02. Thorns
03. Lie Of Survival
04. Dancing In Madness
05. Cruel Road
06. Heartless
07. A Plea For Understanding
いつぞやのFallujahといい、メタル最王手レーベルで知られるNuclear Blastがここ最近積極的にやってる、「今キテる若手バンド」に対する節操のない「青田買い」ってどうにも好きになれなくて、それこそ一時期のCentury Mediaを思い出して余計に好きになれないんだけど、2015年に初来日公演が実現した”クマラー”ことアーカンソー州はリトルロック出身のPallbearerも、そのNuclear Blastによる「青田買い」に巻き込まれたバンドの一つだ。
2012年作の1stアルバム『Sorrow and Extinction』 では、ブラック・サバス直系の伝統的(トラディショナル)なドゥーム・メタルを現代に蘇らせたような音楽性で、かのピッチフォークをはじめ数多くの音楽メディアから賞賛され話題を呼び、続く2014年作の2ndアルバム『Foundations of Burden』では、その伝統的かつ叙情的なドゥーム・メタルという強固な地盤を維持しながらも、IsisやAgallochをはじめとしたポストメタル勢からのモダンな影響とアンニュイなセンスを垣間見せ、よりアトモスフェリックでプログレッシブ、そしてより現代的なドゥーム・メタルへと化けてみせた。
その前作の「現代的」すなわち「Post-系」のアプローチを踏襲し、IsisやToolなどの作品を手掛けた名エンジニアのジョー・バレーシがミックスを担当した、約三年ぶりとなる3rdアルバムの『Heartless』は、前作のモダンで現代的な方向性を更に推し進め、よりエピカルに、より叙情的な泣きのメロディやフロントマンBrett Campbellのキャッチーな歌メロを全面にフィーチャーし、そして全編に渡って「お前はどこのギターヒーローだよ」とツッコミ不可避な流麗なソロワークを披露した、過去最高に挑戦的で広大なスケールに溢れた作品となっている。
まず本作を聴く前に妙な違和感というか一つ気づくことがあった。それは、10分超えの大作が全6曲中4曲あった前作に対して、今作には10分超えの大作は全7曲中2曲しかないことだ。さっそく一曲目が6分台、続く二曲目が5分台という、前作の”Ashes”を例外として除けば実質最短を記録する冒頭の二曲の存在が、本作の「異質さ」を物語っていると言っても過言じゃあない。まず6分台の#1”I Saw the End”から、今作が過去最高に「メロディ重視」のアルバムであることを裏付けるような、フロントマンBrett Campbellの感情表現豊かなボーカルとツインリードの叙情味溢れるメロディを中心に、ドラムの手数の多さは言わずもがな、モダンに洗練されたプロダクション、いわゆるプログレ・メタルと言うより、もはや様式美メタルと呼ぶべきベッタベタな構成とダイナミックな展開力を発揮する。続く5分台の#2”Thorns”でも、もはやドゥームと呼んでいいのかすら分からないソリッドなリフ回し主体で、そして中盤にスロウコアパートを織り込んだ、いわゆる「静と動」のコントラストを効かせた非常に分かりやすい楽曲となっている。その冒頭の二曲の次に短い5曲目の”Cruel Road”や表題曲となる6曲目の”Heartless”でも同様の事が言える。前作のようにスロウコアにも精通するミニマルなフレーズやドゥーミーなリフで曲を構成するのではなく、過去最高に感情を込めてエモーショナルに歌いまくりなボーカルに負けじと、それこそ「ドゥーム・メタル」とは一線をがした、キザミ系のリフやスラッジーでメタリックなリフを駆使して曲を上下左右に動かしまくる姿は、初期のMastodonやBaronessを連想させなくもない。
まず本作を聴く前に妙な違和感というか一つ気づくことがあった。それは、10分超えの大作が全6曲中4曲あった前作に対して、今作には10分超えの大作は全7曲中2曲しかないことだ。さっそく一曲目が6分台、続く二曲目が5分台という、前作の”Ashes”を例外として除けば実質最短を記録する冒頭の二曲の存在が、本作の「異質さ」を物語っていると言っても過言じゃあない。まず6分台の#1”I Saw the End”から、今作が過去最高に「メロディ重視」のアルバムであることを裏付けるような、フロントマンBrett Campbellの感情表現豊かなボーカルとツインリードの叙情味溢れるメロディを中心に、ドラムの手数の多さは言わずもがな、モダンに洗練されたプロダクション、いわゆるプログレ・メタルと言うより、もはや様式美メタルと呼ぶべきベッタベタな構成とダイナミックな展開力を発揮する。続く5分台の#2”Thorns”でも、もはやドゥームと呼んでいいのかすら分からないソリッドなリフ回し主体で、そして中盤にスロウコアパートを織り込んだ、いわゆる「静と動」のコントラストを効かせた非常に分かりやすい楽曲となっている。その冒頭の二曲の次に短い5曲目の”Cruel Road”や表題曲となる6曲目の”Heartless”でも同様の事が言える。前作のようにスロウコアにも精通するミニマルなフレーズやドゥーミーなリフで曲を構成するのではなく、過去最高に感情を込めてエモーショナルに歌いまくりなボーカルに負けじと、それこそ「ドゥーム・メタル」とは一線をがした、キザミ系のリフやスラッジーでメタリックなリフを駆使して曲を上下左右に動かしまくる姿は、初期のMastodonやBaronessを連想させなくもない。
それ以外の、いわゆる「大作」と呼べる3曲目の”Lie of Survival”では、イントロから哀愁を帯びたATMS系のシンセとゲイリー・ムーアばりにブルージーな泣きのギターをフィーチャーしている。4曲目の”Dancing in Madness”は、イントロからElsianeを彷彿させるジャジーでアンニュイな雰囲気を漂わせながら、ムード歌謡ばりにクサいムードを醸し出すシンセと超絶怒涛の泣きのギターソロをあざといくらいにこれでもかとブッ込みつつ、その長いイントロが終わると、中盤以降はまるで「山の神」である岩人間デイダラボッチが深い眠りから目覚めて必殺ローリングアタックをブチかますような、暴力的かつ粗暴な、ソリッドかつアグレッシヴなリフを駆使しながら壮大なプログレッシヴ・ドゥーム地獄絵巻を描き出していく。ラストを飾る歴代最長作となる#7”A Plea for Understanding”は、40 Watt Sunの1stアルバムを彷彿させる泣きのスロウコアナンバー。
サザンロックばりに、それこそ映画『ダーティ・ハリー』のクリント・イーストウッドばりに泥臭くて男臭い、すなわち土葬不可避な死臭漂う淀んだ空気感というか初期のフューネラル・ドゥーム感は皆無に近い。従って、本来のウリであるトラディショナルでサイケデリックなドゥームっぽさも希薄で、とにかく本作ではドゥームならではの「遅さ」やスラッジにも精通する「重さ」よりも、アイアン・メイデン顔負けのツインリードによる叙情的な旋律とハーモニーが織りなす「泣きメロ重視」の作風に路線変更している。
「君もピッチフォーカーかい?」
元々というか、どっちかっつーと、ドゥーム・メタルの開祖であるブラック・サバスからの影響は元より、それ以前に初期ANATHEMAやType O Negativeなどのゴシック系への強い憧れを持っていたバンドでもあって、それらのベアラーを司る音楽的嗜好、その根幹部にあるインフルエンサーが顕著に現れた結果と言えなくもない。そう考えてみると、この度のNuclear Blastへの移籍は至極納得できるというか、つまり完全にピッチフォーク路線からは外れた方向性である。
「はい、私はピッチフォーカーです。」
本作がピッチフォークで低評価(6点)となった理由はそこにある。ピッチフォークが大好きなヘヴィロック系のドゥーム/ポストメタルではなく、いわゆるヘビメタチックなリフ回しをはじめ、それこそシンセのクサい鳴らし方を筆頭に、本作にはピッチが毛嫌いしている欧州のクサメタル的な「ダサさ」、そう「メタルにダサいは褒め言葉」でお馴染みのその「ダサさ」が作品全体を支配している。それこそIsisがドゥーム化したというよりは、誤解を恐れず端的に言っちゃうとメイデンがドゥーム化したみたいなイメージ。確かに、前作が高評価だったピッチフォーク目線で見ると、本作はただのクソダサいヘビメタにしか聴こえないし、ピッチ目線だとベアラー本来のウリや持ち味の全てを失ってしまったように感じるかもしれない。だから、自身がピッチフォーカーorメタラーかで今作の評価がガラッと変わってくるだろうし、逆にUKゴシック御三家をはじめとした、その手のメロドゥーム系が好きな人には間違いなく最高傑作として聴こえる代物ではある。
ベアラーの良さって、あくまでもトラディショナルなドゥームを下地にさり気ない泣きメロが入ってくる絶妙なバランス感覚で、でも今作みたいに泣きメロが主役になっちゃうと、「いや、そうじゃない」と感じる人が出てくる。その露骨な「あざとさ」が癪にさわるみたいな感覚。初期のインディ/アンダーグラウンドな香りから一転して、鮮明かつクリアに、悪く言えばチープに聴こえるプロダクションも相まって、良くも悪くも聴きやすいキレイでクリーンな普通のメロドゥームだ。もはや別バンドと言われても納得するほど。
確かに、1stアルバムから2ndアルバムまでは正統な「進化」と呼べるが、2ndアルバムからこの3rdアルバムまでは「進化」というより「変化」の部分の割合の方が大きい。これまでの「求心力」や「オリジナリティ」の面では前作に遠く及ばないが、その「進化」と「変化」が上手く調和したドゥーム・メタル界の新たなる傑作の誕生だ。しかし、僕のように前作を年間BESTに選んだピッチフォーカーは、本作を今年の年間BESTに選んじゃアカンやつなのは確か。それくらい、ちょっと、というか、だいぶ変わっちゃってる。
HEARTLESS (ハートレス: +bonus disc)
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PALLBEARER (ポールベアラー)
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