Artist The Ocean
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Album 『Phanerozoic II: Mesozoic | Cenozoic』
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Tracklist
【Mesozoic】
01. Triassic
02. Jurassic | Cretaceous
【Cenozoic】
03. Palaeocene
04. Eocene
06. Miocene | Pliocene
08. Holocene

ドイツが産んだ近年の名作といえば、今年配信のシーズン3で完結したNetflixのドラマ『ダーク』は近年稀に見る本格SFドラマの傑作で、理論物理学の天才アインシュタインを生んだドイツを代表するメタルバンド=The Ocean Collectiveもデビュー当初から一貫して考古学における土層(地層)を題材とした地質学をはじめ、旧約聖書における人間中心主義やコペルニクスの地動説、そして謎多き深海などの地球環境/思想/宗教に基づいた学説的な作品を売りとするインテリ系のバンドとして知られる。

中でも彼らを代表する2007年作の3rdアルバム『Precambrian』では、「地球が誕生した約46億年前以降、肉眼で見える大きさで硬い殻をもった生物の化石が初めて産出する5億4100万年前以前の期間を指す地質時代」=【冥王代】【太古代】【原生代】の3つに区分される「先カンブリア時代」を描き出していた。そのアートワークが示唆するように、その『Precambrian』のCDの裏ジャケに描かれた年表の最後にある空欄部分の約5億4100万年から現在(0)までの期間=【顕生代】、その【顕生代】における約5億4100万-約2億5190万年前に相当する【古生代(Palaeozoic)】を描いた2018年作の7thアルバム『Phanerozoic I: Palaeozoic』【顕生代】における約2億5217万年前から約6600万年前に相当する【中生代(Mesozoic)】と、約6500万年前から現代までに相当する【新生代(Cenozoic)】を描いた本作の『Phanerozoic II: Mesozoic / Cenozoic』の2部作をもって、2007年作の『Precambrian』から13年の歳月を経て現在に至るまでの地質年表が完成する運びとなった。

まず「深海」をテーマにした2013年作の6thアルバム『Pelagial』を振り返ってみる。実にユニークだと思ったのは、深海を形成する水深200mまでの表層(Epipelagic)から約6000m以深までの超深海層(Hadopelagic)に至る5つの海層レベルを各メタルバンドの音で再現していた点。例えば、水深の浅い表層から中深層(Mesopelagic)〜漸深層(Bathypelagic)までをUSのMastodon的なポストハードコアで再現し、水深が深くなるにつれて「コア」が徐々に巨大化して「核」のメタファーであるフランスのGojiraへと変貌し、最終的には大水圧により探査不可能とされる深海層(Abyssopelagic)から超深海層(Hadopelagic)まではニューロシスばりのポストメタル然としたヘヴィネスに到達、そして人類未開の水域の最低レベルにある底生地帯(Benthic)に生息する底魚(Demersal)と遭遇する。それはまるで貴重な黒いトゲトゲのウニかと思いきや、そのトゲトゲの正体は芸能界の伏魔殿という名の『悪の華』に触れた能年玲奈が干されて織田nonもといのんに姿を変えられてしまう「深海物語」で、ある種のメタル版『あまちゃん』と称すべき傑作だった。

そんな傑作『Pelagial』から約5年ぶり、先述した通り『Precambrian(先カンブリア時代)』の続編にあたる顕生代の序章=古生代を描いた『Phanerozoic I: Palaeozoic』は、これまでの彼らがインスパイアされてきた同レーベルの盟友Cult of LunaGojiraをベースとした比較的王道的な色のない無印エクストリーム/ポスト・メタルを展開しつつ、中にはKATATONIAヨナス・レンクスを迎えた曲もあった。決して地味というわけじゃないが、扱い的にはあくまでも序章ってのもあって、別段突出した何かがあるというわけでもなかった(感覚的には2010年リリースの2部作の前者『Heliocentric』に近い)。しかし本編に当たる今作は、その前作の漠然とした「つかみどころの無さ」を払拭するような、それこそ約13年前の傑作『Precambrian』に匹敵する新時代のエクストリーム・メタル王の座を襲名するかのような一枚となっている。

顕生代における中生代(Mesozoic)の幕開けを飾る#1“Triassic”は、約2億5217年前〜約2億130万年前までを指す「三畳紀」と呼ばれ、この頃から爬虫類や恐竜が出現して繁栄を遂げる。その曲調としては、それこそRiversideのマリウス・デューダくんのソロプロジェクト=Lunatic Soulを想起させる、現代プログレ〜ネオサイケ〜ポスト・プログレッシブラインに沿ったベースギターやパーカッションを駆使したオリエンタルかつエクスペリメンタルなプログレメタルで、中生代の後期にあたる鳥類が誕生し恐竜が繁栄する「ジュラ紀」と、花を咲かせる被子植物が出現する「白亜紀」を描き出す約13分を超える大作の#2“Jurassic | Cretaceous”は、イントロからプログレメタル然としたヘヴィなリフとドイツ人らしいクラシック音楽の素養を垣間見せ、そのイントロが明けると「三畳紀」のトライバルな流れを汲んだスティックやカウベル使いのドラミングから、二大暗黒メタルを代表するTOOLの名盤『Lateralus』とその名盤の影響下にあるOpethの名盤『Ghost Reveries』という世界三大プログレメタルのラスボスを召喚するグルーヴィに刻むリフ回し、中盤からは前作に引き続きヨナス・レンクスを迎えてKATATONIAのBサイド然としたミニマルなエレクトロパートに突入(まだヨナスがボーカリストとして勘違い、もとい自覚を持っていない頃の陰鬱ボイスなのが良い)(むしろまだこの歌い方できるんだなって感心してしまったw)、するとクライマックスでは「白亜紀末」に起きた地球規模の大絶滅をブルータルかつエクストリームに描き出すと、最後はメイナード・キーナンが憑依したような「例」のパンキッシュな歌唱からTOOLでもお馴染みのリフに収束していく、まさに46億年分の歴史が詰まった圧倒的なスケール感・・・!

なんだろう、この一曲の中にTOOLとその取り巻き、もとい10年代の現代プログレを一つにコレクティブさせたような、もはや20年代最高のプログレメタル絵巻と呼んでも過言じゃあない名曲で、改めて今のメタルシーンでTOOLOpethらのレジェンドと真っ向からタイマン張れる中堅バンドってこいつらしかいないって。そのレジェンドに対して玉砕覚悟で単騎突撃カチコミに行ってるカッコ良さったらないし、それこそ聴いてる途中で「ホーリーイェス!ホーリーイェス!」ってガッツポーズするくらいには、それこそプログレ界のレジェンド=TOOLへの回答を示すような新世代ポストメタルVS現代ポストメタの構図がアツ過ぎる。この時点で優勝。

「白亜紀末」の大絶滅により中生代が終わりを告げると、能年玲奈が超深海層で探し求めていた棘皮動物のウニをはじめとする哺乳類と鳥類が繁栄した新生代(Cenozoic)が幕を開ける。ゲストボーカルに過去作でもお馴染みのトーマス・リシュダールを迎えたハードコアの#3“Palaeocene”、いかにもポスト・プログレッシブ的なATMS系エレクトロインストの#5“Oligocene”、冒頭の咆哮は元よりバックのアレンジ的な面でも盟友Cult of Lunaのヨハネスが「ちょっと待って、これ俺やんw」てなるのが容易に想像できる#6“Miocene | Pliocene”、荘厳なストリングスとオルガンをフィーチャーしたバロック調のゴシックな前半から突如ブラストビートを駆使して「The OceanなりのBlackgaze」をやってのける#7“Pleistocene”、ここまでTOOLOpethに代表される暗黒プログレ勢を全て網羅しているのにも関わらず、「ちょっと待って、誰か忘れてね?」と気づいた矢先にエンディングを締め括る#8“Holocene”で、現代プログレを語る上で欠かせない最重要人物であるスティーヴン・ウィルソン率いるPorcupine Treeの中期の名盤『In Absentia』をオマージュするという、この「僕が考えた最強のプログレ」を俺たちのイェンス・ボグレンがミックスしている、そんな「誰かの夢」を実現させた涙なしには語れない名盤です。ちなみに、最後の#8はドラマー兼コンポーザーのポールが歌っている。

46億年前というまるで想像のつかないような先カンブリア時代から地層に「記憶」として刻み込まれた生命の歴史、そして大絶滅を経験してもなお生命を紡いできた生体の発展(Progress)と人類の進化の歴史を描き尽くしている。本作の舞台である顕生代は、先カンブリア記とは違い化石が大量に発見され、恐竜の繁栄が最も豊かだった時代だけあって、前章と比較してもより知的で、より生物的な「動き」と「色」に溢れた作風となっている。例えるなら、傑作『Pelagial』「深海大好きあまちゃんメタル」とすると、本作は「地層大好きブラタモリメタル」だ。

その名の通り海洋戦術に長けたThe Ocean Collectiveは、海の波動を自在に操り浜辺美波をはじめ様々な波の音=音波を発信することで、TOOLOpeth、そしてPorcupine TreeKATATONIAなどの現代プログレをコレクティブの一部として飲み込み、巨大な大波という名の轟音で盟友Cult of Lunaすら喰らい尽くす。というか、そのCoLは新作でキーボードが脱退して中期の王道ポストメタルに回帰したかと思えば、逆にライバルのThe Oceanがエレクトロなシンセやサンプラーを駆使したモダンな方向性に舵を切るという謎の談合感ある。確かに、初期の頃からMastodonConvergeらのハードコア勢からの影響を惜しみ隠さず取り入れてきたバンドで、その影響元が今作では現代プログレ界隈になったというだけで、それらの確かな影響と自前のポストメタルをベースメイクに柔軟性をもって対応する姿は、まるで照明の加減で色が七色に変化するクラゲのよう。それすなわち、日々進化し続けるポストメタルの可能性を大幅に広げるブレイクスルーならぬジャーマンスープレックスをブチかましている。そういった意味では、バンドの頭脳であるロビン・ステップスという男は「ポストメタル界のスティーヴン・ウィルソン」なのかもしれない。これはどうでもいい話だけど、Netflix『ダーク』の主人公の名前もヨナスで思った。もしかしてKATATONIAのヨナスってドイツ系?