Artist 森は生きている

Album 『グッド・ナイト』
Tracklist
あ...ありのまま 今 起こった事を話すぜ! 「いや~、やっぱりスティーヴン・ウィルソンの新作イイな~」・・・なんて思ったら日本のバンドだった・・・。な...何を言っているのか わからねーと思うが おれも 何をされたのか わからなかった...頭がどうにかなりそうだった...催眠術だとか超スピードだとか そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ...
「邦楽界にプログレの波がキテいる」・・・これは紛れもない事実だ。それを真っ向から証明するかのようなバンドが、東京は武蔵野生まれの6人組、その名も森は生きているだ。何が驚いたって、彼らの2ndアルバム『グッド・ナイト』に収録された"煙夜の夢"という約17分の大作ナンバーの存在で、まずはじめに、その大作をMVにしちゃう彼らの心意気に、そのプログレ魂に僕は敬意を表したいと思う。この”煙夜の夢”は、第一幕に”香水壜と少女”、第二幕に”空虚な肖像画”、そして第三幕に”煙夜の夢 (夜が固まる前)”に分かれた三部構成となっていて、まず第一幕の”香水壜と少女”からゴイスー。まずイントロのアコギの靡かせ方からのフルートの導入部からして→「スティーヴン・ウィルソンの新曲かな?」って勘違いするくらい、完全にSW関連事業の音使いというか"プログレ"以外ナニモノでもない幕開けから始まって、とりまプログレ然とした音や楽器をあざとくもふんだんに使ってプログレヲタの琴線をブヒらせながら、時に優美に、時に喜劇的に入り乱れながら、時に中東の民謡音楽ばりのエスニックな旋律をもって、秋枯れの荻が生い茂ったどこまでもつづく原野の如し情緒感あふれる素朴な風景を描き出し、そこから中期Porcupine Treeを想起させるクラシック・ロック然としたギター・リフ~アコギとフロイドリスペクトなエフェクティブなサウンドをバックに、この物語の語り部となる竹川悟史の歌へと繋がっていく。続く第二幕の”空虚な肖像画”では、リーダーの岡田拓郎をメインボーカルに携えてTemples顔負けのインディ・サイケ~アンビエントなシーンへと物語は移り変わっていき、そして最終章となる第三幕の”煙夜の夢 (夜が固まる前)”では、一転してカントリー調のポップなリズムにノッて、森のせせらぎと共にランランラ~ン♪と鼻歌交じりに妖精さんが舞い踊るクライマックスのシーンを最後に、このラノベ小説『メンヘラ彼女とボク』は盛大に幕を閉じる。このキング・クリムゾンやピンク・フロイドをはじめとしたプログレレジェンドに匹敵する大胆な構成力と抒情的かつ緊張感のある展開力は、なまじハタチそこそこの文学青年が演るレベルをゆうに逸脱している。これはもうスティーヴン・ウィルソン、Porcupine Treeの名曲”Anesthetize”をも凌駕する...いや、歴代のプログレレジェンドを過去のモノとするッ!これこそ現代のプログレッシブ(J)ポップ絵巻だッ!・・・ってのは少し大袈裟かもしれないが、この森は生きているの圧倒的なクリエイティビティと若者的咀嚼エネルギーが爆発した名曲であるのは確かで、持ち前のオサレでシュールな歌詞世界をはじめ、フォーク/サイケ/プログレ/アヴァンギャルド/ジャズなどのジャンルを変幻自在に操る、若者らしからぬ大人びた落ち着いたアナログな演奏、とにかくこの曲に彼らの全てが詰まっていると言っても過言じゃあないし、その音楽的素養の深さと"音"に対する"こだわり"が初期衝動的な勢いで伝わってくる。様々なジャンルや過去の偉大なバンドからの影響を自らの音へと巧みに昇華し、それらを洗練されたポップ・ミュージックに仕立て上げる柔軟性の高さはスティーヴン・ウィルソンとダブる。実際、想像した以上に柔軟性の高いバンドで、ヲタク丸出しのプログレからキャッチーなポップスもできるのはバンドとして大きな強みだろう。で、その"影響"といえば→神戸在住のThe fin.もモダンな海外バンドからの影響が色濃くあったが、近代的な彼らより古典的すなわちクラシックでアナログ感あふれるレトロフューチャーボンバーなのが森は生きているだ。この2つのバンドに共通するのは、若くして作曲からミックスまでこなす卓越した才能を持ったYuto Uchinoと岡田拓郎という未来の邦楽界を背負って立つであろう存在か。ここで少し話は変わるが→最近、自分の中で"いい音楽"を選別する判断材料として→【赤い公園の津野米咲がアヒャヒャとブヒりそうな音楽か否か】みたいな謎の測りを設け始めていて、昨年にThe fin.の1stアルバム『Days With Uncertainty』を聴いた時も→「あっ、これぜってぇ津野米咲が好きなヤツや」ってなったし、そして今回この森は生きているに対しても同じことを思っちゃったから、だから「これはきっと"いい音楽"に違いないんだ」という結論に至った、というわけです。その将来性はThe fin.以上かもしれない。
ハルキスト ・・・そのタイトルどおり本作の”プレリュード”となる幕開けから、「走り出す少女は 影に惹かれて 風に似て行ってしまったのです」とかいう村上春樹ばりの文学的な歌詞をはじめ、マンドリンやハーモニカ、鉄琴や木琴などの鍵盤打楽器、フルートやパーカッションなど様々な楽器やさり気ないエレクトロニクスを駆使しながら、Voの竹川悟史による斉藤和義風の歌声とバンドの頭脳である岡田拓郎のコーラスが朝焼けの匂いを醸し出す、アルバムのオープニングを飾るに相応しいムーディなフォーク・ソングで、続く2曲目の”影の問答”では、60年代~70年代を想起させるクラシックなギター・リフとビートルズやピンク・フロイドを最高権威者としたUKネオ・プログレッシブ・ロック直系のフェミニンなメロディが織りなすサイケデリックなサウンドに、まるで夢遊病者ように無表情で不協和音のように虚ろなボーカルと幽玄なコーラスがアンニュイに交錯していき、そして江戸川乱歩の短編に出てきそうな【男A】と【男B】の会話を描いた一風変わった歌詞からも、異常にセンスフルかつ俄然文学的な彼らのアーティスティックな一面を垣間みせる。一転して陽気な気分でカントリー風のチェンバー・ポップやってのける3曲目の”磨硝子”は、マンドリンとフルートの優美な音色が遊牧民のユル~い日常を描き出し、中盤からは重厚なヴァイオリンを合図に、まるでどこかのデブが「音の宝石箱や~」と言わんばかりのキラキラ☆綺羅びやかでカラフルな音使いとモダンなアンビエント感をもって、それこそ後期UlverやKayo Dot顔負けのアヴァンギャルディな文系力を発揮していく。正直、この展開にはプログレ好きは「キター!」って感じだし、まさかVampillia以外の邦楽バンドにコレができる集団が他に実在するなんて思いもしなかったから素直に驚いた。というか、もしかするとKayo DotとSteven Wilsonを繋ぐ架け橋となる存在こそ、彼ら森は生きているなのかもしれない。で、ここまでの"知的"な文学青年あるいはハルキスト然とした流れから一転して、"ポスト-くるり"を襲名するかのようなゆるふわ系のポップスを聴かせる4曲目の”風の仕業”、岡田拓郎をメインボーカルに迎えたシンプルなサイケ・ロックを披露する5曲目の”痕跡地図”、再びフロイド的なゆるフワッと感と"ポスト-くるり"っぽさを醸しながら、前二曲と同様に比較的シンプルな曲かと思いきややっぱりプログレッシブかつエキゾチックなニクい演出が光る6曲目の”気まぐれな朝”、そして三部作の”煙夜の夢”、まるでモノクロの白昼夢の中を彷徨うかのようなアコギ主体の”青磁色の空”、そして表題曲の”グッド・ナイト”を最後に、全9曲トータル約48分の『夢』は地平線のようにどこまでも続いていく・・・。
アニミズム ・・・おいら、インディとかよく知らないしどうでもいいんだが、この作品だけはインディっつーよりも"プログレ"として聴いたほうが絶対に面白いです。しかし、その森は生きているの郷土愛や自然崇拝に満ち溢れたDIY精神は、自給自足系ブラックメタルに通じるインディペンデント感というか謎のスケール感すら内包している。これはもう一つの純文学であり一つの"文芸作品"と言っていいだろう。もはや音楽界の太宰治賞を与えたいくらいだ。この勢いで今話題のTemplesと対バンしたら面白いと思う。あと赤い公園よりも森は生きているのがSWプロデュースの可能性あるな(願望)って思っちゃったんだからしょうがない。ともあれ→"今の邦楽界は面白い"・・・という一説を裏付けるような、2014年の代表する一枚でした。

Album 『グッド・ナイト』

Tracklist
01. プレリュード
02. 影の問答
03. 磨硝子
04. 風の仕業
05. 痕跡地図
06. 気まぐれな朝
07. 煙夜の夢
a. 香水壜と少女
b. 空虚な肖像画
c. 煙夜の夢(夜が固まる前)
08. 青磁色の空
09. グッド・ナイト
あ...ありのまま 今 起こった事を話すぜ! 「いや~、やっぱりスティーヴン・ウィルソンの新作イイな~」・・・なんて思ったら日本のバンドだった・・・。な...何を言っているのか わからねーと思うが おれも 何をされたのか わからなかった...頭がどうにかなりそうだった...催眠術だとか超スピードだとか そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ...
「邦楽界にプログレの波がキテいる」・・・これは紛れもない事実だ。それを真っ向から証明するかのようなバンドが、東京は武蔵野生まれの6人組、その名も森は生きているだ。何が驚いたって、彼らの2ndアルバム『グッド・ナイト』に収録された"煙夜の夢"という約17分の大作ナンバーの存在で、まずはじめに、その大作をMVにしちゃう彼らの心意気に、そのプログレ魂に僕は敬意を表したいと思う。この”煙夜の夢”は、第一幕に”香水壜と少女”、第二幕に”空虚な肖像画”、そして第三幕に”煙夜の夢 (夜が固まる前)”に分かれた三部構成となっていて、まず第一幕の”香水壜と少女”からゴイスー。まずイントロのアコギの靡かせ方からのフルートの導入部からして→「スティーヴン・ウィルソンの新曲かな?」って勘違いするくらい、完全にSW関連事業の音使いというか"プログレ"以外ナニモノでもない幕開けから始まって、とりまプログレ然とした音や楽器をあざとくもふんだんに使ってプログレヲタの琴線をブヒらせながら、時に優美に、時に喜劇的に入り乱れながら、時に中東の民謡音楽ばりのエスニックな旋律をもって、秋枯れの荻が生い茂ったどこまでもつづく原野の如し情緒感あふれる素朴な風景を描き出し、そこから中期Porcupine Treeを想起させるクラシック・ロック然としたギター・リフ~アコギとフロイドリスペクトなエフェクティブなサウンドをバックに、この物語の語り部となる竹川悟史の歌へと繋がっていく。続く第二幕の”空虚な肖像画”では、リーダーの岡田拓郎をメインボーカルに携えてTemples顔負けのインディ・サイケ~アンビエントなシーンへと物語は移り変わっていき、そして最終章となる第三幕の”煙夜の夢 (夜が固まる前)”では、一転してカントリー調のポップなリズムにノッて、森のせせらぎと共にランランラ~ン♪と鼻歌交じりに妖精さんが舞い踊るクライマックスのシーンを最後に、このラノベ小説『メンヘラ彼女とボク』は盛大に幕を閉じる。このキング・クリムゾンやピンク・フロイドをはじめとしたプログレレジェンドに匹敵する大胆な構成力と抒情的かつ緊張感のある展開力は、なまじハタチそこそこの文学青年が演るレベルをゆうに逸脱している。これはもうスティーヴン・ウィルソン、Porcupine Treeの名曲”Anesthetize”をも凌駕する...いや、歴代のプログレレジェンドを過去のモノとするッ!これこそ現代のプログレッシブ(J)ポップ絵巻だッ!・・・ってのは少し大袈裟かもしれないが、この森は生きているの圧倒的なクリエイティビティと若者的咀嚼エネルギーが爆発した名曲であるのは確かで、持ち前のオサレでシュールな歌詞世界をはじめ、フォーク/サイケ/プログレ/アヴァンギャルド/ジャズなどのジャンルを変幻自在に操る、若者らしからぬ大人びた落ち着いたアナログな演奏、とにかくこの曲に彼らの全てが詰まっていると言っても過言じゃあないし、その音楽的素養の深さと"音"に対する"こだわり"が初期衝動的な勢いで伝わってくる。様々なジャンルや過去の偉大なバンドからの影響を自らの音へと巧みに昇華し、それらを洗練されたポップ・ミュージックに仕立て上げる柔軟性の高さはスティーヴン・ウィルソンとダブる。実際、想像した以上に柔軟性の高いバンドで、ヲタク丸出しのプログレからキャッチーなポップスもできるのはバンドとして大きな強みだろう。で、その"影響"といえば→神戸在住のThe fin.もモダンな海外バンドからの影響が色濃くあったが、近代的な彼らより古典的すなわちクラシックでアナログ感あふれるレトロフューチャーボンバーなのが森は生きているだ。この2つのバンドに共通するのは、若くして作曲からミックスまでこなす卓越した才能を持ったYuto Uchinoと岡田拓郎という未来の邦楽界を背負って立つであろう存在か。ここで少し話は変わるが→最近、自分の中で"いい音楽"を選別する判断材料として→【赤い公園の津野米咲がアヒャヒャとブヒりそうな音楽か否か】みたいな謎の測りを設け始めていて、昨年にThe fin.の1stアルバム『Days With Uncertainty』を聴いた時も→「あっ、これぜってぇ津野米咲が好きなヤツや」ってなったし、そして今回この森は生きているに対しても同じことを思っちゃったから、だから「これはきっと"いい音楽"に違いないんだ」という結論に至った、というわけです。その将来性はThe fin.以上かもしれない。
ハルキスト ・・・そのタイトルどおり本作の”プレリュード”となる幕開けから、「走り出す少女は 影に惹かれて 風に似て行ってしまったのです」とかいう村上春樹ばりの文学的な歌詞をはじめ、マンドリンやハーモニカ、鉄琴や木琴などの鍵盤打楽器、フルートやパーカッションなど様々な楽器やさり気ないエレクトロニクスを駆使しながら、Voの竹川悟史による斉藤和義風の歌声とバンドの頭脳である岡田拓郎のコーラスが朝焼けの匂いを醸し出す、アルバムのオープニングを飾るに相応しいムーディなフォーク・ソングで、続く2曲目の”影の問答”では、60年代~70年代を想起させるクラシックなギター・リフとビートルズやピンク・フロイドを最高権威者としたUKネオ・プログレッシブ・ロック直系のフェミニンなメロディが織りなすサイケデリックなサウンドに、まるで夢遊病者ように無表情で不協和音のように虚ろなボーカルと幽玄なコーラスがアンニュイに交錯していき、そして江戸川乱歩の短編に出てきそうな【男A】と【男B】の会話を描いた一風変わった歌詞からも、異常にセンスフルかつ俄然文学的な彼らのアーティスティックな一面を垣間みせる。一転して陽気な気分でカントリー風のチェンバー・ポップやってのける3曲目の”磨硝子”は、マンドリンとフルートの優美な音色が遊牧民のユル~い日常を描き出し、中盤からは重厚なヴァイオリンを合図に、まるでどこかのデブが「音の宝石箱や~」と言わんばかりのキラキラ☆綺羅びやかでカラフルな音使いとモダンなアンビエント感をもって、それこそ後期UlverやKayo Dot顔負けのアヴァンギャルディな文系力を発揮していく。正直、この展開にはプログレ好きは「キター!」って感じだし、まさかVampillia以外の邦楽バンドにコレができる集団が他に実在するなんて思いもしなかったから素直に驚いた。というか、もしかするとKayo DotとSteven Wilsonを繋ぐ架け橋となる存在こそ、彼ら森は生きているなのかもしれない。で、ここまでの"知的"な文学青年あるいはハルキスト然とした流れから一転して、"ポスト-くるり"を襲名するかのようなゆるふわ系のポップスを聴かせる4曲目の”風の仕業”、岡田拓郎をメインボーカルに迎えたシンプルなサイケ・ロックを披露する5曲目の”痕跡地図”、再びフロイド的なゆるフワッと感と"ポスト-くるり"っぽさを醸しながら、前二曲と同様に比較的シンプルな曲かと思いきややっぱりプログレッシブかつエキゾチックなニクい演出が光る6曲目の”気まぐれな朝”、そして三部作の”煙夜の夢”、まるでモノクロの白昼夢の中を彷徨うかのようなアコギ主体の”青磁色の空”、そして表題曲の”グッド・ナイト”を最後に、全9曲トータル約48分の『夢』は地平線のようにどこまでも続いていく・・・。
アニミズム ・・・おいら、インディとかよく知らないしどうでもいいんだが、この作品だけはインディっつーよりも"プログレ"として聴いたほうが絶対に面白いです。しかし、その森は生きているの郷土愛や自然崇拝に満ち溢れたDIY精神は、自給自足系ブラックメタルに通じるインディペンデント感というか謎のスケール感すら内包している。これはもう一つの純文学であり一つの"文芸作品"と言っていいだろう。もはや音楽界の太宰治賞を与えたいくらいだ。この勢いで今話題のTemplesと対バンしたら面白いと思う。あと赤い公園よりも森は生きているのがSWプロデュースの可能性あるな(願望)って思っちゃったんだからしょうがない。ともあれ→"今の邦楽界は面白い"・・・という一説を裏付けるような、2014年の代表する一枚でした。
森は生きている
Pヴァイン・レコード (2014-11-19)
売り上げランキング: 6,293
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