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墓っ地・ざ・ろっく!

メロドゥーム

Pallbearer 『Heartless』

Artist Pallbearer
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Album 『Heartless』
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Tracklist

01. I Saw The End
02. Thorns
03. Lie Of Survival
04. Dancing In Madness
05. Cruel Road
06. Heartless
07. A Plea For Understanding

いつぞやのFallujahといい、メタル最王手レーベルで知られるNuclear Blastがここ最近積極的にやってる、「今キテる若手バンド」に対する節操のない「青田買い」ってどうにも好きになれなくて、それこそ一時期のCentury Mediaを思い出して余計に好きになれないんだけど、2015年に初来日公演が実現した”クマラー”ことアーカンソー州はリトルロック出身のPallbearerも、そのNuclear Blastによる「青田買い」に巻き込まれたバンドの一つだ。

2012年作の1stアルバムSorrow and Extinctionでは、ブラック・サバス直系の伝統的(トラディショナル)なドゥーム・メタルを現代に蘇らせたような音楽性で、かのピッチフォークをはじめ数多くの音楽メディアから賞賛され話題を呼び、続く2014年作の2ndアルバムFoundations of Burdenでは、その伝統的かつ叙情的なドゥーム・メタルという強固な地盤を維持しながらも、IsisAgallochをはじめとしたポストメタル勢からのモダンな影響とアンニュイなセンスを垣間見せ、よりアトモスフェリックでプログレッシブ、そしてより現代的なドゥーム・メタルへと化けてみせた。

その前作の「現代的」すなわち「Post-系」のアプローチを踏襲し、IsisToolなどの作品を手掛けた名エンジニアのジョー・バレーシがミックスを担当した、約三年ぶりとなる3rdアルバムの『Heartless』は、前作のモダンで現代的な方向性を更に推し進め、よりエピカルに、より叙情的な泣きのメロディやフロントマンBrett Campbellのキャッチーな歌メロを全面にフィーチャーし、そして全編に渡って「お前はどこのギターヒーローだよ」とツッコミ不可避な流麗なソロワークを披露した、過去最高に挑戦的で広大なスケールに溢れた作品となっている。



まず本作を聴く前に妙な違和感というか一つ気づくことがあった。それは、10分超えの大作が全6曲中4曲あった前作に対して、今作には10分超えの大作は全7曲中2曲しかないことだ。さっそく一曲目が6分台、続く二曲目が5分台という、前作の”Ashes”を例外として除けば実質最短を記録する冒頭の二曲の存在が、本作の「異質さ」を物語っていると言っても過言じゃあない。まず6分台の#1”I Saw the End”から、今作が過去最高に「メロディ重視」のアルバムであることを裏付けるような、フロントマンBrett Campbellの感情表現豊かなボーカルとツインリードの叙情味溢れるメロディを中心に、ドラムの手数の多さは言わずもがな、モダンに洗練されたプロダクション、いわゆるプログレ・メタルと言うより、もはや様式美メタルと呼ぶべきベッタベタな構成とダイナミックな展開力を発揮する。続く5分台の#2”Thorns”でも、もはやドゥームと呼んでいいのかすら分からないソリッドなリフ回し主体で、そして中盤にスロウコアパートを織り込んだ、いわゆる「静と動」のコントラストを効かせた非常に分かりやすい楽曲となっている。その冒頭の二曲の次に短い5曲目の”Cruel Road”や表題曲となる6曲目の”Heartless”でも同様の事が言える。前作のようにスロウコアにも精通するミニマルなフレーズやドゥーミーなリフで曲を構成するのではなく、過去最高に感情を込めてエモーショナルに歌いまくりなボーカルに負けじと、それこそ「ドゥーム・メタル」とは一線をがした、キザミ系のリフやスラッジーでメタリックなリフを駆使して曲を上下左右に動かしまくる姿は、初期のMastodonBaronessを連想させなくもない。

それ以外の、いわゆる「大作」と呼べる3曲目の”Lie of Survival”では、イントロから哀愁を帯びたATMS系のシンセとゲイリー・ムーアばりにブルージーな泣きのギターをフィーチャーしている。4曲目の”Dancing in Madness”は、イントロからElsianeを彷彿させるジャジーでアンニュイな雰囲気を漂わせながら、ムード歌謡ばりにクサいムードを醸し出すシンセと超絶怒涛の泣きのギターソロをあざといくらいにこれでもかとブッ込みつつ、その長いイントロが終わると、中盤以降はまるで「山の神」である岩人間デイダラボッチが深い眠りから目覚めて必殺ローリングアタックをブチかますような、暴力的かつ粗暴な、ソリッドかつアグレッシヴなリフを駆使しながら壮大なプログレッシヴ・ドゥーム地獄絵巻を描き出していく。ラストを飾る歴代最長作となる#7”A Plea for Understanding”は、40 Watt Sunの1stアルバムを彷彿させる泣きのスロウコアナンバー。

サザンロックばりに、それこそ映画『ダーティ・ハリー』のクリント・イーストウッドばりに泥臭くて男臭い、すなわち土葬不可避な死臭漂う淀んだ空気感というか初期のフューネラル・ドゥーム感は皆無に近い。従って、本来のウリであるトラディショナルでサイケデリックなドゥームっぽさも希薄で、とにかく本作ではドゥームならではの「遅さ」やスラッジにも精通する「重さ」よりも、アイアン・メイデン顔負けのツインリードによる叙情的な旋律とハーモニーが織りなす「泣きメロ重視」の作風に路線変更している。

「君もピッチフォーカーかい?」

元々というか、どっちかっつーと、ドゥーム・メタルの開祖であるブラック・サバスからの影響は元より、それ以前に初期ANATHEMAType O Negativeなどのゴシック系への強い憧れを持っていたバンドでもあって、それらのベアラーを司る音楽的嗜好、その根幹部にあるインフルエンサーが顕著に現れた結果と言えなくもない。そう考えてみると、この度のNuclear Blastへの移籍は至極納得できるというか、つまり完全にピッチフォーク路線からは外れた方向性である。

「はい、私はピッチフォーカーです。」

本作がピッチフォークで低評価(6点)となった理由はそこにある。ピッチフォークが大好きなヘヴィロック系のドゥーム/ポストメタルではなく、いわゆるヘビメタチックなリフ回しをはじめ、それこそシンセのクサい鳴らし方を筆頭に、本作にはピッチが毛嫌いしている欧州のクサメタル的な「ダサさ」、そう「メタルにダサいは褒め言葉」でお馴染みのその「ダサさ」が作品全体を支配している。それこそIsisがドゥーム化したというよりは、誤解を恐れず端的に言っちゃうとメイデンがドゥーム化したみたいなイメージ。確かに、前作が高評価だったピッチフォーク目線で見ると、本作はただのクソダサいヘビメタにしか聴こえないし、ピッチ目線だとベアラー本来のウリや持ち味の全てを失ってしまったように感じるかもしれない。だから、自身がピッチフォーカーorメタラーかで今作の評価がガラッと変わってくるだろうし、逆にUKゴシック御三家をはじめとした、その手のメロドゥーム系が好きな人には間違いなく最高傑作として聴こえる代物ではある。

ベアラーの良さって、あくまでもトラディショナルなドゥームを下地にさり気ない泣きメロが入ってくる絶妙なバランス感覚で、でも今作みたいに泣きメロが主役になっちゃうと、「いや、そうじゃない」と感じる人が出てくる。その露骨な「あざとさ」が癪にさわるみたいな感覚。初期のインディ/アンダーグラウンドな香りから一転して、鮮明かつクリアに、悪く言えばチープに聴こえるプロダクションも相まって、良くも悪くも聴きやすいキレイでクリーンな普通のメロドゥームだ。もはや別バンドと言われても納得するほど。

確かに、1stアルバムから2ndアルバムまでは正統な「進化」と呼べるが、2ndアルバムからこの3rdアルバムまでは「進化」というより「変化」の部分の割合の方が大きい。これまでの「求心力」や「オリジナリティ」の面では前作に遠く及ばないが、その「進化」と「変化」が上手く調和したドゥーム・メタル界の新たなる傑作の誕生だ。しかし、僕のように前作を年間BESTに選んだピッチフォーカーは、本作を今年の年間BESTに選んじゃアカンやつなのは確か。それくらい、ちょっと、というか、だいぶ変わっちゃってる。
 
HEARTLESS (ハートレス: +bonus disc)
PALLBEARER (ポールベアラー)
Daymare Recordings (2017-03-22)
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Swallow the Sun 『Songs From The North I, II & III』

Artist Swallow the Sun
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Album 『Songs From The North I, II & III』
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Disc I [Songs From The North I]
Cover

Tracklist 
01. With You Came The Whole Of The World's Tears
02. 10 Silver Bullets
04. Heartstrings Shattering
05. Silhouettes
06. The Memory Of Light
07. Lost & Catatonic
08. From Happiness To Dust

Disc II [Songs From The North II]
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Tracklist
01. The Womb Of Winter
02. The Heart Of A Cold White Land
03. Away
04. Pray For The Winds To Come
05. Songs From The North
06. 66°50´N,28°40´E
07. Autumn Fire
08. Before The Summer Dies

Disc III [Songs From The North III]
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Tracklist
01. The Gathering Of Black Moths
02. 7 Hours Late
03. Empires Of Loneliness
04. Abandoned By The Light
05. The Clouds Prepare For Battle

イェンス・ブーム ・・・スウェーデンのDraconianと並んでメロドゥーム界を牽引するフィンランドのSwallow the Sunも、00年代後半のメタルシーンに突如として巻き起こった【イェンス・ブーム】、そのビッグウェーブに乗ってイェンス・ボグレン【No 実質 Jens!! プロデューサー】に起用した2009年作の4thアルバムNew Moonで、いわゆるメタル界の迷信を説き明かす事に成功したバンドの一つだ。しかし、間もなくイェンスから離れ、再び地元フィンランド人中心の人選でレコーディングされた次作の5thアルバムEmerald Forest And The Blackbirdでは、従来のOpethリスペクトやシンフォブラックなどの他に、アコースティック/フォーク・ミュージックの要素を大胆に取り入れ始めていた。しかし、如何せんイェンス・マジックによって生まれた傑作『New Moon』と比べると、元Nightwishアネット・オルゾンとのフィーチャリング以外これと言って特に見所はなかった気がする。そんな彼らの約三年ぶりとなる6thアルバム『Songs From The North I, II & III』は、何を血迷ったのかCD三枚組トータル約二時間半、軽く映画越えしちゃう超特大ボリュームとなっている。



『Ⅰ』 ・・・まずは一枚目の『Songs From The North I』。幕開けを飾る#1”With You Came The Whole Of The World's Tears”は、まるでX JAPAN”Voiceless Screaming”を彷彿とさせる、寂寥感を煽る80年代のフォーク・ソング顔負けのしみったれたアルペジオから始まり、前作を踏襲したまるでオーロラの如くエメラルドグリーンに、いや瞳のように透き通ったエメラルドブルーに煌めくキーボード、デプレブラック流れのノイズ感というかモダンだが粗暴な轟音ヘヴィネスからはポストブラックとも取れるアプローチを垣間見せ、鬱屈かつ荒涼とした空間が支配する一種のドゥームゲイズが、フィンランドという名の極寒の地に蠢くカオティックな狂気を浮き彫りにする。一枚目のリード・トラックとなる#3”Rooms And Shadows”では、フロントマンであり"ニット帽おにいさん"ことミッコの寂寥感溢れるボーカル・メロディからは、フォーク・ミュージックや北欧民謡の名残を漂わせるし、アウトロのGソロではX JAPAN”THE LAST SONG”に匹敵する泣きメロっぷりを発揮。ex-KATATONIAのノーマン兄弟が加入した事でも知られる、バンドの中心人物であるギタリストJuha RaivioのサイドプロジェクトTrees of Eternityでお馴染みのAleahとフューチャリングした#4”Heartstrings Shattering”、ドイツ出身のSarah Elisabeth Wohlfahrtとフィーチャリングした#6”The Memory Of Light”と#7”Lost & Catatonic”などの女性ボーカルをフューチャーした楽曲は、氷上の女神を司った今作のフェミニンなアートワークを象徴するかのよう。そして、ケルティックな音色とストリングスが優美に氷上を舞い踊るイントロから、雪の結晶の如し繊細なメロディに魅了される”From Happiness To Dust”で、美しくも清らかなエンディングを迎える。

懐メロ ・・・この一枚目は、前作を踏襲したフォーキーなアプローチ、俄然アンビエントな音響空間を意識したより幅広いアレンジが施されたキーボード、LantlôsAlcestをはじめとしたフレンチ産ポスト・ブラック勢からの強い影響下にある轟音ヘヴィネス、そして昭和歌謡を経由したX JAPANばりの歪んだ泣きメロを全面にフューチャーした叙情性と極寒の地の厳しさや孤独感を露わにする暴虐性、その静と動のコントラストを強調した、要するにこれまでのSWSらしいゴシック・ドゥームの王道的な作風となっている。その持ち味とも呼べる静から動への転換がプログレ並にスムーズで、安直に「いつものSWS」とか言いながらも、音の細部には確かな進化を伺わせる。これはフィンランド映画の巨匠アキ・カウリスマキの映画に使われている音楽を聴いて思ったんだが、フィンランド人の音楽的嗜好って日本を含む東アジアの歌謡曲が持つ民謡的で情緒的なメロディに近い、極めて親和性が高いというか、少なくともこの『Ⅰ』の音には、このSWSもそのフィンランド人特有の"懐メロスキー"の継承者である事を証明する、と同時にスオミ人の知性と(気候とは裏腹に)心温かい情念が込められている。

『Ⅱ』 ・・・今時、メタルバンドがアコースティック路線に傾倒する例は決して珍しくない。この手のバンドで代表されるところでは、スウェーデンのKATATONIAやリヴァプールのANATHEMAがそうだ。その時代の流れに取り残されんとばかり、この『Ⅱ』の中でSWSはアコギやピアノ主体のフォーク・ミュージックを展開している。川のせせらぎと共に、真夜中の浜辺でただ独り佇むような悲しみの旋律を奏でるダークなピアノインストの#1”The Womb Of Winter”で幕を開け、アルペジオを駆使した優美でフォーキーなサウンドがフィンランドの雪景色のように純白の心を映し出すような#2”The Heart Of A Cold White Land”KATATONIAのヨナスきゅんや中期ANATHEMAのヴィンセントリスペクトなミッコのボーカル・メロディが俄然フォーキーに聴かせる”Away”、そしてフィンランドのSSWで知られるKaisa Valaとフューチャリングした表題曲の”Songs From The North”では、Kaisa『叙事詩カレワラ』に登場する『大気の処女イルマタル』となってフィン語で優しく歌い上げることで俄然民謡チックに聴かせ、この三部作のハイライトを飾るに相応しい一曲となっている。その後も、Alcestもビックリのリヴァーヴを効かせたデュリーミーな音響空間とトリップ・ホップ的なアレンジを施したオルタナ風のオープニングから、緯度"66°50´N,28°40´E"に位置する北国の幻想的な白夜の静けさを音(インスト)だけで描き出し、An Autumn for Crippled ChildrenHypomanie、そしてCold Body Radiationをはじめとしたダッチ産シューゲイザー・ブラック顔負けの吹雪くような美メロをフューチャーした#7”Autumn Fire”、そしてラストの”Before The Summer Dies”までの後半の流れは、決して「いつものSWS」ではない、言わば新機軸とも呼べるモダンなアプローチや音使いをもって情緒豊かに聴かせる。もはや「こいつらコッチ路線のがいい曲書くんじゃネーか?」ってくらい、モダンな要素と持ち前の懐メロ感を絶妙な具合にクロスオーバーさせている。

『Ⅲ』 ・・・一枚目の『Ⅰ』では「いつものSWS」を、二枚目の『Ⅱ』では「新しいSWS」を、そして三枚組の最終章に当たる三枚目の『Ⅲ』では、メロディを極力排除したフューネラル/デス・ドゥームメタルの王道を展開している。さっきまでの美メロ泣きメロの洪水とは打って変わって、アートワークの下等生物を見下すドSな女神に「もう許して...許してクレメンス・・・」と懺悔不可避な容赦ない破滅音楽っぷりを見せつけ、さっきまでの夢の世界から一転して惨憺たる絶望の淵へと追いやられる。曲の中にも静と動の緩急を織り交ぜるだけでなく、アルバム単位でも音の強弱やギャップを効かせた演出を織り交ぜた謎のスケール感を強調する。

大気の処女イルマタル ・・・やっぱり、この三枚組で最も面白いのは二枚目だ。隣国のスウェーデン人の音楽と比べると、どうしても不器用さが気になってしまうフィンランド人の音楽だが、この二枚目ではフィンランド人なりの器用さを垣間見せている。それこそ、今作のアートワークを冠した女神『大気の処女イルマタル』が身にまとった大気(Atmospheric)を体外に放出するかの如く、とにかく真珠が煌めくような音響空間に対する意識の高さが尋常じゃない。この二枚目で目指した理想像でもある、KATATONIA『Dead End Kings』をアコースティックに再構築したDethroned & Uncrownedとほぼ同じ作風とアレンジだが、Alcestリスペクトな音響/音像をはじめ民謡風のメロディだったり、フィンランド人の根幹にある民族的な土着性とフォーク/アコースティックなサウンドとの相性は抜群で、さすがにヨナスと比較するのはヨナスに失礼かもしれないが、ミッコのボーカル・メロディに関してもイモ臭さは程々によく練られているし、歌い手としてのポテンシャルを過去最高に発揮している。

臨界点 ・・・この手の界隈で比較対象にされるDraconianと同郷のAmorphisイェンス・ボグレンデイビッド・カスティロを起用した、いわゆる【勝利の方程式】を説き明かして今年2015年に勝ちに来た一方で、このSwallow the Sunはこの三枚組の中で、メロドゥームとしての王道路線で対抗すると共に、KATATONIAANATHEMAなどの先人たちにも決して引けを取らない、モダンでアコースティックな路線でも対等に勝負できることを証明した、どの方向性、どのジャンルにも一切の妥協を許さない攻めの姿勢に僕は敬意を表したい。失礼だが、フィンランド人だけでここまでの仕事ができるなんて思ってなかったし、新作が三枚組だと聞いた時は血迷ったなって全く期待してなかったから、いい意味で裏切られた。ある意味、未だ誰も超えたことがなかったスオミ人としての臨界点を超えたと言っていいかもしれない。正直スマンかった。
 
Songs From the North I & II & III
Swallow the Sun
Century Media (2015-11-13)
売り上げランキング: 6,741

Draconian 『Sovran』

Artist Draconian
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Producer David Castillo
David Castillo
Mixing/Mastering Jens Bogren
Jens Bogren

Album 『Sovran』
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Tracklist

01. Heavy Lies The Crown
02. The Wretched Tide
03. Pale Tortured Blue
04. Stellar Tombs
05. No Lonelier Star
06. Dusk Mariner
07. Dishearten
08. Rivers Between Us
09. The Marriage Of Attaris
10. With Love And Defiance

実質プロデューサー ・・・ゴシック・ドゥーム界を代表するスウェーデンのDraconianも、他に漏れず「イェンスと組んだ一作目は名作になる」という"メタル界の迷信"を、いわゆる"実質プロデューサー"現象を4thアルバムTurning Season Withinという傑作の中で既に証明していて、続く2011年作の5thアルバムA Rose for the Apocalypseでは、念願叶ってイェンス・ボグレンを本当の"プロデューサー"として迎え入れる事に成功していた。しかし、まさかそれが紅一点ボーカルLisa Johanssonの遺作になるなんて想像もしてなかった。正直、このドラコニアンのセールス・ポイントと言ったら、男Voのアンダース・ヤコブソンのデス声とリサ・ヨハンソンの美しすぎる歌声が織りなす、この世の儚くも美しい部分と破滅的な醜い部分の絶妙なコントラスト/コンビネーションで、そのバンドのキモであるリサが脱退したというニュースを聞いた時は、それはもうガチで終わったというか、それこそドラコニアン解散すんじゃねーかくらいの衝撃だった。しかし、新しくドラコニアンの記事を書いているということは、つまりはそういうことで、バンドの希望であったリサを失った彼らは、直ぐさま新しい嬢として南アフリカ出身のSSWで知られるHeike Langhansを迎え入れ、目出度く約4年ぶりとなる6thアルバム『Sovran』をリリースした。

【勝ち確】 ・・・今のメタル界隈には、イェンス・ボグレンという優勝間違いなしの名将だけじゃあ飽きたらず、その相棒であるデイビッド・カスティロも同時に指名して、いわゆる【勝利の方程式】を解き明かそうと必死で、このドラコニアンもこのビッグウェーブを追従するようにプロデューサーとしてデイビッド・カスティロ、録音エンジニアとしてイェンス・ボグレンを起用するという、まさしく【勝ち確】なメンツで制作されている。だけあって、今作は【勝ち確】と評する以外ナニモノでもない模様。それはイントロからEarthらUSドローン/ドゥーム界隈を彷彿とさせる#1”Heavy Lies The Crown”のメロドゥーム然とした慟哭不可避のメロディから、その#1とシームレスで繋がる#2”The Wretched Tide”のストリングスによる耽美的なメロディと紅一点ヘイケによるWithin Temptationのシャロン顔負けの慈悲なる歌声を聴けば分かるように、ウリである泣きのメロディ・センス、バンドの中心人物であるヨハン・エリクソンのライティング能力は4年経っても不変で、もはやリサ脱退の影響を微塵も感じさせない、むしろ冒頭の三曲でリサの存在を忘れさせるくらいの凄みがある。

【KATATONIA feat.】 ・・・そして今作のハイライトを飾る#7”Dishearten”は、リズムやアレンジ、リフから曲調まで、いわゆる【勝利の方程式】の基礎である『The Great Cold Distance』以降のKATATONIA、中でも『死の王』”Hypnone”リスペクトな一曲で、あの頃のKATATONIAを知り尽くしているデイビッドだからこそ『説得力』が生まれる曲でもあるし、もうなんか【KATATONIA feat. シャロン】みたいになっててウケる。ともあれ、一度は誰もが妄想したであろうこのコラボを擬似的ながらもやってのけた彼らの度胸に僕は敬意を表したい。その流れで本当にUKバンドCrippled Black Phoenixのスウェーデン人シンガーDaniel Änghedeとフィーチャリングしてしまう#9”Rivers Between Us”では、ダニエルの色気ムンムンな男性ボーカルとヘイケの美声がアンニュイなハーモニーを聴かせる。新ボーカルのヘイケは、前任者リサのようなオペラティックなソプラノ歌唱ではなくて、その声質やメロディの作り方からも往年のシャロン・デン・アデルを意識したようにクリソツで、それにより俄然ゴシック℃マシマシな印象を受けるし、より大衆的というか、往年のWTに通じる今のWTが失ったいわゆる"female fronted"なメインストリーム系のメタルへとバンドを昇華させている。少なくとも、いわゆるドゥーム・メタルやゴシック・メタルとかいうサブジャンル以前に、バンドのメタルとしての能力を限界まで引き出すイェンス・プロデュースによる特性が(良くも悪くも)顕著に出ていた前作よりは、まるで教科書通りと言わんばかり、これまでの"ゴシック/ドゥーム・メタル"として本来のドラコニアンらしさへ回帰した佳作だと。
 
Sovran
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Draconian
Napalm (2015-10-30)
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October Tide 『Tunnel Of No Light』 レビュー

Artist October Tide
October Tide

Album 『Tunnel Of No Light』
October Tide - Tunnel of No Light

Track List
01. Of Wounds To Come
02. Our Constellation
03. Emptiness Fulfilled
04. Caught In Silence
05. The Day I Dissolved
06. Watching The Drowners
07. In Hopeless Pursuit
08. Adoring Ashes

KATATONIAノーマン兄弟擁する北欧スウェーデンはストックホルム出身の五人組、October Tideの前作A Thin Shellからは約三年ぶりとなる通算四作目『Tunnel Of No Light』なんだけど、前作のVo&BassにはIn Mourningトビアス(Vo)とピエール(Bass)が担当していたが、昨年に早くもそのIn Mourning勢が脱退してしまった。その代わりに、本作ではノーマン弟(マティアス)VolturyonのVoアレクサンダーが新加入し、前作と同様にスカシンのJonas Kjellgrenをミックス/マスタリングとして迎え入れ、新体制となった形で再びッBlack Lounge Studiosにてレコーディングされた作品。というわけなんだけど、メンバーが代わったとは言えど、本作でやってる音楽は実にOctober Tideらしい【ATMS】系モダン・メロドゥームの王道を相も変わらずに展開してて、今や死の王と化してしまった今のKATATONIAにはない、初期~中期のKATATONIA直系つまり本家本元のメロドゥームとやらを、まるで「KATATONIAよ、これがメロドゥームだ」と言わんばかりのナニを見せつけている。そして本作を聴き、更にノーマン兄弟のいない『死の王』を聴くと改めて、KATATONIAの根っこにある【漆黒の意志】すなわち【ヒキコモリ精神】の大部分はこのノーマン兄弟が担っていたんだなぁと、シミジミ思ったりするわけです。でも正直なところ、ウチのブログでも贔屓にさせてもらってるIn Mourningのメンバーが速攻で脱退したのは地味に残念だったが、しかし本作の内容を聴けば、彼らの脱退なんぞほんの些細な事でしかなかったと、そう聴き手に納得させるほどの良作だと理解できるハズ。とか言うても、曲のクオリティは単純に前作のが上だったりするw なんつーか、今回は全体的にDaylight Dies的なダークメタル成分が増した感。

 ところで、新Voアレクサンダーの歌が思いの外いい感じだった件。声質的にはIn Mourningのトビアスとテイストの似た感じのグロウルだが、そのグロウルのバリエーションが高音から低音デスまで幅が広いというか、ノーマン兄弟が織りなす鬱々しく幽玄に揺らめいて寂寥感を煽るメランコリックなメロディと絶妙に相まって、文句のつけようがないド迫力のパフォーマンスを見せている。ちなみに、今回の曲の歌詞はヨナスきゅんが書いてたりする。

Tunnel of No Light
Tunnel of No Light
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October Tide
Pulverised (2013-04-16)
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Sons of Aeon 『s/t』 レビュー

Artist Sons of Aeon
Sons of Aeon

Album 『Sons of Aeon』
Sons of Aeon

Track List
01. Faceless
02. Cold Waves
03. Burden
04. Enemy Of The Souls
05. The Centre
06. Havoc & Catharsis
07. Weakness
08. Seeds Of Destruction
09. Wolf Eyes
10. Black Sheep Process
 
Ghost Brigadeや元Swallow the Sunのメンバーからなる北欧フィンランドの五人組、Sons of Aeonのデビュー作『s/t』なんだけど、その音楽性としては、その手の北欧メロドゥームやイエテボリ・メタルそしてGB譲りの【暗黒プログレッシヴ・ヘヴィ】成分配合の、実にフィンランド産らしいというか、叙情的なメロディは抑え目で重厚なリフでゴリ押していく、比較的直球スタイルのアグレッシヴなメロデスやってる。で、このSons of Aeonを象徴するかのような、メロドゥームやGB的ヘヴィネスそしてマシへばりのスラッシーな展開など幾多の要素を飲み込んだ#1から、典型的な叙情派イエテボリ・メタルの#3やGBの2ndIsolation Songsライクな#4、再びGBの今度は3rdUntil Fear No Longer Defines USライクな哀愁香るフォーキーなアコギを擁した#5、爆走ハーコーパンク大好きな#6、ゴジラ大好きな#8、再びイエテボリスキー・・・?うん!イエテボリスキー!な#9、ラストのドゥーミーなインストまで、全10曲トータル約50分。ハッキリ言って本作、フィンランド人特有の悪い癖が出てるというか、影響を受けたスタイル/音を自己流に昇華しきれてないのが如何せん聴いててツラい所で、そのせいか既聴感が強いし、真新しさというのが一切ないため、その結果→完全にメタルマニア向けのオナニー作品になっちゃってる。あのBarren Earthとはえらい違いだ。個人的に、GBのメンバーが参加してるからと期待して聴いてみたナニがあったんだけど、イマイチハマりきれなかったし、単純に曲が辛気臭いというか味気なかった。まぁ、オススメはしません。つうか、そんな事より、これ聴いたら本家GBの新作が俄然楽しみになってきた、というわけです。
 
Sons of Aeon
Sons of Aeon
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Sons Of Aeon
Lifeforce (2013-01-21)
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