Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

カナダ

KFC Murder Chicks - KFCMC

Artist KFC Murder Chicks
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Album 『KFCMC』
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Tracklist
01. Dune (feat. Anna Pest)
02. Half Life
03. Id (feat. Sam Shadow)
04. Halo
05. KFC GOD (feat. Voiddweller)
06. My Ballz
07. Soylent
08. Nuclear Age
09. Tsundere 2.0

USはウェストバージニア出身のDJ Rozwellとカナダのモントリオール出身のAsh Vestalによるインダストリアル・メタルプロジェクト、その名もKFC Murder Chicksの2ndアルバム『KFCMC』の何がヤバいって、ニューヨークのMachine GirlやデトロイトのThe Armedに肉薄するデジタル・ハードコアを基本ベースに、いわゆるメロディック・メタルコアの影響下にあるブルータルな殺傷リフやNirvanaに代表される90年代のグランジやヌーメタル的なダウナー系のヘヴィネス、そしてカナダのインダストリアル界を代表するBlack Dressesさながらのグリッチ/ノイズの打ち込みと、マニュエル・ギャノー率いるインダストリアル・メタルバンドのZeal and Ardorが光の速さで出会ってしまったような、さながら「ハイパーポップ化した20年代のグランジ」とでも称すべきバグった音楽性がとにかくヤバい。

さしずめ「ハイパーポップ化したZeal and Ardor」の如しインダストリアル・メタルコアの#1“Dune”からして、メタルコアの常套手段であるブレイクダウンの代わりに癒し系のメロディパートをブチ込むギャップ萌えな演出力の高さを垣間見せたかと思えば、90年代のヌーメタルが10年代のエレクトロ/EDMを大きく飛び越えて20年代のハイパーポップにグリッチして現代に転生したかのような#2“Half Life”、DJ Rozwellの嗜好が溢れ出すドラムンベース的なビートとハイパーポップならではのカオティックなシャウトがエゲツない#3“Id”、さしずめハイパーポップ化したグランジの#4“Halo”、その「Halo」の伏線回収となるNirvanaの名曲“Smells Like Teen Spirit”をサンプリングした曲で、『DOG BOY』ことZillaKami精神溢れる90年代グランジ/ヌーメタルの#5“KFC GOD”、Black Dresses顔負けのインダストリアル/ノイズミュージックの#6“My Ballz”や#7“Soylent”、条件反射で身体をガンガン揺さぶってくるRozwellのDJプレイが炸裂する#8“Nuclear Age”、再びグランジならではの倦怠感溢れる内省的なボーカルと悪魔的なシャウトがエクストリーム合体した#9“Tsundere 2.0”まで、端的にノイズ/インダストリアル~グランジを往来するバンド的な意味では、サンディエゴのAuthor & Punisherに通じる部分もあるかもしれない。少なくとも、この手の音楽が好きなら聴いて損はないです。

World of Pleasure - World of Pleasure & Friends

Artist World of Pleasure
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EP 『World of Pleasure & Friends』
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Tracklist
01. Domination 2 (feat. Dominic Vargaz)
02. Carbon Copy (feat. Shaun Alexander)
03. Everybody Finds Love (feat. Jaxon Craig)
04. Penitence (feat. Chad Pingree)

カナダはカルガリー出身のWorld of Pleasureが文字通りフレンズ達と制作した1st EP『World of Pleasure & Friends』の何が凄いって、それこそ現代ボストン・ハードコアのVeinさながらのマシズモみなぎるカオティックなハードコアをベースに、いわゆるドラムンベースや昨今のParannoulに代表されるBandcampミュージックのトレンドである90年代サブカルを象徴するジャパニーズアニメのサンプリングを邂逅させた、それこそヴェイパーウェイヴ然としたアートワークが示唆するように、頭のネジがぶっ飛んだパーリーピーポーな音楽性を特徴としており、それこそヴェイパーウェイヴならではのゲーム音楽的なキラキラシンセのイントロから幕を開ける#1“Domination 2”からして、初期のVeinに肉薄するゴリゴリのメタルコアをブチかました後のブレイクに、ローファイ・ヒップホップmeet日本アニメのサンプリングを導入する大胆不敵な曲展開を垣間見せると、同様にVein顔負けのブルータルなメタルコアを展開する#2“Carbon Copy”、そして#3“Everybody Finds Love”ではグルーヴィなハードコアmeetドラムンベース=ハイパーメタルコアを聴かせたりと、この先どうメガ進化していくのか、俄然フルアルバムに期待がかかる要注目のバンドです。

Voivod - Synchro Anarchy

Artist Voivod
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Album 『Synchro Anarchy』
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Tracklist
01. Paranormalium
04. Mind Clock
06. Holographic Thinking
07. The World Today
08. Quest For Nothing
09. Memory Failure

カナディアン・スラッシュメタルのレジェンド、Voivodの約4年ぶり通算15作目となる『Synchro Anarchy』が凄い。というのも、過去作においてピンク・フロイドやキング・クリムゾンなどのプログレカバーを発表してきたのを鑑みるに、彼らは伝統的なヘヴィメタルバンドながらも同時にプログレッシブロックに対する資質を備えたバンドでもあり、その元来の伏線を回収するかのような本作は、それこそオリジナリティを捨ててフォロワーからパクりまくった末の駄作で知られるテクデス界のレジェンドことCynicの3rdアルバム『Kindly Bent To Free Us』を再解釈した上で独自に正統進化させた、と同時にCynicが初期のテクデスから徐々にプログレッシブロックに傾倒していったのと全く同じ要領で、カナディアン・スラッシュの重鎮Voivodも同様にプログレ化している件について。


それこそCynic『Kindly Bent To Free Us』を彷彿とさせる、ポスト・スラッシュ然としたムシムシQ大好きなジュクジュクしたタイトなポスト・キザミをはじめ、まるでParvaneの試金氏を思わせるパラノイヤの道化師の如し素っ頓狂でアヴァンギャルドなボーカルワークを中心に、ディストピア映画『メトロポリス』を想起させる無機的かつシニカルな世界観を形成しながら、終始一貫してキザミ意識を植え付けるアウトロまで奇術師のごとく奇奇怪怪に展開していく#1“Paranormalium”を皮切りに、続く表題曲の#2“Synchro Anarchy”では、芸歴40年のイケオジである彼らのアイデンティティを司る卑しい変拍子をインストパートのみならずコーラスワークにもインテリジェンスに組み込みつつ、そのプログ・ロック化を司る変拍子のみならず転調以降のポスト・スラッシュパートにおける、Cynicのポール・マスヴィダルを皮肉るかのようなフュージョン然とした幽玄なソロワークまで、そのスティーヴン・ウィルソンに肉薄する現代のプログレッシブ・ロックに精通した審美眼と黄金のキザミ”の源流と呼ぶべきキザミは、80年代初期のスラッシュメタル黎明期において伝説のスラッシュ四天王と真正面からカチコミ合った経験が成せる業であり、そして芸歴40年の大大大ベテランになった今なお「キザミの可能性」を探求し続けるスラッシャーとしての貪欲な姿勢に脱帽するとともに、いわゆる“進歩”という正しい意味での“Progressive”が爆発的なシナジーを起こしている。

ポストスラッシュすなわちポストキザミの教科書とでも呼ぶべき、あらゆるBPMと質量の振り幅に富んだキザミの総数に圧倒される本作、そんなVoivodの“キザミ王”としての権威を象徴する#3“Planet Eaters”、そしてカナダのトラック野郎(フリーダム・コンボイ)の背中という名のアクセルを後押しするかのような、見世物小屋の如しキザミのからくりサーカスを繰り広げる#5“Sleeves Off”や黄金のキザミ”指数が最も高い#6“Holographic Thinking”など、少なくとも前作までのヘヴィメタルのサブジャンルにおけるスラッシュメタルではなく、本作はスラッシュメタルにおけるポストスラッシュならではのキザミの極意にたどり着いた傑作と言える。しかし今回のVoivodといい、80年代初頭に世界各国で発起したスラッシュメタル勢で真っ先に覇権エンジニアのイェンス・ボグレンと邂逅したジャーマンスラッシュのKreatorといい、クラシックメタル至上主義の保守的なベテランが前触れもなくイマドキのインテリっぽい事やってくる“しぐさ”に相変わらず弱い。

Bliss Fields - Slowly, Forever

Artist Bliss Fields
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Album 『Slowly, Forever』
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Tracklist
01. It Comes in Waves
02. Satisfy
03. Clementine
04. Cycle
05. Sleep
06. Away
07. Stare
08. When We're Together
09. Slowly, Forever
10. Recluse

2013年から2021年までIrisの名で活動していた、カナダはトロント出身の5人組Bliss Fieldsの1stアルバム『Slowly, Forever』がスゴイスー。なお、本作は改名前のIris時代に発表した2019年作の作品をAcrobat Unstable Recordsから再度リリースした形。

アコースティックギターを靡かせるイントロから、いわゆる90年代のMidwest Emoの影響下にあるギターボーカルのScott Downesによる内省的な存在感と青春ティーンムービーさながらの激情と焦燥感をまとった轟音ノイズをかき鳴らす冒頭の#1“It Comes in Waves”からして、バンドの自己紹介がてらティーンミュージックの側面を持つemo(イーモゥ)とシューゲイザーをイイトコ取りしたサウンド・スタイルを繰り広げると、一転して紅一点ベースボーカルのMeg Boniのウィスパーボイスをフィーチャーしたノイズポップの#2“Satisfy”や夢の世界を飛び越えて黄泉の世界へと誘うリフレーンが光るUKのオルタナレジェンドことスロウダイヴ大好きな#3“Clementine”、ドリーム・ポップ然としたリヴァーブを効かせたアルペジオ主体の#4“Cycle”や90年代のエモ/ポストハードコアの側面を持つ#5“Sleep”、その幻想的かつ神秘的なイーサリアル的サウンドとMeg Boniのメランコリックでフォークソング的な歌唱法からメロディまでも伝説のフォークロックバンドTrespassers Williamの正統後継者を襲名するかのような#7“Stare”、彼らのコアさを打ち出した表題曲の#9“Slowly, Forever”、モダンな打ち込みを擁する幽玄で仄暗い世界観を構築する#10“Recluse”まで、確かに音響意識の高いリヴァーブ全開のサウンドスケープや男女混成スタイルは、マイブラやスロウダイヴに代表される90年代の伝説的なシューゲイズ/オルタナバンドの系譜にある教科書どおりのドリーム・ポップだが、そのフックに富んだノスタルジックなメロディセンスは頭一つ抜けてるし、また要所でエモやフォークロックのアプローチを垣間見せる“ならでは”のオリジナリティもあるので、この手の王道的なシューゲイザーが好きならマストアイテムです。

First Fragment - Gloire Éternelle

Artist First Fragment
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Album 『Gloire Éternelle』
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Tracklist
01. Gloire Éternelle
02. Solus
03. La Veuve Et Le Martyr
04. Pantheum
05. De Chair Et De Haine
06. Sonata En Mi Mineur
07. Ataraxie
08. Soif Brûlante
09. In'el
10. Mort Éphémère

2021年はCynicの新作をはじめ、いわゆるテクデスの年と言っても過言ではないくらいテクデスの良作がデスメタルシーン全体を賑わせた。このカナダはケベック(ロンゲール)出身のFirst Fragmentの約5年ぶり通算二作目となる『Gloire Éternelle』も今年のテクデス界を象徴する一枚であることは確かで、それこそCynicリスペクトなジャズ/フュージョンとデスメタルをクロスさせたテクデスの王道をベースとしつつ、フィルとニックのギターコンビのテクニックに裏打ちされたリズミカルでトリッキーなグルーヴを刻むリフ回しや豚貴族ことインギーもビックリのネオクラシカルな超絶ソロワーク、そしてバンドのキーマンとなるForestことドミニク・ラポイントによる超越ベースプレイ、その二本のギターと一本のベースで主導権を奪い合う「21世紀最高のバカテク集団」と称するに相応しい楽器隊の土台に、OpethのミカエルやAmon Amarthのヨハンを連想させるデスボイスの持ち主であるフロントマンのデヴィッドの存在やマチズモ溢れる男達の勇壮な遠吠えも相まって、テクデスの王道とヴァイキングメタルやクサメタルにおけるアドレナリン全開のエピックな高揚感がエクストリーミーにクロスしたテクデスでもあり、また隠し味としてフラメンコギターを用いてスパニッシュな香辛料をまぶすことで、テクデスはテクデスでも一般的なテクデスの邪悪ネスや殺傷力よりも南米はじめスペイン語圏をイメージさせる情熱的かつダンサブルなテクデス、俄然そんなイメージがシックリくる。

渚に打ち寄せる荒波が嵐の前の静けさを暗喩するSEとともに、その激しい波から伝わるフラメンコギターを情熱的に靡かせるイントロから、ネオクラシカル/ヴァイキングメタルmeetテクデスすなわち蛮族化したCynicを展開する#1“Gloire Éternelle”、イントロの可憐に舞い踊るフラメンコギターの情熱的な魂を受け継いだベースとギターがフラメンコダンスを踊るかの如しリズミカルなコンビネーションを発揮する#3“La Veuve Et Le Martyr”、豚貴族も嫉妬するネオクラシカルギターを聴かせる#4“Pantheum”、もはやネオクラ通り越してクサメタルの領域に両足突っ込んじゃう#5“De Chair Et De Haine”、カルロス・サンタナもビックリの泣きのギターソロやカルメン・マキもビックリのフラメンコギターの情熱的なプレイを披露するインストの#6“Sonata En Mi Mineur”、約19分にわたる超大作の#9“In'el”、そして#1の渚に打ち寄せる荒波のSEをアウトロ(#10)に持ってくるコンセプトアルバム的な演出は、それこそ浜辺美波(浜辺に寄せて返す美しい波)のSEに始まり浜辺美波のSEに終わるDeafheavan『普通の堕落した人間の愛』に通じるSEの使い方も本作の傑作ぶりに拍車をかけている。とにかく、テクデスやデスメタルのみならず、パワーメタルやヴァイキングメタル、あるいはインギーなどのネオクラシカルなメタルが好きな人にもオヌヌメできる文句なしの傑作です。
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