Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

2021年度BEST

Turnstile - Glow On

Artist Turnstile
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Album 『Glow On』
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Tracklist
01. Mystery
03. Don't Play
04. Underwater Boi
05. Holiday
06. Humanoid / Shake It Up
07. Endless
08. Fly Again
09. Alien Love Call
10. Wild Wrld
11. Dance-Off
12. New Heart Design
14. No Surprise
15. Lonely Dezires

ロードランナーの秘蔵っ子ことメリーランドはボルチモア出身の5人組、Turnstileが昨年リリースした3thアルバム『Glow On』がめちゃんこヤバい。ハードコア/パンクを根っこのルーツに持ちながらも、ソリッドでエッジーなリフを中心に、カウベルやクラップ、ハイハットやパーカッションの細部にまで“こだわり”を感じさせるユーモラスなアレンジ、その「ユニークでありながらキャッチーでエッジーなオルタナティブ・ロック」って、それこそ「10年前の自分が好んでよく聴いていた奴じゃん」と少しノスタルジックな気持ちにさせる、爽快感溢れるメロディック・ハード(コア)ロック・サウンドを展開している件について。

まるで相対性理論ばりにメルヘンチックなシンセが鳴り響くイントロから、それこそ『宇宙人ポール』みたいなコメディ&SF映画を彷彿とさせる、例えるなら宇宙人転生系のラノベで可愛い宇宙人が空から舞い降りてくるシーンの効果音みたいな雰囲気で始まる#1“Mystery”からして、ドライブ感溢れるエネルギッシュかつハードロック的なリフや過去作には見受けられなかったギターソロが織りなすオルタナティブなポスト・ハードコア然とした、少なからずオールドスクール寄りだった過去作とは一線を画すような曲となっている。

1stアルバム『Nonstop Feeling』の系譜にあるハードコアならではの強靭なリフとヘヴィなブレイクダウンを交えながらダイナミックに展開する、ハイハットやパーカッションをはじめカウベルみたいなユニークなアレンジが光る#2“Blackout”、クラップやパーカッションを交えたポップなピアノの旋律と身体を突き動かすパンクビートを刻むエッジーで破天荒なリフが織りなすテンションアゲアゲなロックンロールの#3“Don't Play”、メンフィスのSSWジュリアン・ベイカーをコーラスに迎えた、90年代のオルタナを象徴するシューゲイザー/ドリーム・ポップの影響下にあるリヴァーブを効かせた曲で、ほのかにジュンスカ味というかAOR的なノスタルジーを漂わせる#4“Underwater Boi”、冒頭のド直球のパンクスからの転調パートが鬼カッコいい#6“Humanoid / Shake It Up”、UKのSSWブラッド・オレンジがコーラスで参加した#7“Endless”、デンマークのVolbeatばりにダークでメタリックなリフやメタル然としたソロワークまでもメタルメタルしてる#8“Fly Again”、再びブラッド・オレンジをスポークン・ワードとしてフィーチャリングした曲で、そして再び『宇宙人ポール』とのアブダクションを試みるかのような90年代のUKドリーム・ポップ然とした#9“Alien Love Call”、クラップに釣られてついついジャンピングモッシュしたくなる#10“Wild Wrld”、90年代から一転して今度は80年代のニューロマンティック/ポストパンク的なヘアメイクを施した#12“New Heart Design”、出自の根っこにあるハードコア・パンクに直結したサウンドとヒップホップ的なアウトロのギャップがセンスしかない#13“T.L.C.”、三度ブラッド・オレンジをメインボーカルに添えた#15“Lonely Dezires”まで、まるでおとぎ話のようなポップネスとハード(コア)の絶妙なバランス、メタル耳からしても魅力しかないエッジを効かせたリズミカルなリフの数々とエゲツないオルタナティブなアレンジセンス、そして素直に聴いてて楽しい爽快感溢れるロックンロールのキャッチーさを兼ね備えた名盤ここにあり。

それもそのはず、前作の『Time & Space』は界隈の重鎮ウィル・イップがプロデュースを担当、そして今をときめくアーサー・リザークがレコーディングに携わったド直球のハードコア/パンク作品だったのに対し、本作の『Glow On』ではエミネムやアヴリルの作品でもお馴染みのプロデューサーことマイク・エリゾンドを迎えた影響か、コアとなる音のベースはそのままに、オルタナ化およびメタル化が著しく進行した、すなわちオルタナティブ・ヘヴィとしての素質が開花した(ゲストのジュリアン・ベイカーやブラッド・オレンジの存在も含めて)メジャー感マシマシの大衆性に富んだロックンロールとして大化けしている。2021年の鬼マストアイテム。

Parvāne - Parvāne

Artist Parvāne
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Album 『Parvāne』
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Tracklist
01. 蛾の死
02. 追試
03. 毛毛蟲放克
04. 見てるだけの拷問
05. 十三月の鯨
06. 御破算
07. 浮く家

2022年に復活を控えている現代プログレ界の重鎮Porcupine Treeの頭脳スティーヴン・ウィルソンのこれまでのソロ活動において、彼はPTでは手が出せないような数多くの実験的なアプローチを自身の楽曲に取り入れてきた。それを象徴する一つがヒップホップからの影響である。わかりやすい所では、昨年リリースしたソロ作の『The Future Bites』において、同年にイェに改名したカニエ・ウェストの“On Sight”をオマージュした楽曲が見受けられた。そのようにして、いわゆるプログレとヒップホップという相容れないと思われた二つの音楽ジャンルの垣根を超えた調和、それはSWソロにおける実験性が行き着くところまでたどり着いた=「終着点」を意味していた。

何を隠そう、PTのスティーヴン・ウィルソンが60年代の伝統的なプログレッシブ・ロック側からヒップホップの解釈をもって現代的にアプローチしたオルタナティブなエンジニア兼プロデューサー兼ミュージシャンならば、言わばSWの逆の立場すなわちヒップホップ側から伝統的なプログレッシブ・ロックの解釈を現代音楽のヒップホップに落とし込んだエンジニア兼プロデューサー兼ラッパーこと、試金(Sicken)氏が昨年5月に立ち上げた音楽プロジェクト、その名も蛾を意味するParvāneである。

マスタリングや一部の楽器以外ほぼ全ての楽曲制作を試金氏が担っているParvāneの音楽は、例えるなら東京のヒップホップユニットDos Monosと共振するオルタナティブなヒップホップイズムとデスメタルやハードコア/パンクに精通する暴虐性および反骨心、そしてPorcupine TreeDeftonesに精通するニューウェイブ/プログレ/ネオサイケ/インダストリアル/フュージョンを経由したシンセやギターによるアレンジがエクストリーム合体した、もはやアヴァンギャルドやエクスペリメンタルという生半可な言葉じゃ説明できない言語化不可能なほど前衛的、それこそ既存のヒップホップにおける常識や概念をぶっ壊して、ヒップホップの存在を超越的(transcendental)な領域にアセンションする事に成功している。

ヒップホップとプログレの邂逅と聞いて真っ先に思い出されるのは、やはりトラックメイカーである荘子itがフリージャズやプログレの解釈を現代ヒップホップに落とし込んだDos Monosがその最たる存在だが、このParvāneはもっと直感的に60年代および70年代のプログレッシブ・ロックをヒップホップのフォーマットに落とし込んだ、いわゆる転調や変拍子を織り込んだプログレならではのバンドサウンドをトラックの基準としている。その音楽的な面も含め、既存のヒップホップから一線を画していると思ったのは、それこそヒップホップ特有の文化であるフィーチャリング文化やサンプリングを一切踏襲していない点にある。そのDeftonesの影響下にある歪んだギターサウンドをはじめ、ドラムやベース、そしてシンセという一般的なロックバンドでも馴染み深い楽器が織りなす、ロック畑でも余裕で通用するトラックメイキングにしても、少なからず既存のヒップホップ畑の中で甘んじているラッパーには実現不可能なサウンドメイキングは、このParvāne最大のオリジナリティであり、同時にそれは試金氏のアイデンティティに直結する事柄でもある。

また、試金氏は文芸誌「文芸思潮」の第17回現代詩賞に投稿され、総数732作もの応募の中から最終選考の候補作となり、佳作を受賞しているという経歴の持ち主でも知られる。そんな試金氏にとって処女作となる本作においても、その12~14世紀イスラーム哲学の流れを汲んだ独創的なリリックをはじめ、「処女膜」などの赤裸々なワードセンスやフロウの刻み方も俄然Dos MosnosのMC没を彷彿とさせ、中でも“プレイヤーとしての試金氏”と対になる“ラッパーとしての試金氏”その特異性、および思想的な一面を垣間見せる#3“毛毛蟲放克”の(某ドラえもんや某虫ポケモンも登場する)演劇あるいは“試金氏なりのポエトリーラップ”というより一種の現代的な落語パートにおけるお前が安倍晋三なら、俺はエイブルトンライヴだ。お前が竹中平蔵なら、俺は竹内朋康だ。お前が菅義偉なら~という詩人ラッパーらしいリリックの説得力ったらない。なお、その三島由紀夫が憑依したかのような火の玉リリックに被さるようにして、心のなかでフィーチャリング俺がベーシックインカムカムイン!ベーシックインカムカムオン!みたいなエアフロウを刻んでいる模様。

まるで村の入口に「日本国憲法この先通じず」みたいな看板がそびえ立ってそうな辺境の田舎で夜な夜な執り行われる奇祭、それこそGEZANに肉薄するオルタナティブな奇祭の幕開けを飾る#1“蛾の死”からして、開口一番PT『Fear Of A Blank Planet』を彷彿とさせるサイケデリックなシンセとノイズロック的なギター、そしてこの奇祭を演出する長である試金氏のGulchばりにオカルティックでパンキッシュなポエトリーリーディングが、Diskordばりにカオティックな不協和音(dissonant)を狂奏する一種のハードコア・ヒップホップあるいはエクストリーム・ヒップホップで、オートチューンを効かせた試金氏のガナリ声やアコースティックなギターを神事的に駆使しながら俄然サイケに揺らめくシンセを強調した#2“追試”、グリッチ/ノイズ/インダストリアルな側面とジャズ/フュージョン的な側面が調和した#4“見てるだけの拷問”、不協和音を奏でるサイケデリックなシンセから突如Deftones級のギターのヘヴィネスが全てをなぎ倒していく#5“十三月の鯨”など、そのオルタナティブなインストゥルメンタルや非凡な楽曲構成はもとより、ロックミュージックならではのリズムやグルーヴの刻み方からは彼の類稀なる才能を伺わせる。

全7曲トータル約46分、そのうち3曲が8分を超える長尺という既存のヒップホップからは到底考えられないプログレッシブかつ前衛的な本作において、そのヒップホップとプログレの邂逅が最も顕著に表現されている約10分に及ぶ#6“御破算”は、PT然としたネオサイケなシンセと打ち込みをフィーチャーしたイントロから、後期SWソロを彷彿とさせるオルタナティブ・ヘヴィなギターリフやキング・クリムゾンもビックリのセンスしかない変拍子および転調を惜しげもなく盛り込んだプログレを極め尽くしたようなサウンディングを繰り広げ、終盤からGEZAN化するとトライバリックな奇祭の総仕上げとして御破算(-5+8=3)!御破算(-5+8=3)!と呪詛のような声劇を展開する。そして冒頭のフュージョン然としたオシャンティなニューエイジ/AORを耳にしたら本作がヒップホップだと勘づく人は誰一人としていないであろう#7“浮く家”は、このガスリー・ゴーヴァン顔負けのギタープレイを本職ラッパーの詩人が演奏していると考えただけでエモいというか、そんなプログレ脳とヒップホップ脳をマルチに兼ね備えた試金氏こそ「ヒップホップ界のスティーヴン・ウィルソン」と言っても過言ではないのかもしれない。

今回、その試金氏が当ブログの読者とのことで直接メッセージを頂いたのが事の発端っちゃ発端で、試金氏曰く主に(SWはもとより)DeftonesUlverに関する記事の内容に賛同して頂いているとのことで、そんな筆者のような特殊な趣味嗜好を持ったブロガーのフォロワーが生み出した音楽と言ったら随分大げさだけど、少なからず当ブログの読者にもぶっ刺さること請け合いの60年代のプログレッシブ・ロックへのリスペクトと愛に溢れた音楽をやってる事には変わりなくて、それこそ当ブログにおいて決してメインストリームの扱いとは言えないヒップホップが当ブログの穴というアナ(ワームホール)を通すことで一つに繋がる、まるで男女のように相容れることのないジャンル同士の垣根を超越(transcendental)した唯一無二のヒップホップが試金氏であり、このParvāneなんですね。

この処女作は、まさにヒップホップが現代のパンク/ロックであるとされる所以、それを確信付けるようなヒップホップ=ロックな作品であり、既存のヒップホップの常識を覆す三島由紀夫並の才能に相見える事のできる傑作なので、まず当ブログの読者にこそ一聴して頂きたい所存。むしろ逆に、こんな才能の塊みたいな詩人に自分の拙い文章を読まれている事にただただ恐縮するというか、逆に感謝しかないです。とは言え、こんな奇才がアンダーグランドで埋もれてる日本のヒップホップ界隈、レベルが高すぎるのか、あるいはリスナーの審美眼が無さすぎるのかは不明というか皮肉はさて置き、とにかくある意味では2021年の年間ベストアルバムのスピンオフに位置づけられる“裏ベスト”的な一枚。

【追記】
試金氏本人様より、#7“浮く家”のギターは知り合いの人による演奏であり、それ以外の本作のギターは全て打ち込みであるとの回答がありましたので、今ここで訂正させていただきます。

Album of The Year 2021

13位 スティーブン・ウィルソン 『ザー・フューチャー・バイツ』
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ソロ6作目となる本作リリース後に本家Porcupine Treeの復活を宣言したことが全てで、わかりやすく端的に言ってしまえば、2009年のPT活動休止前最後の賛否両論作『The Incident』がSWソロにおけるこの『ザー・フューチャー・バイツ』というわけ。逆に言えば、音楽的にもコンセプト的にもソロとして描きたいことは全て描ききったって事なんだと思う。自身でインターネットコミュニティが存在しなければ自分の音楽キャリアは既に終わっていたと語るだけあって、SWはその辺の(評判に対する)見極めが本当にうまいね。とにかく、2021年に起こった出来事の伏線が本作のコンセプトみたいな所あって、というのもシングルのMVにディープフェイクとして登場するFacebookのCEOマーク・ザッカーバーグが社名をMeta(メタバース)に変更したり、アマゾン元CEOのジェフ・ベゾスや前澤友作が宇宙旅行というコロナ禍で拍車のかかった格差社会を象徴する“金持ちの道楽”を見せつけたり、任天堂が有機ELモデルのスイッチを発表したり、日本を含む世界中で火山の噴火が活発化すると同時に富士山噴火の危機感を煽る陰毛論者が活発化したり、SDGsのハンパないゴリ押し、そして一部の曲で引用しているカニエ・ウェストがイェに改名したりと、本作は一種の未来予測的な作品となっていたのも事実。そんな2021年を象徴する一枚として、内容云々よりも今年の年間BESTのドンケツを飾るに相応しいという理由でのランクイン(これ以上は順位で察してとしか言えない)。ともあれ、来たるべき2022年に完全復活を予定しているPTが一足先にFソニーUK(Music For Nations)から発表したシングルの“Harridan”は、黒歴史もとい賛否両論の問題作となった『The Incident』ではなく、一作前の『Fear Of A Blank Planet』を彷彿とさせる作りで、恐らく来年リリースされるであろうアルバムが今から待ち遠しいし、その暁には2018年に行われたSWソロの奇跡の来日公演以来となる、そして伝説のウドーフェス以来?となる本家PTでの来日公演を期待したい(ドラムのギャヴィン・ハリソンは先日のキンクリで一足先に来日してるけど)。しかし、未だにこれが今年の作品なのが信じられないというか、もう遠い昔のような気がする。

12位 Deafheaven 『Infinite Granite』
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本作をレビューする前に前作の『普通の堕落した人間の愛』の(当時のままストップしていた)レビューを書き終わらなきゃで、やっとのことでその記事を完成させた後にTEAM-ABCの一員である某ノクティス王子が『普通の堕落した人間の愛』すなわち『不倫』をやらかしたという文春砲をブチ込まれたかと思えば、満を持して本作のレビュー記事をアップした直後に本作の鍵を握る「浜辺に寄せて返す美しい波」こと女優の浜辺美波が文春砲をブチ込まれてから、その直後に本作におけるもう一つの鍵を握る『シン・エヴァンゲリオン』の庵野秀明監督が手がける『シン・仮面ライダー』のヒロインとして浜辺美波が抜擢されたと聞いた時は、流石にSWもビックリの未来予測感あって笑った。でもOLDCODEXの解散は「シャレにならない、もう笑えない」し、同じTEAM-ABC男子部の立場からアドバイスするなら、ノクティス王子は硬派ゲーことFANZA版ラスオリのロボット役から人生やり直せばいいと思うよ。そのノクティス王子繋がりで例えるなら、少なくとも前作の『不倫』までは「私はFF14を続けるよ!」ならぬ「私はブラックゲイズを続けるよ!」を貫いてきたが、本作ではついにその牙城が崩れ去った。しかし、本作におけるUKロックおよびシューゲイザー化の伏線として、パワハラやらかし芸人こと伊集院光の深夜ラジオで日本のシューゲイザーバンドFor Tracy Hydeの曲が流れたのはちょっとした引力というか、ある種の未来予知だったのかもしれない。本作もSWの新譜と同様に賛否両論あるかもしれないが、少なからず個人的な今年の「Spotifyまとめ」の音楽ジャンルランキング2位にブラックゲイズが支持された大きな要因の一つである事には変わりない。

11位 For Tracy Hyde 『Ethernity』
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前途したように、今年の初めに伊集院パワハラ光の深夜ラジオから流れてきた時に「シューゲイザー化したYUKIじゃん」と思ってビビッときたバンドの一つ。そして、Deafheavenの『不倫』における西海岸と中西部のemo(イーモゥ)を紡ぎ出すロードムービー要素と、『Infinite Granite』におけるシューゲイザー/ドリーム・ポップ路線をつなぎ合わせる中間地点がフォトハイであり本作だった。もはや日本でツーマンしても全然おかしくないくらい、とにかく近作におけるDFHVNとのシンクロ率が異常で、往年のJ-POPを経由したフックに富んだキャッチーでノスタルジックなメロディとシューゲ/ドリーム・ポップあるいはインディフォークなどの様々なスタイルが調和したフォトハイ流のギターロックは、インディーズの青春ロードムービーさながらの物語を映し出す。また、作中にオバマ前大統領の演説をサンプリングしてるのもSWの新譜と共振してて面白い。

10位 CVLTE 『HEDONIST』
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今年のBMTH枠。正直、今年に入ってBMTHがシングルとしてポスト・マローンをオマージュした“DiE4u”をリリースした意図が全く読めなかったんだけど、先日リリースされた同曲のハイパーポップ風リミックスを耳にしたら、『amo』はもとより昨年末のEP『Post Human: Survival Horror』に始まりK-POPのaespaを経由してCVLTEの本EPまで一直線に繋がった瞬間、全てに納得した。要するに「最近のBMTHってハイパーポップ路線だったのか」と。本作の何がすごいって、一言で例えるなら「K-POP化したFuneral For A Friend」でありながらも、新世代メタルのコード・オレンジ・キッズが産み落とした日本の新世代ラウドシーンを代表するペことPaleduskをフィーチャリングする事で、ハイパーポップ化した近年のBMTHと直接的ではなく間接的に繋がるしたたかな頭の良さ、この一点に尽きる。そして、本作でフィーチャリングしている日本のハイパーポップ界におけるシャイニングスターである4s4kiは、(今年のフジロックで初めて観たけど)日本のアーティストで唯一BMTHとコラボできる存在だと確信させた。

9位 Mastodon 『Hushed and Grim』
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今年の俺感読者なんじゃねぇか説。というのも、昨年にDeftonesが発表した『Ohms』がヘヴィミュージックシーンに提示した“20年代のヘヴィネス”に対するドンからの回答が本作。その伊集院パワハラ光もといDeftonesとHum、そして盟友のBaronessが提示したオルタナティブな現代ポストメタルをはじめ、SWソロ等の対外的な要素で成り立った一枚。

8位 Every Time I Die 『Radical』
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曲がいい。

7位 ZillaKami 『DOG BOY』
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もう一つのBMTH枠。というのも、BMTHのフロントマンであるオリヴァー・サイクスがロシアの国民的音楽ユニットのIC3PEAKとのコラボ曲を発表したのは、BMTHのハイパーポップ化の流れを汲んだ動きなのは理解できたけど、まさか既に、というか昨年にトラップメタル界の二大巨頭であるジラとGhostmaneがIC3PEAKとコラボしてるなんて思ってもみなかったから、それを知った時は素で「嘘だろ・・・そこに直結する案件なのかよ」ってなった。ジラが敬愛するコリィ・テイラーのアナウンスから始まる本作は、Nirvanaに代表される90年代のオルタナ/グランジ、そして90年代後半に一世を風靡したKornやDeftonesに代表されるヌーメタルの解釈を通したエモラップならぬエモロックの傑作で、もはやラップそっちのけでカート・コバーンやコリィリスペクトに溢れたボーカルワークは愛しかない。紛れもなく昨年末の『Post Human: Survival Horror』以降のつながりの一部として組み込まれている一枚。完全に同じZ世代であり日本の(sic)boyをワンパンKOしちゃってる。

6位 Ulver 『Hexahedron』
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今年のエヴァ・インフィニティ枠。いわゆるライブ音源って普段なら年間ベストに入れるもんじゃないと思うけど、本作だけは完全に別。2020年に発表された『惡の華』の再構築であり、さしずめUlverフィーチャリング坂本龍一&久石譲&岡田拓郎みたいなインプロ感に溢れたミニマル・ミュージックは、聴いているだけで無限(インフィニティ)にトリップからのマトリックス状態に陥ること請け合いの一枚。

5位 The Armed 『Ultrapop』
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今年の俺的GOTYである『サイバーパンク2077』のサントラにも参加しているバンドならではの「ハイパーポップ!ハ~イ!」ならぬ「ウルトラポップ!ハ~イ!」な一枚。日本のハイパーポップ界を牽引する4s4kiは、それこそ『サイバーパンク2077』にビジュアル的にも音楽的にも適合するアーティストで、自分の中でThe Armedと4s4kiはほぼほぼ同ジャンル扱い。

4位 Parannoul / Asian Glow / sonhos tomam conta
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今年の碇シンジ枠。韓国ソウルとブラジルのサンパウロで活動するブッ壊れローファイメンタル三人衆が碇シンジ級のパリパリATフィールドを互いに中和させて、最終的に3本の槍(ガイウス・カシウス・ロンギヌス)を自分自身に突き刺してメンタル完全崩壊しちゃう傑作。

3位 Parannoul 『To See The Next Part Of The Dream』
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いわゆるぶっ壊れローファイメンタル三人衆のリーダー格が放つ、『新世紀エヴァンゲリオン』や『リリィシュシュのすべて』をはじめとする日本の90年代サブカルチャーの影響下にある新世代シューゲイザーの歴史的ぶっ壊れ名盤。

2位 Ad Nauseam 『Imperative Imperceptible Impulse』
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今年の俺的「Spotifyまとめ」の音楽ジャンルランキング3位の“デスメタル”を象徴する一枚。

1位 東京事変 『音楽』
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あくまで林檎ソロ派で、復活以前の事変は全くと言っていいほど刺さらなかったんだけど、本作は今年の年間ベストにランクインした全13枚の作品を一つに『総合』するに相応しい伊澤っち無双であり、「誰か」や「何か」に代わってドドンパ級にドンピシャのポスト・プログレッシブやってる名盤。事実、この年間ベスト記事も先日リリースした『総合』を聴きながら書いている。しかし、ドンケツとド頭がスティーヴン・ウィルソンと(日本のスティーヴン・ウィルソンである)椎名林檎なのは示唆的というか対比的というか、この二人でランキングの中道(センターライン)を保ってる気がして、とにかく色々な意味であまりにシックリし過ぎて好き。

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最後に年間BEST書いたのっていつだ?って、直ぐに思い出せないくらい久々の年間BESTを今年は何故書けているのか理由を述べると、それは11年間勤めたブラックメタル企業から退職してニートtokyoになったから、それ以上でもそれ以下でもないです。このランキングの選考理由としては、単純に今年を振り返って頭ん中に思い浮かんだ順から上に書いていっただけの雑なランキングでしかないんだけど、トップオブザ・トップを飾る東京事変が先日リリースしたオールタイム・ベストアルバム『総合』的な意味でも、一枚一枚の個人力は低いけど総合力だけは異常に高いAlbum of The Yearみたいな。また、事変や斉藤和義が参加したOriginal Loveのカバーアルバムというシティポップを経由して、今年の年間ベストソングの一つであるDADARAYの“花は買わない”や竹内まりや、そしてYUKIKAからのIUに繋がる感じも好き。

今年の俺的AOTY(Album of The Year)が上記の13枚の作品ならば、今年の俺的GOTY(Game of the Year)は間違いなく『サイバーパンク2077』だ。というのも、ハイパーポップ界の女王であるグライムスや日本のナマコプリ、年間BEST入りしたThe ArmedやデスメタルのTomb Moldなど多種多様な音楽ジャンルを網羅したハイパーポップなサントラをはじめ、『ポストヒューマン』以降にハイパーポップ路線に移行したBMTHを起点にPoppyやDana Dentata等のプレイリスト「Misfits 2.0」勢を経由して、日本の4s4kiやCVLTEまで今年一年の繋がりを示すような神ゲーであり、その音楽的な影響力や諸々の引力を加味したら余裕のGOTYですね。要するに、なぜ人々がPS5やXbox seriesXに飛びつくのかというと、サイパンのような本物のAAAタイトルのゲームを快適にプレイするためであり、決してインディーゲームをプレイするためではないんですね。

それに少し関わる話で、2021年は日本の音楽コンテンツで久々にくっせーコンテンツが登場して話題を呼んだ。それがFソニー案件の「THE FIRST TAKE」である。個人的に、最近のクソつまんねぇ日本の音楽業界には何かが足りないと思ってたんだけど、その回答とばかりに「THE FIRST TAKE」なるコンテンツが出てきて一周回って嬉しくなった。正直、「THE FIRST TAKE」に出てる奴ら全員消えたら日本の音楽偏差値バク上がりするんじゃねぇか説あって(←コラ)、ベセスダ期待の新作『スターフィールド』や『TES6』がプレイできない=負けハードが確定しているPS5を抱えたゲーム業界においても、超弩級にクッサいコンテンツを抱えた音楽業界においても、全てにおいてクソダサいことやってるFソニーは2秒で倒産しろって感じの2021年でした。ともあれ、来年2022年に期待する新作としては、FソニーUKからリリースされるであろうPTの復活作は当然の事ながら、DIR EN GREYの京とラルクのyukihiroを中心に結成されたPetit Brabanconのアルバムに期待したいのと、元ZOCの香椎かてぃが始めたガールズバンドHazeの動向に注目したい。というか、Petit BrabanconとHazeの対バンに期待w

晴れてニートtokyoとなった僕個人の2022年の目標としては、ベーシックインカムすら議論にならない時代遅れの化石国家日本は過去に置いてきたつもりで、暫くというか半年くらいは人ではなくお馬さんから毎月の給料を頂く未来人として生きていきたいと思います(Fソニー煽ったら先日の有馬記念でF4勝ってもうたやん・・・だる)。しかし、ニートになった途端に(少なくとも日本では)コロナ終息しつつあって笑うというか、ニート2秒で早くも世界が俺に労働を強制してきている・・・。そんなエセ未来人である僕が2022年の未来予測をするなら、11年前に仕事を始めた翌年に大きな災害が起こったので、その11年後に仕事を辞めた翌年となる2022年に(僕をトリガーとして)再び大きな災害が起こる予感がするので、日本列島の皆さん気をつけてください!富士山噴火!日本沈没!(←オメーが一番の陰毛論者だよw)

CVLTE - HEDONIST

Artist CVLTE
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EP 『HEDONIST』
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Tracklist
01. amen.
02. eat acid, see god.
03. hedonist.
04. dancing in the rain.
05. kuromi.

『amo』以降のBring Me The Horizonって、いわゆるハイパーポップの文脈で語るべきバンドに突然変異したのかもしれない。というのも、現代のポスト・インターネット~ハイパーポップの原点である伝説のMステバックレロシアンガールことt.A.T.u.、その正統後継者でありイーロン・マスクのパートナーでもあるグライムスとのコラボ曲を皮切りに、次作のEP『POST HUMAN:SURVIVAL HORROR』ではインターネット世代を象徴するアシュニコの代役としか思えなかったロンドンのNova Twinsとのコラボや、ハイパーポップの素養の一つであるLGBTQに代表されるジェンダーの垣根を超越した存在であるヤングブラッドとのコラボ、そして今年リリースした新曲となるポスト・マローンの“I Fall Apart”をオマージュした“DiE4u”、その現代ポップスターを模した同曲をsix impalaの手によりハイパーポップ風にリミックスするBMTHのしたたかさたるや。そして極めつけは現代ロシアの国民的男女ユニットであるIC3PEAKとオリヴァー・サイクスのコラボ、そのDiE4uIC3PEAKにおけるHELL 2 U!みたいなノリで数字の3をEと読ませたり、数字の4を前置詞のforと読ませる置き換え文化もヒップホップやハイパーポップ界隈では常套手段である。ちなみに、そのIC3PEAKがトラップメタル界の猛犬であるZillaKamiGhostmaneの二人とコラボしていると知った時は全てが繋がった気がしたというか、それこそSpotifyのハイパーポップ系プレイリストの「misfits 2.0」の一部としてBMTHが組み込まれているのが全ての答えです。つまりメタルとハイパーポップって一見遠い存在のようでいて、実は一部のシーンではめちゃくちゃ近い音楽ジャンルなんですね。


そのようにして、最近のBMTHおよびオリヴァー・サイクスはハイパーポップやヒップホップにおけるフィーチャリング文化を意識した活動をしている。また、ハイパーポップを語る上で欠かせない国の一つであるロシアのアーティストとのコラボをはじめ、ベセスダゲーこと『DOOM』のサントラを手がけたミック・ゴードンをエンジニアに迎え、小島秀夫ゲーこと『デス・ストランディング』とのコラボ曲を収録したEP『POST HUMAN:SURVIVAL HORROR』において、日本のカワイイメタルを代表するベビメタことBABYMETALとコラボすることで、ゲーム業界におけるハイパーポップを(The Armedやグライムス、日本のナマコプリが参加している)音楽的にもパンキッシュなビジュアル的にも“ポスト・ヒューマン”化した俺的GOTYこと『サイバーパンク2077』のサブカル文脈とシンクロさせる事に成功していた。また、そのベビメタとBMTHをダブルでパクってるボストン娘のPoppyもハイパーポップの文脈で語られるポッピスターである事は、グライムスとのコラボをはじめt.A.T.u.の名曲“All the Things She Said”をカヴァーしている点からも明らかだ。逆に言えば、ベビメタが急激にオワコン化した理由はハイパーポップ路線に移行できなかったこと、この一点に尽きるのかもしれない。

前述したように、昨今のBMTHおよびオリヴァー・サイクスと全く同じ価値観や現代ロックシーンに対する洞察力を持ったバンドがこの日本にも存在する。そのバンドこそ、今年の5月に1stアルバムとなる『praystation 2』を(PS2といい、一部の曲でキンハーの効果音を使ってたりするからケツ持ちはFソニーか?)、そして先日EPの『HEDONIST』をリリースした札幌出身のCVLTEだ。

彼らの音楽性を誤解を恐れずに極端な表現を用いて例えるなら、それは「ゾンビの如く土の中から蘇ってK-POP化したFuneral For A Friend」である。というのも、というのも、というのも、彼らこそ新世代メタルとハイパーポップをシンクロさせる事に世界で唯一成功したバンドなんじゃねぇか説あって、それこそ「セカンドライフとは一体なんだったのか?」みたいなメタバース的な世界観全開のジャケはもとより、そもそも「K-POP化したFuneral For A Friend」って何やねんというツッコミに対し、ハイパーポップならではのジェンダーレスなラップを披露する同郷の次世代ラッパーSleet Mageをフィーチャリングした一曲目の“amen.”を例に出して答えると、(ニートtokyoに出演経験がある時点で一方的にシンパシーを感じる)バンドのフロントマンでありFFAFのマシュー・デイヴィスの歌声にクリソツなAVIELのオートチューンを効かせたBTSばりのフロウを刻むエモラップと、00年代のUKロックというか往年のポストハードコアというかFFAF的な湿り気のあるメロディの作り方、また表題曲である三曲目の“hedonist.”ではイントロからクリーントーンのギターやK-POPのボーイズグループ然としたオートチューン/エモボイスを聴かせるキャッチーなポップチューンで、そして四曲目の“dancing in the rain.”では本家のFFAFとしか思えないような往年のUK69然とした懐かしいメロディが炸裂する。そんな彼らのメロディセンスは、UK新世代メタルのLoatheや今はなきロスプロとも否応にもシン9ロする。


ハイパーポップの影響下にあるK-POPといえば、それこそ自分のもう一人の自我であるアバターに出会い、新しい世界を経験するという、いかにもアバターを使った仮想空間=メタバースの世界観をコンセプトにSMエンターテインメントが送り出す次世代グループことaespaがその名をネクストレベルに轟かせているように(僕はウィンター推しと見せかけてジゼル推しのピョンテです)、五曲目の“kuromi.”でフィーチャリングした(グライムスやAlice Glassの影響下にある)日本のハイパーポップ界を牽引する4をA(ア)と読ませる246ッカーこと4s4kiからの影響は本作のジャケにメタ(バース)的に現れており、そしてCVLTEがいかにBMTHレベルの才能を持つバンドであるかを裏付けるのが、それこそ日本の若手ラウドロックシーンを牽引するハイパーポップ野郎と言っても過言じゃあないコード・オレンジ・キッズことPaleduskを(1stアルバムに引き続き)フィーチャリングした#2“eat acid, see god.”における、いわゆる『amo』以降に象徴される“20年代のヘヴィネス”すなわちGojiraから新世代メタルのCode OrangeBMTHに血脈を分かち合った(ダニ・フィルスをフィーチャリングした某曲の)金字塔的なリフ/ヘヴィネスを応用した、要するにCVLTEが持つハイパーポップの側面とPaleduskが持つハイパーポップという名のカオスな側面を『HEDONIST』というメタバース内で配合させるという、ちょっとトンデモナイことやってるんですね。しかし改めて、コード・オレンジ・キッズとして日本に産み落とされたがこの国内の革新的なバンドと一緒に「ハイパーポップ!ハ~イ!」みたいにピョンテごっこしてるのは素直に感慨深いものがある。


この曲のNYのアーティスト=Puppetをフィーチャリングした部分の歌メロをオリヴァー・サイクスに置き換えても俄然シックリくるというか、それこそNova Twinsコラボの逆バージョンとしか思えなかった。もしベビメタの次にBMTHが日本のアーティストとコラボする可能性があるとするなら、それは4s4kiしかいないと確信しているくらい、そんな国内のハイパーポップシーンにおける最先端とラウドシーンにおける最先端を多様性の一つとしてEPならではのバラエティに富んだ実験的な作風に昇華し、そして最近のBMTH(=オリヴァー・サイクス)と同じようにヒップホップのフィーチャリング文化を尊重するCVLTEの洞察力および審美眼は、彼らが(sic)boyよりも信用に値するバンドでありアーティストであることを意味している。

ハイパーポップならではのオートチューンはもとより、ノイズやグリッチなどの新世代メタルとシン96するヒップホップとラウドロックの中間点みたいな次世代を象徴するウルトラッピーなトラックメイクは、これからの現代ラウドミュージック界を林家ペーとともに盛り上げていくバンドである事を確信させる(正直、5月にリリースした1stアルバムよりも要点がまとまってて好き)。しっかし、そのヘヴィロックからのアプローチとヒップホップからのアプローチをミクスチャーした二大トラップメタルの『BOG BOY』ことZillaKamiと遊戯ボーイことGhostmaneの偉大さたるや・・・。ともあれ、aespaが創造するサイバーパンクなメタバース空間の中でずっと書きたかった伏線、その全てをシン9ロさせて(伏線)回収できたので(つまりaespaはメタル)、改めて彼らCVLTEには感謝しかない(4s4kiについての深堀りは別の機会に、別の視点で書くかも)。

First Fragment - Gloire Éternelle

Artist First Fragment
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Album 『Gloire Éternelle』
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Tracklist
01. Gloire Éternelle
02. Solus
03. La Veuve Et Le Martyr
04. Pantheum
05. De Chair Et De Haine
06. Sonata En Mi Mineur
07. Ataraxie
08. Soif Brûlante
09. In'el
10. Mort Éphémère

2021年はCynicの新作をはじめ、いわゆるテクデスの年と言っても過言ではないくらいテクデスの良作がデスメタルシーン全体を賑わせた。このカナダはケベック(ロンゲール)出身のFirst Fragmentの約5年ぶり通算二作目となる『Gloire Éternelle』も今年のテクデス界を象徴する一枚であることは確かで、それこそCynicリスペクトなジャズ/フュージョンとデスメタルをクロスさせたテクデスの王道をベースとしつつ、フィルとニックのギターコンビのテクニックに裏打ちされたリズミカルでトリッキーなグルーヴを刻むリフ回しや豚貴族ことインギーもビックリのネオクラシカルな超絶ソロワーク、そしてバンドのキーマンとなるForestことドミニク・ラポイントによる超越ベースプレイ、その二本のギターと一本のベースで主導権を奪い合う「21世紀最高のバカテク集団」と称するに相応しい楽器隊の土台に、OpethのミカエルやAmon Amarthのヨハンを連想させるデスボイスの持ち主であるフロントマンのデヴィッドの存在やマチズモ溢れる男達の勇壮な遠吠えも相まって、テクデスの王道とヴァイキングメタルやクサメタルにおけるアドレナリン全開のエピックな高揚感がエクストリーミーにクロスしたテクデスでもあり、また隠し味としてフラメンコギターを用いてスパニッシュな香辛料をまぶすことで、テクデスはテクデスでも一般的なテクデスの邪悪ネスや殺傷力よりも南米はじめスペイン語圏をイメージさせる情熱的かつダンサブルなテクデス、俄然そんなイメージがシックリくる。

渚に打ち寄せる荒波が嵐の前の静けさを暗喩するSEとともに、その激しい波から伝わるフラメンコギターを情熱的に靡かせるイントロから、ネオクラシカル/ヴァイキングメタルmeetテクデスすなわち蛮族化したCynicを展開する#1“Gloire Éternelle”、イントロの可憐に舞い踊るフラメンコギターの情熱的な魂を受け継いだベースとギターがフラメンコダンスを踊るかの如しリズミカルなコンビネーションを発揮する#3“La Veuve Et Le Martyr”、豚貴族も嫉妬するネオクラシカルギターを聴かせる#4“Pantheum”、もはやネオクラ通り越してクサメタルの領域に両足突っ込んじゃう#5“De Chair Et De Haine”、カルロス・サンタナもビックリの泣きのギターソロやカルメン・マキもビックリのフラメンコギターの情熱的なプレイを披露するインストの#6“Sonata En Mi Mineur”、約19分にわたる超大作の#9“In'el”、そして#1の渚に打ち寄せる荒波のSEをアウトロ(#10)に持ってくるコンセプトアルバム的な演出は、それこそ浜辺美波(浜辺に寄せて返す美しい波)のSEに始まり浜辺美波のSEに終わるDeafheavan『普通の堕落した人間の愛』に通じるSEの使い方も本作の傑作ぶりに拍車をかけている。とにかく、テクデスやデスメタルのみならず、パワーメタルやヴァイキングメタル、あるいはインギーなどのネオクラシカルなメタルが好きな人にもオヌヌメできる文句なしの傑作です。
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