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墓っ地・ざ・ろっく!

メロデス

The Halo Effect - Days Of The Lost

Artist The Halo Effect
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Album 『Days Of The Lost』
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Tracklist
01. Shadowminds
03. The Needless End
04. Conditional
05. In Broken Trust
06. Gateways
07. A Truth Worth Lying For
09. Last Of Our Kind
10. The Most Alone

先日のダウンロードフェスジャパンで初来日を果たした、ex-IN FLAMESのメンバーが同窓会とばかりに集結した“シン・フレイムス”ことThe Halo Effectの全世界のメロデサーが待ち望んだ1stアルバム『Days Of The Lost』は、当時のIN FLAMESの黄金時代を築き上げたギタリストのイェスパーを擁しているだけあって、イェスパー在籍時...つまりメロデスメロデスしてた頃...要するにイェーテボリ・スタイルを踏襲した単音リフをはじめ、昨年にIN FLAMESを脱退したニクラス・エンゲリンとの新旧インフレエンサーによるツインリードが全盛期並みに炸裂しまくっているかと言われたら実はそうでもなくて、あくまで「北欧の吉井和哉」ことボーカルのミカエル・スタンネが在籍するDARK TRANQUILLITYの近作、その延長線上にある印象を受けた。

イェスパーはもとより、ベースのピーターとドラムのダニエルという、それこそ黄金期IN FLAMESを縁の下で支えたリズム隊を従えている時点で、どちらかと言えば背乗りした側のアンダースとビョーンが仕切ってる現IN FLAMESよりも全IN FLAMESなんじゃねぇかって、もはやどっちがシンのSIN FLAMESなのか疑問を呈したくなる状況はさて置き、いわゆる北欧メロデスと一蓮托生的な存在であるイェンス・ボグレンをエンジニアとして迎えた、本作の幕開けを飾る1stシングルの#1“Shadowminds”からして、「最近のdtにこんな曲なかったっけ?」ってなるくらいモダンな曲で拍子抜けしかけるも、しかし初期IN FLAMESさながらのイェスパー節全開の慟哭のツインリードが炸裂する次の#2“Days Of The Lost”で「これこれぇ!」みたいにガッツポーズさせると、イェーテボリ・スタイル以前に広義の意味で北欧メタルとしての真価を発揮する#3“The Needless End”、北欧メロデスらしい殺傷力高めの単音リフで血飛沫を撒き散らす#4“Conditional”、そして「北欧の吉井和哉」ことミカエルがdtで培ったイケおじならではの色気を醸し出すクリーンボイス主体の#5“In Broken Trust”や#7“A Truth Worth Lying For”、この辺りで「イェスパー節消えたな...そういえば先日のダウンロードフェスからもイェスパー消えてたな...」とか思った瞬間、再び初期IN FLAMESさながらの叙情的なツインリードが慟哭のハーモニーを奏でる#8“Feel What I Believe”は本作のハイライトで、アルバム後半はチクビームのキイチきゅんが登場して例のトラウマをフラッシュバックさせる#9“Last Of Our Kind”など、少なくとも「あり得たかもしれないif世界線のインフレ」あるいは【イェンス・ボグレン×イン・フレイムス】として、往年のメロデスフリークなら必聴である事だけは確かです。

しかし、そのキイチ参加の楽曲からも察しがつくように、言い方は悪いけどどうしても「商業的」な酒代もといゼニの匂いというか俗っぽい思惑が透けて見えるのも事実で(そもそもケツモチがニュークリア・ブラストの時点で)、一作目でこの感じなら二作目は「もういいかな」みたいな変な満腹感があるのも事実。確かに、母国スウェーデンでチャート1位を獲得するのも納得の内容だけれど、「おもてたんと違う」ほどではないが、「ほぼdtじゃねこれ?」と感じる人も少なくないと思う。

Imperial Circus Dead Decadence - 殯――死へ耽る想いは戮辱すら喰らい、彼方の生を愛する為に命を讃える――。

Artist Imperial Circus Dead Decadence
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Album 『殯――死へ耽る想いは戮辱すら喰らい、彼方の生を愛する為に命を讃える――。』
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Tracklist
01. 禊祓の神産は宣い、禍祓の贖罪は誓う。
02. 夜葉:罪と罰の螺旋――。
03. 腐蝕ルサンチマン、不死欲の猿楽座。
04.
05. 百鬼夜行-Pandemonic Night Parade-
06. 嚮導 BRING+ 瞳 EYES= 死 DEATH+ 齎 INVITE
07. 神罰を辿り狂骨に至る
08. 黒キ桜ハ愛∴其ノ死ヲ乞ウ
09. 分裂した道化と≒発狂の修道女
10. 黄泉より聴こゆ、皇国の燈と焔の少女。-殯-
11. 悲痛なる跫音は哀しき邂逅 (mode:α)
12. 悲痛なる跫音は哀しき邂逅 (mode:Ω)
13. 天聲

ブルータル・デカダンスを信条として掲げる、2007年に結成されたICDDことImperial Circus Dead Decadenceのフルアルバムとしては約11年ぶりとなる3rdアルバム『殯――死へ耽る想いは戮辱すら喰らい、彼方の生を愛する為に命を讃える――。』は、自身で「制作に6年以上もの歳月を費やしたキャリアの総括」と語るように、フィンランドのStratovariusやドイツのBlind Guardianに代表されるハイトーン系ネオクラ/メロパワ、スウェーデンのIN FLAMESSoilworkに代表される北欧メロデス、イギリスのCradle Of Filthに代表されるシンフォニック・ブラックメタル、DIR EN GREYLynch.に代表されるヴィジュアル系、そしてアニソン界を代表するSound HorizonJAM Projectの厨二精神を継承した、彼らにしかなし得ないエクストリーム同人メタルは不変、かつ本作において過去最大級のスケールでカムバックしている。そのブルータル・デカダンスという誇大広告に嘘はないとばかり、リードボーカルのリブユウキを案内役(預言者)として、否応にもリアル世界と共鳴するこの素っ頓狂を装ったシニカルでアヴァンギャルドな退廃したディストピアへと誘い、そして荒廃した劇場の舞台の上で業火に焼かれながら狂言/演舞する激情のからくりサーカスを目の当たりにしたルサンチマンの僕たちは、「スッ...」と高らかにメロイックサインを掲げながら天へと召される・・・

十贖罪十

それこそエヴァに代表される90年代サブカルチャーのセカイ系、あるいは同人界隈とも親和性の高いシナリオライターの虚淵玄が創り出すポスト・アポカリプスの世界観とシンクロする、ex-Sound Horizonあらまりをフィーチャーした冒頭の#“禊祓の神産は宣い、禍祓の贖罪は誓う。”からして、この壮絶的かつ悲劇的な退廃藝術を未来へと語り継ぐ「此れは永劫の果に紡がれた宣いと贖罪の結実」というナレーションを合図に、初っ端から90年代の北欧メロデスシーンを象徴する殺傷力高めのイエテボリスタイルを継承した単音リフをはじめ、あらまりとリブユウキが織りなすJAM Project顔負けの90年代アニソン風のクサビメロやギタリストのKIMが奏でる慟哭のメロディ、そして壮大さを司るシンフォニックな編曲やブラストビートを交えて複雑に入り乱れる、超弩級のスケールで描かれる贖罪の狂想曲をエクストリーム同人メタルとして昇華した十神曲十となっている。


ICDDのカオティックでエクストリーミーな同人メタルを司どる楽器隊のテクデス然とした暴虐性とリブユウキのスクリームを中心に美しくも儚く、そして残酷に展開するクラシカルな#2“夜葉:罪と罰の螺旋――。”、再びシンフォニック・ブラック然とした楽器隊をバックにリブユウキと紅一点サポートメンバーの奈槻晃が贖罪のハーモニーを奏でる#3“腐蝕ルサンチマン、不死欲の猿楽座。”は、中盤以降のDIR EN GREYリスペクトな道化師が暗黒舞踏を演舞するアヴァンギャルドな場面を垣間見せたかと思えば、続くリード曲となる#4“獄”では、DIR EN GREY史上最高のメロデスチューンで知られる“激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇”のパクリ、もとい「同人メタルらしさ」を存分に発揮するヴィジュアル系オマージュ曲で、更にはDIR EN GREYの名曲“VINUSHKA”における京リスペクトな「アッチョンブリケ」ボイスまで完コピしている。とにかく、アルバム冒頭の流れからしてメタルの醍醐味が凝縮されたような、溢れんばかりのメタル愛に満ちた激アツ展開を畳みかけてくる。

モダンなエクストリームメタル・リフを奏でる#5“百鬼夜行-Pandemonic Night Parade-”、今度はLynch.の葉月顔負けのナルシシズムに溢れたリブユウキを誇示する#6“嚮導 BRING+ 瞳 EYES= 死 DEATH+ 齎 INVITE”、ブラガmeetディルみたいな#7“神罰を辿り狂骨に至る”、VTuberのトラックメイカーとしても知られるThe Herb Shopをフィーチャーした曲で、ネオクラ界の貴族であるインギー顔負けのソロワークを聴かせる#8“黒キ桜ハ愛∴其ノ死ヲ乞ウ”、再び中期DIR EN GREYリスペクトなパンク~アヴァンギャルドを経由した素っ頓狂なリズムを刻む#9“分裂した道化と≒発狂の修道女”、例えるならアニメ『シドニアの騎士』シリーズの主題歌を担当する音楽ユニット=angelaがエクストリーム/ブラックメタル化したような#10“黄泉より聴こゆ、皇国の燈と焔の少女。-殯-”、本作唯一のバラード志向の強いmode:αとDIR EN GREYの“激闇”はもとより迷曲の“The inferno”的なエクストリーム志向の強いmode:Ωの組曲となる“悲痛なる跫音は哀しき邂逅”を挟んで、この贖罪の物語のクライマックスを飾る#13“天聲”では、ジャーマンメタル界のレジェンドHalloweenの名曲“Eagle Fly Free”リスペクトなクサメタル然としたサウンドをバックに、初代ボーカルのカイケル・キスク顔負けの超絶ハイトーンボイスを披露するリブユウキと対をなす、「このフィーチャリングしてる女性ボーカル誰かな?」と思ったら、イヤホン界隈の重鎮である声優の小岩井ことりだと知った瞬間は、リアルに「feat.小岩井ことりィ?!」ってなって大団円を迎える。

パッと見、偏見を抱きがちな“同人メタル”と決して侮ることなかれ、ブラストビートを乱発する急転直下型のエクストリームメタルを奏でる技巧派集団の楽器隊によるスキル/パフォーマンスのハイポテンシャルのみならず、一段と凄みを増したクラシック/オペラ級のより(演)劇的でドラマティックなアレンジ力の向上、そして狂言師としての語り役はもとより、Lynch.の葉月ばりのナルシシズムを内包したV系ボイスやDIR EN GREYの京に肉薄するホイッスルボイスや金切り声、デスボイスやアッチョンブリケボイス、そしてヘヴィメタルを司るハイトーンボイスを変幻自在に操るリブユウキの狂言ならぬ狂声は、このICDDを同人メタルから本格的なガチメタルへとアップデイトたらしめる唯一無二の煉獄さん的な存在、すなわち十神十としてここに君臨している。

これまでのキャリアの総括と語るに違わず、過去最大のスケール感とボリュームに富んだ傑作なので全世界のメタラー必聴盤だし、少なくとも本家DIR EN GREYの新譜よりも優先して聴くべき「今年の一枚」なのは確かです。

Dark Tranquillity 『Moment』

Artist Dark Tranquillity
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Album 『Moment』
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Tracklist
01. Phantom Days
02. Transient
03. Identical To None
05. Remain In The Unknown
06. Standstill
07. Ego Deception
08. A Drawn Out Exit
09. Eyes Of The World
10. Failstate
11. Empires Lost To Time
12. In Truth Divided

北欧の吉井和哉ことミカエル・スタンネ率いるスウェーデンのDTことDark Tranquillityも間もなく芸歴30年を迎えようとしているメロデス界を代表する大ベテランで、しかしそれだけ芸歴が長いとメンバーの出入りが激しくなるのも仕方なきことだ。今やIn Flamesのフロントマンを務めるアンダース・フリーデンと、デビュー当時のIn Flamesのフロントマンを務めていたミカエルが入れ替わるようにして現在進行系で活動しているのは別に数奇な運命ってほどでもないけど、アンダースがDTを脱退してミカエル体制になってから20年が経過するまでは、デビュー当初のオリジナルメンバーがバンドの過半数を占めていたDT。しかし、2013年作の10thアルバム『Construct』を最後にオリメンでベーシスト兼ギタリストのマーティン・ヘンリクソンが脱退、その後を追うようにして2016年作の11thアルバム『Atoma』をリリース後にオリメンでギタリストのニクラス・サンディンが脱退、遂にオリメンがミカエルとドラマーのアンダースの二人だけとなり今に至る。

そのバンドの要となる二人のオリメン兼ギタリストの脱退に納得できる理由があるとすれば、その答えは恐らくただ一つだ。いわゆる“実質プロデューサー”として現代メタルシーンを裏方の立場から支えてきた“テイラー・スウィフトのマブダチ”兼エンジニアのイェンス・ボグレンを迎えた『Construct』以降、2000年に途中加入した鍵盤奏者のマーティン・ブランドストロームが著しく顕著にバンドの実権(プロデュース権)を掌握し始めた事に因果として繋がっていて、楽曲的な面でもキーボード主導のメランコリックな哀愁の憂いに満ちたATMSフィールド/空間形成を重視したプログレスな楽曲構成だった一方、もはやギターの存在感は空気そのものだったのも事実。

驚いたのは、脱退した二人のギタリストの代わりに新メンバーとして迎えられたのが、(今はなき)在りし日のメロデス四天王の一角を担っていたArch Enemyの元ギタリスト=クリストファー・アモットと知る人ぞ知るプログレ・メタル界のくせ者ことAndromedaの設立者であるヨハン・ラインホルトというまさかの展開。で、正直なところ「DTはDTでもただのDTDTじゃないアモット弟ってどうなのそれ?」みたいなネガティヴなイメージしか沸かなかった。しかし、実際に本作の蓋を開けてみたら彼ら新ギタリストによるキレッキレのギターワークがDTに新しい風を吹き込んでいる。その実績バリバリの新コンビが奏でるメタルの醍醐味である流麗かつピロピロギュイーンなソロワークを中心に、つまり近作のキーボード主導の楽曲構成から一転して、ギターが楽曲の支柱として活かされた全曲ギターソロ入りの普遍的なメタルサウンドへと回帰している。ちなみに、今作ではアモット弟は主にギターソロで活躍してるが、一方のラインホルトに至ってはコンポーザーとしても深く楽曲に関わっている。

メンバーたち曰く、本作は“2005年作の7thアルバム『Character』に最も近い作品”だと語っている。その『Character』といえば、DTが築き上げてきた従来のイエテボリ・スタイルと途中加入したマーティン・ブランドストロームが奏でるキーボードのモダンなメロディが融合した、その後に至るDTスタイルを確立した中期DTを象徴する傑作の一つで、当時の北欧メロデスという名のイエテボリ・サウンドがメタルシーンの一時代を築くまでのし上げた、裏の立役者であるエンジニアのフレドリック・ノルドストロームが生み出す殺傷力の高いブルータルなプロダクションは今なお唯一無二の存在だ。しかし、そのイエテボリ・スタイルを代表するDTの暴虐的な殺傷力は00年代後半から、厳密にいえば9thアルバムの『We Are the Void』から鳴りを潜めてしまう。皮肉なことに、そのイエテボリ・スタイルを現代の今の今まで継承してきたのが隣国フィンランドのInsomniumだったということ。

DTを失ったイエテボリ魂を現代まで紡いできたInsomniumから再びバトンを譲り受けたイエテボリ王が完全復活を宣言するような、イエテボリ・スタイルの常套手段であるエピックな単音リフとザックザクに刻まれるソリッドでヘヴィなリフ、扇情的に多幸感を煽るキーボード、そして泣きメロ全開のツインギターソロまで、まさにイエテボリの結晶を積み上げていくオープニングナンバーの#1“Phantom Days”を皮切りに、イエテボリ・スタイル全盛を思わせる往年のDTとミカエル・スタンネが“北欧の吉井和哉”として覚醒した近年(イェンス期)のDT、そして二人の新ギタリストによるヘヴィメタルの根本的な要素が邂逅した全く新しいDT、そうして紡ぎ出される「メロデスの未来」が今作の『Moment』である。


『Character』=クリーンボイス皆無のゴリゴリ系のメタルかと思いきや、#4〜#7までのアルバム中盤はクリーン入りの楽曲中心で、むしろ逆にミカエルの“吉井和哉化”が著しく本格化した前々作の『Construct』並みにはある。更にクリーンの歌メロも同アルバム、厳密に言えばミカエルのクリーンボイスの才能が開花した“Uniformity”の名残を感じさせ、それこそクリーンパートの歌メロが全部“Uniformity”に空耳するぐらいには、目の前に広がる一面オレンジ色のひまわり畑が映える“メランコリック吉井(芸名)”としての官能的な色気を放つ哀愁だだ漏れのクリーン遺伝子をセルフオマージュしまくっている。その極め付けとなる#9“Eyes Of The World”は本作のハイライトで、ミカエルのメランコリック吉井っぷりは元より、メタル界最大の格言である「アチエネはメロコア」の精神をDNAレベルで受け継いでいるアモット弟の泣きのギターソロが炸裂する名曲だ。

本人たちが『Character』をイメージしたと語るだけあって、音作りの面でもイェンス時代では最もメタリックでソリッドな音作りを意識したものとなっている。これ何が一番エモいって、90年代〜00年代までの北欧メタルシーンの一時代を築き上げたフレドリック・ノルドストロームの職人芸が詰まった唯一無二のサウンド・プロダクションを、今や北欧は元より現代メタルシーンを牛耳るイェンス・ボグレンがリスペクト兼オマージュしてきている点。その表からは見えないバンドの裏側から支えるエンジニア界隈の世代交代を目の当たりにしている感じが俄然泣ける。

Soilwork 『Verkligheten(現実)』

Artist Soilwork
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Album 『Verkligheten(現実)』
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Tracklist
01. Verkligheten
03. Bleeder Despoiler
05. The Nurturing Glance
06. When The Universe Spoke
08. The Wolves Are Back In Town
09. Witan
10. The Ageless Whisper
11. Needles And Kin
12. You Aquiver

まさか歴代Soilworkメンバーで1番の出世頭がメガデスに引き抜かれたドラマーのダークになるとは・・・いや、でもダークってソイル在籍時からフロントマンのビョーンと双璧をなすバンドのキーマンとなるメンバーだし、元々メタルシーンでも評価の高いドラマーとして有名だったから、いずれはレジェンド級のメタルバンドに引き抜かれる運命だったのかもしれない。そんな、縁の下の力持ち的な存在だったバンドの功労者を失ったメロデス四天王の一角を担うSoilworkは、2017年に若干27才のデンマーク人ドラマーバスティアン・トゥスゴールを迎え、前作から約4年ぶり通算11作目となる『Verkligheten(現実)』をリリースした。

改めて、このSoilworkも先日リリースされた紫鎌こと『Hexed』で完全復活を遂げたChildren Of Bodomと同じくメロデス四天王あるいはメロデス5強の一角を担う重鎮で、そんなチルボドソイルって実はちょっとした“共通点”があって、ボドムが2008年にメタル三大駄作の一つである“酒鎌”こと『Blooddrunk』を発表した同時期に、ソイルも2007年に7thアルバム『Sworn To A Great Divide』というメタル三大駄作の名に相応しい世紀の駄作を発表すると、今度は双バンド共に「流石にこの状況はマズくね?」と勘付いたのか、10年代に入るとボドム=アレキシ・ライホ“メタル本願寺”で知られるNBの僧侶となり、晴れて二つの意味で“実質坊主”となったハゲキシは、その“メタル本願寺”から授かった“メタルの御朱印”を自身の広いオデコに貼り付けたご加護により、全盛期の“ファッキン・サノバビッチの精神”を取り戻したボドム白鎌から黄鎌そして紫鎌を生み出してメロデス四天王の“キング”に返り咲くと、元から二つの意味で“実質坊主”ビョーン=ソイルは、10年代に入ると“10年代のメタル”を象徴するエンジニア/プロデューサーであるイェンス・ボグレンに弟子入りして“メタルの御朱印”を授かると、その御朱印をビョーンのツルッツルの坊主頭にピタッと貼り付けたキョンシーならぬビョンシーみたいな状態で、2013年に復活の狼煙を上げる二枚組の9thアルバム『The Living Infinite』を発表し、そしてデヴィッド・カスティロを迎えた次作の10thアルバム『The Ride Majestic』「メロデス四天王ここにあり」とメタルシーンに復活を強く印象付けた。


その“ボドムとソイルの共通点”の行き着く先は、奇跡の完全復活を遂げたチルボドの新作である紫鎌ソイルの新作であるこの『Verkligheten(現実)』に他ならない。まずアルバムのリード曲として先行公開された、同じメロデス四天王の一角を担う現Arch Enemyのフロントウーマン=アリッサを迎えた“Stålfågel”からして(このアニメ調のMVは最近観たネトフリの『ラブ、デス&ロボット』の一つに似たような絵柄あったなーとか思いながら)、これまでのソイルにはない、それこそ国内屈指の“キザミ鑑定士”である俺ィのナニが超ビンビンに反応を示すくらい黄金のキザミ”の精神を宿した曲で、(この曲をリード曲に持ってくる時点でアルバムに対する期待感しかなかったけど)この“キザミ”はまさにボドム紫鎌でやった“キザミ”と共振するとともに、もはや“メタル本願寺”坊主同士で夜な夜な共鳴し合ってるんじゃねぇかと邪推するくらい(おい)、とにかくボドム紫鎌に触発されたのか、ソイルにしてはえらく“キザミ”を効果的に使ったキザミ指数の高いアルバムで、しかし“キザミ”といえど決して“スラッシュ・メタル”というわけではなくて、あくまでも紫鎌を持った某隣国の某インテリハゲに対抗した、まるで「お前も俺と同じ毛量にしてやろうか!」とばかりの“さり気ないキザミ”だ。世はまさに!というか現メロデス四天王界は空前のキザミブームなのか!?

バンドの“ダーク離れ”とともに、実はもう1人バンドから離れた人物がいる。それがSoilwork“メタルの御朱印”を授けた張本人であるサウンド・エンジニアのイェンス・ボグレンだった。そうそう、そのイェンス・ボグレンといえば、久々にイェンスがスウェーデンのオレブロとストックホルムに所有するスタジオ=Fascination Street StudiosのHPにアクセスしたら、トップページで開業15周年を記念しつつ何故か日本語化対応してて吹いたのと、イェンス(・ボーグレン)の兄弟分であるトニー・リンドグレンをはじめ他のエンジニアも律儀に(amazonの商品紹介並みに胡散臭い)不自由な日本語で紹介されてたり、終いにはKATATONIAdtでお馴染みのデヴィッド・カスティロがドヤ顔でシレッとファシネーション入りしてて(あれ?元から所属だっけ?)、とにかく色々とツッコミどころ満載すぎて軽く引き笑いした(ちょっと見ないうちにイェンス界隈で一体何があったんだ・・・)(それが某メビメタ仕事のせいだとしたらベビメタ許すまじ)。正直、自分の中でイェンス(・ボーグレン)がメタルシーンの“トレンド”と呼べたのって2010年前後だと思ってて、少なくとも今のイェンス(・ボーグレン)はメタル界の“トレンド”ではないです。現に、こうやって“イェンス離れ”が起こっているのを見るとね。しかし、イェンス(・ボーグレン)“10年代のメタルの象徴”として多大なる功績を残した偉大なるレジェンドであること、今やその名声はメタルシーンにとどまらず、あの“某ゴネ得お姉さん”ことテイラー・スウィフトと一緒に仕事するまでに成り上がった事実が彼の全てを物語っており、10年代のメタルシーンにこの人の存在がなかったらと思うと想像を絶する。この『Verkligheten(現実)』は、そんな風に長年連れ添ったダークとNB寺院の師であるボーグルソンとは良い友好関係のまま別れて心機一転、バンドはScar SymmetrySolution .45をはじめ最近ではメロデス界のニューカマー=Mors Principally Estを手がけた事でも知られる=アングラのメタルをよく知るスウェーデン人のトーマス・ヨハンソンを新プロデューサーに迎え、ヘタしたらダーク引き抜き以上に大きな変化&新体制で挑まれた作品である。

そのダークボーグルソン黄金コンビ”を失ったことの懸念あるいは不安は、コンセプティブな内容を掲げた今作を象徴するイントロSEの“Verkligheten”に始まり、同じイェンス案件でメロデス5強の一角を担うdt的な超絶epicッ!!なメロディを乗せた、それこそ“ダーク離れ”の不安を一掃するようなバスティアンのブラストを叩き込むソイル節全開の#2、モダンさを覗かせながらプログレスな動きを見せる#3、今作のキモであるさり気ないキザミ要素とビョーンソロ=The Night Flight Orchestra譲りのメロウなハードロックかと思ったらエクストリームに展開する、まさに全ソイルここに極まれえりな#4、全盛期のボーカル・メロディを彷彿とさせるモダンなハードロックの#5、これはボドム紫鎌でも思ったけど、ミドルチューンでこそバンドの良さが滲み出てくるんだなぁとシミジミと改めて感じながら、再びバスティアンのブラストを叩き込むエクストリーミーな#6、そして今作のハイライトを飾るリード曲であり黄金のキザミ”が込められた#7、その“キザミ”の流れで隙あらば調子よくキザんでくる#8、ここからヘヴィさを増していく#9からの#10、同じくイェンス案件のアモルフィスのフロントマン=トミをゲストに迎えたデスメタル風の#11まで、イェンス・ボグレンから授かった“メタルの御朱印”のご加護を後光にしながら、Soilworkらしい北欧ならではの哀愁を帯びた叙情性、しかし今回は70年代のプログレッシブ・ロックやクラシック・ロックを経由した叙情味を帯びたメロディやビョーンの持ち前のソウルフルな歌メロを維持しつつ、それこそ新メンと新プロデューサーの新素材を迎えて心機一転した影響ありありで、ソイルらしいソイル節と全く新しい“ニュー・ソイル”との融合が絶妙な塩梅で楽曲に現れていて、あの“キザミ”をはじめとしたリフもプログレスな動きを見せる曲構成も『現実』というわりにはSFチックなコンセプトを意識したアレンジまでも、決して一筋縄ではいかない豊富なバリエーションを取り揃えていて、とにかく全てがアクティブでエネルギッシュなメタルとして楽しませる(実は本編よりもボートラのが攻めてて最高というオチ)。

しかしながら、バンドの致命傷とも呼べる“ダーク離れ”“イェンス離れ”に対する懸念を微塵も感じさせない、むしろ逆にイェンス時代に学んだ“メタル魂”を幾倍にして更新=アップデイトしてくる神展開マジ嬉しすぎてハゲた、もとい泣いた。もうメロデス四天王に返り咲いたチルボドと一緒にツーマンで来日したらいいじゃない。・・・と、そう思わせてくれるのも、それもこれも全てイェンス(・ボーグレン)のお陰・・・ありがとうイェンス・・・フォーエバーイェンス!フォーエバーマトス!もう誰も(あのテイラー・スウィフトのマブダチの)イェンス・ボーグルソンには逆らうな!(だから誰やねんそれ)

現実/ヴァルケヒエッテン【CD(日本語解説書封入/歌詞対訳付)】
ソイルワーク
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Children Of Bodom 『Hexed』

Artist Children Of Bodom
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Album 『Hexed』
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Tracklist
03. Glass Houses
05. Kick In The Spleen
07. Hexed
08. Relapse (The Nature Of My Crime)
09. Say Never Look Back
10. Soon Departed
11. Knuckleduster

日本のメタル・メディア界のキングとして、近年のメタルシーンに対する懸念を述べるとすれば、それはメロデス四天王=In Flames,Children Of Bodom,Arch Enemy,Soilwork,あるいはDark Tranquillityを加えた“メロデス5強”のうちの過半数がメタル最王手レーベル=Nuclear Blastに取り込まれたのは、メタルシーンの先細り感を暗示するかのようで、言うなれば東京(=Nuclear Blast)一極集中からの地方(=アングラ)衰退からの国家(=メタル)衰退へと進んでいく懸念である。そんな、揶揄的な表現で例えるなら“メタル界の中央政府”ことNuclear Blastさんなんですが、近頃では若手バンドの青田買いからベテランバンドの囲い込みに精を出し、そして遂にはLOVEBITESANTHEMなどのジャパメタ勢にも触手を伸ばし始める始末で、依然その中央政府としての強大な権力を誇示し続けている(ちょっと前までNBっつーとネタレーベルみたいなイメージだったのが今やメタルの総本山だからね)

このChildren Of Bodomも2013年作の“白鎌”こと『Halo Of Blood』を期に、デビューからの付き合いだったSpinefarmからNuclear Blastへとレーベルを移した当事者であり、ボドムといえばSpinefarm時代の晩年は“酒鎌”こと『Blooddrunk』オリーブ鎌こと『Relentless Reckless Forever』というメタル三大駄作に名を連ねるレベルの駄作を発表し大量のファン離れを起こした。この事態にアレキシも流石にマズイと思ったのか、心機一転NBへと移籍して発表された2013年作の白鎌と2015年作の黄鎌ことI Worship Chaosは、まず白鎌ではフランスのGojira、次作の黄鎌ではMeshuggahをはじめDjentなどの10年代のメタルを象徴するエクストリーム勢やイマドキのモダン・ヘヴィネス勢からの影響を取り入れ、チルボドの“ドン底”と呼ぶべき末期状態からの脱却=復調の兆し、つまり“ファッキン・サノバビッチの精神”を取り戻しつつあった。しかし“Bodom is Back”感には程遠いものだったのも事実。これをフィンランド1のギター小僧であるアレキシ・ライホの尖りに尖がった才能を良くも悪くも好き勝手に表現してきたSpinefarm時代からNBへと移籍して丸くなった=落ち着いたとマイナスに受け取るか、それとも“酒鎌”〜“オリーブ鎌の地獄(ハデス)のようなアル中状態から抜け出すために、NBという名の“メタル本願寺”“メタルの御朱印”を頂戴してハゲキシのオデコにピタッと貼ることで安定したメタルが聴ける“保証”を得たとプラスに受け取るか、正直ちょっとしたジレンマがないと言えば嘘になる。

いわゆるメロデス四天王あるいはメロデス5強がメタルの入り口と言っても過言じゃあない、そんな現日本のメタル・メディア界のキング”の立場から、このたびチルボドNuclear Blastへ移籍して三作目、前作の黄鎌から約4年ぶり通算10作目の節目となる紫鎌ことHexedを恐る恐る聴いてみたら、幕開けを飾る“この道”ことThis Roadを再生した瞬間からラストのKnuckledusterまでボドム史上最高にキザミまくってて、かつボドム史上最高にヘヴィ=“俺たちのボドム”=“Bodom is Back”感あって泣いた。もはやキザんでない曲がないくらいにはキザミ全部。なにこの最高なやつ・・・。

個人的に、ここ最近のスラッシュ・メタルというか“キザミ”案件で印象的だったアルバムといえば、昨年初来日公演を果たした新世代メタルを代表するPower Trip『Nightmare Logic』ボドム同じくミッコ・カルミラ案件のLOVEBITESのEP『Battle Against Damnation』の2枚だ。前者のPower Tripならまだしも、(同じNB所属だからって同じカルミラ案件だからって)後者のLOVEBITESに影響されたわけではないとは思うけど、初っ端の“この道”からシャープでソリッドな“キザミ”の意識を聴き手に植え付け、いわゆる黄金のキザミ”に今作の中で最も近い#3“Glass Houses”を皮切りに、インテリハゲらしくミドルでスローなキザミセンスが光る#10“Soon Departed”など、中でもデスラッシュ風のボドム史上最高のキザミ指数を誇る#5“Kick In The Spleen”は今作のハイライトで、この曲の筆頭すべき点はキーボードソロのバッキング・リフで、もはやヤンネの残り数少ない貴重な髪の毛全部その紫鎌でキザミ尽くすんじゃねぇかくらい、国内屈指のキザミ鑑定士”である俺ィ目線で評価すると、この曲のソロパートのバッキング・リフが今作における“キザミのピーク”=“キング・オブ・キザミ”の称号を与えたい。

とにかく全編に渡って様々な切れ込み、深さ、重さで、かつ様々なバリエーション、様々な速度(BPM)でキザミまくっていて、とにかく“キザミ”に対する尋常じゃないほどの意識の高さがもう本当に凄い。なんだろう、前々作の白鎌Gojira愛に目覚めたのが功を奏したのか、(#11のMachine Headっぽい所も踏まえて)そのスラッシュ・メタルの潮流がココで最高の結末を迎えた感じ。なんだろう、過去の栄光と挫折、アレキシ自身がキンバリー・ゴスの元ダンナであること、そのキンバリー・ゴスと一緒にSinergyとかいう伝説のバンドを組んでいたこと、そしてキンバリーと別れてからの『悪夢』の日々まで、酸い思い出も甘い思い出も何もかも全て思い出しちゃった感じ。ありそうでなかったボドムのスラッシュ化バンザイ。アレキシマジ愛してる


その“ありそうでなかったボドムのスラッシュ化”の要因は、酒鎌を煽りすぎて脱退した呑んだくれローペ爺に代わってex-Northerのギタリストのダニエルを新メンとして迎え入れた影響なのか、それともメタル本願寺”から授かった“メタルの御朱印”をオデコに貼ったお陰でハゲキシが柔軟な考え方になったからかは知らんけど、少なくともボドム節全開のリード曲である#2Under Grass And Cloverのギラッギラにギラついたリフを見る限りリフメイカーとしての才能は全く衰えていないのがわかるし、紫鎌のキモである“キザミ”に関してもキザミ鑑定士の俺ィが認めざるを得ない文句なしに一級品の“キザミ”だし、正直アレキシがここまで器用にキザめるギターリストだと思ってなかったから、これ聴いてやっぱアレキシ天才だわって再確認した。しかし#2のMV見たけど流石にアレキシも老けたな・・・もはや魔女みたくなってるやん・・・。

序盤から中盤まで一気に畳みかけるような“キザミ”にナニを毛を刈り取られながら「あぁ~ニュー・ボドムのソリッド感たまんねぇ~」ってなりつつ、一方でその名の通りチルドレンボドムを底まで落としたヘヴィなミドルチューンを織り交ぜつつ、そしてその極めつけとなる表題曲の“Hexed”は近年最高のメロデスと呼んでも過言じゃあない、某首痛いおじさんになるくらいヘドバン不可避のキラーチューンには、もう泣きながら「ボドムイズバック・・・」言うたもんね。

確かに、確かに良くも悪くも「こんなの(俺の知ってる)ボドムじゃない!」と感じる人もいるかもだけど、言ってもNBに移ってからでは間違いなく1番の傑作だし、初期=全盛期の名盤と名高い青鎌緑鎌赤鎌と比べても相違ない完成度の高さ。要するに紫鎌ボドム史上最強。というか10年代の終りに、バンドとしても10作目の節目に完全復活とかカッコ良すぎて泣いた。黒歴史時代にメロデス四天王で最弱と揶揄されたボドムが再び“キング”に返り咲いた感あって泣いた。そんな“俺たちのボドム”を復活させてくれてありがとうニュークリアブラスト...フォーエバーニュークリアブラスト!もう誰もニュークリアブラストには逆らうな!

これ単独来日あったら行っちゃうヤツでしょ。やべぇ、ハゲキシがキザんでる姿チョー見てぇ・・・。ぜってーカッケーやつだ・・・。皆んなで一緒に「へックス!」ってシンガロングしたい!だからもし来日公演が実現して例の曲を演奏した際には・・・童貞メタラーはこう叫べッ!

ファッキン

サノヴァァ゛ァ゛゛ァ゛

ビィィィィィィィッチ!!


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