Artist Chvrches
Album 『Screen Violence』
Tracklist
01. Asking For A Friend
02. He Said She Said
03. California
04. Violent Delights
05. How Not To Drown
06. Final Girl
07. Good Girls
08. Lullabies
09. Nightmares
10. Better If You Don't
2018年の前作『Love Is Dead』リリース以降のチャーチズって、そのイマドキのEDMに迎合した前作の流れからEDM界の帝王であるマシュメロとコラボ曲を発表すれば、小島秀夫監督の最新ゲーム『デス・ストランディング』の主題歌に抜擢されたり、今度は十中八九ユニバーサル案件の水曜日のカンパネラのコムアイとの謎コラボだったり、しまいには一見畑違いのDeftones主催のフェスに出演してローレンがHatebreedのジェイミー・ジャスタとツイッター上でレスバを繰り広げたりと、とにかく過去に類を見ないくらい対外的かつオルタナティブな活動に勤しんできた。
Album 『Screen Violence』
Tracklist
01. Asking For A Friend
02. He Said She Said
03. California
04. Violent Delights
05. How Not To Drown
06. Final Girl
07. Good Girls
08. Lullabies
09. Nightmares
10. Better If You Don't
2018年の前作『Love Is Dead』リリース以降のチャーチズって、そのイマドキのEDMに迎合した前作の流れからEDM界の帝王であるマシュメロとコラボ曲を発表すれば、小島秀夫監督の最新ゲーム『デス・ストランディング』の主題歌に抜擢されたり、今度は十中八九ユニバーサル案件の水曜日のカンパネラのコムアイとの謎コラボだったり、しまいには一見畑違いのDeftones主催のフェスに出演してローレンがHatebreedのジェイミー・ジャスタとツイッター上でレスバを繰り広げたりと、とにかく過去に類を見ないくらい対外的かつオルタナティブな活動に勤しんできた。
そんな、俺たちのローレン・メイベリー率いるチャーチズの約3年ぶりとなる4thアルバム『Screen Violence』は、それこそ本作に伴う90年代のメガドライブの名作『ベアナックル2』を想起させる劇画風の宣材ポスターが示唆するように、幕開けを飾る“Asking For A Friend”のローレンたその歌メロやレトロ調のシンセからして「Chvrches is Back...」と咽び泣くこと必須の、そして否が応でもあの伝説の1stアルバム『The Bones Of What You Believe』をフラッシュバックさせる、いわゆる80年代のシンセ・ポップ/ニューウェーヴ直系のポップ・ミュージックとなっている。
カリフォルニアはサンフランシスコを代表するメタルバンドのDeafheavenが先日リリースした5thアルバム『Infinite Granite』は、それこそ80年代から90年代にかけて一斉を風靡したUKロックを『ルックバック』したような作風で、良くも悪くも再び音楽シーンに“インパクト”を与えた事は記憶に新しい。何が面白いって、奇しくも本作『Screen Violence』には、DFHVNのルーツである“California”の名を冠する楽曲をはじめ、80年代のUKロックを象徴する伝説のバンド=キュアーのロバート・スミスとフィーチャリングした曲がある点。そのロバート・スミスを迎えた#5“How Not To Drown”は、往年のオルタナロック然としたアレンジと音作りが施されたニューロマンティックなバンドサウンドからして80年代リバイバルの極みで、少なからずチャーチズ史においても希少価値の高い一曲となっている。また、ミニマルなサビのコーラスとシンセが今はなきVERSAを彷彿とさせるというか、その系譜にある†††(Crosses)から主催のフェスで共演したDeftonesへと伏線を回収するようにして文脈が繋がっていくのがエモすぎて泣ける。なんだろう、隠し味としてVERSAを感じさせる時点で、これもう実質たそから俺への私信案件なんですねw
しかし、ロバスミを迎えたその一曲のみならず、その80年代のレジェンドを本作の“コア”として取り囲むように位置する#3“California”、ゆらり揺らめくイーサリアルなシンセウェイブが「愛は死んだ」という言葉を言い残してダークサイドに堕ちたローレンたそを闇夜に照らし出す#4“Violent Delights”、そして軽快なバッキング・ギターのリフレインによる叙情性と映画『ガールズ版ロッキー』さながらの情熱的かつ力強いリリックは、さしずめ「チャーチズなりのファイナル・カウントダウン」と言わんばかりの#6“Final Girl”までの流れは、まさに本作における「ロックバンドとしてのチャーチズ」を象徴する一幕となっている。とにかく、出自がブラックメタルのDFHVNも出自がエレクトロポップのCHVもほぼ同じタイミングで「ロックバンド化」するという神展開。もちろん、こっちがロバスミならあっちはモリッシーであり、それとジャケのブラウン管時代を思わせるスクリーンはDFHVNのオエイシスオマージュのMVとも共通するし、何より細かなところでDFHVNの『Infinite Granite』と共振してくんのは本当に面白い。だからロックバンド化した今のDFHVNとCHVがツーマンで来日ツアー回っても全然違和感ないし、むしろここまでシックリくるツーマン他にないと思う。もしツーマンが実現したらリアルにアヘ顔デフヘヴンなるわw
今回、(2ndや3rdみたいに)無駄にピーキーなポップスを意識するのをやめた歌メロ含むメロディ全体の落ち着き具合、つまりハイではなくローな感じのメロディが心地よい。もちろん、日に日に分断が増していくこのご時世にピッチピチにポップなメロディ歌ったところで説得力の欠片もないしは「ノレない」わけで、皮肉にもこの悪夢(Nightmare)のような時代と調和の取れた内省的なメロディが心に染み渡る。それはまるで、世界の分断によってポッカリと空いた心の隙間を埋めるかのように。要するに、ヘタに色めきだっても、重い鎧で着飾ってもいない素顔のチャーチズというか、シンプルにUKバンドらしい映画『ロッキー』ばりに“泣けるメロディ”への回帰、それは本作のハイライトを飾る初期の名曲“Recover”がエルム街の悪夢に迷い込んだ雰囲気の#9“Nightmares”、そして冒頭から電子音ではなく生楽器をフィーチャーした#10“Better If You Don't”が強く物語っている。なんだろう、「こういうのでいいんだよ」の一言に尽きるというか。
それ以上に、本作を紐解く上で欠かせない人物がいる。その人物こそ、チャーチズとは1stアルバムから長い付き合いとなるサポートドラマーのジョニー・スコットに他ならない。彼がクレジットされているロバスミ曲をはじめ、#3,#4,#6,#9などの本作の“コア”となる楽曲ほぼ全てに彼のドラムが採用されているのをみても、長年サポートメンバーとしてチャーチズを縁の下から支えてきた、そして本作のキーマンとなる彼のドラムを軸に展開される「ロックバンドとしてのチャーチズ」たらしめている張本人である。本作は彼らの根っこ部分にあるオーガニックなアイデンティティと、これまでに人気TV番組や大型フェスなどの大舞台で培われた“バンド”としてのアンサンブルが紡ぎ出す“今のチャーチズ”しかなし得ない、よりリアルなライブ感に近い生音重視のスタジオ音源であると同時に、それらのオルタナティブな変遷を可能にしたのはメンバーのセルフプロデュースによるものだからと容易に推測できる。
端的に言ってしまえば「伝説の1stアルバム」から引用している部分が多いという話でもあって、前作や前々作で感じたマンネリを解消するため、ドラムとベースのリズム隊が織りなすバンドらしいグルーヴ感とオルタナ然としたギターなどの生音を積極的に取り入れている点は、確かに賛否両論あるかもしれない。けど、長年ライブでもドラムのジョニーを実質正式メンバーとして大々的にフィーチャーしてきたのも事実で、そのライブ自体ほぼロックバンドのノリだったりするわけで。事実、実際のスタジオ音源でロックバンドっぽい事やっても違和感ないのが今回で分かったし、個人的にはこれまでの伏線を回収した「ただの結果」に過ぎないと思う。この伏線回収の仕方もDFHVNと同じというか。
本作において「(筋金入りの)フェミニストとしてのローレン」が液状化しているなんてヨタ話はさて置き、映画『ロッキー』のスタローンと化したローレンたそがミソジニーな野郎どもを右ストレートでノックダウンさせるような、そんな男社会で抑圧されたガールズたちの背中を後押しするかのようなウーマンパワーに満ち溢れた会心の一枚だと思う。確かに、全10曲トータル43分という物足りなさは否めないものの、「らしくない14曲よりも、らしい10曲」の方が良いよねって話。事実、2ndはまだしも、前作の3rdで露骨に低迷した感は否めなかったし、正直こうなってくると今後の浮上は見込めないパティーンにハマったかと思いきや、ここにきて大きく盛り返してきた事に素直に感動するし、文句なしに年間BEST級の傑作と言える。何より、たそイジりなどのネタ抜きで作品の内容について語り合いたくなってる時点で、それぐらいにマジにマジなアルバムってことですw