Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

引かれ合い

ねごと 『ETERNALBEAT』

Artist ねごと
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Album 『ETERNALBEAT』
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Tracklist
01. ETERNALBEAT
02. アシンメトリ
03. シグナル
04. mellow
05. 君の夢
06. DESTINY
07. cross motion
08. holy night
09. Ribbon
10. PLANET
11. 凛夜

DESTINY』のぼく
new_13「ねごとがNEXTステージへと向かうには【Satellites】のビートが必要だ(しかし、いくら優等生のねごとでも流石にできるわけがない!)」

    ねごと
蒼山幸子「できるわけがない!できるわけがない!できるわけがない!できるわけがない!」

   ぼく
new_20131031220005「ほら!『4回』も『できるわけがない』って言ったぁ!ねごとはオワコン!」

   ねごと
澤村小夜子「ANATHEMAの未来ことBoom Boom Satellitesと邂逅してシン・ねごとになったぞ」

  ぼく
new_UJ「なにそれすごい」

なんだろう、「運命の引かれ合い」って、漫画の世界の話だけじゃなくて現実の世界でも起こりうるんだなって、そう実感させられた出来事だった。僕は、2015年作のVISIONの時にねごとの事に対して、何の根拠もないままに「いま最も評価されるべきバンド」と断言したけれど、その言葉は何一つ間違っちゃいなかったんだって。
 
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というのも、その『VISION』から約3ヶ月後に発表されたシングルのDESTINYの時に、僕はねごとメンバーに対してANATHEMAの”Distant Satellites”みたいな曲が書けるかという『レッスン4 できるわけがない試練』を与えた。そのシングルのDESTINYで、ロックバンドとして一段と成熟した今のねごと「オルタナティブバンド」としてNEXTステージに行く為には、それこそ”Distant Satellites”みたいな実験的なロックを極めるしか他に道はないと。だから僕は前作『VISION』の時から記事中に【ANATHEMA】【Satellites】というキーワードという名の伏線を忍ばせていて、それ以降も事あるごとに執拗にねごとANATHEMAの存在をリンクさせてきた。



もっと面白いのはここからで、僕はねごと『VISION』を聴いた翌月に、(tricotに釣られて)名古屋クワトロでBoom Boom Satellitesのライブを観て、アルバムSHINE LIKE A BILLION SUNSを聴いて、そして【Boom Boom Satellites=ANATHEMAの未来】である事を確信した。ご存じのとおり、ANATHEMAは通算10作目となるアルバムDistant Satellitesの中で実験的な、それこそ「オルタナティブバンド」たる所以を証明するかのような、プログラミングやエレクトロな打ち込み系の音を駆使したダンサブルなサウンドを展開し、中でも表題曲となる”Distant Satellites”の鼓動を激しく打ち付けるようなエレクトロなビートとダイナミクスを内包したロックなビートが融合した姿は、まさにBoom Boom Satellitesの音世界そのものだった。
【2015年8月31日】ANATHEMA 奇跡の来日公演
【2016年5月31日】Boom Boom Satellites活動終了
【2017年3月19日】ねごとの『ETERNALBEAT』を書き上げる
【2017年3月20日】ねごとの『ETERNALBEAT』ツアーを観る(宇宙の終わり)
 
正直、あの時は「ねごとのNEXTステージはANATHEMAのDistant Satellites」だとか、「Boom Boom Satellites=ANATHEMAの未来」だとか、一体ナニを思って書いたのか自分でもよく分かっていなくて、そもそも自分は基本的にレビューを書く時に最も重視するのが「ひらめき」で、そしてスキあらば伏線を散りばめていく文章スタイルなのだけど、2014年にDistant Satellitesがこの世に爆誕して以降、その翌年の2015年にねごとANATHEMABoom Boom Satellitesのライブを観たこと、そして2016年にBoom Boom Satellitesが活動終了を発表するまで、それら一連の流れと伏線をまとめた上記の時系列を見れば、今回の『運命』すなわち『DESTINY』”引かれ合い”はその「ひらめき」が上手くハマった結果の出来事だったというのが分かるハズだ。というより、ここ三年はこのアルバムを書くためのちょっと長い準備期間だったのかもしれない。僕は常に、いつだってどんな時もどんな時もねごとの事を気にかけていた、というのは流石に嘘だけれど、ここ三年の僕は『地球』に存在しながらも『Satellites』という『衛生音楽』を介して『宇宙』を彷徨っていた、そんな気がしてならなかった。同時に僕は、2015年度BESTの記事の中で2015年は『繋がり』を強く意識させた年だと言及したけれど、その『繋がり』を感じた最もたる部分の一つが、他ならぬねごとを中心とした人物と音楽だったのは、今さら言うまでもない。

もう何を言いたいのかお分かりの方もいると思うが、このねごとは僕が与えた試練、その「答え」として、Boom Boom Satellitesが残した『魂』のビートを「受け継ぐ」ような形で、昨年の『アシンメトリ e.p.』、そして本作の『ETERNALBEAT』へと『繋がって』いる。その100点満点の回答に対して僕ができる唯一のことと言えば、赤ペン先生ばりに上から目線で100点満点の返信をするしかなくて、つうか、こんな回答出されたら100点付けて終わりじゃんこれ。俺もう何も言えねぇじゃん。「エモい」とか「泣ける」とか、そんなチープな言葉じゃ何も伝えられない。自分の語彙力のなさに泣けるくらい。というか、こんなとんでもねぇアルバム聴かせられたら、僕が何を書こうと『説得力』のカケラもないし、正直ナニも書けないからもうナニも書きたくないです。



ねごと
Boom Boom Satellites(ANATHEMAの未来)との邂逅という名の引かれ合いが実現した”アシンメトリ”は、シン・ねごとという名のシン・ブンブンサテライツ譲りのイントロから打ち込み主体のダンサブルな、鼓動を打ち付けるような音のビートが波紋のビートとなって体全体に刻み込み、中盤以降のアトモスフェリックな空間表現や崇高さ漂うコーラスワーク、そしてギターの残響音が宇宙を構成する無数無限の微粒子となり、それこそ【左右非対称】や【不均衡】という意味合いを持つ『アシンメトリ』という無数の四次元立方体(テッセラクト)が無限に不均衡に重なり合って、この『ETERNALBEAT』という名の三次元と五次元を繋ぐ『ワームホール』への入り口をこじ開けていく、その姿はまるで自らの手で『運命』『未来』を切り拓いていくねごとの生き様を、この宇宙この銀河の果てまで映し出すかのよう。

ねごとがデビュー当時から一貫してきた「オルタナティブ・ミュージック」への探究心は一つの極地へと到達し、この宇宙からもの凄く遠くて(Distant)、ありえないほど近い銀河の果てにある”ANATHEMA””Boom Boom”という2つの”Satellites=人工衛星”が取得した惑星データと量子データを応用して、相対性理論やくしまるえつこがソロで解き明かした宇宙最大の謎である「特異点」と同じ答えをワームホールに示し出し、そして遂にねごとは次元の壁を超えてThey=彼らと再会する。これにはえつこX次元へようこそとばかり、人工衛星マギオンからほくそ笑んでいるに違いない。冗談じゃなしに、今のシン・ねごとの比較対象ってその辺のガールズバンドじゃなくて、わりとマジでやくしまるえつこ率いる相対性理論だと思う。
 

ねごととダンスミュージックの融合、その相性はアルバムの幕開けを飾る表題曲の”ETERNALBEAT”から遺憾なく発揮されていて、前作のようなロック歌唱ではなくウェットでシットリした幸子(Vo,Key)のオトナ系ボーカルをリードに、この『ETERNALBEAT』という名の小宇宙の幕開けを飾るに相応しい、ミラーボールのようにカラフルなサウンドと永遠に鳴り止まない「始まり」のビートを刻んでいく。”アシンメトリ”と同じく、BBSの中野雅之氏がプロデュースを手掛けた#3”シグナル”は、クラブ系のイントロからバッキバキなエレクトロニカを効果的に鳴らしつつも、要所で幸子のボーカル&キーボードと瑞紀のギターでメリハリを効かせながら展開し、クライマックスではギターのリフとクラップで縦ノリ的な盛り上がりを見せる。

シングル『DESTINY』 の時に「グリッチホップっぽい」と一体どういう意図で書いたのか、自分でもよく分からないのだけど、この4曲目の”mellow”のグリッチホップ的なトラックを耳にしたら至極納得したというか、それこそ同シングルに収録された瑞紀が手がけた”シンクロマニカ”のリミックスという名の伏線を回収するかのような一曲だった。哀愁を帯びたメロディを歌いこなす幸子のボーカルと、そのリミックス風のクール&ドライなトラックが、絶妙な切なさとエモさを呼び起こすバラードナンバーだ。また幸子が奏でるマリンバのノスタルジックな音色が絶妙なアクセントとしてその存在感を示している。

まるで森田童子みたいなノスタルジーの世界へと誘うような、幸子の歌と小夜子と瑞紀のコーラスでゆるふわっと始まる#5”君の夢”は、ある種のドラムンベース的な疾走感溢れるビートを刻むトラックとファンタジックなプログラミングが、まるで白昼夢を見せられているかのような、摩訶不思議なシン・ねごとワールドを構築していく。



なんだろう、何度も言うけどこの”DESTINY”ってねごとの音楽人生、その未来を大きく変えた、言うなれば【特異点】だったと思うのだけど、なんだろう、「全てはここから始まった」じゃあないが、なんだろう、それこそ【過去のねごと】【現在進行系のねごと】【未来のねごと】を紡ぎ出すキートラックというか、なんだろう、ねごと『運命』すなわち『DESTINY』を繋ぐいわゆる四次元立方体(テッセラクト)的な役割を担っているのがこの曲で、このシン・ねごとによる『ETERNALBEAT』の実験的なアルバム前半の曲と、ex-ねごとらしいバンド・サウンド全開でお送りするアルバム後半の曲、それぞれ別次元に存在する粒子を同次元へと繋ぐワームホール、すなわち橋渡し的な役割を担っている。

この”DESTINY”という【特異点】を起点に、打ち込みを駆使したアルバム前半の実験的な流れから一転して、持ち前のエネルギッシュなバンド・サウンドを全面に押し出してくる。ROVOの益子樹氏プロデュースの#7”cross motion”やシングルにも収録された同氏プロデュースの#8”holy night”では、イントロからスペースワールド感&ピコピコ感マシマシの曲で、特に#7はガールズ・バンド界のレジェンドZONE愛を伺わせる幸子のボーカル・ワークが個人的にお気に入り。

アルバム終盤は、前作『VISION』のバンド・サウンドを継承した”Ribbon”、ゆるふわゲーこと『リトルビッグプラネット』風のゆるふわな世界観の中で軽快なロック・ビートを刻んでいく#10”PLANET”、そしてYUI”TOKYO”を彷彿とさせる切ない歌詞をエモく歌い上げる幸子の歌とバラエティ豊かな幅広いアレンジを効かせたアコースティックなトラックがサイコーなラストの#11”凛夜”まで、アルバム後半はex-ねごとらしいバンド・サウンド主体でありながらも、アルバム前半の実験的なサウンド・アプローチを受け継ぐ所はシッカリと受け継いでいる。とにかく、聴き終えた後の「余韻スゲぇ...なんだこのアルバム...宇宙かよ」ってなる。なんだろう、「傑作」とかそんな生半可なもんじゃあないです。単純に「僕の好き」が詰まってる。なんだこれ。

このアルバム、もはや『進化』というよりも『突然変異』と表現したほうが正しいのかもしれない。確かに、前作の『VISION』でド真ん中のストレートな、それこそ自分たちの中でナニかが吹っ切れたようなバンド・サウンドを展開していたねごとが、なぜ一転して打ち込み主体のダンサブルな縦ノリ系のバンドに変貌を遂げたのか?しかし、果たして本当に突然変異なのだろうか?元々、ねごとメンバーの4人が織りなすバンド・サウンドには、グルーヴィでアンサンブルな縦ノリにも横ノリにも強い、ロックバンドとしての柔軟性の高さとそのスキルが備わっていて、だからこの手の打ち込み系との相性もグンバツなのは聴く前から分かりきっていたし、そして何よりも以前からギターの沙田瑞紀がリミックス音源を通して「実験的」なサウンド×ねごとを散々試みてきた事もあって、むしろこの『突然変異』はイメージ通りでしかなかった。あの”アシンメトリ”にしても、そのまんまBoom Boom Satellitesのビートを借りてきたというわけじゃあなくて、あくまでもねごとがデビュー当時から一貫して探求してきた『宇宙』に対する強い”憧憬”と元々の素養から全ては内側から生まれ出た音であり、そのBBSから受け継いだ『魂』のビートと「ガールズバンドねごと」としてのファンタジックなポップネスが、ワームホールを抜けた先にある宇宙の果てでクロスオーバーした必然の結果に過ぎない。つまり、【彼ら=They】が作り出した五次元空間の中で見た【未来のねごと】は、その【彼ら=Theyの正体が実は【ex-ねごと】だったという宇宙の『真実』に到達していたんだ。

あらためて、今作はねごとの音楽的価値観が宇宙を一巡して一回り大きくなってスケール感を増した、シン・ねごとによるオトナ・サウンドを展開していく。彼女たちの音楽的な見識の広さとロック・バンドとしての柔軟性を垣間見せるような、それこそ「オルタナティブバンドとしてのねごと」が持つプライドとポテンシャルがビッグバンを起こした奇跡的な作品だ。楽曲のアレンジ力が格段にアップしたこと、特にトラック面の強化は目を見張るものがある。今作におけるボーカル&キーボード担当の幸子の歌は、無理に声を張り上げるような歌い方ではなく、非常に落ち着いていて相当耳障りが良くてオトナっぽいです。彼女の「ボーカリスト」としての成長および変化は、このアルバムの中で地味に大きな微粒子として存在しているし、ほんの微粒子レベルに些細なことかもしれないが、その微粒子レベルの変化が及ぼす大きな『バタフライ・エフェクト』は地味に評価されるべき所だと思う。単純に歌ってるメロディが心地いい。つうか、そろそろ幸子はANATHEMAヴィンセントChvrchesローレン・メイベリーみたいにドラム叩き始めそうな予感。
 
『繋がり』という点で言うと、シン・ねごとBoom Boom SatellitesROVOもソニー系列のバンドで、面白いことにANATHEMAも「彼らが最もオルタナティブやってた」と評される中期の頃に所属していたMusic for Nationsの親会社がソニー・ミュージックと合併してソニーBMGとなり(詳しくは『Fine Days: 1999 - 2004』参照)、そして2004年にMFNは正式に閉鎖され、ご存じそれ以降のANATHEMAは露頭に迷ってしまうのだが、しかし今思うと、その合併騒動がなければ【今のANATHEMA】は存在しなかったかもしれないし、そう考えると【バタフライ効果】【オルタナティブ】には”引かれ合う”「ナニか」があるのかもしれない。そういった些細な『繋がり』からも、ソニーがやってる事業で一番評価されるべきなのって、ソニー損保のCM事業でもゲーム事業でもなくて音楽事業だよなって再確認した次第。今のねごとは、ソニーの「モノづくり」に対する【オルタナティブ】な姿勢とその信念を受け継ぎ、それを守り続ける音楽界最後の砦、言うなれば「邦楽界のマシュー・マコノヒー」すなわち「シン・オルタナティブ・ヒーロー」だ。彼女たち4人の他に「代わりは、代わりはいないんだ」。

昨今は「ガールズバンド戦国時代」だなんだと囁かれているが、正直そんなことより「ガールズバンド戦国時代」という名の「殺し合いの螺旋」から降りた今のねごとの生き様に刮目せよと、「いま最も評価されるべきバンド」以前に、「いま最も面白いバンド」であり「いま最もカッコイイバンド」でもあり、そして「いま最もオルタナティブなバンド」がこいつらだって、今のねごとを正当に評価してから戦国時代だなんだと騒げよと、ハッキリ言って今のex-ねごとの前では「ガールズバンド戦国時代」なんて子供のお遊戯会でしかない。わかったか、ガルバンの当て振り鳩女ども。

実際にねごとは、「いま最も評価されるべきバンド」その根拠をこのアルバムで、宇宙最大の難問である「特異点」の方程式を解き明かすことで、それを証明してみせた。なんだろう、僕自身がこの『ETERNALBEAT』における『バタフライ・エフェクト』その一部の粒子として存在していた、な~んて勘違いも甚だしいのは重々承知の助だし、なんかもう「ありがとう...」それしか言う言葉がみつからないというか、こんなビッグバンレベルのアルバム出しちゃっていいのかよって。もう本当にナニも言えねぇ。当然、僕はこの【シン・ねごと路線】を全面的に支持するというか、ねごとはこれまで数々の伏線を辿ってきて『今』という『未来』を描いているので、やっぱ何も言えねぇし、やっぱ瑞紀サイコーだ。
 
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ねごと
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Boom Boom Satellites 『Shine Like a Billion Suns』

Boom Boom Satellites

Album 『Shine Like a Billion Suns』
Shine Like a Billion Suns

Tracklist
01. Shine
02. Only Blood
03. Complicated
05. Vanishing
06. Back In Black
07. The Moth (Attracted to the Flame)
08. Blind Bird
09. Overcome
10. Stain
11. Emergence
 
BBS≒NEXT-ANATHEMA ・・・俺的ラブメイト・ランキング暫定トップのヒロミ・ヒロヒロ擁するtricotを目当てに行った、Boom Boom SatellitesのライブツアーFRONT CHAPTER Vol.4を観たことで、最新作の『Shine Like a Billion Suns』がいかに驚異的で先進的なアルバムだったのかを、心の底から理解することができた。まず何が驚いたって、ライブでもその幕開けに相応しい神秘的な存在感を放っていた、アルバムのオープニングを飾る”Shine”からして、それこそANATHEMAの10thアルバム『Distant Satellites』の表題曲、あるいは7thアルバムの『A Natural Disaster』を彷彿とさせるレディオ・ヘッド流れのUKサウンドにニヤリとさせ、まずここで「ANATHEMAの『Distant Satellites』はPost-JPOPだッ!」という俺の解釈を暗に証明してみせる。そして、先日のライブでも序盤のハイライトを飾った”A Hundred Suns”では、それこそ【テクノ×Djent】の融合という他に類を見ない前代未聞の事をやってのけ、これだけでBBSが只者じゃないバンドだという事を証明する。実際に、先日のライブで聴いても「やっぱこれDjentだわ」って思ったのだけど、あらためて音源で聴いてもDjent以外ナニモノでもない名曲で、しかもこのCynicTexturesを連想させる"ジェント・リーズム"を叩いてるのが福田洋子さんとかいう女性ドラマーってのが更に驚きで、どうせだから今回の縁を機にtricotの次のアルバムに参加してガチのDjentやって欲しいと思っちゃったんだからしょうがなくない?・・・で、続く5曲目の”Vanishing”では、スティーヴン・ウィルソン”Harmony Korine”を彷彿とさせる、空間の響きを意識した轟音的なダイナミズムを展開し、今作で最もヘヴィなリフを主体としたインダストリアル・ロックの”Back In Black”、そして”Only Blood””A Hundred Suns”とともにライブのハイライトを飾った”Blind Bird”では、それこそSWのサイドプロジェクトNo-Man等のPost-Progressive勢をはじめとした、いわゆるPost-Musicに精通する幽玄かつ繊細緻密な展開力を発揮していき、このアルバムのハイライトとしてその絶対的な存在感を誇示する。で、まるでCynicばりの恍惚感溢れる神秘的な輝きを解き放つボーカル曲の”Stain”、その流れを汲んだアルバムの終わりを迎えるに相応しい”Emergence”まで、個々の楽曲で聴かせる部分は勿論のこと、【神秘的な序盤/ハイライトを飾る中盤/恍惚と余韻を残す終盤】という起承転結を効かせた一つの作品としての完成度は、活動休止を余儀なくされた彼らが復活を遂げるまでのエモい物語とオーバードライブするかのような、その圧倒的な音(生命)エネルギーに集約されている。
 

引力、即ち音楽ッ! ・・・ロックバンドとしてのドライブ感かつタイトな側面とエレクトロ使いとしてのシャレオツなグルーヴ&ダンス・ビート感を絶妙なバランスで両立させた、実に巧妙かつポスト-センスフルなオルタナティブ・ミュージックを展開している。このアルバム、とにかく”Post-Progressive”に精通する要素が驚くほど多くて、それこそKscopeに所属してても全くおかしくない内容で、もはやANATHEMAと対バンしても違和感ないくらいだ。しかしこうなってくると、このアルバムのサウンド・コンセプトというか、音のバックグラウンドが気になって気になってしょうがない小宮山。そして何よりも、随所で垣間見せる福田洋子さんのDjent然としたドラム・ビートにド肝を抜かれること請け合いの一枚だ。つまるところ、表向きは(そのサウンド・ステージには違いはあるが)いわゆる"踊らせ系"同士の共演でありながら、裏では"Post-系"同士の共演でもあった、だからBBSのライブにtricotが呼ばれるのは必然的な出来事だったと、このアルバムを聴いたら妙に納得してしまった。そして、そのライブに日本における”Post-Progressive”界の宣教師()である僕が導かれた、というのは果たして偶然だろうか・・・?いや...引力、即ち音楽だッ!

・・・これは余談だけど、あのねごともソニー関連でこのBBSもソニーで、ANATHEMAも過去にソニー傘下のMFNに在籍していたって事を考えると、何か面白い事実が見えてくるんじゃないかって。ちなみにおいら、ねごとがここから更に化けるには、ANATHEMA”Distant Satellites”みたいな徹底してミニマル宇宙な曲が書けるかがカギになると思ってて、今のねごとにはそれが実現可能な高いポテンシャルに満ち溢れている。
 
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Alcest 『シェルター』 レビュー

Artist Alcest
Alcest

Album 『Shelter』
Shelter

Tracklist
01. Wings
02. Opale
03. La Nuit Marche Avec Moi
04. Voix Sereines
05. L'Eveil Des Muses
06. Shelter
07. Away [feat. Neil Halstead]
08. Délivrance
09. Into The Waves

【元々ブラックメタルなんか興味なかったのさ、あの頃の僕はどうかしてたんだ】・・・そんなネージュのホンネが込められているような、先行シングルとなる”Opale”をこの世に解き放ち、自身が生み出したポストブラックなる一つのジャンルに終止符を打った、ポストブラ界のアイドルことネージュ率いるAlcestの約二年ぶり通算四作目となる『Shelter』がリリースされた。まず、この実にShoegazer然としたラブいジャケが暗示するとおり、あのANATHEMAとのツアーを経験し、あの名盤Weather Systemsが発する黄金色に光り輝く生命エネルギーをズキュゥゥゥン!!と浴びてしまったLove & Peaceなアートワークから全てを察する事ができるんだが、結論から言ってしまうと→ネージュ「俺はポストブラックをやめるぞジョジョー!」と高らかに宣言するような、いわゆるポストブラックと称されるジャンルの一時代を築き上げてきた自身の過去との決別を宣言するかのような、北国からの風をうけて新たに生まれ変わったアルセストが奏でる極上のサウンドスケープが、そよ風にのって優しく心の中に吹き込んでくるかのような一枚となっている。



【Post-Black is DEAD】
・・・まず、翼の生えた天使が舞い降りてくるかのような、まるで気分は「パトラッシュ、僕はもう疲れたよ...」な神々しいイントロの#1で幕を開け、その流れで始まる#2”Opale”が今作の『シェルター』を象徴していると言っても過言じゃあない。”オパール”という名の【幸運の石】が意味する→【人生の暗闇に希望をもたらすような明るさに満ちた石であり、憂鬱を払い、何事にも囚われない柔軟さや人に左右されない自分自身の核を作る】・・・そんなオパールに秘められたヒーリング効果をフルに発揮するかのような、これまでの少し内向的だったAlcestとは一線を画した、まるでSigur Rós直系の優雅なグロッケンシュピール(鉄琴)を用いたポストロッキンな音使いと、まるでANATHEMAヴィンセント&リー・ダグラス黄金コンビを想起させる、貴公子Neige【幸福】を呼び寄せる清らかな歌声とBillie Lindahlの天使のようなコーラスが織りなす黄金のハーモニーと共に、まるで生まれたての赤子のように純粋無垢なメロディとLove & Peaceな多幸感に満ち溢れた、眩いくらいの音の洪水にMy Heart is Happy!! しかし、なぜこの『シェルター』がここまでシガロリスペクトなのか?その答えは至って簡単だ→なんと今作のミキシング&プロデューサーには、数多くのシガロ作品を手がけてきた重鎮Birgir Jón Birgissonを迎え、そのシガロをはじめSólstafirKontinuumらのアイスランド勢の作品を世に送り出してきた、アイスランドが誇るSundlaugin Studioでレコーディングされた作品だからだ。更に、チェロやヴァイオリンなどのストリングス勢もヨンシーの親衛隊として知られるAmiinaの4人組を起用しており、様々な面においてシガロ界隈でお馴染みの人材で揃えてきている所に、もうワンランク上のおっさんを目指したいという、アルセすなわちネージュのクリエイティヴ!!な音楽に対する貪欲な姿勢と揺るぎない強い意志、そして今作に対する本気度を伺わせる。ちなみに、今作のマスタリングにはDIR EN GREYやくしまるえつこの新曲でも知られる、世界一の売れっ子エンジニアことテッド・ジェンセン擁する世界最高峰のマスタリングスタジオ、STERLING SOUNDJoe LaPortaが担当している。まさしく最強の布陣だ。

 地球のみんな!オラに力を分けてくれ!

【最後のノイズ・・・そんな、今作を象徴する”オパール”が解き放つ、まるで水晶球のように一点の曇りのない光がこの世界を明るく照らし出しながら、次の”La Nuit Marche Avec Moi”へと物語は続いていく。この曲では、ほのかに前作の匂いを感じさせるアンニュイでありながら優しく繊細なメロディをもって、極上のリヴァーヴを効かせた美しきドリーム・スケープを展開していく。そして、今作のハイライトであり、アルセストの過去と今を象徴かつ証明するかのような#4の”Voix sereine”は、まるで朝日が登り始める合図(イントロ)から、情緒感に溢れたネージュの歌声とヨンシー親衛隊による優美なストリングスや鉄琴、それらの繊細なタッチで丁寧に紡がれていくリリカルなメロディをもって、まるで「地球のみんな!オラに力を分けてくれ!」と言わんばかりの『愛』『勇気』『希望』が込められた活力みなぎる力強い音の生命エネルギーを蓄積させながら、まるで過去との別れを惜しむかのような、まるで『ジョジョ』のツェペリ一族が最期に「JOJOーーーおれの最後の波紋(ノイズ)だぜーーーうけとってくれーーッ」という魂の叫びが込められた『人間の魂』と、まるでX次元へようこそでネコ化したやくしまるえつこと同調するかのようなネージュの「ニャ~ニャ~ニャ~♪」というコーラスを交えながら、押し寄せる恍惚感とepicッ!!な胸の高鳴りと共に、中盤からクライマックスにかけてエモーショナルな感情を爆発させていく圧倒的なダイナミズムは、まさしくANATHEMAの名曲”Untouchable, Part 1”に直結するドラマティックでシネマティックなソウル・ソサエティを形成し、この世の【不幸】を洗い流し、そして全てを浄化していく...。この世界中から呼び込んだ生命エネルギーを一つにした元気玉こそ、ネージュが歩んできた音楽人生すなわち物語の一つの終着点であり、この北風と太陽のような『光』の塊こそネージュの黄金の精神』なんだと僕は悟った。

メディアブック

黄金期のジャンプ】・・・あらためて、この#4”Voix sereine”で披露している、初期のポストメタルミュージックへの回帰が込められた、これまで内側に溜め込んでいたヒキコモリエネルギーを、これみよがしに一気に外側に解放するかの如しノイジーなギターは、過去の自分を捨てて、『希望』に向かって未来へと一歩前へ踏み出すような、今にも溢れ出しそうなネージュの内向きではなく前向きな願いと想いが込められている。僕はこのノイズという名の幸福の渦に身を任せ、そのノイズの渦に贅沢に溺れる中で、Alcestとの出会いから今までの思い出が走馬灯のように頭を駆け巡り、そして気づくと僕は→「ありがとう」...それしか言う言葉が見つからない...と呟きながら、ただただ流れる涙を抑えることができなかった。それほどまでに、今までネージュが心の奥底に密かに封印しておいた『シェルター』という名の『ココロのトビラ』を開き、ネージュが求めていた輝かしき栄光の光を掴み取る瞬間・・・すなわちナポレオンの復活!を目の当たりにしているような感動すら憶えた。そして僕は、この”Voix sereine”が解き放つ恍惚感あふれるエモーションと「左手はそえるだけ...」みたいな桜木花道的なアートワークに、ジョジョ8部『ジョジョリオン』の最終話もしくはラストシーンを垣間見たような気がした。要するに、今作のテーマは→さしずめ黄金期のジャンプ』ミュージックといった所か。

【Shoegazerへの憧憬】・・・過去のAlcestに別れを告げ、リバーブの効いた冷たい北風が地肌を儚く刺激するドリーム・ハウスの中で、再びネージュとBillie Lindahlによる黄金のハーモニーを披露する#5”L'Eveil Des Muses”、まるで太陽のような輝きを放つイントロからアコースティックな音色を使ってハートフルなエネルギーを放出する表題曲の#6”Shelter”、そしてネージュのShoegazerに対する意識の高さ、すなわち『LOVE』を#7の”Away”で再確認する事となる。デフヘヴンの2nd『サンベイザー』にネージュを迎え入れたように、それこそネージュの『シェルター』を開く鍵すなわち黄金の回転エネルギーとして、マイブラと並んでShoegazerというジャンルの絶対的アイコンである伝説のシューゲイザー・バンド、Slowdiveニール・ハルステッドをリードボーカルとして迎え、ヨンシーの追っかけことAmiinaの優美なストリングスとアコースティックなフォーキーな音色を引き連れて、アイスランドの雄大な大地と情緒に溢れた自然豊かな『メランコリア』を描き出している。その、まるでネージュが「貴方が僕の『シェルター』の鍵です。私の心の扉を開くのはあな~た~♪」と言わんばかりのエモい流れから、本編ラストの約10分ある大作の”Délivrance”へと物語は進んでいく。終盤のハイライトを飾るこの曲は、まるで映画『メランコリア』の壮大かつ壮絶なラストシーンをリアルに体感しているかのような、それこそネージュという一人の人間の『真実の物語』を深裂に描き出すかのような名曲で、ネージュによる民謡風のコーラスや真綿のように繊細緻密なメロディをもってリリカルに展開しながら、特にクライマックスを飾る終盤での壮観なスケールを目の前にした僕は為す術がなく、燃えさかる灼熱の太陽に手をかざしながら、一刻一刻と迫りくる感動の渦にただただ身を委ねるしかなかった。まるで、この世に蠢く全てのカタストロフィを『無』にするかのような、それこそ『清らか』な遺体で構築された賛美歌を最期に、これにてネージュという名の聖人が後世に残した『人間賛歌』は堂々の完結を迎える。

【キーワードはJulianna Barwick】・・・主に#1,#2,#5,#8でコーラスを担当している、スウェーデン出身のインディ・フォーク系SSWPromise and the MonsterBillie Lindahlをリードボーカルとして迎えた、世界で3000枚限定のハードカバーブック盤に収録されているボートラの#9”Into The Waves”の破壊力ったらない。本編ではネージュと共に崇高なコーラス/ハーモニーを披露することで、今作をより映画のサントラ的なスケールを与え、その聖歌隊の如し神聖なるコーラスが一つのキモとなっている所からも、USのJulianna Barwickを想起させるヒーリング・ミュージック的な意識が強い作品と言える。なんつーか、インディ寄りとでも言うのかな。そんな彼女の歌声だが、このボートラではチャーチズローレンたそを少しウィスパーにした天使のような萌声を全面にフューチャーしており、それこそCD一枚に一曲という贅沢させちゃうのにも十分納得してしまうほどの良曲となっている。正直、このボートラを聴くか聴かないかによって、今作に対する評価が180度変わってしまうんじゃあないか?ってレベル。なんにしても、アルセストの新譜といいウォーペイントの新譜といい、それらを紐解く鍵となるのが、この『シェルター』と同じBirgir Jón Birgissonがエンジニアとして携わった、新作(2nd)を昨年リリースしたジュリアナ・バーウィックってのが俄然面白いね。いつぞやに彼女のデビュー作をレビューした記憶があるが、まさかそれがこの伏線()だったなんて・・・。

  シェルター
 
【ネージュの『ユメ』『夢』】・・・あらためて、今作の『シェルター』ではBlackgaze特有の無骨なブラストやノイジーなギター、そしてネージュの怒りが込められたスクリームやプログレスな展開力も影を潜め、ありのまま素直にShoegazerやってる。まるで一種の桃源郷、いや黄金にでも迷い込んだかのような幻夢的(二次元的)な世界観は皆無に近く、その薄霧がかった幻想的な森を抜けると『シェルター』という名の現実空間(三次元)への入り口が目の前に現れ、その扉を黄金の回転を使ってこじ開けると、そこには『ユメ』ではなく『夢』の世界が広がっていたんだ。それこそ、初期作品で空想という名の『ユメ』の中で『夢』を一貫して描き続け、子供の頃から憧れ続けていたネージュの『夢』が真の意味で現実となった瞬間なんだと。正直、この『シェルター』を解き放つことを使命に、ネージュはこの世に生を受けたんだと思う。しかも、かつて”オパール”【不幸の石】と呼ばれた時代もあったってんだから尚さら面白い。この言葉の意味が、ネージュの音楽人生の全てを象徴していると言っても過言じゃあない。これぞ『人間賛歌』だと。

【Pitch-Blackへの憧憬】・・・そんなネージュのアツい想いが込められた『シェルター』だが、彼らの最も身近なピッチミュージックといえば...そう、今やiPhoneの広告塔にまで成り上がった、いわゆるファッション・サブカル系男子のアイドルことDEAFHEAVENが存在する。昨年、そのD F H V Nサンベイザーが大手音楽メディアPitchforkに高く評価された結果→言わば後輩であるハズのデフヘヴン人気が、先輩のアルセスト人気を大きく上回るという逆転現象が起こった。少なくとも前作までは、根暗のニワカブラックメタラーを相手に阿漕な商売をしながら自身の立ち位置を確立してきたアルセストだが、このまさかの逆転現象に流石のネージュも「アカン」と感づいたらしく、今作ではD F H V Nに負けじと音響ライクな音作りやメロディの質、プロデューサーやゲスト陣から録音面まで全てがリア充仕様もといメジャー仕様に合わせてきてる。この変化をナニかに例えるなら→あの頃のヒキコモリ系男子がシュガーロス・ダイエットによって生まれ変わり、まるでアニヲタが脱ヲタに成功したような、まるで田舎から上京したての大学生のような、まるでキョロ充のような雰囲気すら漂っている。要するに→いくら来日公演ができるほどの人気があると言ったって、所詮はニッチな界隈でしか評価されない...そんなインディ界隈すなわちピッチメディアに対してサイレント・ジェラシーを感じていたネージュの”メタラーとしてのコンプレックス”が炸裂してしまった作品、そんな皮肉めいた受け取り方もできなくないわけだ。あらためて、”コンプレックス”というモノは人をクリエイティヴッ!!にする大きな源だと再認識した次第で。なお、ピッチのレビューではボロクソの模様。

【Post-Black is Not DEAD】・・・自分の中で、ずっとアルセストとデフヘヴンって”全くベクトルの違うポストブラック”という認識があったから、この両者の関係を考察しようなんて気持ちは微塵も湧かなかったけれど、昨年の『サンベイザー』と今作の『シェルター』を聴き比べてみたら、その愚かな考えを改めざるを得なくなった。デフへが二作目で、アルセストがその倍の四作目にしてようやくポストブラックというジャンルにおける最終目的地『メイド・イン・デフヘヴン』に到達し、お互いに引かれ合い、影響を受け与えながらも最後は互いに笑顔で歩み寄った、その良きライバルであると同時に良き理解者、もはや師弟や兄弟というような概念を超越した関係性こそ、まるでディオとジョジョのような黄金の関係性』と言えるのかもしれない。そうなんだ、『シェルター』の中で『サンベイザー』というサウンドスケープに包まれている瞬間だけが、ぼっちの僕がリア充気分になれる唯一の瞬間なんだ。僕は今、浜辺でいちゃつくリア充カップルのようにウキウキでラブラブなんだ...。というわけで、一時はポストブラックは終焉を迎えたように見えた・・・が、どうやら間違いだったようだ→俺たちポストブラックの戦いはこれからだッ!

遠回りこそ一番の近道

【遠回りこそ一番の近道】・・・正直、前作を聴いて”終わりの始まり”を感じたというか(だから年間BESTにも入れてない)、曲展開やメロディそのものが少しあざとく聴こえてしまい、その漠然としたポストブラックやめたい感・・・そんなネージュの心の揺らぎが顕著に表れてしまった前作は、初期の名作と比べるとどうしてもネタ切れ感が拭いきれなかった。しかし、そのメロディに込められた黄金の音エネルギーは着実に今作の楽曲に活かされていて、例えばOpethで言うところのWatershedを深く突き詰めた結果がHeritageである事と全く同じように、前作のLes voyages de l'âmeがあってこその『シェルター』だと僕は思う。だから、今作を聴いて「初めからShoegazerやっとけばよかったのに」というクソみたいなニワカ発言には一切興味なくて、それこそジョジョ7部のジャイロが放った名言のように、ネージュにとっても【遠回りこそ一番の近道】だったんだ。事実、前作と同じ意識のままだったら駄作しか生まれなかった、つまりオワコン化不可避だっただけに、そんな中で吹っ切れた、潔い行動を取ったアルセストを僕は素直に正しく評価したい。そして何よりもネージュの覚悟に敬意を表したい。

【引かれ合い】・・・このように、全ては”俺の界隈”の頂点に君臨するANATHEMA黄金の精神、すなわち俺の界隈の中心へと”引かれ合う”ように集まってくる。昨年のKATATONIAも、今年のAlcestも必然的に...いや、運命的にね。なんにせよ、後輩のD F H V Nの奇跡の再来日(伝説の名古屋公演)が再び決まったからには、このアルセストにも来日して頂かないとナニも始まらないしナニも面白くならない・・・と思った矢先に来日キター!
 
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凛として時雨 『i'mperfect』 レビュー

Artist 凛として時雨
凛として時雨
Mixed (#6) Jens Bogren
Jens Bogren

Album 『i'mperfect』
i'mperfect

Track List
1. Beautiful Circus
2. abnormalize
3. Metamorphose
4. Filmsick Mystery
5. Sitai miss me
6. make up syndrome (album mix)
7. MONSTER
8. キミトオク
9. Missing ling

凛として時雨×イェンス・ボグレン=フェッ!?』

おいら、この凛として時雨の思い出は、時雨の【初期衝動】という名の【中二病精神】が暴走した2nd『Inspiration Is Dead』と続く3rd『just A moment』の頃が最もネツを上げていた時期で、思い返してみると約4年前の2009年上半期ベストにもちゃっかり3rdの名を挙げてたりするんだけど、しかし明らかに初期の衝動的な勢いが消え失せ、これまでとは違って【experimentalism】を押し出した4th『still a Sigure virgin?』以降はTKソロを含め時雨の動きも一切追っていなかった。そして今回、約三年ぶり通算五作目となる新作『i'mperfect』で遂に実現してしまった、まさか...まさかの凛として時雨×イェンス・ボグレンという今世紀最大のビッグサプライズに対して→「これが”虫の知らせ”ならぬ”イェンスの知らせ”ってやつか...『ありがとうイェンス...それしか言う言葉が見つからない...」←リアルにこんな状態になったんだけども、まぁ、わかりやすい話、今年の初めからボグボグボグボグ...と散々煽りに煽って伏線()立てまくった結果→その極めつけがまさかの『凛として時雨×イェンス・ボグレン=フェッ!?』だったというわけ。こんなん俺のキング・クリムゾンでも予測できなさすぎて、この”引かれ合い”を知った時は只々アヘ顔で笑うしかなかったわ。もうなんかThe Ocean×イェンスの衝撃を軽く超えたわ。それにしても、まさかあの伏線()回収者が凛として時雨TKだったとは・・・これには感動を超えたナニかを憶えたし、マジでTK is God...としか。というわけで、本当にあのイェンス・ボグレン凛として時雨の楽曲を手がけているのかを確認するため、さっそくクレジットを確かめた結果↓

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお?」
クレジット
                   ↓
Ling tosite sigure×イェンス・ボグレン
この瞬間の俺→ヤッダーバアアアアアアアアァァァァァァァァ!!しかもFascination Street StudioswwwwwwwwwwFascination Street StudioswwwwwwwwwwFascination Street Studioswwwwwwwwwwwファーーーーーーーーーーwwwwwwwwww」とアヘ顔デフヘヴン状態に。

 俺の中で、イェンスと意味深な関係を持ってる国産のバンドと言ったら当然DIR EN GREYの一択なんだけど、そのDIR EN GREY凛として時雨ってナニかしらの関係性があるというか、両者が創り出す音楽の根底には【中二病精神】という絶対的な共通部分があったりする。だから冷静に考えてみると、今回の凛として時雨×イェンス・ボグレン』は意外でもサプライズですらない、むしろ”必然的”な”引かれ合い”だったのかもしれない。しかしながら、間違いなく2013年度上半期の大きな流れを作ったイェンス・ボグレンという俺の界隈の裏方に目をつけたTKってやっぱスゲーわ。 なにはともあれ、割りとマジでこれから【邦楽バンド×イェンス・ボグレン】ってケース増えてくると思うよ←これ予言ね。

DT×イェンス・ボグレン】←わかる
The Ocean×イェンス・ボグレン】←まぁわかる
Ling tosite sigure×イェンス・ボグレン】←フェッ!?


僕のなかで、ミックスは曲作りと完全にいっしょなんですけど、僕はプロのエンジニアではないので、自分が作業することによって失われる部分があったとしたら、それは単純に嫌だなって。自分を疑うことは、自分を信じることと同じか、それ以上に大事なことだと思うんです・・・と、WEBのインタビューでこのように語るTK、そんなパーフェクト超人である彼が選んだ”プロ”の海外エンジニアがイェンス・ボグレンだった、というわけ。で、このインタビューを見ても「やっぱTKって神だわ」としか言いようがないんだが、なんだかんだ今でもメタル界隈に目を向けてくれてるんだなって、妙な安心感というか安堵感がこれにはあったし、#6のクレジットにシッカリとFascination Street Studiosと明記している所からも、やっぱTKわかってんなぁ...って、なんか泣きそうになった。要するに、時雨よりもまずイェンス・ボグレンという名前を目当てにコレを聴いてる奴って、ひょっとして世界中でWelcome To My ”俺の感性”の管理人すなわちただ一人だけなんじゃねーか・・・?というお話。つうか、どういった経緯でミックスをイェンスに任せる事になったんだろう?その辺チョ~知りたい件。

 話を戻して、この凛として時雨の音楽性といえば、【シューゲ/ポストロック/オルタナ/インディ/マスロック/メタル/カオティックHC/Post-V系】など多彩な要素を、DIRの京も驚愕するレベルのTKによる中二病精神全開のカオティックなスクリーム、345の青臭くてエモーティヴな歌声、まるでXのヨシキが憑依したかのようなピエール中野のツーバスドコドコ系ドラム、このスリーピースが織りなす激情系ポストハードコアに落としこみ、それぞれの音にズキュウウゥンと込められた刹那的な感情が真正面からぶつかり合い、そこへプログレッシヴな感度が重なり合ってトライアングルに交錯した瞬間に解き放たれる轟音ノイズという名の・・・そう、『人間の魂』だッ!!←というような音楽性。で、本作『i'mperfect』でもその根本的な部分は不変で、混沌と静寂の間で揺れ動くセンチメンタルな感情がまるでエヴァのシンジ君のように暴走する、実に凛として時雨らしい激しくも繊細な音世界を繰り広げているんだけど、意識的にexperimentalismを高めた前作とは一味違い、本作は2ndや3rdの頃の激情系ポストハードコアに回帰してる面も確かにあって、洗練された繊細なメロディとメタリックな激しさとのバランス的な意味でも、個人的に時雨の最高傑作だと思ってる3rdを彷彿とさせる感じが好き。当然、初期の頃の勢いや良い意味で青臭い中二病精神はもはや皆無に近いけど、相変わらず一曲一曲に凝縮された情報量の多さにチビる。特に#5”Sitai miss me”から#6”make up syndrome”そして#7”MONSTER”までの流れは本作のハイライトで、#5は初期に通じるカオティックな攻撃性と前作の”this is is this?”に通じる独特のexperimentalismがあるし、イェンスが手がけた#6はイェンスらしいバランスの良いミキシングで新鮮に聴けたし(どうしよう...他の曲のミックスと全く区別がつかなかったなんて言えない...でもドラムの音は独特かも...うん、きっとそうだ(震え声))、初期の時雨らしいプログレスな感覚が蘇る#7もノスタルジックな感覚とTKの歌い始めすき。そしてラストを飾るバラード調の#9”Missing ling”の存在も初期への回帰感に拍車をかける。全9曲トータル38分。なんかもの凄いオーソドックスで分かりやすいスタイルというか、無駄な音や臭みというのが一切ない、存外アッサリとした過去最高に耳馴染みがよくて聴きやすい作風、そんな印象。

 おいら、今や武道館で演れる所まで彼らをのし上げた大きな源である初期の名作を語る上で最も欠かせないモノもしくは人物って、バンドの心臓部であるTKでもなくピエールでもなく345の存在だと思うんだけど、極端な話、初期の1stから3rdまでは345がカギを握るバンドというイメージがあって、しかし4thは意識的に”TK中心”のサウンドへとシフトした感が猛烈にあったから(今思うとこの”変化”が時雨に対するネツが冷めた要因なのかもしれない)、今回は「じゃあ本作は?」という観点から聴いたナニもあったわけなんだけど、結局この『i'mperfect』でもその”TK中心”という4thからのイメージが覆ることはなかった。だからどうというわけではないけど。。。要するに、初期の”形だけのプログレッシヴ”ではなく、今の時雨は本来の意味での”プログレッシヴな音楽”やってるんだと、前作そして本作を聴いて確信した。けど個人的には、2ndと3rdは甲乙つけがたいんだけど、椎名林檎直系のメンヘラ精神とノルウェイの22を彷彿とさせるウェットにヌレたマスロック的な音の質感、そして過去最高にメタル色が濃かった3rdの『just A moment』が一番のお気に入りだということに変わりはないし、やっぱ初期の名作と比較すると天と地の差が明確にあったりするけど、しかし今回ばかりは内容どうこうよりも【イェンス・ボグレン】という一人の男の存在が”俺の感性”の全てを納得ッさせてくれた。だから、少なくとも前作よりは良作だということは確か。あと相変わらず中二臭全開のオサレな歌詞カードも◯
 
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Bruce Soord with Jonas Renkse 『Wisdom of Crowds』 レビュー

Artist Wisdom of Crowds
Wisdom of Crowds

Album 『Wisdom of Crowds』
Wisdom of Crowds

Track List
01. Pleasure
02. Wisdom of Crowds
03. Radio Star
05. The Light
06. Stacked Naked
07. Pretend
08. Centre of Gravity
09. Flows Through You

  『ヨナスきゅん×Kscope=引かれ合い』 

UK出身のThe Pineapple Thiefのフロントマンブルース・ソードKATATONIAのフロントマンヨナス・レンクスによる新プロジェクト、その名もWisdom of Crowds(Bruce Soord with Jonas Renkse)のデビュー作『s/t』なんだけど...って、まずパイナップル泥棒のブルースと肩さんのヨナスきゅんという”異色”のコラボが実現すると知った時は驚きを隠せなかったし、とりえあずその【ヨナス×ブルース】よりもヨナスきゅんの電撃的なKscope入りがまさか...まさかこんな形で実現するなんて...一体誰が予想したよ? まぁ、言うてもいずれは【漆黒の意志】を持つKATATONIALovePeaceの提唱者であるKscope”引かれ合い”は必ず起きるとある程度の予測はしてたけれど、まさかこのタイミングで【ヨナス×Kscope】が実現するなんて...これは俺のキング・クリムゾンをもってしても予測できなかったし、もはや今年一番のサプライズと言っていいぐらい衝撃的な出来事だった。ちなみに、Kscope創設から五周年を記念したメモリアルフェス『Two Nights at The Garage』に、このWisdom of Crowds(ヨナス)ANATHEMAが共に出演する事が決まっており、このラインナップには”俺の界隈”に棲む住人もアヘ顔デフヘヴン状態で→「ケースコポォォォォォォ~」

 その音楽性としては、レコーディング&インスト面は全てブルースが担当、そしてボーカルにはヨナスという、もはや説明不要なぐらい”Post-Progressive”の王道を繰り広げているんだけども、ダブ/アンビエント/クラシカル/フォーク/ノイズなど、UKのPure Reason RevolutionMidas Fallを連想させるエレクトロニカ/デジタルな音を中心としたexpelimentalなトリップ・ホップ/オルタナと、KATATONIAの時とは少し違って持ち前の鬱成分を抑えた、アダルトな雰囲気を醸し出すヨナスのムーディかつダンディな歌声が”ジャズ/クラシック”な塩梅をもって絶妙な相性を発揮し、その英国特有の仄暗い叙情性と北欧独自の淡い情緒が自然な流れの中で溶け込んでいる。わかりやすい話、SW先生No-ManDeftonesチノFarのメンバーによるプロジェクトこと†††の【北欧×英】バージョンみたいな感じを想像してもらえればいいんじゃないかと。で、寂寥感を煽るトレモロ風ギターが淡い情景を描き出す北欧ポストロック的なイントロで始まって、ダブやニカそしてデジロック風のギターが叙情的に交錯する#1”Pleasure”、UlverChildhood's Endを思わせるファンキーなイントロからメランコリックでレトロな世界へと誘う#2”Wisdom of Crowds”という序盤の流れだけで、その情緒感に溢れた独特の世界観に引き込むには十分で、特に#2はまさに自身の音楽性とやらを語るかのような、タイトルトラックに相応しい名曲。アコギのアルペジオとストリングスが泣ける#4~#5の流れはハイライト。特にヨナスの本領発揮って感じの#5”The Light”は一番好き。アップテンポなデジロック調の#6は新鮮だし、No-Man直系の優美なストリングスやノイズが心チルい気分にさせる#7と#8、ラストの#9はデジロック風の前半~無音部分~そして後半からのIsis直系の【ATMS】型キーボードとアコギがムーディかつアダルティに彩る、それこそ【チノ×Isis=Palms】ならぬ【ヨナス×Isis=ヨナシス】みたいなハイパーヨナニータイムまで、全9曲トータル57分。

 と言った感じで、ここ最近のKscope界隈がゴリ推しているこの手のダンサンブル&デジタルな電子音とヨナスの歌って一見相性悪そうな感じなんだけど、実際にコレを聴いてしまうとその考えを改めざるを得なくなるほど、その相性は「意外ッ」なほど”イイ”です。けど個人的には、もうちょっと”シンプル”にしても良かったんじゃないかと思うし、近年The Pineapple Thief直系の(ちょっとダサめ)なデジロック調のギターは控えめにして欲しかったかも。あと、どうせなら近年KATA作品で知られるフランク・デフォルトをエンジニアもしくはプロディーサーとして迎えたらもっと面白くなったんじゃね?って一瞬妄想したけど、それだとKATATONIAのいわゆる”Bサイド”と丸かぶりするからアレか...ってスグに(納得)。でも、その肩さんのBサイドとも毛色が全く違う作風だからこそ、ここまで面白く新鮮なキモチで聴けたんだとは思う。なんだかんだ、あくまでも”ブルース・ソード主導”といった感覚もあったりするけど、聴けば聴くほどジワリジワリと染みこんでくるような、そしてふと気づいたら”ヨナニー”してる、つまり”ヨナ充”できる一枚だということは間違いないです。

 実際のところ、”KATATONIAのヨナス”とは一味違った一面を垣間見せると同時に、”ヨナス・レンクス”という一人の”ぽっちゃり系男子”もとい一人の”ボーカリスト”としての”自然体な歌声”そのポテンシャルを存分に堪能させてくれるし、決して悪くはないんだけども、やっぱヨナスって”KATATONIAで歌ってナンボ”みたいな所あるなぁと再確認したナニもあって...とかナントカ言うても、過度な期待をしなければそれなりに楽しめる質の高い作品ではある。で、結局のところ、今回の”異色”のコラボが意味する本来の目的というのは、9月にKscopeからリリースされる(←ココ大事)本家KATATONIAの問題作死の王のリミックス作品『Dethroned & Uncrowned』の序章扱いというか、それこそ諸葛亮の”三顧の礼”じゃあないが、本家KATATONIAの新作を前に一足先にヨナスきゅん単独でKscopeへと乗り込み、この度は一足先に挨拶に参ったというわけ。そんなこんなで、”おれかん!”の意識はスデにその新作『Dethroned & Uncrowned』に向いてるんだけども、その辺の話は上半期的なナニかの時に詳しく書くとして、なにはともあれ、いわゆる【俺の界隈の再構築】はそろそろ総仕上げの段階にキテいるということは確かです。
 
Wisdom of Crowds
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