Artist Svalbard
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Album 『When I Die, Will I Get Better?』
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Tracklist
02. Click Bait
03. Throw Your Heart Away
05. Silent Restraint
06. What Was She Wearing?
07. The Currency Of Beauty
08. Pearlescent

ロンドンを拠点に置くHoly Roar Recordsといえば、「最近のメタルはクソだ」とシーンを批判して炎上したBFMVのフロントマンであるマシュー・タックに対して、代表のアレックスが反論文を綴った手紙を送るぐらいにはパンクでハードコアな気鋭メタルレーベルとして知られ、そんなイキりレーベルに所属するバンドも大概クセの強い猛者揃いなのは周知の事実。近年、改めてHoly Roarの評判を著しく高める事となった代表作が、それこそ2017年に発表されたRolo Tomassiの5thアルバム『Time Will Die And Love Bury It』と、その翌年に発表されたSvalbardの2ndアルバム『It's Hard to Have Hope』というレーベルの屋台骨である二大女UKバンドであり、そのアルバムでは従来の彼らを司るConvergeTDEPなどのクラスト/マスコア/カオティック・ハードコアの遺伝子をベースに、そこへDeafheavenAlcestに代表されるBlackgazeの遺伝子を遺伝子組み換えという名の魔改造を施し、全く新しい新世代メタルを産み落とす事に成功した。

そんな紅一点セレナ・チェリー率いるSvalbardが前作から約2年ぶりに放つ3rdアルバム『When I Die, Will I Get Better?』では、一体どんな遺伝子組み換えメタルに魔改造されたヤバい怪物が出てくるのかと、あらゆる想像を巡らせながら本作を再生すると、そこには自分の想像を超えた「想定外」の遺伝子が注入されていた。その「想定外」の遺伝子こそ、Bandcamp界における「投げ銭王」ことUSポストメタルのAstronoidだった。

幕開けを飾る#1“Open Wound”からして、ブツ切りの始まりから前作で魔改造された「女版アルセスト」ならではの「Ah〜Ah〜Ah〜」というリチュアル=儀式的なコーラスで展開すると、突如としてAstronoid顔負けの多幸感溢れるアトモスフェリックなキラキラシンセとアヘ顔デフヘヴン状態のバチクソエピックなトレモロリフが織りなす、この世のものとは思えない美し過ぎる美メロの洪水が襲いかかる。なんだろう、それこそAlcestAstronoidが4光年先にある銀河の果てで出会い、銀河を支配する宇宙人に魔改造されてジャンルや性別そしてAI(機械)と人間の垣根を越えたAndroid(アンドロイド)が生まれちゃった感。正直、この変化は全くの想定外で驚いた。前作からのアストロノイド(Android)化は想像もつかない。この出来事を競馬用語で例えるなら、完全に「人気の盲点」だったわ。先日の秋華賞で言えば2着したマジックキャッスルは、典型的な「人気の盲点」だったから余裕で買えた(馬連1500円)。しかし、やっぱり凄いなこのバンド。発想がオルタナ過ぎて笑ってしまった。本当に好きすぎる。

まだクラストじみた泥臭い激情ハードコアを軸としていた前作から一転して、AlcestAstronoidに急接近したドリーム・ポップやシューゲイザーを基とするポストメタルを軸に、またギアを一段上げた扇情的かつ激情的な恍惚感溢れるトレモロリフやシューゲイザー然としたリバーブがかった幻想的な美メロを中心とする天上の音楽として、天上の視点からこのクソサイテーな下界に向かって「怒り」と「激情」を交錯させながらFUCK OFFする#2“Click Bait”、Alcestの4thアルバム『シェルター』のボートラである“Wings”を想起させる、それこそ「女版ネージュ」と呼ぶに相応しいセレナのイーサリアルな癒し系ボイスと天上から降り注ぐ神々しいくらいに眩いシンセとリバーブ全開の幻想的なサウンド、その全てが「女版アルセスト」としての本領を発揮する#4“Listen To Someone”、前作における“For The Sake Of The Breed”みたいな自身の出自がハードコアにある事を再確認させる、UKポスト・ハードコアレジェンド=Funeral For A Friendばりに爽やかなメロコアチューンの#5“Silent Restraint”、今度はAlcestの2ndアルバム『Écailles de Lune』を彷彿とさせるオルタナ然としたリバーブ全開でフレンチアニメばりに幻想的な世界観を繰り広げる#6“What Was She Wearing?”、ブラゲ然としたトレモロ主体の#7“The Currency Of Beauty”、ここまでAlcestの4th→2ndときて最後は伝説の1stアルバム『Souvenirs D'un Autre Monde』のオマージュとばかり、今にも幼女が水辺で遊んでいる声が聞こえてきそうな#8“Pearlescent”で、その「女版アルセスト」の名を不動のものとする。改めて、やっぱこのバンド面白すぎてヤバいな・・・。

改めて本作は、あくまでハードコア側からBlackgazeに対するアプローチに過ぎなかった前作とは打って変わって、今回はハードコア云々そっちのけでAlcestAstronoidを連想させるシューゲイザー・ポストメタル方面にどっぷり浸かりきっている。なんだろう、いわゆる「アチエネはメロコア」の正統後継者である「デフヘヴンはメロコア」的な側面を詳細に描写しつつも、昨今のシーンのトレンドであるポストメタルへの巧みな迎合を図る彼らのフレキシブルな才能に脱帽すること請け合い。もはやアルセストの歴代アルバムのオマージュとばかりの癒し系の美メロと激情のコントラストは、(もはやアングラ感は皆無に近い)むしろオシャンティ過ぎるぐらいに洗練された美の極地により相対的に拡大の一途をたどり、そして相変わらずのセレナ姐さんによるネージュ化が著しく進行した美声と野獣化した咆哮のギャップ萌えはカッコ良すぎて痺れる。もちろん、衝撃度という点では(その魔改造っぷりから)前作に軍配が上がるけど、競馬で「人気の盲点」が外から突っ込んできたような想定外度では本作が断然上です。