόφωτος

Artist Spectral Lore
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Album 『Ετερόφωτος』
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Tracklist
01. Ατραπός
02. The Golden Armor
03. Initiation Into The Mystery
04. The Sorcerer Above The Clouds
05. Apocalypse
06. Ετερόφωτος
07. Terean

昨年、USBMのMare Cognitumとのスプリットアルバム『Wanderers: Astrology Of The Nine』という2時間映画並の超大作を発表するやいなや、アンダーグランドメタルシーンで一躍大成功を収めた、ギリシャ人のAyloss氏による独りブラック・メタルプロジェクト=Spectral Loreのオリジナル・アルバムとしては2014年作の4thアルバム『Ⅲ』から約7年ぶりとなる本作の5thアルバム『Ετερόφωτος』は、アートワークに模されたギリシャ神話に登場する巨人神族の一人であるプロメテウスが人類を創造し、その人類に火という名の知恵を与えたように、混迷を極めし現代の腐敗と堕落にまみれた終末人類に対して、それすなわち“主”の代弁者として革新的かつ革命的な叡智を授けるような、まさに「超越的なブラック・メタル」すなわち“transcendental black metal”の傑作となっている。

アルバムの幕開けを飾る#1“Ατραπός”からして、冒頭からスプリットアルバムの延長線にある荒涼感あふれるブラック・メタルの精神性とプログレ・メタルの構成力、そしてUSレジェンド=TOOL『Lateralus』を経由したJambinai『ONDA』を彷彿とさせる呪術的なウネリを効かせたリフ回しと密教的なボイスが織りなすオルタナティブな革新性がエクストリーム合体した曲で、この時点で大成功を収めたスプリットアルバムとは一線を画す代物である事がわかる。

その大袈裟に言うと“ブラック・メタル化したTOOL”を象徴するのが、TOOLの約13年ぶりとなる復活作『Fear Inoculum』に対するブラック・メタル側からの回答と言わんばかりの#3“The Sorcerer Above The Clouds”で、イントロからTOOLの復活作を司る“Invincible”が間違って始まったかと錯覚するレベルの、それこそ呪術廻戦おっ始めようってんじゃなかろうもんのTOOL然としたリフとギターワークの(オマージュってレベルじゃない)オマージュに笑う(アウトロも同様に)。結局、このアルバムの何が凄いって、神話上の巨人族であり人類を創造した始祖プロメテウスと、その“主”から超越的な叡智を授かった『進撃の巨人』のメタファーであるTOOL『Fear Inoculum』という二体の巨人をバチバチに共鳴させている点で、他にもImperial Triumphantばりのアヴァンギャルド・ブラックを展開する#5“Apocalypse”、そのアヴァンギャルドな流れを引き継いだ#6“Ετερόφωτος”では、再びTOOLならではのトライバルなアプローチとデレッデレッと複雑怪奇にウネるリフが織りなすクリーンパートを披露する。

そしてラストを飾る約20分に及ぶ#7“Terean”では、本家TOOLを凌駕する一寸の光もない“暗黒森林”を繰り広げるダーク・アンビエントで、それこそ『エイリアン』シリーズの前日譚である映画『プロメテウス』のように、紀元前32億年前の「無」状態の地球にプロメテウスを模したエンジニアが降臨し、自らのDNAを拡散し人類の誕生を促す瞬間みたいな、そんな新人類の誕生を描き出すような神秘的かつ密教的な典礼(Liturgy)の中から次世代のシン・エイリアンもといシン・人類が生まれちゃうやつ・・・!

実は、翻訳できない謎の古代文明文字繋がりでもあるATVMのデビュー作に引き続き、本作もコリン・マーストン案件と聞いてなるほどガッテンする完成度の高さで、確かにKralliceの新譜も『エイリアン』チックなSF要素満載の傑作だったけど、やっぱクラリスすげぇな・・・なんて話はさて置き、ヘタしたら本家TOOL『進撃の巨人』を超えてんじゃねえかくらいの、人によっては例のスプリットアルバムよりも気に入ること必須の一枚。

Hum 『Inlet』

Artist Hum
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Album 『Inlet』
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Tracklist
01. Waves
02. In the Den
03. Desert Rambler
04. Step Into You
05. The Summoning
06. Cloud City
07. Folding
08. Shapeshifter

ハムことイリノイ州はシャンペーン出身のHumは、90年代のグランジ/オルタナ全盛の頃にちょっとしたヒットした曲が一つあったりなかったりする、少なくともメインストリームのシーンとは一線を画した、しかし一部ではレジェンド的な扱いをされていた知る人ぞ知るマイナーなバンドだったらしい(らしい)。自分は失礼ながらこれまで存じ上げてこなかったバンドで、そんな2001年に解散した彼らの約22年ぶりとなる復活作が90年代以降のヘヴィロックを総括するかのような歴史的名盤な件について。

まず幕開けを飾る#1“Waves”から、それこそ2000年代初頭にムーブメントを起こしたIsisPelicanを連想させるポストメタルの王道、そのド真ん中をブチ抜くオールドスクールなポストメタル・リフが津波の形相で押し寄せる濃密なヘヴィネスと、同90年代に産声を上げたポストロック〜シューゲイザーラインのATMSフィールドを張り巡らせる、一種のミニマリズムを極めたかのようなヘヴィロックで、この倦怠感剥き出しの歌や夢遊病患者の如し幽玄な浮遊感からして、いかにも90年代のオルタナ全盛を地肌で直に経験した人たちの音作りって感じ。打って変わって、イントロからそこはかとないIDM風味なスペース音とシューゲイザー由来のノイズ成分とTorche由来のコア成分を配合したハリと弾力のあるヘヴィネスがLiturgyJesuを連想させるドゥームゲイズの#2“In the Den”、まるで催眠術にかけられているような内省的な魅惑のリフレインともはやドゥーム・メタルに片足突っ込んじゃってるニューロシスばりの遅重なヘヴィネスが艶かしく官能的に絡み合う#3“Desert Rambler”は、それこそメタルの開祖であるブラック・サバスは元より、新世代ドゥーム・ベアラーことPallbearerと90年代のオルタナを象徴するシューゲイズレジェンドのマイブラが、この2020年というバグった世界線で運命的な邂逅を果たしてしまったような曲。

再びBPM指数を上げてハムのルーツであるイリノイ州を代表するエモレジェンド=アメリカン・フットボールばりのemo(イーモゥ)〜ポスト・ハードコアラインのニューウェイブなエモさとコアさを押し出していく#4“Step Into You”、まるで宇宙の暗黒物質をコーヒーミルですり潰したような“旨味”が焙煎された、ニューロシス顔負けのヘヴィネスという名の巨人の壁が“地ならし”を発動させ地底から大地を揺るがす#5“The Summoning”、古き良きオルタナを懐古するかのようなイントロから(こちらも13年ぶりに復活した)TOOLA Perfect Circle、そしてDeftonesなどの90年代後半から00年代のヘヴィロックを牽引していく偉大なバンドにもハムが影響を与えている可能性を示唆する#6“Cloud City”(デブ豚(ハム)だけにw)、再びマイブラ直系のシューゲイザー/ドリーム・ポップならではの夢心地な気分にさせるリバーブをかませたリフレインを繰り返し、アウトロは宇宙規模のスペース・アンビエントを展開する#7“Folding”、そしてノスタルジーを誘うメランコリックなメロディを引き連れて、90年代emo(イーモゥ)のように純粋無垢だった青春時代のあの頃の思い出が時が止まったままの姿で帰ってくるかのようなラストに号泣不可避の#8“Shapeshifter”まで、このまま永遠に優しく圧迫されたいと願うこと請け合いなお前を真綿で締めつけるようなヘヴィネスと、まるで「地球最後の日」みたいな非現実的な美しさを内包したメロディは、ある種の漫画『デビルマン』のラストシーンとも共振する美しくも残酷な終末思想的世界観を形成する。

まさに90年代以降の全ヘヴィロック大集合なアルバムで、何よりも肉厚で濃厚なヘヴィネスの「音がいい」。正直、この一言に尽きる。まず#1のセンスしかない転調部からはDeftones〜Juniusラインを、往年の90年代オルタナやエモ〜ポスト・ハードコアからはマイブラは元よりマイナーバンドという位置づけからもCave Inを、ハードコア/パンクルーツの“コアさ”からはNothingWhirrなどのDeafheaven界隈をフラッシュバックさせる。とにかく、ハードコア/パンクだったり、シューゲイザーだったり、メタルだったり、メタルはメタルでもドゥーム・メタルだったりポストメタルだったり、あるいはグランジだったり、実のところやってる事はあくまでシンプルイズベストで、ヘビネスはヘビネスでもその時代その時代の様々なルーツを持つヘビネスの多様性、それは人種の違いのようでもあり、同じ人種でも一人一人それぞれの個性とアイデンティティを持つ、その“多様性”こそが本作を傑作たらしめているのも事実。あと決して90年代懐古で終わるアルバムではなくて、90年代後半から00年代のヘヴィロック界を担うバンドへの影響を認知しつつ、一方で00年代から10年代のポストメタル界を担うバンドとも共鳴するヘヴィネス兼ヘヴィロックであり、例えばDeafheaven『普通の堕落した人間の愛』とも共振するのは流石にちょっと感動した。あとリフとメロディのリフレインが曲作りの根幹にあるところはスロウコアを聴いてる感覚に近いかもしれない。

確かに、そのバンドの過去やディスコグラフィーを知っている方がより一層楽しめるかもしれない。けど、逆に過去を知らなくとも純粋に「いい曲」と感じられる作品こそ、この世で最も素晴らしい音楽なんじゃねぇか説を証明するかのような、そんな全ヘヴィ・ミュージック好き必聴の一枚(この紫の色味が絶妙なアートワークからして優勝)。ちなみに、本作をBandcampで買うと正真正銘の“ありがた迷惑FLAC【24bit/88.2kHz】”でDLさせてくれます(容量1ギガ)。
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