Artist Alora Crucible
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Album 『Thymiamatascension』
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Tracklist
01. Livanomancy in Jasper
02. Synaxarion of John Isangelous
03. Synaxarion of John Abject
04. Bottomless Madrugada
05. Barriers Hymn
06. Psalloed Illusions

Alora Crucibleって誰かなぁ?と思ったら、あのVauraKayo Dotの中心人物として知られるトビー・ドライバーの新しい通名と知って驚いた。何が驚いたって、トビーといえば本家Kayo Dotではアヴァンギャルドmeetブラックメタルを、サイドプロジェクトのVauraではニューウェイヴmeetブラックゲイズを、Toby Driver名義のソロプロジェクトではストリングをフィーチャーしたネオクラシカルを、そして今回新たに始動した本プロジェクトでは、これまでの各プロジェクト同様に実験的は実験的ながらも、いわゆるニューエイジやアンビエントに振り切った、より音響的なアプローチを強めた音楽性を終始一貫して追求している。それこそ本作の『Thymiamatascension』は、ノルウェーのレジェンド=Ulverも在籍するレーベルのHouse of Mythologyからリリースされている事実が全ての答え合わせと言っても過言じゃあない。

いわゆるポストロックやスロウコア的なミニマル・ミュージックに、チェンバー・ミュージック然とした静謐的なストリングスや喜多郎顔負けのニューエイジ/アンビエントならではの幻想的なシンセが、まるで雨の日に傘から滴り落ちる水玉のようにこまだするインスト中心の楽曲における、それこそ彼がソロ名義で2018年に発表した『They Are The Shield』の延長線上にある、まるで現世の慈悲深さに慟哭するかの如しストリングスの音色は、Ulverが本国のオーケストラとコラボした『Messe I​.​X​-​VI​.​X』と否応なしに共鳴すると同時に、その自然な流れから日本のSSWシーンを代表する青葉市子岡田拓郎らが音楽的なバックグラウンドとして持つニューエイジの側面とも重なって聴こえる。なんだろう、ソロ名義よりも俄然ストリングスの鳴り方が日本の伝統音楽である雅楽はもとより、それこそ韓国のJambinaiをイメージさせる民族楽器風の荘厳な音色を奏でている。

もちろん、過去の関連プロジェクトと比較すると曲の抑揚や展開は最小限に抑制されており、あくまで“繰り返しの美学”を追求したミニマル地獄という名の、要は断捨離が好きなミニマリスト向けの癒やしの音楽を提示している。それこそ、ソロ名義の流れを踏襲したギターのリフレインがフェードインして始まる#1“Livanomancy in Jasper”からして、Ulver『Messe I​.​X​-​VI​.​X』における名曲“As Syrians Pour In, Lebanon Grapples With Ghosts Of A Bloody Past”をフラッシュバックさせ、俄然ポストロックmeetUlverな#2“Synaxarion of John Isangelous”、イントロから儚くも美しい悲哀を帯びた#3“Synaxarion of John Abject”、アジアの伝統楽器さながらの荘厳かつ優美なストリングスをフィーチャーした#4“Bottomless Madrugada”、トビーがボブ・ディラン顔負けのダーティな語り弾きオジサンと化す本作唯一のボーカル曲であり、またSSWやマルチプレイヤーとしての才能以前に彼(US版岡田拓郎として)のギターリストとしての才能が炸裂する#5“Barriers Hymn”、そしてニューエイジ指数の高い流行りのダンジョン・シンセを駆使した#6“Psalloed Illusions”まで、派手さのない地味な音楽ながらも幻想的かつ叙情的な世界観をバックに奏でられる、美しくも聡明なストリングスの音色に汚れた心が浄化されること請け合いの一枚。個人的にはソロ名義よりも好きな作風。