Artist LOVEBITES
LOVEBITES-BATTLE-AGAINST-DAMNATION-promo-photo

mini album 『BATTLE AGAINST DAMNATION』

710NaBzdLTL._SL1000_

Tracklist
1. The Crusade
2. Break The Wall
3. Above The Black Sea
4. Under The Red Sky

いきなりだけど、LOVEBITESの最も評価されるべき所って、ボーカリストasamiの類まれなハイトーンボイスでも、ギタリストmi-ya改めmiyakoの類まれなソングライティングでもなく、ましてリーダーmihoの爆乳でもない、それこそ昨年のデビューEPTHE LOVEBITES EPからたったの五ヶ月で1stフルアルバムのAwakening from Abyssをリリースするという、そのメンバーの「やる気」にほかならない。

そんな「やる気」に満ち溢れたLOVEBITESの御一行は、アルバムリリース以降は国内ツアーを皮切りに、これまでのガールズメタルバンドの常識を覆すように、ワーペドなどの国内フェスへの初出演をはじめ、あのBABYMETALすらなし得なかった世界最大のメタルフェス・ヴァッケンやUKのブラッドストックなどの海外フェスへの主演や海外エージェント契約、そしてメタルハマー誌のニューバンド賞受賞など、今や某メイドがやりたかった海外戦略を次々と実現させている。まさか”ポストベビメタ”路線に乗っかったのが、某メイドでもパスコでもなくこのLOVEBITESだとは全く想像もしてなくて、いやはや杉山氏というかビクターの本気おっかねぇというか、これがレーベルの差か・・・と思い知らされた。

そんなデビューから順風満帆に見えたLOVEBITESに、今年に入ってから唯一の誤算が起こった。それが国内最大のメタルフェス・ラウドパーク中止のアナウンスだった。何故かって、あのヴァッケンとブラッドストックのメインステージでライブやってのけるバンドが国内のメタルフェスにお呼ばれしないわけないし、ましてやラウパに”コネ”がある大手のビクターだしで(昨年のラウパにも顔出ししてる)、そういったバンドの勢いや周囲の条件的にも今年のラウパ出演は決定的だっただけに(メンバーも内心出れると思ってたに違いない)、このタイミングでのラウパ中止のアナウンスはLOVEBITESにとって初めての大きな困難として、大きな向かい風として襲いかかった。

話は変わるけど、おいら、実はスラッシュ・メタル自体はあまり好きではなくて、厳密に言えばスラッシュ・メタルあるいはポスト・スラッシュをルーツにした黄金のキザミ」が好きな人間で、例えば「このキザミのルーツはどこにあるのか?」という風にもう十数年メタルを聞き続けてきて、その「あのキザミ」が聴ける瞬間って実は一年に一回あるかないかで、それくらい激レアな「キザミ」を僕は「キザミ鑑定士」として追い求めていた。そもそも黄金のキザミ」とはなんぞやって話で、バンドを例に出して分かりやすく説明すると、Toolのアルバム『10,000 Days』はまさに黄金のキザミ」の理想形だし、Mastodonの名盤『Crack the Skye』や新世代メタルのDeafheaven『New Bermuda』も「例のキザミ」のセンスを垣間見せていた。LOVEBITESの音楽性に近いシンフォニック/パワー・メタル系にもセンスフルな「キザミ」は激レアだが確かに存在していて、それこそレーベルメイトのアモルフィスのギタリストエサ・ホロパイネンキャメロットのギタリストトーマス・ヤングブラッドによる「例のキザミ」は、キザミ界におけるツチノコ(伝説)として長年語り継がれている。そんな「キザミ界」に今年、ちょっとした衝撃が走った。今年、最低でも「あのキザミ」をルーツとした、あるいは系譜とするバンドが3つあって、その3つのうちの2つがまさか日本のバンドで、それもまさかガールズバンドだなんて、ちょっと信じられないというか、これはまさに「女の時代」を痛感させる2018年最大の出来事だった。

話を戻して・・・そんな向かい風が吹き荒れる中、LOVEBITESは今年初めての音源となるミニアルバム『BATTLE AGAINST DAMNATION』を発表した。

幕開けを飾る#1”The Crusade”から、正直言って国内でも大した実績のない彼女たちが、なぜ世界最大級のメタルフェスに出演できたのか?それは果たして本当に彼女たちの実力なのか?それとも単にレーベルの力によるものなのか?このラブバイツを取り巻くそれらの戯言を無にするような、それら全ての疑問を開始直後の「あのキザミ」によって「納得」させられた。まずイントロから、レジェンドIRON MAIDEN屈指の名曲”Aces High”のオマージュとばかりmi-ya改めmiyakomidoriのツインギターコンビによる叙情的なメロメロでハモリながら勢いよく始まり、そして問題のAメロBメロのバッキングで聴かせる「例のキザミ」に対して、世界有数の「キザミ鑑定士」である僕はすかさずA級ライセンスの「キザミの称号」をギタリストmi-yaに授与した。何度も言うけど、俺レベルのメタル・メディア界のトップになると(えっ)、たった一つの「キザミ」だけでそのバンドのスキルやセンスがいとも簡単に測れます。

これは今の時代にそぐわない発言だけど、女ギタリストでこの手の「キザミ」を理解しているギタリストって恐らくmiyakoが世界初だと思うし、正直これまで某メイドの当て馬にしか思ってなかったんだけど、このたった一つのキザミだけで、このLOVEBITESがガチで本物のメタルバンドであることを証明している。まさかmiyako「キザミの世界」に入門してくるとは想像もしてなかっから、国内トップの「キザミ鑑定士」である自分はさすがに焦ったわ。完全にmi-ya改めmiyakoになってギタリストとして覚醒したわ。正直、デビューEPや1stアルバムではギタリストとしての才能よりコンポーザーとしての才能に一目置いてたけど、このミニアルバムのmiyakoは一転して「ギタリスト」として半端ない才能を発揮している。少なくとも、アモルフィスエサキャメロットトーマスと同じクラスのギタリストとしての「格」があり、それ即ちLOVEBITESが現代メタルのトップレベルに位置することを意味している。勿論、この「キザミ」はベビメタ神バンドにも一生できない「キザミ」です。正直、この「世界で一つだけのキザミ」だけで既存のジャパメタを全部過去のものにしちゃった感ある。

改めて、このミニアルバムはそのタイトルが示すとおり、ラブバイツ史上最高に攻撃的でヘヴィ、アグレッシヴかつソリッドな全編スラッシュ・メタルで、それを証明するかのような2曲目の”Break The Wall”では、もはやAt the Gates直系の北欧型デスラッシュばりに殺傷力と暴虐性をむき出しにしながらキリキザミ込んでいる。勿論、過去作にも「スラッシュ・メタルっぽい曲」というのは幾つかあったけど、この曲はまさに「スラッシュ・メタルそのもの」と胸を張って断言できる。

某セーソクも「めんどくせぇからさっさと泣くがいい」とか言い出しそうな泣きのギターソロから始まる3曲目の”Above The Black Sea”は、欧州産のシンフォニック・メタル然とした大仰なクワイヤを駆使したパワーメタルと思いきや、この曲でもスキあらばセンスフルな「キザミ」をブッ込んてて、4曲目の”Under The Red Sky”に至っては初っ端からキザミっぱなしで、気づけば全曲キザンでたというオチ・・・。#4はasamiの日本のポップスにも精通するエモーショナルなボーカルワークとキザミの相性が最高にグンバツ。

チョット待って本当に、ここまでスラッシュ・メタルの素質あるバンドだとは思わんかったわ。別に、別にスラッシュ・メタルのキザミって猿でもできるけど、でもこのミニアルバムの何が凄いって、キザミはキザミでもキザミにおいて最も大切な「キザミの音づり」で、例えば#1はマストドン『Crack the Skye』に精通する低音ジュクジュク系の「キザミ」だし、#2は古典的なスラッシュ・メタルに精通する「キザミ」だし、#4にいたっては今作と同じエンジニアミッコ・カルミラが手がけたアモルフィス”Silver Bride”に精通するグルーヴィな「キザミ」だし、ここまであらゆる「キザミ」に精通しているギタリストって見たことないし、でも結局それってmiyakoがメタルリスナーとしてのリスニング能力、その素養が高いからこそ成せる一つの才能であり技術なんだろうね。

さっきからずっと「キザミ」ばっか言及してるけど、これ実はソングライティングも目を見張るものがあって、むしろA級ライセンスを取得した「キザミ」よりもライティングのがスゲーんじゃねぇか説あって、特にmihomiyakoの共作の#2はゴリゴリのスラッシュ・メタルかと思いきや曲構成に一工夫、一手間加えられているし、あと毎回思うけど#4みたいなasamiありきの90年代のJ-POPみたいなメロディアスな曲もできるのはバンドの強みで、この曲を書いた過去作でもお馴染みのMaoは、ラブバイツが絶対に手放したくない存在かもね。今回のasamiのボーカルは、ウリとする高域中心の伸びやかなハイトーンよりも低域の力強さを意識した、俄然楽器隊のソリッドなメタルサウンドと馴染むような歌い方で、よりボーカリストとしての柔軟性および器用さを露見している。相変わらず、mihomiyakoからのハードな要求を難なくこなすasamiの存在あってこその作品なんだけど。

過去作で僕が危惧していたのは、このままラブバイツasamiのハイトーンゴリ押しワンマンバンドに陥ってしまう恐れだった。しかし、このミニアルバムではギタリストmiyakoを中心に楽器隊がasamiと肩を並べるまでに存在感が増し、なんだろう「一つのバンド」としてバランスが良くなった気がする。そのお陰で不安は一気に払拭され、唯一と言っていいウィークポイントを克服してきている。その学習能力には感服するばかり。

ヘタしたら1stフルアルバムよりも良いかもしれない。こうやって最高傑作を更新しつづけているのは本当に凄いし、ラブバイツの今の勢いが乗り移っているかのよう。もはや(99%ラインナップされるはずだった)今年のラウドパーク中止がバンドにとって向かい風にならない、むしろこの逆境を乗り越えるだけの「やる気」しかこのアルバムからは感じない。正直、某メイドの当て馬にしか思ってなかったけど、今やブログに取り上げなきゃよかったって今さら後悔するほど、このアルバムで民族大移動が起きてもおかしくないというか、既に某メイドとかいう泥舟から脱出してラブバイツに乗り換えるご主人様が続出しているとの情報もあって、楽曲人気やライブ動員の面で某メイドをブチ抜くのは時間の問題か。個人的には、ラブバイツ某メイドがキャットファイトしてるうちにパスコがブチ抜いていく展開希望w

バトル・アゲンスト・ダムネイション
LOVEBITES
ビクターエンタテインメント (2018-06-06)
売り上げランキング: 8,246