Artist Noctule
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Album 『Wretched Abyss』
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Tracklist
01. Elven Sword
02. Labyrinthian
03. Wretched Abyss
04. Evenaar
05. Winterhold
06. Deathbell Harvest
07. Unrelenting Force
08. Become Ethereal

スカイリムはメタル・・・そう熱弁するのは、UKポスト・ハードコアバンド=Svalbardの紅一点フロントウーマンのセレナ・チェリー。彼女は、昨年イギリスがロックダウンしている期間に、ベセスダが誇る世界的人気ゲームシリーズ「The Elder Scrolls」の通称「TES5」こと『スカイリム』をテーマにしたブラック・メタルアルバムを制作、そんなセレナ・チェリーによる新しいプロジェクト=Noctuleのソロデビュー作となるのが本作の『Wretched Abyss』である。

小島秀夫監督の『デス・ストランディング』『サイバーパンク2077』に代表されるAAAタイトルのゲームとメタル、その親和性の高さを再確認させる案件が立て続く昨今の流れに乗って、遂に一つのゲームシリーズから更に一つのタイトルにピックアップして、それをコンセプトにした音楽アルバムを作っちゃった「スカイリム大好き芸人」がこのセレナ・チェリーだ。曰く、彼女は過去にブラック・メタルバンドで演奏していた前歴があり、それこそ本家のSvalbardはUKポストハードコアをベースにしながらもブラック・メタルの影響も垣間見せるハイブリッドメタルで、そんなゴリゴリのブラックメタラーでもある彼女の音楽的ルーツと、本家Svalbardが持つもう一つの側面がこのプロジェクトに集約されている。確かに、SvalbardでもBlackgazeとして聴ける楽曲も多数見受けられたが、セレナの“ソロ”プロジェクトである本作は自分の思うように好き勝手にブラックメタルできちゃうというわけ。これは余談だけど、一本のゲームをコンセプトにした音楽作品といえば、ポーランドのプログレバンド=Riversideの7thアルバム『Wasteland』は、『スカイリム』と同じベセスダゲーの『フォールアウト4』からインスパイアされた作品で知られている。

本作のジャケには、TESシリーズにおけるアイコニックな存在である“ドラゴン”が翼を広げて飛び立つ姿が描かれており、また楽曲のタイトルも全て『スカイリム』関連の用語を採用し、その歌詞も『スカイリム』の舞台となる極寒の雪山や内省的なテーマ、そして北欧神話に精通するバックボーンについて歌われている。そしてきっと、きっとTESシリーズ屈指の名ゼリフである膝に矢を受けてしまってなでお馴染みのあの元兵士の気持も歌われているハズ・・・!

初っ端からキチガイハードコアのGulchが始まったかと錯覚するくらいの、ブラック・メタル然としたグロテスクな金切り声=“シャウト”に、あいも変わらず男勝りなセレナ姐さん芸を見せつけられるデジャブしかない#1“Elven Sword”は、それこそエルフの両手剣を装備してマン振り脳筋プレイでドラゴンをボコってた自身のゲームプレイを約10年ぶりにフラッシュバックさせる、不気味の山脈に吹雪が舞い散るかの如し荒涼感溢れるトレモロ・リフが神ゲー『スカイリム』ならではの幽玄な音世界を描き出す。

古くは初期Alcestを長とする、いわゆるアトモスフェリック・ブラックの王道を行く#2“Labyrinthian”では、アコギを駆使したフォーキッシュなメロウパートを折り込んで静と動のコントラストを覗かせ、セレナのギタリストとしての才能を垣間見せるような、近年のSvalbardEnslavedにも通じる勇壮かつ超絶エピックなギタープレイが冴え渡る#3“Wretched Abyss”、ブラック・メタルというよりはポストロック的なギターの幽玄なフレーズやけたたましいブラストビートをフィーチャーしたデンマークのMOLを想起させる#4“Evenaar”、『スカイリム』プレイ中の僕→「フッ...“力”こそ全てであるこの我にウィンターホールド大学の学位(魔力)なんぞ必要ないわ!」みたいな当時の脳筋中二病プレイ(黒歴史)がフラッシュバックして頭を抱える#5“Winterhold”、フランスのドラゴンならぬゴジラ顔負けのエクストリーム・メタル然としたキザミを駆使した#6“Deathbell Harvest”、『スカイリム』の特殊能力である“シャウト”の一つである「揺るぎ無き力」を文字通りシャウトして敵をなぎ倒す#7“Unrelenting Force”、これまた“シャウト”の一つである「霊体化」を歌った壮大なインストナンバーの#8“Become Ethereal”まで、なんだろうブラック・メタル云々以前にメタルとして完成度高いです。そして、どんだけ『スカイリム』のこと好きやねんと、いや確かに神ゲーだけども。

今から10年前、PS3で『スカイリム』が出た時に初めてTESシリーズをプレイして、まんまとその壮大な世界観にハマったエルフの民としては、ドラゴンとの激しい死闘を繰り広げる傍ら、「スカイリムはノルド(ストームクローク)のもの」問題などの種族間に起こる様々なイザコザ、そんなイザコザには無関心な民ののどかな暮らし、雄大な大地や壮観な雪景色、それらの超スケールで描かれるファンタジーオブファンタジーの世界観が懐かしくなると同時に、恋しくなってくること請け合い。個人的にも、フィジカル全振りステータスキャラの両手剣マン振り脳筋ゴリ押しプレイしてたら物語の終盤で詰んで辞めたのを思い出したり(大人しく大学通っとくんだった・・・)、時に進行不能バグに出会ったり、時に戦闘がクソだったり、時に膝に矢を受けてしまったり、時に従者リディアと仲良くしてみたり、時に吟遊詩人の歌に癒やされたり、そんな楽しい思い出の数々がフラッシュバックした。

そんな神ゲー『スカイリム』も今年で10周年記念。既に続編のアナウンスがされている『TES6』がガチで発売されたその日には、それを「スカイリム大好き芸人」の異名を持つセレナがトロコンするまでSvalbardの新作は諦めるしかないな・・・。というか、もし本当にTES6が出たらソロプロジェクトが本業になりそうな勢いだなw