Artist Emma Ruth Rundle & Thou
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Collaboration Album 『May Our Chambers Be Full』
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Tracklist
01. Killing Floor
02. Monolith
03. Out Of Existence
04. Ancestral Recall
05. Magickal Cost
06. Into Being
07. The Valley

チェルシー・ウルフの姐御といえば、同レーベルSargent HouseのポストメタルバンドRussian Circlesとのコラボに感化されて何かに目覚めたのか、ポストメタル界のレジェンド=Isisのアーロン・ターナーを迎えた4thアルバム『Abyss』以降、明確にゴシック・ドゥーム/ポストメタル路線に方向転換して驚いたのも今は昔。そんなチェルシー姐さんを筆頭に、実はこの手の女性SSWとポストメタルという一見関連性のなさそうなジャンル同士の異文化交流は古くから独自のルートを通じてあるにはあって、(SSWではないけど)一つ例を挙げるなら「しばらく冬眠するわ」と無期限活動休止を宣言したのに、ブルックリン出身のJulie Christmasとのコラボ作品で何事もなかったように復活したスウェーデンのCult of Lunaが記憶に新しい。それらに象徴される「コラボレーション」の機運が著しく高まってきている流れを汲んで、満を持してチェルシー姐さんの妹分であり同じカリフォルニア出身の同レーベルで同い年のEmma Ruth Rundleが、日本のVampilliaとのコラボでもお馴染みのThe Bodyの盟友でありルイジアナ州の激遅重ヘヴィロックバンド=Thouとのコラボを実現させるという神コラボ展開。

Emma Ruth Rundleって、元はといえばIsis人脈が立ち上げたRed Sparowesのメンバーで、2010年を境にバンドの活動が止まってからはソロ名義でSSWとして活動しつつ、2015年にはMarriagesというポストロック系のバンドでアルバムを発表したり、当時まだ同レーベルだったDeafheavenのツアーにソロで参加したりと、もう完全に「ポストメタル界の姫」のイメージが定着しているSSWだ。しかし、実際に彼女がソロ作でやってる音楽性といえば、ポストメタルとは無縁のTrespassers WilliamやUKのEsben And The Witchとも共振するインディ/ドリーム・ポップやドリーン/ノイズの素養を含んだポストロックの影響下にあるネオフォーク的な抒情的な憂いを帯びたメランコリックな音楽で、例えば姉貴分のチェルシー姐さんがゴシック/イーサリアルをルーツとするSSWなら、妹分のエマはフォーク・ミュージックをルーツとするSSWといったイメージ。変な言い方だけど、それら数々の“前科”があるERRThouのコラボは不思議でもなんでもない案件なんですね。

ちなみに、初期の頃は「UKの相対性理論」だったEsben And The Witchも今やスティーヴ・アルビニを長とするノイズ界隈の一員として活動し、今やSeason Of Mistというバリバリのメタルレーベル所属で、過去にはアンダーグラウンド/ヘヴィミュージックの祭典Roadburn Festivalにも出演している。ちなみに、残念ながら中止が発表された今年のRoadburnではEER40 Watt Sunのコラボをはじめ(←このコラボはエグい)、冒頭のJulie Christmasや2020年のメタルを象徴するOranssi PazuzuRussian CirclesRed Sparowesの再結成ライブ、そしてCult of Lunaのフロントマン=ヨハネスの出演が予定されており、俄然それらの夢のコラボや夢の再結成ライブが実現しなかったのは本当に残念で仕方ない(来年に期待)。要するに、「Roadburn界隈」の一言で全部説明できちゃう案件が今回のコラボなんですねw

今年のヘヴィミュージック界隈で一番興味深い出来事って、それこそ22年ぶりに復活作の『Inlet』を発表したUSオルタナ界のレジェンド=Humが、Deftonesの新作にも影響与えてんじゃねえかぐらいの、むしろDeftonesが新作の『Ohms』で本当にやりたかった事をHumがやっちゃったんじゃねぇかぐらいの、その新時代の「ヘヴィネスの基準」をヘヴィミュージック・シーンに提示してきた事で、何を隠そう、今回のERRThouによるコラボ作品は、結論から言えば「新世代ポストメタル」のビッグウェーブに乗っかった傑作なんですね。

ERRのSSWとしての音楽性が持つエモーショナルな叙情性と、Thouの音楽性が持つ(Nirvanaのカヴァーからもわかるように)90年代のシアトルサウンドをリスペクトしたハードコア/パンク精神溢れるスラッジーなDIYヘヴィネスの相性はこの上なくグンバツで、一見、水と油のように交わることのないモノ同士だからこそ、言わば光と影の関係性のように、闇の中にある一筋の光、あるいは光の中に差し込む闇の如し、(男と女の関係のように)切っても切れない表裏一体の関係性から成り立つ相乗効果により、お互いの新たな一面と未知のポテンシャルを引き出し合っている。これは本当に極端な例えだけど、ERRのインディ・フォーク的な側面とThouのブルージーな側面は、まさに日本のSSWを代表する岡田拓郎がドゥームメタル化したらこんな感じになると妄想しても存外シックリきちゃうのがまた面白い。

初期のPallbearerを彷彿とさせる、フューネラル・ドゥーム然とした重厚なヘヴィネスと一種のメロドゥーム的な慟哭不可避のギターのフレーズや叙情的なギターソロが織りなすポスト・アポカリプス時代の『死亡遊戯』を描き出す#1“Killing Floor”とThouバンド主体のスラッジーな#2“Monolith”、チェルシー姐さんリスペクトなERRによる艶美なパートと獰猛な咆哮とエゲツない重低音を轟かせるThouパートの対比を描きながら、ブルーズじみた泣きのギターソロ/フレーズと著しく感情的に歌い上げるエマのエモーショナルな歌声が邂逅する哀愁ダダ漏れの終盤の展開、その想定外にドラマティックな楽曲構成に脳天ブチ抜かれる#3“Out Of Existence”、スラッジ/デスメタル要素の色濃い#4“Ancestral Recall”、同レーベルのレジェンド=EarthCult of Lunaを連想させるブルーズ臭溢れるスロウコアな前半パートからブラストでブルデス化する後半パートに分かれた#5“Magickal Cost”、そして本作のハイライトを飾る約9分にも及ぶ#7“The Valley”は、冒頭から西部劇映画のサントラ顔負けの情緒的なフィドルの音色をフィーチャーした、それこそERRの叙情的なアンビエント~ポストロックの側面が表面化したような曲で、まさに「女版Hum」を襲名するかのような新世代ポストメタル然としたヘヴィネスをクライマックスに持ってくる完璧な流れ。

改めて今回の異種コラボ、単なるThouのソロとERRのソロをミックスさせただけのコラボじゃない所がミソで、むしろPallbearerに代表される現代ヘヴィロック界のトレンドと直結するような、それこそPallbearerの1stアルバム~2ndアルバムにおけるトラディショナル・ドゥームとポスト・メタルの狭間にあるような抒情的なヘヴィミュージックで、そして90年代のグランジにも精通しているのも俄然同時期にアンダーグラウンドで名を馳せたHum、彼らが発表した今年のヘヴィロックを象徴する金字塔であり復活作の『Inlet』へと結びついていく。そこからたぐり寄せた紐の先にある謎の覆面の正体こそ「女版Hum」だったという「よくあるオチ」。ERRERRで、エマよりもいち早くヘヴィミュージックを取り入れたチェルシー姐さんをイメージ/オマージュしている部分もあって、実際にERRのソロ作におけるメロディを聴いてもDeftonesに影響されてそうな曲もあったりするので、そういった意味でも俄然なるべくしてなった必然的なコラボと言える。