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墓っ地・ざ・ろっく!

フィンランド

Amorphis - Halo

Artist Amorphis
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Album 『Halo』
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Tracklist
01. Northwards
04. Windmane
05. A New Land
06. When The Gods Came
07. Seven Roads Come Together
08. War
09. Halo
10. The Wolf
11. My Name Is Night

デビューした90年代から、かれこれ30年の年月が経過した今なお作品のクオリティを(好みの差はあれど)一定数まで維持し続けているメタルバンドって実は希少で、そんなAmorphisの前作から約4年ぶりとなる本作の14thアルバム『Halo』は、例えるなら巨匠イェンス・ボグレンとの邂逅を果たした前々作の12thアルバム『Under The Red Cloud』が世紀末映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の“死の王”すなわち首領であるイモータン・ジョーの怒りと憎悪のマチズモを司どる作品ならば、同映画におけるシャーリーズ・セロン演じるフュリオサ大隊長とイモータン・ジョーの所有物である5人の“ワイブズ”がメタする女性的なフェミニズムおよび生命のシンボルを司どる叙情的な作品が前作の13thアルバム『Queen Of Time』であり、その「男(長)と女(オサ)」のように対となる近作を象徴する本作のリード曲の#3“The Moon”は、前々作『Under The Red Cloud』の“死の王”から授かりしポスト・ヘヴィネスさながらのグルーヴィなリフ、前作『Queen Of Time』の“蜂の女王”から授かりしフェミニズムのシンフォニー、そして00年代の彼らを代表する9thアルバム『Skyforger』を源流とするフォークメタル然としたノスタルジックかつメランコリックなメロディ、それら代表作の叡智が集結した名曲となっている。


本作を司るリード曲のみならず、バンドの看板を背負ってきたボーカルのトミによるデスボイス主体のデスメタルパートとクリーンボイス主体の叙情的なフォークロックパートを交錯させながら、メロトロンを駆使してプログレッシブかつシンフォニックに展開する高い構成力までも俄然『Skyforger』を連想させる#1“Northwards”を皮切りに、かのクリエイターMetastazisが手がけたペルシャ絨毯に代表されるオリエンタルラグを模した『Under The Red Cloud』におけるエスニックなオリエンタリズム/トライバリズムを継承した#2“On The Dark Waters”や#4“Windmane”、そして#5“A New Land”、一方で対となる『Queen Of Time』における「蝶のように舞い、蜂のように刺す」かの如し妖艶なフェミニズムを継承した#6“When The Gods Came”や表題曲の#9“Halo”、そして本作におけるフィリオサ役を担うスウェーデンのプログレバンドことPaatosPetronella Nettermalmをゲストに迎えた“My Name Is Night”、そして名盤『Skyforger』屈指の名曲“Sky Is Mine”のオルタネイトかつ超絶エピックなリフを継承したガッツポーズ不可避の#7“Seven Roads Come Together”は本作のハイライトとなっており、とにかく本作は前作と前々作の延長線上の流れのままスムースに名盤『Skyforger』のフォーク/デスメタル路線と共振させている。ただし、その『Skyforger』という目覚めを経て『Under The Red Cloud』で確立した黄金のキザミ”の面影が一切見受けられなかったのは唯一残念な点。

Havukruunu 『Uinuos Syömein Sota』

Artist Havukruunu
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Album 『Uinuos Syömein Sota』
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Tracklist
01. Uinuos Syömein Sota
02. Kunnes Varjot Saa
03. Ja Viimein On Yö
04. Pohjolan Tytär
05. Kuin Öinen Meri
06. Jumalten Hämär
07. Vähiin Päivät Käy
08. Tähti-Yö Ja Hevoiset

「ここは嵐吹き荒れる大海原の中を突き進む船の上。北欧フィンランドから出発したヴァルハラの民を乗せた船団Havukruunuは、毎夜の如く船上で宴を開いてはヤギの乳で作った酒を浴びるように飲み、イノシシの肉を飲むようにして貪り、そしてヴァイキング流の誉れとばかりに、大蛇ヨルムンガンドが化けたような荒れ狂う荒波に抗わんと怒号の如し歌声でヴァルハラの民に伝わる船歌を大海原に轟かせる。その船上の戦いという名の航海を乗り越え、標的の魔物が潜むとされる敵陣に上陸するや否や目の色を変え、漢と漢の激しい乳繰り合い、もとい激しいぶつかり合いを合図する狼煙とともに血肉湧き立つ戦いの火蓋が切って落とされる。二人の兄弟戦士が先陣を切ってヴァイキングの魂を宿した獣性むき出しの勇壮な咆哮と嵐の如く唸りを上げるトレモロ・リフの連携技で敵陣地に切り込めば、一人のイケメン戦士は北欧全土に言い伝えとして残る伝説のギターヒーロー“インギー”から継承したネオクラシカルなソロワークで味方をエピックに鼓舞するバフを与え、一人の戦士はヴァイキングに古くから伝わる伝説の聖剣ヴァルハラソードを片手にスラッシュ・メタルばりの切れ味鋭いキザミで魔物を真っ二つに一刀両断、一人の巨漢の戦士は粗暴なブラストビートで敵を容赦なく無慈悲に叩き潰す、ある一人は未だ船舶する船の上でアコギを片手にヴァイキングに伝わる民謡的なフォークソングを陽気に歌い続け大事な戦闘に乗り遅れるうっかりさん戦士、それら一人一人の個性豊かな雄々しくも勇敢なヴァイキンガーを束ねるキャプテンのラグナルの指示で戦況に応じて隊列を変化させながら陣形を構築し、敵軍をなし崩しに一網打尽にしていく。長い死闘の末、ついにラスボスの魔物を倒したヴァイキングは興奮冷めやらぬ雄叫びとともに勝鬨をあげ、いざ宴の準備に取りかかろうとしたその時、どこからともなく聞こえてくる幽玄でスピリチュアルな音色のアンビエント効果並の睡魔に襲われた船員一同は、2度と目覚める事のない深い眠りにつく。そう、彼らはヴァイキングの魂(ソウル)=エインヘリャルが復活した「死せる戦士たち」だったのだ。」

次回『ダークソウル4』、ご期待ください。

Oranssi Pazuzu 『Mestarin kynsi』

Artist Oranssi Pazuzu
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Album 『Mestarin kynsi』

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Tracklist
1. Ilmestys
2. Tyhjyyden sakramentti
4. Oikeamielisten sali
5. Kuulen ääniä maan alta
6. Taivaan portti

オレンジパズズことフィンランド出身のOranssi Pazuzuって、まずこの手のアヴァンギャルドなブラックメタルって隣国ノルウェーの専売特許なイメージあるけど、しかしこのOranssi Pazuzuも2009年にデビューして以来、コンスタントにアルバムを発表するたびにエクストリーム・メタルの常識を覆してきた気鋭バンドの一つだ。そんなパズズは、念願のメタル最大手ニュークリア・ブラストに移籍して約4年ぶりに発表された5thアルバム『Mestarin kynsi』において、長きにわたるブラックメタル史においても前人未到の“シン・ブラックメタル”の極地に到達している。これはでのアルバムとは明らかに一線を画す“黒い公園”を耳にした瞬間、僕はある一つの仮説にたどり着いた。それが、それこそが「パズズ=JK説」だった。


冒頭の#1“Ilmestys”や#2“Tyhjyyden sakramentti”は、お化け屋敷のSEみたいに不気味な不協和音を執拗に繰り返しながら、日常が足元から崩れ落ちていく恐怖を演出する。問題は次の#3“Uusi teknokratia”に関する話で、“黒い公園”の番人である道化がアヒャヒャヒャヒャ オヒョヒョヒョヒョヒョという不敵な笑みを浮かべながら人々に不安と恐怖を煽るような不規則なメロディとDjent以降の洗練されたモダンなリズムをもって混沌の禍に引きずり込まれたかと思えば、急な転調から今度は女の人の声で「ナ~ナ~ナ~フフフ~」みたいな萌え声が聴こえてきて、その瞬間何ィ!?公園に迷い込んだ!?ここはどこだァ!?赤い公園・・・?いや、ここはまさか・・・夜中の4:44分になると赤い公園が“真っ黒”に染まる都市伝説で有名なあの黒い公園!?ってなった。個人の勝手なイメージで例えるなら、#StayHomeからの休校でお家の子供部屋に引きこもり過ぎて頭がパズって波動に目覚めたタダヒトリの“ロンリーガール”ことJKパズズが真夜中の黒い公園で暗黒舞踏ばりのコンテンポラリーなダンスを舞い踊り黒い結界を張り巡らせている、そんな自粛期間中のJKの闇が暴発したイメージ。

その瞬間にフラッシュバックしたのは、まさしく日本のガールズバンド赤い公園に対する黒い公園と言わんばかりの、それこそメジャーデビューして佐藤千明が脱退した今現在にはないインディーズ時代の赤い公園におけるランドリーで漂白を『透明なのか黒なのか』という通称黒盤”が醸し出す天性のアヴァンギャリズムに他ならなかった。遂にパズズはアヴァンギャルドの概念を超越した先にあるイマドキのJKならではのコンテンポラリーなkawaiiセンスを会得してしまった感あって、これはもうブラックメタルの皮をかぶったエクストリーム・ガールズロックだと思ったね。北欧の毛むくじゃらのオッサンメタラーがJKのコスプレしてメタル演奏してる姿を想像したら萌えたし、ここまで萌え萌えキュンキュンしたブラックメタルってAlcest以来かも。


少し話は変わるけど、2015年以降のアンダーグラウンドのシーンで、マイアミのラッパーデンゼル・カリーを中心とする“トラップ・メタル”なるジャンルが創成期を迎えていたのを読者はご存知だろうか?2020年の初めにデンゼル・カリーが発表した新作のDJミックスでフィーチャリングしているGhostemaneZillaKamiこそトラップ・メタルシーンの第一人者と呼ばれる人物である。当然、2018年の年末にデンゼル・カリーはメタルだ何だと冗談交じりに書いてた頃は、アングラシーンでそんな新興ジャンルが産声を上げていたなんて全く知らなかったし、むしろこの“トラップ・メタル”という名の“新世代ニューメタル”“基準”みたいなカリーの新作で初めて知ったぐらいの勢いなんだけど、逆に言えば2018年の時点で既にデンゼル・カリーはメタルという“伏線”を立てて、間接的に“トラップ・メタル”の存在を潜在的かつ無意識のうちに認知していたと考えたら、やっぱ音楽って“引力”で成り立ってるんだなって。というか、ZillaKamiカリーの名盤『タブー』にも参加してるし、Ghostemaneに至ってはカリーBMTHも出演した昨年のロラパルーザのメインステージでパフォーマンスしてる事を今さら気づく奴←ウケる。

何を隠そう、本作がこれまでの作品と一線を画す最大の要因となる5曲目の“Kuulen ääniä maan alta”では、それこそ“トラップ・メタル”じみたシン・ブラストビートやバグったグリッチ/ノイズなどのイマドキのトレンドを応用した、それこそ“ブラック・トラップ(EDM)”と称すべき全く新しい異形のジャンルを生み出してしまっている。しかし20年代に突入したばかりのこのタイミングで、2015年以降のアングラシーンにおけるトレンドの一つだったデンゼル・カリーをボスとするGhostemane(舎弟1号)ZillaKami(舎弟2号)らの“トラップ・メタル”と点と点がバッチバチに繋がって一本の線になる完全究極体伏線回収案件は流石にエグいて、エグ過ぎるて。

正直、この辺のデンゼル・カリーが取り仕切るトラップ・メタル界隈の話題はいつか書きたいと前々から思ってたけど、その初出しがJKパズズになるなんて想像もしてなかった。もちろん、これまでも広義の意味でEDMと呼べる前衛的な側面は決してないわけではなかったし、そのわずかなEDM成分をイマドキのJK的な解釈をもって20年代仕様にアップデイトした結果、その回答が今作の“Kuulen ääniä maan alta”における“ブラック・トラップ(EDM)”だと考えたら、今回の件は何ら意外性のない話かもしれない。なんだろう、ブラックメタルからオルタナティブに方向転換したバンドといえば同じ北欧ノルウェーのUlverが有名だけど、今作の中でJKパズズがやってる事って、まさに偉大なる先人のUlverが辿ってきた音楽遍歴の進化という名の突然変異と全く同じ音楽進化論なんですね。もはや人類における進化の歴史、その決定的瞬間を目の当たりにしちゃった気がする。

恐らく誰もが予想していたように、遂にニュークリア・ブラストに買われて音が格段にブラッシュアップされて“色気”を出してきたのは紛れもない事実だけど、結果的にこれが功を奏している。過去作で培ってきた、まるで醜形恐怖症患者の精神状態を反映したかのような不快感を催す邪悪な奇音をベースメイクとしながらも、70年代のスペース・サイケ/プログレ成分だったり、Djent以降のモダンなリズムだったり、晴れてレーベルメイトとなったポスト・ブラック界のレジェンドAlcestのポスト成分だったり、(業界最大手ニュークリア・ブラストだからといって極端にメインストリーム=売れ線になるのではなく)あくまでも日本のガールズバンドとも共鳴する“ポップなアヴァンギャルド”が構築する黒い公園の世界観(コンセプト)だったり、そして2010年代後半のアングラシーンで産声をあげたJKに大人気のトラップ・メタルというイマドキのトレンドだったり、とにかくあらゆる面で洗練化(オーバーグラウンド化)が進んだ結果、日本の某ガールズバンドみたいに女装化もといミニスカJKに化けた大傑作ですこれ。まさにブラック・メタルというジャンルをNEXTステージへとブチ上げた、それこそポスト・コロナ時代のブラックメタルのあり方、その特例であり、もはや今年だけじゃなく20年代を象徴する歴史的名盤です。

とにかく感心したのは、これまではアンダーグランド・メタルの重鎮的なイメージの強かったパズズニュークリア・ブラスト入りに伴う「オーバーグランド化計画」で、まず過去作比でも輪郭のハッキリした泣きのメロディの増加は言わずもがな、“メタル”の醍醐味の一つである転調を駆使した曲構成に対する色気、ブラックメタル以前にメタルバンドとしての“リズム感”に対するモダンな色気、Ulverの正統後継者を襲名するかのようなアングラシーンのトレンド先取りに対する色気、これらの様々な“色気”は、これ以上増え過ぎてもダメだし、これ以上少な過ぎてもダメだし、それぞれの色気というか塩梅のさじ加減が絶の妙。そして何よりも、あくまで過去作と比較した上で“ポップ化”を推進するその問いに対する答えが、まさかの“ジャパニーズ・ガールズバンドのインディーズ時代”という発想がまず前衛的過ぎる変態もとい天才(仮に変態だとしても、変態という名の紳士だよ)。これを時代の突然変異とも呼べる、新時代の幕開けを宣言する2020年にやってのけるしたたかな頭の良さも推せる。ちなみに、バンド名にあるフィンランド語の“Oranssi”って、英語だとOrangeを意味していて、まさかのここでもオレンジに繋がってくるのちょっとホラーだなって。

ある種の映画『未知との遭遇』みたいな体験だったから、未だに自分でも何書いてんのか分かんねぇ。でもちょっと泣けたのは、個人的なフィンランドの推しバンドだった、例の「深いところでオルタナティブ・ヘヴィを舐めている」アルバムのゴミみたいな音質をディスったせいで自然消滅=実質解散したGhost Brigadeへのレクイエムとしても解釈可能な点で、少なからず言えるのは、これでパズズがフィンランド最高のメタルバンドになったということ。もちろん、ここ最近のニュークリア・ブラストの囲い込みあるいは青田買いもとい商売では最高レベルの仕事です。やっぱニュークリア・ブラストってサイコーーーーーー!!あとやっぱJKってサイコーーーーーーー!!

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Children Of Bodom 『Hexed』

Artist Children Of Bodom
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Album 『Hexed』
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Tracklist
03. Glass Houses
05. Kick In The Spleen
07. Hexed
08. Relapse (The Nature Of My Crime)
09. Say Never Look Back
10. Soon Departed
11. Knuckleduster

日本のメタル・メディア界のキングとして、近年のメタルシーンに対する懸念を述べるとすれば、それはメロデス四天王=In Flames,Children Of Bodom,Arch Enemy,Soilwork,あるいはDark Tranquillityを加えた“メロデス5強”のうちの過半数がメタル最王手レーベル=Nuclear Blastに取り込まれたのは、メタルシーンの先細り感を暗示するかのようで、言うなれば東京(=Nuclear Blast)一極集中からの地方(=アングラ)衰退からの国家(=メタル)衰退へと進んでいく懸念である。そんな、揶揄的な表現で例えるなら“メタル界の中央政府”ことNuclear Blastさんなんですが、近頃では若手バンドの青田買いからベテランバンドの囲い込みに精を出し、そして遂にはLOVEBITESANTHEMなどのジャパメタ勢にも触手を伸ばし始める始末で、依然その中央政府としての強大な権力を誇示し続けている(ちょっと前までNBっつーとネタレーベルみたいなイメージだったのが今やメタルの総本山だからね)

このChildren Of Bodomも2013年作の“白鎌”こと『Halo Of Blood』を期に、デビューからの付き合いだったSpinefarmからNuclear Blastへとレーベルを移した当事者であり、ボドムといえばSpinefarm時代の晩年は“酒鎌”こと『Blooddrunk』オリーブ鎌こと『Relentless Reckless Forever』というメタル三大駄作に名を連ねるレベルの駄作を発表し大量のファン離れを起こした。この事態にアレキシも流石にマズイと思ったのか、心機一転NBへと移籍して発表された2013年作の白鎌と2015年作の黄鎌ことI Worship Chaosは、まず白鎌ではフランスのGojira、次作の黄鎌ではMeshuggahをはじめDjentなどの10年代のメタルを象徴するエクストリーム勢やイマドキのモダン・ヘヴィネス勢からの影響を取り入れ、チルボドの“ドン底”と呼ぶべき末期状態からの脱却=復調の兆し、つまり“ファッキン・サノバビッチの精神”を取り戻しつつあった。しかし“Bodom is Back”感には程遠いものだったのも事実。これをフィンランド1のギター小僧であるアレキシ・ライホの尖りに尖がった才能を良くも悪くも好き勝手に表現してきたSpinefarm時代からNBへと移籍して丸くなった=落ち着いたとマイナスに受け取るか、それとも“酒鎌”〜“オリーブ鎌の地獄(ハデス)のようなアル中状態から抜け出すために、NBという名の“メタル本願寺”“メタルの御朱印”を頂戴してハゲキシのオデコにピタッと貼ることで安定したメタルが聴ける“保証”を得たとプラスに受け取るか、正直ちょっとしたジレンマがないと言えば嘘になる。

いわゆるメロデス四天王あるいはメロデス5強がメタルの入り口と言っても過言じゃあない、そんな現日本のメタル・メディア界のキング”の立場から、このたびチルボドNuclear Blastへ移籍して三作目、前作の黄鎌から約4年ぶり通算10作目の節目となる紫鎌ことHexedを恐る恐る聴いてみたら、幕開けを飾る“この道”ことThis Roadを再生した瞬間からラストのKnuckledusterまでボドム史上最高にキザミまくってて、かつボドム史上最高にヘヴィ=“俺たちのボドム”=“Bodom is Back”感あって泣いた。もはやキザんでない曲がないくらいにはキザミ全部。なにこの最高なやつ・・・。

個人的に、ここ最近のスラッシュ・メタルというか“キザミ”案件で印象的だったアルバムといえば、昨年初来日公演を果たした新世代メタルを代表するPower Trip『Nightmare Logic』ボドム同じくミッコ・カルミラ案件のLOVEBITESのEP『Battle Against Damnation』の2枚だ。前者のPower Tripならまだしも、(同じNB所属だからって同じカルミラ案件だからって)後者のLOVEBITESに影響されたわけではないとは思うけど、初っ端の“この道”からシャープでソリッドな“キザミ”の意識を聴き手に植え付け、いわゆる黄金のキザミ”に今作の中で最も近い#3“Glass Houses”を皮切りに、インテリハゲらしくミドルでスローなキザミセンスが光る#10“Soon Departed”など、中でもデスラッシュ風のボドム史上最高のキザミ指数を誇る#5“Kick In The Spleen”は今作のハイライトで、この曲の筆頭すべき点はキーボードソロのバッキング・リフで、もはやヤンネの残り数少ない貴重な髪の毛全部その紫鎌でキザミ尽くすんじゃねぇかくらい、国内屈指のキザミ鑑定士”である俺ィ目線で評価すると、この曲のソロパートのバッキング・リフが今作における“キザミのピーク”=“キング・オブ・キザミ”の称号を与えたい。

とにかく全編に渡って様々な切れ込み、深さ、重さで、かつ様々なバリエーション、様々な速度(BPM)でキザミまくっていて、とにかく“キザミ”に対する尋常じゃないほどの意識の高さがもう本当に凄い。なんだろう、前々作の白鎌Gojira愛に目覚めたのが功を奏したのか、(#11のMachine Headっぽい所も踏まえて)そのスラッシュ・メタルの潮流がココで最高の結末を迎えた感じ。なんだろう、過去の栄光と挫折、アレキシ自身がキンバリー・ゴスの元ダンナであること、そのキンバリー・ゴスと一緒にSinergyとかいう伝説のバンドを組んでいたこと、そしてキンバリーと別れてからの『悪夢』の日々まで、酸い思い出も甘い思い出も何もかも全て思い出しちゃった感じ。ありそうでなかったボドムのスラッシュ化バンザイ。アレキシマジ愛してる


その“ありそうでなかったボドムのスラッシュ化”の要因は、酒鎌を煽りすぎて脱退した呑んだくれローペ爺に代わってex-Northerのギタリストのダニエルを新メンとして迎え入れた影響なのか、それともメタル本願寺”から授かった“メタルの御朱印”をオデコに貼ったお陰でハゲキシが柔軟な考え方になったからかは知らんけど、少なくともボドム節全開のリード曲である#2Under Grass And Cloverのギラッギラにギラついたリフを見る限りリフメイカーとしての才能は全く衰えていないのがわかるし、紫鎌のキモである“キザミ”に関してもキザミ鑑定士の俺ィが認めざるを得ない文句なしに一級品の“キザミ”だし、正直アレキシがここまで器用にキザめるギターリストだと思ってなかったから、これ聴いてやっぱアレキシ天才だわって再確認した。しかし#2のMV見たけど流石にアレキシも老けたな・・・もはや魔女みたくなってるやん・・・。

序盤から中盤まで一気に畳みかけるような“キザミ”にナニを毛を刈り取られながら「あぁ~ニュー・ボドムのソリッド感たまんねぇ~」ってなりつつ、一方でその名の通りチルドレンボドムを底まで落としたヘヴィなミドルチューンを織り交ぜつつ、そしてその極めつけとなる表題曲の“Hexed”は近年最高のメロデスと呼んでも過言じゃあない、某首痛いおじさんになるくらいヘドバン不可避のキラーチューンには、もう泣きながら「ボドムイズバック・・・」言うたもんね。

確かに、確かに良くも悪くも「こんなの(俺の知ってる)ボドムじゃない!」と感じる人もいるかもだけど、言ってもNBに移ってからでは間違いなく1番の傑作だし、初期=全盛期の名盤と名高い青鎌緑鎌赤鎌と比べても相違ない完成度の高さ。要するに紫鎌ボドム史上最強。というか10年代の終りに、バンドとしても10作目の節目に完全復活とかカッコ良すぎて泣いた。黒歴史時代にメロデス四天王で最弱と揶揄されたボドムが再び“キング”に返り咲いた感あって泣いた。そんな“俺たちのボドム”を復活させてくれてありがとうニュークリアブラスト...フォーエバーニュークリアブラスト!もう誰もニュークリアブラストには逆らうな!

これ単独来日あったら行っちゃうヤツでしょ。やべぇ、ハゲキシがキザんでる姿チョー見てぇ・・・。ぜってーカッケーやつだ・・・。皆んなで一緒に「へックス!」ってシンガロングしたい!だからもし来日公演が実現して例の曲を演奏した際には・・・童貞メタラーはこう叫べッ!

ファッキン

サノヴァァ゛ァ゛゛ァ゛

ビィィィィィィィッチ!!


ヘックスド【CD[ボーナストラック3曲追加収録(海外デジパック盤にのみ収録)/日本語解説書封入]】
チルドレン・オブ・ボドム
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Swallow the Sun 『Songs From The North I, II & III』

Artist Swallow the Sun
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Album 『Songs From The North I, II & III』
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Disc I [Songs From The North I]
Cover

Tracklist 
01. With You Came The Whole Of The World's Tears
02. 10 Silver Bullets
04. Heartstrings Shattering
05. Silhouettes
06. The Memory Of Light
07. Lost & Catatonic
08. From Happiness To Dust

Disc II [Songs From The North II]
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Tracklist
01. The Womb Of Winter
02. The Heart Of A Cold White Land
03. Away
04. Pray For The Winds To Come
05. Songs From The North
06. 66°50´N,28°40´E
07. Autumn Fire
08. Before The Summer Dies

Disc III [Songs From The North III]
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Tracklist
01. The Gathering Of Black Moths
02. 7 Hours Late
03. Empires Of Loneliness
04. Abandoned By The Light
05. The Clouds Prepare For Battle

イェンス・ブーム ・・・スウェーデンのDraconianと並んでメロドゥーム界を牽引するフィンランドのSwallow the Sunも、00年代後半のメタルシーンに突如として巻き起こった【イェンス・ブーム】、そのビッグウェーブに乗ってイェンス・ボグレン【No 実質 Jens!! プロデューサー】に起用した2009年作の4thアルバムNew Moonで、いわゆるメタル界の迷信を説き明かす事に成功したバンドの一つだ。しかし、間もなくイェンスから離れ、再び地元フィンランド人中心の人選でレコーディングされた次作の5thアルバムEmerald Forest And The Blackbirdでは、従来のOpethリスペクトやシンフォブラックなどの他に、アコースティック/フォーク・ミュージックの要素を大胆に取り入れ始めていた。しかし、如何せんイェンス・マジックによって生まれた傑作『New Moon』と比べると、元Nightwishアネット・オルゾンとのフィーチャリング以外これと言って特に見所はなかった気がする。そんな彼らの約三年ぶりとなる6thアルバム『Songs From The North I, II & III』は、何を血迷ったのかCD三枚組トータル約二時間半、軽く映画越えしちゃう超特大ボリュームとなっている。



『Ⅰ』 ・・・まずは一枚目の『Songs From The North I』。幕開けを飾る#1”With You Came The Whole Of The World's Tears”は、まるでX JAPAN”Voiceless Screaming”を彷彿とさせる、寂寥感を煽る80年代のフォーク・ソング顔負けのしみったれたアルペジオから始まり、前作を踏襲したまるでオーロラの如くエメラルドグリーンに、いや瞳のように透き通ったエメラルドブルーに煌めくキーボード、デプレブラック流れのノイズ感というかモダンだが粗暴な轟音ヘヴィネスからはポストブラックとも取れるアプローチを垣間見せ、鬱屈かつ荒涼とした空間が支配する一種のドゥームゲイズが、フィンランドという名の極寒の地に蠢くカオティックな狂気を浮き彫りにする。一枚目のリード・トラックとなる#3”Rooms And Shadows”では、フロントマンであり"ニット帽おにいさん"ことミッコの寂寥感溢れるボーカル・メロディからは、フォーク・ミュージックや北欧民謡の名残を漂わせるし、アウトロのGソロではX JAPAN”THE LAST SONG”に匹敵する泣きメロっぷりを発揮。ex-KATATONIAのノーマン兄弟が加入した事でも知られる、バンドの中心人物であるギタリストJuha RaivioのサイドプロジェクトTrees of Eternityでお馴染みのAleahとフューチャリングした#4”Heartstrings Shattering”、ドイツ出身のSarah Elisabeth Wohlfahrtとフィーチャリングした#6”The Memory Of Light”と#7”Lost & Catatonic”などの女性ボーカルをフューチャーした楽曲は、氷上の女神を司った今作のフェミニンなアートワークを象徴するかのよう。そして、ケルティックな音色とストリングスが優美に氷上を舞い踊るイントロから、雪の結晶の如し繊細なメロディに魅了される”From Happiness To Dust”で、美しくも清らかなエンディングを迎える。

懐メロ ・・・この一枚目は、前作を踏襲したフォーキーなアプローチ、俄然アンビエントな音響空間を意識したより幅広いアレンジが施されたキーボード、LantlôsAlcestをはじめとしたフレンチ産ポスト・ブラック勢からの強い影響下にある轟音ヘヴィネス、そして昭和歌謡を経由したX JAPANばりの歪んだ泣きメロを全面にフューチャーした叙情性と極寒の地の厳しさや孤独感を露わにする暴虐性、その静と動のコントラストを強調した、要するにこれまでのSWSらしいゴシック・ドゥームの王道的な作風となっている。その持ち味とも呼べる静から動への転換がプログレ並にスムーズで、安直に「いつものSWS」とか言いながらも、音の細部には確かな進化を伺わせる。これはフィンランド映画の巨匠アキ・カウリスマキの映画に使われている音楽を聴いて思ったんだが、フィンランド人の音楽的嗜好って日本を含む東アジアの歌謡曲が持つ民謡的で情緒的なメロディに近い、極めて親和性が高いというか、少なくともこの『Ⅰ』の音には、このSWSもそのフィンランド人特有の"懐メロスキー"の継承者である事を証明する、と同時にスオミ人の知性と(気候とは裏腹に)心温かい情念が込められている。

『Ⅱ』 ・・・今時、メタルバンドがアコースティック路線に傾倒する例は決して珍しくない。この手のバンドで代表されるところでは、スウェーデンのKATATONIAやリヴァプールのANATHEMAがそうだ。その時代の流れに取り残されんとばかり、この『Ⅱ』の中でSWSはアコギやピアノ主体のフォーク・ミュージックを展開している。川のせせらぎと共に、真夜中の浜辺でただ独り佇むような悲しみの旋律を奏でるダークなピアノインストの#1”The Womb Of Winter”で幕を開け、アルペジオを駆使した優美でフォーキーなサウンドがフィンランドの雪景色のように純白の心を映し出すような#2”The Heart Of A Cold White Land”KATATONIAのヨナスきゅんや中期ANATHEMAのヴィンセントリスペクトなミッコのボーカル・メロディが俄然フォーキーに聴かせる”Away”、そしてフィンランドのSSWで知られるKaisa Valaとフューチャリングした表題曲の”Songs From The North”では、Kaisa『叙事詩カレワラ』に登場する『大気の処女イルマタル』となってフィン語で優しく歌い上げることで俄然民謡チックに聴かせ、この三部作のハイライトを飾るに相応しい一曲となっている。その後も、Alcestもビックリのリヴァーヴを効かせたデュリーミーな音響空間とトリップ・ホップ的なアレンジを施したオルタナ風のオープニングから、緯度"66°50´N,28°40´E"に位置する北国の幻想的な白夜の静けさを音(インスト)だけで描き出し、An Autumn for Crippled ChildrenHypomanie、そしてCold Body Radiationをはじめとしたダッチ産シューゲイザー・ブラック顔負けの吹雪くような美メロをフューチャーした#7”Autumn Fire”、そしてラストの”Before The Summer Dies”までの後半の流れは、決して「いつものSWS」ではない、言わば新機軸とも呼べるモダンなアプローチや音使いをもって情緒豊かに聴かせる。もはや「こいつらコッチ路線のがいい曲書くんじゃネーか?」ってくらい、モダンな要素と持ち前の懐メロ感を絶妙な具合にクロスオーバーさせている。

『Ⅲ』 ・・・一枚目の『Ⅰ』では「いつものSWS」を、二枚目の『Ⅱ』では「新しいSWS」を、そして三枚組の最終章に当たる三枚目の『Ⅲ』では、メロディを極力排除したフューネラル/デス・ドゥームメタルの王道を展開している。さっきまでの美メロ泣きメロの洪水とは打って変わって、アートワークの下等生物を見下すドSな女神に「もう許して...許してクレメンス・・・」と懺悔不可避な容赦ない破滅音楽っぷりを見せつけ、さっきまでの夢の世界から一転して惨憺たる絶望の淵へと追いやられる。曲の中にも静と動の緩急を織り交ぜるだけでなく、アルバム単位でも音の強弱やギャップを効かせた演出を織り交ぜた謎のスケール感を強調する。

大気の処女イルマタル ・・・やっぱり、この三枚組で最も面白いのは二枚目だ。隣国のスウェーデン人の音楽と比べると、どうしても不器用さが気になってしまうフィンランド人の音楽だが、この二枚目ではフィンランド人なりの器用さを垣間見せている。それこそ、今作のアートワークを冠した女神『大気の処女イルマタル』が身にまとった大気(Atmospheric)を体外に放出するかの如く、とにかく真珠が煌めくような音響空間に対する意識の高さが尋常じゃない。この二枚目で目指した理想像でもある、KATATONIA『Dead End Kings』をアコースティックに再構築したDethroned & Uncrownedとほぼ同じ作風とアレンジだが、Alcestリスペクトな音響/音像をはじめ民謡風のメロディだったり、フィンランド人の根幹にある民族的な土着性とフォーク/アコースティックなサウンドとの相性は抜群で、さすがにヨナスと比較するのはヨナスに失礼かもしれないが、ミッコのボーカル・メロディに関してもイモ臭さは程々によく練られているし、歌い手としてのポテンシャルを過去最高に発揮している。

臨界点 ・・・この手の界隈で比較対象にされるDraconianと同郷のAmorphisイェンス・ボグレンデイビッド・カスティロを起用した、いわゆる【勝利の方程式】を説き明かして今年2015年に勝ちに来た一方で、このSwallow the Sunはこの三枚組の中で、メロドゥームとしての王道路線で対抗すると共に、KATATONIAANATHEMAなどの先人たちにも決して引けを取らない、モダンでアコースティックな路線でも対等に勝負できることを証明した、どの方向性、どのジャンルにも一切の妥協を許さない攻めの姿勢に僕は敬意を表したい。失礼だが、フィンランド人だけでここまでの仕事ができるなんて思ってなかったし、新作が三枚組だと聞いた時は血迷ったなって全く期待してなかったから、いい意味で裏切られた。ある意味、未だ誰も超えたことがなかったスオミ人としての臨界点を超えたと言っていいかもしれない。正直スマンかった。
 
Songs From the North I & II & III
Swallow the Sun
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