Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

マリカ・ハックマン

Marika Hackman 『Covers』

Artist Marika Hackman
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Cover Album 『Covers』
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Tracklist
01. You Never Wash Up After Yourself
02. Phantom Limb
03. Playground Love
04. Realiti
05. Jupiter 4
06. Pink Light
07. Between The Bars
08. Temporary Loan
09. In Undertow
10. All Night

いわゆる“カバーアルバム”とかって、個人的にスティーヴン・ウィルソンのカバーアルバムですらCDは買うだけ買って一度も聴いてないぐらいには興味ないジャンルなんだけど、UKのSSWことマリカ・ハックマンが歌うカバーだけは唯一の例外で、今回のカバーアルバムはここ数ヶ月間のステイホーム中にレコーディングされ、最新作の3rdアルバム『Any Human Friend』の共同プロデュースを担当した巨匠デイヴィッド・レンチをミキシングエンジニアに迎えている。

今作のカバーにはマリカが「しばらく夢中になって聴いていた曲」が主に選曲されており、その内約としてはレディオヘッドなどのロックやイーロン・マスクのパートナーとして知られるグライムスやアメリカの歌姫ビヨンセなどのメインストリームのポップスをはじめ、他にもフォーク/カントリーやインディ/SSWなどのバラエティに富んだ選曲となっている。その中でも、特に僕のマリカに対する信頼を俄然高める事となったのが、僕がグライムスの曲で一番大好きな“Realiti(現実)”をチョイスしている点。もしかすると、ロンドンのThe Japanese Houseも選曲されてるかと思ったらなかったw

マリカといえば、2015年作の1stアルバム『We Slept At Last』ではジャパニーズフォーク界のレジェンド=さだまさしは元より、日本のSSWを代表するトクマルシューゴ岡田拓郎もビックリの「UKの森田童子」あるいは「UKの山崎ハコ」を襲名するかのような、湿度99パーセントのジメジメとした陰気なフォークミュージックを展開したかと思えば、2017年作の2ndアルバムの『I'm Not Your Man』と2019年作の3rdアルバム『Any Human Friend』では一転して、例えるなら大学デビューを果たしたモテない喪女が学祭でニルヴァーナのコピバンして人気者になる妄想を現実化したようなオルタナティブ・ロックに鞍替えした事は今も記憶に新しい。もちろん、UKのガールズバンド=The Big Moonを携えてバンドサウンド化したアルバムも甲乙つけ難い良作だったけど、その一方で1stアルバム至上主義の僕みたいな人間がいるのも事実。
 
何を隠そう、このカバーアルバムはまるで僕のような1stアルバム至上主義者への救済措置と言っても過言じゃあない、それこそ1stアルバム時代の湿度99パーセントの全面ブルーカラーの部屋のベッドの上で独り佇む、倦怠感むき出しの陰鬱なマリカに回帰しているという嬉しい誤算で、まさに内省的な寂寥感に苛まれる「孤独こそ癒やし」みたいな彼女の信念が貫かれたような快作となっている。

失礼ながら知ってる原曲がレディヘグライムスしかないけど、むしろ原曲を知らない方が楽しめるパターンのカバーアルバムだと思った。というのも、主軸のメロディからアレンジまでほぼ全ての曲が1stアルバム時代のマリカ節に染まっているので、極端な話、原曲を知らなかったら1stアルバムの世界線に残ったSSWのマリカが書いたオリジナル曲にしか聴こえないレベル。


個人的に原曲を知ってて、なおかつリピートしまくった曲がグライムスの“Realiti(現実)”しかないから原曲と比較みたいな事はできないけど、唯一この曲で言うならモノクロームな幽玄さとダウナーにたゆたう感覚をまとったシンセとギターのアレンジでマリカ色に染めつつも、原曲というか厳密に言えば「名古屋飛ばし」をしなかった事でお馴染みのMV音源のどこかシティポップにも通じるエキセントリックでエキゾチックな世界観を崩すことなく再現しているのは見事としか言いようがない。とにかく、サイケポップ感覚でトリップできちゃう近年稀に見る名カバーだと思う。

幕開けを飾るレディへのカバーを皮切りに、岡田拓郎マニアが喜びそうなシンセのアレンジを施した#2“Phantom Limb”、ハイハットのトラッピーなビートを刻むイマドキなアレンジが光る#3“Playground Love”、ドリーミーなアレンジや歌メロを含めたメロディなど全体的に#4“Realiti(現実)”の雰囲気を踏襲した#6“Pink Light”、俄然1stアルバムの名曲“Claude's Girl”でもお馴染みのX JAPANの“Voiceless Screaming”ばりにフォーキーな#7“Between The Bars”、アコギ一本で語り弾く“宅録フォーク女子”の本領を発揮する#8“Temporary Loan”など、全体的に倦怠感丸出しの雰囲気は1stアルバムを踏襲しているけど、しかし楽曲のアレンジは洗練されたイマドキっぽさもある。

あとはやっぱり前作同様にフランク・オーシャンを手掛けた名プロデューサーのデイヴィッド・レンチを迎えているだけあって、どのカバーもアレンジが凝りに凝っていて、よくあるカバーアルバムとして聴き流すにはもったいないぐらいの強い「こだわり」とミュージシャンシップに則った「本気度」が詰まった(それは本作がセルフリリースではなくSub Popから出ている事からも明白)、もはやフルアルバムと同等の扱いを受けるべき、むしろマリカのディスコグラフィーの中でも最重要作として位置づけるべき価値ある作品だと思う。

Marika Hackman 『Any Human Friend』

Artist Marika Hackman
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Album 『Any Human Friend』
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Tracklist
01. wanderlust
04. blow
06. send my love
08. conventional ride
09. come undone
10. hold on
11. any human friend

LGBTQを公表してるミュージシャンは今では数知れず、それこそイギリスではクイーンフレディ・マーキュリーを筆頭に、エルトン・ジョン“メタルゴッド”ことロブ・ハルフォードが有名だけど、実は今回のアートワークを見て真っ先に思い出したのが、いわゆる“スウェディッシュ・デスメタルバンドのベース”こと山田孝之くん主演の『全裸監督』もといサム・スミスがインスタに投稿するや否や瞬く間に世界中でバズった例の裸体写真だった。まるでサムと同じLGBTQ“L”として彼の勇気に賛同するかの如く、この3rdアルバム『Any Human Friend』のアートワークに映し出されているのは、他ならぬ「ありのままの姿」を曝け出したマリカ・ハックマン本人の姿であった。

(エロ注意)

ここ最近の〇〇解禁の流行に乗って、危うくマリカもチクビ解禁すんじゃねぇかと思って心配したんですけど、可愛い子豚ちゃんのお陰で助かった。そんな女型の巨人もとい女露出狂もといAV(アニマルビデオ)監督もとい「ありのままの私を見てよ」と言わんばかりの出落ちが過ぎる誰得アートワークは百歩譲るとして、しかし今作のリード曲の一つである#7“hand solo”の初めは巻貝や洗濯バサミに始まり、カプチーノの模様やベッドシーツのシワ、ボーリング玉やコインランドリー、そしてアメリカ国防省ペンタゴンから最後には地球まで(その地球がオルガスムを迎えて銀河に飛び散るラストw)、目に写る全ての穴という穴が女性器a.k.a.アワビa.k.a.ヴァギナa.k.a.マンピーa.k.a.Gスポットa.k.a.クリちゃんa.k.a.大陰唇(←コラ)に見えてしまう、そのタイトル通り女性の“独り運動会”あるいは“独りオナニー”もしくは“マスターベーション”すなわち自慰行為をテーマとした超絶下ネタソングのMVを見たときは、まるでオナ禁70日を超えた俺ィの女版がマリカなんじゃねぇか説が芽生えるぐらい、性欲を持て余している欲求不満の彼女に「マリカ、あなた疲れてるのよ」とスカリーばりに心配せざるを得なかった。そもそもの話、マリカのMVってどれもクセが凄くて、中には幼虫?が大量発生してるリアルに閲覧注意のグロいMVもあるけど、今回のMVは喪女の歪んだ性癖が露わとなってしまったMVと言える。

マリカといえば、alt-Jのプロデューサーでもお馴染みのチャーリー・アンドリュー全面プロデュースの元、UKインディロック界屈指のインディレーベル=Dirty Hitからデビュー作となる『We Slept at Last』“女版SW”あるいは“UKの森田童子”やったかと思えば、一転してUSのオルタナ/グランジの震源地であるSub Popからリリースされた2017年作の2ndアルバム『I'm Not Your Man』では、今度は彼女の青春時代の思い出である(レーベルの大先輩でありグランジレジェンド)Nirvanaのコピバンとばかりに、ロンドンのガールズバンド=The Big Moonをバックバンドに携えた“マリカバンド”を結成すると、青春時代に陰キャだった喪女なら誰もが一度は妄想したであろうガルバン結成(理想はWarpaint)して文化祭で演奏する夢をリアルに実現させてしまう。その90年代の脱オルタナと脱チャーリー・アンドリューを図った3rdアルバム『Any Human Friend』は、フランク・オーシャンThe xxなどの作品を手がけたウェールズ出身のエンジニア兼プロデューサーであるデイヴィッド・レンチマリカの共同プロデュースとなっている。

アルバムの幕開けを飾る#1“wanderlust”こそ、マリカのアイデンティティであるアコースティックな“宅録系Lo-Fi女子”で、これだけでもう今作がマリカのアルバムという証拠を示す、言わばマリカ印の封蝋が押されている時点で作品の品質は最低保障されたようなもんで、そのアウトロのホラー映画にありがちなフォワワワワ〜みたいな効果音でもお馴染みの電子楽器=テルミンによる不気味なホラー描写からして、ついに伝説の1stアルバム回帰くるーーーーー?と思いきや、前作で培ったウォーペイントリスペクトな音響系のオルタナ=バンド・サウンドを堅実に引き継ぎながらも、しかし一方で過去2作にはない80年代のAOR香るシンセと軽快なカッティングギターとノイズ・ポップ的なギターがパワー・ポップ的な塩梅でせめぎ合う#2“the one”、メジャー以降のきのこ帝国・・・それこそメジャー2ndアルバム『愛のゆくえ』じゃないけど、厳密にいえばメジャー以降のきのこ帝国の理想みたいなインディロックの装いを醸し出す、インディロックならではのアコースティックなストリングスがたゆたう倦怠感の中にシューゲイズ風のギターがけたたましく鳴り響く#3“all night”を挟んで、もはやロックというよりシンセ・ポップならぬシンセ・ロック的なダンサブルなビートを刻む、それこそ80年代のディスコ・ミュージック的なダンス・ポップの側面を備えた#4“blow”と、それこそチャーチズあるいはケロケロボニトを連想させる煌びやかなシンセが舞い踊るシングルの#5“i'm not where you are”は、特に“それ”が顕著に現れている。

(出オチ感)

“それ”とは、今作を司るペット・ショップ・ボーイズなどのニューウェーブを彷彿とさせるような80年代リバイバルバリのシンセ・サウンドに他ならない。そして“それ”を象徴する最たる曲が#6“send my love”で、それこそネオ・サイケデリック風のレトロなシンセにアメリカーナの精神が息づく倦怠感むき出しの雰囲気からしてThe War On Drugsリスペクトな曲となっていて、もう笑っちゃうくらいには確信犯です。なんだろう、まず自分の中でマリカって“女版SW”と思ってて、また自分の中で“日本のSW”=岡田拓郎くんとも思ってる部分があるのだけど、実は岡田くんのソロアルバム『ノスタルジア』もほぼほぼThe War On Drugsの影響下にある作品で、つまり“日本のSW”こと岡田拓郎くんと“女版SW”ことマリカがダイレクトに繋がるアルバムと言ってしまえば、それはそれで少し強引かもしれない。とはいえ、同じThe War On Drugsをバック・グラウンドいや根幹の一つとしつつ、同じマルチプレイヤーならではのDIY精神に溢れたアコースティックなキーボード/シンセやストリングス、そして多彩な音色を奏でるギターから浮かび上がるインストゥルメント、そして同じようにしてそれらを一つの“ポップ・ミュージック”に昇華させる作曲面での器用さだったり、どっかで聴いたことあるけど思い出せない絶妙過ぎる“キャッチーさ”、そのスティーヴン・ウィルソン岡田くんに匹敵する咀嚼能力の高さ、そのバランス感覚というか調味料のさじ加減が実に「うまい」と唸ること請け合い。

ここ数年、海外で日本のシティポップがちょっとしたブームになっている・・・そんな噂を耳にする事が多くなった。実際に海外のリイシューレーベルからPacific Breeze: Japanese City Pop, AOR & Boogie 1976-1986』なる、その名のとおり日本のシティポップやAORを集めたコンピアルバムがリリースされたりと、その噂はあながち嘘じゃないかもしれない。何を隠そう、その日本のシティポップ・ブームを裏づけるような曲が#9“come undone”で、初めて聴いた時は「これもう日本のシティポップだろ」とリアルに感じたくらい、テレレレッテテーレレ↑↑みたいなポルカドットチンポコグレイばりに楽しいギターリフや“UKの森田童子”と呼ばれた人物と同じに思えないほど(例えるなら鬱状態から一転して躁状態になった)感情豊かにポップでキャッチーな歌声を披露するマリカは、もはや“UKの相対性理論”以外の例えが見つからない。極端な話、日本の女SSWがお手本にしそうな“親しみやすさ”すらある。元々、1stアルバムの時点で“UK版森田童子”みたいな陰キャのイメージだったし、それこそX JAPAN“Voiceless Screaming”ばりの昭和のジャパニーズ・フォークと共振する、いわゆる“日本要素”は元からあったけど、それが今度は岡田くん的な日本語インディロックや海外でブームになってる日本のシティポップやAORに精通するとなると、そろそろ噂や冗談じゃ済まなくなってくる。

日本=Japanese要素といえば、いわゆる“Japanese”の名を冠したJapanese一族のアーティストは多々いるけれど、近年のトレンドなのはUSのJapanese Breakfast、そして2019年のSSWシーンに登場するや否や話題沸騰なのが、UKはバッキンガムシャー出身のアンバー・ベインによるThe Japanese Houseだ(グランジ界のJapanese Voyeursを忘れるな・・・!)。彼女の音楽はイマドキのエレクトロやGrouperなどのアンビエント・ポップとアコースティックな要素がクロスした内省的なシンセ・ポップという事で・・・妙に変だな〜って。だっておかしいじゃない、Dirty Hitの秘蔵っ子であるアンバー・ベインThe Japanese Houseの1stアルバムGood at Fallingの曲に“Marika is Sleeping(マリカは寝ている)”と意味深なタイトルを付けたかと思えば、その私信に答えるように今度はDirty Hitを古巣とするマリカThe Japanese Houseみたいなシンセ・ポップ化するんだもん。うわ〜ヤダな〜怖いなぁ〜って、そのまま恐る恐るアルバムを聴き続けてみたんだ・・・そしたら私ねぇ、気づいちゃったんですよ。

「あぁ、この子マリカの彼氏だって」
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このマリカアンバーの内密な関係の2人に共通するのは“テラスハウス芸人”ことチャーチズという・・・「やっぱローレン・メイベリーって神だわ」って話はさて置き、マリカってヘタしたらThe Japanese Houseよりもジャパニーズ感あんじゃねぇかぐらいの、前作で一度バンドを経験してワンクッション置いた意味がわかるような内容で、正直前作を聴いた時はこのまま1stアルバムのイメージからかけ離れていくのかなと思ってたら、もしろ意表を突くかのようにド真ん中のコースにグッと急接近してきた感じ。確かに、確かに“独り運動会”のMVで初めて彼女の存在を知った人には「なんだこの欲求不満の淫乱SSW・・・」とセルフ風評被害みたいな誤解を与えかねないけど、陰鬱な1stアルバムとは対極にある新規にも取っつきやすい“ポップさ”をフィーチャーした、少なくとも前作を凌ぐ完成度だと思う。しかし1stアルバムと2ndアルバムでオルタナのWarpaint(長女)愛を示したかと思えば、この3rdアルバムでシンセ・ポップのチャーチズ(三女)やインディトロニカのPhantogram(次女)という、自分の中にある“三姉妹”に繋がったのは流石にょっと面白過ぎるし、もはやマリカ読者説あるわ(ネーよ)。

このアルバム、“日本のSW”“女版SW”が某アーティストを経由して繋がったり、昨今の「日本のシティポップブーム」への回答だったり、そして某Japaneseへの私信だったりと(#1の1st回帰はアンバーへの恋文だった説エモい)、色々とツッコミどころが満載過ぎるただの傑作なんだけど、そんな今作を“真の傑作”たらしめている存在って実は#10“hold on”なんじゃねぇかって。この曲の慈悲深いストリングスと共鳴するマリカ本来の内省的な歌声、そのトリップ・ホップ的な音と言葉尻に低域を際立たせるマリカの歌い回しがまんまカナダのElsianeリスペクトで、これもThe War On Drugsと同じくらい確信犯過ぎる案件で、同時にマリカやっぱ信頼できるなって。いや、ホントにこのアルバムもう実質俺ィ≒Zapaneseへの私信アルバムだろってくらい、もしやマリカ・・・俺ィの性癖知ってる説。もうジャケのデカパン女型の巨人のマリカに襲われる悪夢見そうでホント怖い・・・。冗談じゃなしに、彼氏もといアンバー・ベインみたくイマドキのトレンドを狙っていくんじゃなくて、(明確にポップ化していく流れの中でも)あくまでElsianeみたいな知る人ぞ知るアンダーグラウンドなヒネくれた陰キャ精神を決して忘れちゃいないとこが、僕のマリカに対する絶対の信頼感、わかってる感に繋がってるんだよね。とにかく、抑えるとこをしっかりと抑えてて最強。

ちょっと待って、今年の9月にThe Japanese Houseが初来日公演を実現させたって事は・・・これもうマリカアンバーの日本で共同生活あるぞこれ(ネーよ)。でも彼氏が来日したんだからマリカも来るしかないな。もちろん、前座は岡田くんでw

Any Human Friend
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Marika Hackman 『I'm Not Your Man』

Artist Marika Hackman
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Album 『I'm Not Your Man』
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Tracklist

02. Good Intentions
03. Gina's World
05. Round We Go
06. Violet
07. Cigarette
08. Time's Been Reckless
09. Apple Tree
10. So Long
11. Eastbound Train
12. Blahblahblah
13. I'd Rather Be With Them
14. AM
15. Majesty

new_スクリーンショット (34)「こんばんは、稲川VR淳二です」

new_スクリーンショット (34)「今宵は、私が体験した音楽にまつわる身の毛もよだつ恐怖話について語りたいと思います」

new_スクリーンショット (34)「実は私ねぇ、子供の頃からフォークソングが大好きでしてね、ちなみに最近のイチオシはイギリスはハンプシャー出身のマリカ・ハックマンというシンガーソングライターで、彼女が2015年に発表した1stアルバム『We Slept at Last』が私の怪談朗読用BGMに打ってつけの、それこそ「コン コン コン コン 釘を刺す」といった感じの地獄少女的なインディフォークで、そのアルバムは今でも愛聴盤なんですよねぇ」

new_スクリーンショット (34)「そんでもって、そのマリカ・ハックマンが約二年ぶりに新作を発表したっていうんでね、さっそく音源を再生してみたら、いきなりインディロックみたいな音が聴こえてきて、(妙に変だなぁ?)って。だっておかしいじゃない、マリカと言ったらアコギを片手に語り弾きするスタイルなのに、まるでアンプに通電された電子的なギターが聴こえてくるんだもん」

new_スクリーンショット (34)「いやいや、そんなはずないと思って、改めて目を閉じて音に集中して聴いてみたんですよ。するとねぇ、遂にはマリカの肩の辺りに4人の女の背後霊みたいなのがスッと浮かんできて、(うわぁ~~~嫌だなぁ~怖いなぁ~って)、全身に鳥肌がグワ~~~~!!って立った瞬間...私ねぇ、気づいちゃったんですよ」

「あぁ、これThe Big Moonだって」
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リアルにこんな感じで、一曲目の”Boyfriend”からオルタナ/インディロック然としたギターが聴こえてきて、「聴く音源間違えたか?」と思ったら、直後にどう見てもマリカの「あの声」にしか聴こえない倦怠感むき出しの歌声が聴こえてきて、これにはマリカだけにマジカってなった(えっ)。それもそのはず、今作の『I'm Not Your Man』は、マリカがティーンエージャーの頃に夢中になっていた伝説のバンドNirvanaに対する懐かしい「思ひ出」と強い「憧れ」を実現させるために、いま最も注目されているロンドンのガールズバンドことThe Big Moonをバックバンドに迎えて制作された、過去最高にマリカのパーソナルな部分が反映されたアルバムとなっている。 

イギリスはハンプシャー出身、グレーター・ロンドンを拠点に活動する1992年生まれのマリカ・ハックマンは、カバーアルバムや複数のEPをリリースした後、22歳の時にalt-Jを手掛けたチャーリー・アンドリューをプロデューサーに起用した1stフルアルバムのWe Slept at LastDirty Hitから発表すると、その卓越したソングライティングと例えるなら「女版スティーヴン・ウィルソン」の如しマルチプレイヤーとしての才能が一部のSSW界隈で話題を呼んだ。それから約18ヶ月の間に、マリカは新しいマネージャー探しと大手ユニバーサル傘下のAMF Recordsに移籍して、身の回りの全てを一新して24歳になったマリカ・ハックマンは、再びチャーリー・アンドリューをプロデューサーに迎え、私はあなたのモノじゃない的な意味深なタイトルを掲げた2作目の『I'm Not Your Man』で僕たちに一体ナニを訴えかけるのだろう。 

そもそも、マリカ本人がティーン時代の非モテ喪女に扮する「ポップ」なアートワークからして、「足フェチ」ならジャケ買い必須だった前作のフェティッシュかつダークなアートワークをはじめ、その内容も「UKの森田童子かよ」あるいは「山崎ハコの呪い かよ」ってツッコミ不可避な、アコギ一本で語り弾くような陰鬱かつアンチ・ポップ的な本来の作風とはかけ離れたものとなっている。今作の大きな特徴であるThe Big Moonとの邂逅、すなわち"バンド・サウンド "とマリカの邂逅、実はその伏線というのは既に前作の"Open Wide "という、アコギではなくエレクトリックなギターをフィーチャーしたWarpaint顔負けの楽曲にあって、端的な話、今作はそのバンド・サウンド的な方向性を推し進めたスタイルで、前作の時に「女版スティーヴン・ウィルソン」やら「Storm Corrosion」やら「Trespassers William」やらの名前を出して、それこそThe Cure『Faith』を神と拝める2:54Esben and the WitchをはじめとしたUKロックとの親和性の高さに言及したとおり、もはや完全に俺得な音楽性になっていた。そしてもう一つ、今作を語る上で欠かせないポイントがあって、それは今作がアメリカではSub Pop Recordsからリリースされている所で、ご存じSub PopといえばNirvanaの歴史的名盤『Nevermind』をはじめ、今はなきクリス・コーネルSoundgardenらと共に90年代のグランジ・ムーヴメントを作り出した一番の立役者である。

実はというと、マリカはハタチの頃に『Free Covers EP』なる、その名の通りカバーアルバムをリリースしていて、それこそ、そのカバーアルバムが本作における二大キーワードとなる「Nirvana」「Warpaint」、それらと今のマリカを繋ぎ合わせる 「原点」と呼べるものであり、その中でもニルヴァーナからの強いインフルエンスは、2曲目のリフ回しからボーカル・メロディをはじめ、それこそニルヴァーナ屈指の名曲"Come As You Are"のカバー曲かと思うほど、特にバックのサウンド面から顕著に現れており、思えば1曲目の"Boyfriend"のサビのバッキングは名曲"Smells Like Teen Spirit"を彷彿させるし、3曲目の"Gina's World"に至ってはWarpaintのEP『Exquisite Corpse』リスペクトなリズム&グルーブ感溢れるドリーム・ポップで、今作のコンセプトとなる「原点回帰」はアルバムの序盤から惜しげもなく発揮されている。

陰鬱なシンガー・ソングライターから一転して、バンド体制という自らがやってきたことへの根底を揺るがしかねない大きな変化が起こって、一体どうなるもんかと思いきや、そこはもともとオルタナ/インディ・フォークとしての側面を持ち合わせているだけあって、バックのThe Big Moonが奏でるオルタナティブなバンドサウンドと自然に共振する部分は思いのほか沢山あって、事実マリカの憂鬱な歌声はこの手のダウナー系のグランジ/オルタナ系のサウンドと驚くほど違和感なくマッチする。もはや、馴染みすぎて逆にこれまでフォークソング歌ってた人間には思えなくて、にこやかな顔で互いに笑顔を振りまきながら、仲良くセッションしている様子が浮かんでくるような息の合ったファミニンなグルーヴ感は、既に本当に実在する五人組のロックバンドのようなライブ感を放っている。つまり、マリカの音楽的な根っこの部分は何一つ変わっちゃあいないし、紛れもなくマリカにしかなし得ない「呪いの音楽」である。そして人々は、このアルバムをレディオヘッドとウォーペイントの間にある音楽と呼んだ。

その「不変的」な部分、それは前作でも垣間見せたスティーヴン・ウィルソンとも共振する、いわゆるPost-Progressiveなセンスおよび叙情的な雰囲気は、3曲目の”Gina's World”を皮切りに、今作を象徴するかのようなインディ・ポップ然とした4曲目の”My Lover Cindy”を間に挟んで、山崎ハコ系の5曲目の”Round We Go”や森田童子系の”Violet”、再び”らしさ”に溢れた”Cigarette”というインディフォークナンバーを間に挟んで、そして今作のハイライトを飾る、ウォーペイント最大のクソ曲こと”Disco//Very”リスペクトかと思いきや中盤でPost-化する8曲目の”Time's Been Reckless”や初期ウォーペイント然とした10曲目の”So Long”などの、決して一筋縄ではいかない曲構成はまさにこれぞマリカ節といった感じだし、むしろ今回バンドサウンド中心になったことで、よりそのPost-感というのが立体的に表面化し、結果的に音の強弱、いわゆる静と動のコントラストというマリカの武器に更なる磨きがかかっている。同時に、ザ・ビッグ・ムーンを交えたユルくて賑やかなコーラスワーク、こだわり抜かれたミニマルなフレーズ、前作でも垣間見せたマルチミュージシャンとして更に洗練された多彩なアレンジ、そしてPost-系ならではの楽曲構成力とダウンテンポからアップテンポまで何でもござれな底知れぬソングライティング、それらマリカの無理難題にも近いハイスペックな要求に対して、このザ・ビッグ・ムーンは「バックバンド」だからと言って一切の手抜きをすることなく、持ちうる力の100%いや120%の力で答えている。つまり、今作はマリカとザ・ビッグ・ムーン、双方の強い信頼関係により成り立っている作品とも言える。

確かに、前作で獲得した暗鬱フォークフアンからは「脱フォーク化」したと非難轟々かもしれないが、しかしマリカは今作に対して「これもまた私の脳の一部」であると語っており、僕はこの言葉を聞いて「これぞオルタナティブアーティストならではの考え方だ」と彼女を賞賛するしかなかった。それはマリカが過去最高に感情を表に爆発させる実質ラストの”I'd Rather Be With Them”という曲一つ取ってみても、それこそ「私はあなたのモノじゃない」というタイトルの意味が全てを物語っていて、実際にこれ聴いちゃったらもう前作のが良かったなんて軽々しく言えないです。むしろ逆に、チャーリー・アンドリューという名高いプロデューサーと今話題のガールズバンドがバックに付いてて傑作以外のモノを作るほうが難しいというか、正直こんなに贅沢なアルバムってなかなかお目にかかれないと思う。こう言っちゃあなんだけど、今年リリースされたザ・ビッグ・ムーンの1stアルバムより良いし、正直今のウォーペイントよりよっぽどウォーペイントらしいことしてます。

とにかく、その二組の偉大なる「裏方」の協力によって、マリカの「ミュージシャンとしての才能」は元より、「フロントウーマン」としての才能が花開いたのも事実で、つまりこのアルバムには「マリカ・ハックマン」の名をここ日本の(ホステス界隈を中心とした)音楽リスナーに知らしめるには十分過ぎる、マリカの「オルタナティブ」な魅力と質の高い楽曲とユニークなアイデアに満ち溢れた作品だ。しっかし、自分自身なんでこんなにマリカ・ハックマンの歌声に魅了されるんだろうと疑問に思って、もしやと思ってマリカの誕生日を調べてみたらやっぱり「2月生まれ」でマリカってなった(えっ)

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