Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

スウェーデン

The Halo Effect - Days Of The Lost

Artist The Halo Effect
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Album 『Days Of The Lost』
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Tracklist
01. Shadowminds
03. The Needless End
04. Conditional
05. In Broken Trust
06. Gateways
07. A Truth Worth Lying For
09. Last Of Our Kind
10. The Most Alone

先日のダウンロードフェスジャパンで初来日を果たした、ex-IN FLAMESのメンバーが同窓会とばかりに集結した“シン・フレイムス”ことThe Halo Effectの全世界のメロデサーが待ち望んだ1stアルバム『Days Of The Lost』は、当時のIN FLAMESの黄金時代を築き上げたギタリストのイェスパーを擁しているだけあって、イェスパー在籍時...つまりメロデスメロデスしてた頃...要するにイェーテボリ・スタイルを踏襲した単音リフをはじめ、昨年にIN FLAMESを脱退したニクラス・エンゲリンとの新旧インフレエンサーによるツインリードが全盛期並みに炸裂しまくっているかと言われたら実はそうでもなくて、あくまで「北欧の吉井和哉」ことボーカルのミカエル・スタンネが在籍するDARK TRANQUILLITYの近作、その延長線上にある印象を受けた。

イェスパーはもとより、ベースのピーターとドラムのダニエルという、それこそ黄金期IN FLAMESを縁の下で支えたリズム隊を従えている時点で、どちらかと言えば背乗りした側のアンダースとビョーンが仕切ってる現IN FLAMESよりも全IN FLAMESなんじゃねぇかって、もはやどっちがシンのSIN FLAMESなのか疑問を呈したくなる状況はさて置き、いわゆる北欧メロデスと一蓮托生的な存在であるイェンス・ボグレンをエンジニアとして迎えた、本作の幕開けを飾る1stシングルの#1“Shadowminds”からして、「最近のdtにこんな曲なかったっけ?」ってなるくらいモダンな曲で拍子抜けしかけるも、しかし初期IN FLAMESさながらのイェスパー節全開の慟哭のツインリードが炸裂する次の#2“Days Of The Lost”で「これこれぇ!」みたいにガッツポーズさせると、イェーテボリ・スタイル以前に広義の意味で北欧メタルとしての真価を発揮する#3“The Needless End”、北欧メロデスらしい殺傷力高めの単音リフで血飛沫を撒き散らす#4“Conditional”、そして「北欧の吉井和哉」ことミカエルがdtで培ったイケおじならではの色気を醸し出すクリーンボイス主体の#5“In Broken Trust”や#7“A Truth Worth Lying For”、この辺りで「イェスパー節消えたな...そういえば先日のダウンロードフェスからもイェスパー消えてたな...」とか思った瞬間、再び初期IN FLAMESさながらの叙情的なツインリードが慟哭のハーモニーを奏でる#8“Feel What I Believe”は本作のハイライトで、アルバム後半はチクビームのキイチきゅんが登場して例のトラウマをフラッシュバックさせる#9“Last Of Our Kind”など、少なくとも「あり得たかもしれないif世界線のインフレ」あるいは【イェンス・ボグレン×イン・フレイムス】として、往年のメロデスフリークなら必聴である事だけは確かです。

しかし、そのキイチ参加の楽曲からも察しがつくように、言い方は悪いけどどうしても「商業的」な酒代もといゼニの匂いというか俗っぽい思惑が透けて見えるのも事実で(そもそもケツモチがニュークリア・ブラストの時点で)、一作目でこの感じなら二作目は「もういいかな」みたいな変な満腹感があるのも事実。確かに、母国スウェーデンでチャート1位を獲得するのも納得の内容だけれど、「おもてたんと違う」ほどではないが、「ほぼdtじゃねこれ?」と感じる人も少なくないと思う。

Soreption - Jord

Artist Soreption
Soreption-2022

Album 『Jord』
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Tracklist
01. The Artificial North
02. The Forever Born
03. Prophet
04. Each Death More Hollow
05. A Story Never Told
06. The Chasm
07. The Nether Realm's Machinery
08. Död Jord

いわゆるテクデスと聞いて一般的?にイメージするものといえば、直訳的に言ってしまえば楽器隊のバカテクなスキルを惜しげも無く発揮したデスメタルだと思われるが、2005年にスウェーデンはスンズヴァルで結成されたSoreptionは、それこそ一般的にイメージされるようなテクデスとは一線を画す、誤解を恐れずに言うと「ポップなテクデス」、あるいは「楽しいテクデス」という新ジャンルを開拓している気鋭のデスメタルバンドだ。

確かに、「ポップ」という表現は語弊を生むかもしれない。しかし、「ポップ」という言葉を用いたくなるほどに彼らのスタイルは、複雑な変拍子や緩急を効かせた転調で構築されたテクデスらしい楽曲を基調としながらも、一方でバチクソにタイトでリズミックかつトリッキーに刻むリフ回しをはじめ、コンセプトを司るSFライクなミステリアスなカーニバリズムを内包したアレンジに関しても、カナダを代表する「ポップ」なテクニカルメタルバンドことProtest The Heroの初期を彷彿とさせる。それもそのはず、本作は2021年に脱退したギタリストの代わりに、カナダのテクデスコアバンドArchspireのギタリストをはじめ、多数のゲストギタリストやキーボーディストの協力のもと完成にこぎ着けた作品であり、あらゆる面で過去作とは一線を画す一枚となっている。

その「(さしずめ)テクデス化したPTH」とでも称すべき、Soreptionならではのモダンなテクデスは本作の4thアルバム『Jord』でも不変で、前作の3rdアルバム『Monument Of The End』を若手のモダンなメタルバンドを数多く有するSumerian Recordsからリリースしたその意外性に裏打ちされたモダンさと、界隈のレジェンドであるカニコーやクリプトプシーに認知されているOSDMならではの暴虐性が調和したエクストリーミーなサウンドは一聴の価値あり。

Whitearmor - In the Abyss: Music for Weddings

Artist Whitearmor
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Album 『In the Abyss: Music for Weddings』
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Tracklist
01. Wedding Bells
02. Could be us
03. Kisses and Hugs
04. Eternal hills highest crest
05. Smile (reprise)
06. tar feathers
07. Cold Nights pt 2
08. Slow Dance
09. Gåvor
10. Outro

スウェーデンはストックホルムのDJ/プロデューサーであるLudwig Rosenbergの音楽プロジェクト、Whitearmorの1stアルバム『In the Abyss: Music for Weddings』は、それこそ純白のウエディングベールとドレスを身にまとった新婦の花嫁が将来の結婚生活という茨の道、その深淵を暗示する意味深なアートワークからして優勝案件だが、逆に解釈すれば邪悪な棘や新郎のセフレや元カノの生霊から花嫁を守護する魔除けの意味合いとしての“ウエディングベール”を身に着けているって事でもある。しかし、そんな俗話や不吉な前触れを他所に、いざ蓋を開ければめちゃくちゃ幸福感溢れるアンビエント/エレクトロニカを繰り広げている件について。

まるで婚姻届を役所に提出した瞬間における「幸せ」の押し売り、もとい“おすそ分け”とばかりに幸福のベールに包まれる冒頭の#1“Wedding Bells”からして、喜多郎さながらのシンセが織りなすファンタジックかつノスタルジックなニューエイジ/アンビエントのサウンドスケープを張り巡らせたかと思えば、一転して新郎新婦がこれまで経験してきたキスやハグなどの(などの)思い出をフラッシュバックさせながら、トクマルシューゴ顔負けの鍵盤打楽器的な(スウェーデン産のポストロック勢にも通じる)瑞々しいポップなメロディが新郎新婦を盛大に祝福するフォークトロニカの側面を垣間見せる#3“Kisses and Hugs”、披露宴の目玉の一つである両親への感謝を伝える号泣不可避のシーンで流れてそうな#6“tar feathers”、まるで春ねむりのトラックを彷彿とさせる崇高かつ神聖さに満ち溢れた一種の「祈り」にも近い#7“Cold Nights pt 2”、そして披露宴のクライマックスを飾る#10“Outro”では、何このハッピーウエディングソングみたいな雰囲気で新郎新婦が永遠の愛を誓い合う。

この披露宴に参加している京都出身の女性は「(はぁ?隣の新郎、ウチの元セフレやで!つまりアンタとウチは竿姉妹や!)」と京都女らしい腹黒い心裏を覗かせ、ある一人の独身中年男性は「幸せをおすそ分けしてくれるなんざありがた迷惑な話や、死ぬまで一生幸せでいやがれ!」みたいにキザを気取ったりする中、いざ「幸せのおすそ分け」を象徴するブーケトスが始まると、さっきまで宴に無関心だったセフレや元カノの生霊が死物狂いでブーケを奪い合い、最終的に彼氏いない歴年齢のメガネ喪女がウエディングブーケを掴み取るオチまで完璧なストーリー展開。

この手のDJ出身らしいIDM的なアレンジを効かせたチルいアンビエント・ポップは、ブルックリンのJulianna Barwickやポートランド出身のLiz HarrisによるGrouperと同じ感覚で聴けると思うので、これから暑くなる季節的にもピッタリなんで本当にオススメ。

GHOST - Impera

Artist GHOST
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Album 『Impera』
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Tracklist
01. Imperium
02. Kaisarion
03. Spillways
06. Watcher In The Sky
07. Dominion
08. Twenties
09. Darkness At The Heart Of My Love
10. Griftwood
11. Bite Of Passage
12. Respite On The Spitalfields

パパ・エメリトゥス(コピア枢機卿)ことトビアス・フォージ主宰のGHOSTといえば、個人的にデビュー当初から不思議と刺さらなかったバンド、かつメタルシーンでそこまで持ち上げられるほどじゃないとも思ってたバンドで、しかし一転、その考えを改めざるを得なくなった出来事というか楽曲こそ、2018年作の4thアルバム『Prequelle』のリード曲である“Rats”に他ならなかった。


このマイケル・ジャクソンの名曲スリラーのMVをオマージュした、それこそ80年代初頭のMTV全盛期をリバイバルしたMVの魅力もさることながら、中でもその黄金のキザミ”に急接近したリフメイクにブッたまげた。なんだろう、それこそMastodonが2009年に発表した歴史的名盤『Crack The Skye』における黄金のキザミ”を、約10年の時を超えて80年代のクラシック/ハードロックに落とし込んだような、兎に角この瞬間彼らの過剰人気に懐疑的だった自分の評価がイロモノ枠のコミックバンドから、一転して中身と実力が知名度と注目度に追いついた正統なメタルバンドとして見方を改めた。例えるなら、奇抜なビジュアルや話題性先行のバンドに実力が伴った瞬間、そのバンドの事がめっちゃ好きになる謎の現象に近い(事実、初めてCD買った)。

前作の『Prequelle』においてGHOSTが成し遂げたのは、それこそまだお茶の間に大衆音楽としてHR/HMが認知されていた時代、つまりQUEENに代表されるハードロックがメインストリームのポップスとして嗜まれていた時代の“アリーナロック”の復権を目論む、要するに「ロックは死んだ」と囁かれ始めてからもう長い月日が過ぎたこの現代において、“サタニックムードメタル”という名の21世紀最後のアリーナロックを地獄の底から『ゴースト/ニューヨークの幻』として再び蘇らせている。

その音楽性は、同郷スウェーデンの重鎮Opethが60~70年代のブルース/クラシック・ロックに傾倒し始めた『Pale Communion』『Sorceress』の共同プロデューサーであるトム・ダルゲティを迎えるという先輩に対するリスペクトのみならず、スウェーデン人のアイデンティティであるキング・オブ・ポップことABBAを想起させる70年代のMTV全盛のポップ・ミュージック風の歌メロを中心に、オルガンをフィーチャーしたフォーク/サイケロックや北欧メタル界のレジェンドEUROPEの世界的名曲ファイナル・カウントダウンをオマージュした哀愁漂うハードロック、そしてヴィンテージなサウンド・プロダクションまでも当時のサウンドを考慮した、まさに「21世紀のクイーン」と呼ぶに相応しい内容だった。

当時のHR/HM界における、ドラッグやグルーピー絡みのスキャンダルなゴシップとは少し毛色は違うものの、2017年にはパパ・エメリトゥスことトビアス・フォージが元バンドメンバーでありネームレス・グールズの4人から権利関係すなわちカネの問題で訴訟を起こされている。確かに、GHOSTの世界観として悪魔崇拝を謳っているのにも関わらず、コスチュームの“中の人”であるトビアス・フォージのカネにがめつい人間味のある“素顔”が世間様に晒されてしまう、その俗っぽい宗教指導者さながらのモキュメンタル感は、まさに現代インドで生まれた20世紀の瞑想指導者瞑想指導者でる“Osho”ことバグワンと重なる部分があって最高に面白い。例えるなら、萌え絵のVTuberが三次元的な俗っぽいスキャンダルで引退に追い込まれるみたいな。しかし、その手のゴシップやスキャンダラスな話題すらも(皮肉にも)GHOSTというバンドを司るゴシックホラー的な世界観の一部として、よりポピュラーなエンタテインメント性に変えてしまう魔力を秘めている。そのようなネタに尽きないのはMTV全盛の当時からアリーナ級のビッグバンドが背負う宿命であり、ある種の義務と言えるのかもしれない。


“パパ・エメリトゥス三世”改め“コピア枢機卿”改め現“パパ・エメリトゥス四世”こと主宰者トビアス・フォージのバグワンさながらの不思議な魔力は、世界中の人々を生贄という名の虜にするだけでなく、この極東の地においてもGHOSTの魔力が降りかかっている。例えば、2013年のコーチェラ出演を経て2014年には(2013年出演のVolbeatや2017年出演のRoyal Bloodに象徴される)クラシックなハードロックを受け継いだ現代的なハードロックバンドの系譜としてサマソニ出演を果たし、改めてサマソニ主催者でありクリマン清水社長の先見性に感服させられたのは今でも記憶に新しい。中でも、そのアンチクライストな世界観およびホラーテイスト溢れるライブ演出やビジュアルに関する魅せ方は感心するほどで、それこそベビメタ後期のダークサイドのアプローチはGHOSTに触発された可能性すらある。最近では、アメリカの名司会者ジミー・キンメル主宰の番組『Jimmy Kimmel Live!』にてライブパフォーマンスを披露したりと、そのMTV全盛に肉薄するGHOSTの魔力は現在進行系で世界中のお茶の間へと拡大している。

そんな前作におけるアリーナロック復権の流れを踏襲した、約4年ぶりとなる5thアルバム『Impera』という名のゴスオペラの開演SEを担う#1“Imperium”に次ぐ#2“Kaisarion”からして、「おっ、TNTのトニー・ハーネルリスペクトか?」とツッコミ不可避の、それこそまだお茶の間にHR/HM特有のピーキーなハイトーンボイスが不思議と受け入れられていた「時代の歌」を披露したかと思えば、前作に引き続きレジェンドEUROPEをオマージュした#3“Spillways”では、BON JOVIのジョン・ボン・ジョヴィ風のキャッチーなコーラスワークを中心とした、前作におけるアリーナロックのスタイルを著しくポップに発展させた古き良き北欧メタルは、さしずめ前作が「21世紀のクイーン」ならば本作は「21世紀のボンジョビ」とばかりにポップな商業ロックあるいはメロハーすなわちAORとして耳馴染みよく聴かせる。

正直、ここまでリフらしいリフって久々に聴いたかもしれないくらい、いわゆるHR/HMがHR/HMたらんとする「リフ」がしっかりと「リフ」してる作品、それこそ前作の“Rats”で発現した低域をジュクジュク刻んでくる黄金のキザミ”に関しても、キザミの質量はもとよりバリエーションも増やしている印象で、中でもトラディショナルなドゥームメタルのリフを擁する#5“Hunter’s Moon”、タイトなキザミ志向の#6“Watcher In The Sky”、SEの#7を挟んでホラー映画のサントラさながらのオーケストラやクワイアが織りなす壮大なゴシックオペラの真髄を発揮する#8“Twenties”や往年のメタルバラード風の#9“Darkness At The Heart Of My Love”など、前作のMTV全盛路線を更に推し進めたポップでキャッチーな、そしてメタリカやEUROPEに代表されるメタルレジェンドのオマージュや北欧メタルへの郷土愛をエンタテインメントとして昇華した21世紀最後のアリーナロックは、“中の人”であるトビアス・フォージの俗っぽさ含めて楽しさに溢れている。ちなみに、本作にはOpethのフレドリック・オーケソンが参加。

Cult of Luna – The Long Road North

Artist Cult of Luna
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Album 『The Long Road North』
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Tracklist
02. The Silver Arc
03. Beyond I
04. An Offering To The Wild
05. Into The Night
06. Full Moon
07. The Long Road North
08. Blood Upon Stone
09. Beyond II

自分の記憶が正しければ、スウェーデンの頭脳派音楽集団ことCult of Lunaって2013年作の『Vertikal』および『Vertikal II』を最後にしばらく冬眠という名の活動休止を宣言したかと思いきや、たった三年足らずして(過去に当ブログでも取り上げたことのある)ブルックリン出身のJulie Christmasとのコラボ作品『Mariner』を発表し、体感2秒でシレッと復活するやいなや、そこから3年後の2019年にはスタジオアルバムとしては約6年ぶりとなる7thアルバム『A Dawn To Fear』を発表し完全復活を遂げた。

(この頃のCoLを返せ!w)
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7thアルバム『A Dawn To Fear』は、近作の『Eternal Kingdom』『Vertikal』シリーズにおけるプログレッシブなアソビが希薄となり、それこそ「マジメか!」って100回くらいツッコんだくらいにはクソ真面目な覇道のポストメタルやってて驚いた、と同時に気づいた事が一つあった。近年のCoLにおける「面白さ」すなわち「アソビ」を司っていた存在こそ、2003年にバンドに加入した鍵盤奏者のAnders Teglundに他ならなかったんだということ。事実、彼が2013年作の『Vertikal II』発表後に脱退して以降のCoLはある種の原点回帰というか、余計な味付けのない原材料のみのオーガニックな重厚感溢れるポストメタルに回帰することに成功、その結果が彼不在の『A Dawn To Fear』には如実に表れていた。しかし、個人的に彼らのアーティスト/ビジュアル面を含めた、例えるなら浦沢直樹の漫画『20世紀少年』に通じる二次元的というかサブカルっぽい雰囲気に特別な魅力を感じていただけに、その中でも「僕が考えた最強の実写版『デスノート』のL」みたいなAnders Teglundがバンドから離脱したのは、彼らCoLにとって致命傷レベルの出来事なのではないかと。そんな考えを持つ自分からしても、前作の『A Dawn To Fear』は“キング・オブ・スウェーデン”の称号に相応しい、漢の覚悟が込められた文句なしの傑作である事は認めざるを得なかった。というより、作品のスケールがクラシックのオーケストラ並にデカ過ぎて理解が追いつかなかったのも事実で、まさに「唖然とする」とはこの事かと。

そんなメタル史に名を残す超弩級の前作から約3年ぶりとなる8thアルバム『The Long Road North』は、少なくとも前作よりは以前までのオルタナティブな“アソビ”を多少なりとも取り戻している印象。まるで新世代メタルのコード・オレンジへの宣戦布告かと思うような、デ~ンデ~ンと荘厳に鳴り響く近年のCoLらしいドローン志向の高いイントロから幕を開ける#1“Cold Burn”からして、「CoLのリフ」として確立されたリフすなわちバンドオリジナルのリフを持っている強みとバンドオリジナルのグルーヴを持っている強み、それらのマクロなダイナミズムとは対照的なミクロな視点から綿密に組み立てられた、北風小僧の寒太郎のノスタルジックな記憶を呼び覚ます幽玄なメロディが織りなす“キング・オブ・ポストメタル”を目の当たりにして改めて思うのは、今や彼らはレジェンドIsisを源流とした00年代の伝統的なポストメタルを守護する世界で唯一のバンドなのかもしれない、ということ。

スウェーデンの女性ボーカルMariam Wallentinがチェルシー・ウルフ顔負けの呪術を廻戦する#3“Beyond I”、奇才アリ・アスター監督のホラー映画『ヘレディタリー/継承』などの劇伴にも参加しているサックス奏者コリン・ステットソンのアルト/テノールサックスをはじめフルートやリリコンなどの吹奏楽器を用いた、俄然シネマティックかつアヴァンギャルディなサントラ級のスケールで描き出す#4“An Offering To The Wild”、暗黒街に鳴り響くスラッジーなリフ主体の表題曲の#7“The Long Road North”、ドラマーのThomas Hedlundがサポートしているフランスのインディロック・バンドPhoenixのギタリストであるクリスチャン・マザライとローラン・ブランコウィッツをゲストに迎えた、今世紀最大の覇道を極め尽くしたような本作のハイライトを飾る#8“Blood Upon Stone”など、正直ここまで“バンド”としてのグルーヴを大事にしてるアーティストって今どき珍しいと感じるぐらいにはグルーヴ感に溢れ過ぎている。
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