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墓っ地・ざ・ろっく!

アイドル

代代代 - 威威威

Artist 代代代
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EP 『威威威』
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Tracklist
01. 4ME
02. ブラクラサバス(ターボ)
03. 8 BEAT GANG
04. LASE (REMIX)

今年の2月23日にリリースされたフルアルバムのMAYBE PERFECTは、先日お色気ゲー『ラストオリジン』の新シナリオを手がける事を発表したシナリオライター虚淵玄が創造するポスト・アポカリプス的なSF世界観の中で、『最終兵器彼女』として魔改造された四人の代代代メンバーが第三次世界大戦を阻止するため悲劇的な運命に翻弄される物語を紡ぎ出す、それこそアイドルの概念を超越(transcendental)させるようなグリッチ/ノイズが奇々怪々に入り乱れた、この日本のアイドル史におけるエポックメイキングと呼ぶべき大大大傑作だった。

そのMAYBE PERFECTを象徴する、もはや今年のベストアイドルソングと言っても過言ではないシングルの“LASE”は、2021年に一足先に発表された「シングル版」と「アルバム版」それぞれ別のアレンジ(魔改造)を施すことで、いわゆる多次元理論的な解釈をもって「甲盤」と「乙盤」に世界線を分岐させた、その焦燥と刹那がバグやウイルスのように駆け巡るSF然としたギミック、および様々な考察を促すような緻密なストーリーテリングに唸ったのは、今でも昨日の事のように思い出す。

4と書いてA(ア)と読ませる#1“4ME”は、アルバムMAYBE PERFECTおよびシングルの“LASE”の延長線上にあるビートとグリッチーなトラックメイクに始まるやいなや、突如として(およそ)2秒で暗転直下するとTOOLCult of Lunaを連想させる、それこそディストピア映画を代表するSFの名作『メトロポリス』然としたモノクロームの暗黒世界の奈落に突き落とされたかと思えば、一転して今度はワリオないしはワルイージのサンプリングみたいな辛気臭い雰囲気を醸し出しながら、最終兵器彼女である代代代メンバーの儚くも刹那い歌声と80年代のAOR風のシンセが織りなすレトロフューチャーリズム、および昨今の電子音楽シーンのトレンドであるヴェイパーウェイヴに肉薄する近未来都市(トロピカルワールド)を描き出す。

そのヴェイパーウェイヴなマリオワールドから飛び出してきたワルイージの召喚に引き続き、テキサスのGonemageNeupinkを彷彿とさせるサイバーグラインド/デジタルハードコアを披露する(ブラック・サバスがバグった)#2“ブラクラサバス(ターボ)”、そして在りし日のBiSの正統後継者として“オルタナアイドル”を20年代仕様のハイパーポップにアップデイトさせた#3“8 BEAT GANG”など、(これは自意識過剰かもしれないが)今作の歌詞は自分が書いたMAYBE PERFECTの考察レビューに対するアンサーとして機能している気しかしなくて、つまり終末戦争を阻止するため最終兵器彼女としてDNA操作された彼女たちの哀しい想いを反映した歌詞みたいな。

そして、アルバムMAYBE PERFECTの物語を補完するEP『威威威』にかけての「始まりの曲」でもある“LASE”のリミックス版は、それこそヴェイパーウェイヴやローファイヒップホップ的なチルなリラクゼーション効果のあるジャズ風のアレンジが施され、フルアルバムの考察レビューにも書いた多次元理論および世界線の交わりを司るような「もう一つの物語」として新たなストーリーを紡ぎ出している。とにかく、近年稀に見る大大大傑作のMAYBE PERFECTにおける最終兵器彼女たちの刹那的かつ激情的な想いを補完し、さらなる考察を促すとともに奥深い世界設定の解像度を著しく高めるような一枚。

代代代 - MAYBE PERFECT

Artist 代代代
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Album 『MAYBE PERFECT』
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甲盤
01. THRO美美NG
02. 1秒
03. LASE
04. まぬけ
06. 黒の砂漠

昨年の10月に発表されたシングルの“LASE”といえば、あくまで代代代メンバー四人のボーカルにフォーカスしたミックスをはじめ、静謐な焦燥と燃えたぎる激情をもってミニマルなビートを刻んでいくトラックやエッジの効いたギターをかき鳴らす比較的シンプルな構成で、ある種の後期ana_themaを想起させる“繰り返しの美学”を司るエピックなエネルギーを蓄積し爆発させるキラーチューンだったが(俺的2021年アイドルベストソングの一つ)、本作の4thアルバム『MAYBE PERFECT』を耳にすれば、その「シングル版のLASE」と「アルバム版のLASE」の違いが本作を決定づける「違い」に繋がっている事がわかる。

端的に言ってしまえば、シングルの“LASE”を因果として回っている本作品、しかしアルバム版の“LASE”はシングル版とは打って変わってレイズのフレーズをはじめエモさだけを抽出したようなボーカルワークを主役とする、いわゆる一般的なアイドルソングのソレとは一線を画しており、本作における世界観およびコンセプトに従事したアルバム曲の一つとして機能している。では、そのシングル版とアルバム版の違い、そして本作の世界観を形作るコンセプトとは一体何なのか?

今やBiSらの初期WACKアイドルに代わり、アンダーグラウンドなオルタナアイドルの代名詞となった代代代は、過去にはフィンランドのOranssi Pazzuと共振するハードコアなインダストリアル/ドローン等のオルタナティブな資質を兼ね備えたアヴァンギャルドな実験性を垣間見せていたが、何を隠そう本作において著しく超越的な才能を開花させた代代代は、ブルックリンの超越者ハンターハント・ヘンドリックス率いるTranscendental Black MetalことLiturgyに肉薄する独創性と革新性に溢れた音楽をアイドルのフォーマットでやってのけている。

いわゆる「シングル版のLASE」は、アイドル楽曲派がドヤ顔で「エモい」と評しそうな典型的なアイドルソングだったが、先述したように「アルバム版のLASE」ではメンバーの歌声がミックスレベルで後退し、代わりにLiturgyの4thアルバム『H.A.Q.Q.』や5thアルバム『Origin Of The Alimonies』におけるTranscendentalな超越性を裏付けるグリッチ/ノイズまみれのトラックを中心に、ほぼリミックスレベルでグリッグリにバグり散らかしている。それにより、現代社会および昨今の世界情勢における混沌すなわちケイオスを象徴するハイパーポップの文脈に食い込む勢いの「超越的なアイドル」という新たな代名詞、すなわちTranscendental AIDOLとして自らの立場をアップデイトしている。

その「アルバム版のLASE」と双璧をなす、それこそLiturgyが近作においてブラックメタルというフォーマットでクラシック/オペラの悲奇劇であり狂奏曲を描いたのと全く同じ要領で、アイドルというニッチなフォーマットでバグったスーパーマリオの如しクラシック/オペラを再現する、そんな「超越的なアイドル」を象徴する#1“THRO美美NG”から幕を開ける本作、一部で“LASE”のフレーズのみならず#1や#4の伏線を張り巡らせるピコピコ系アイドルポップスの#2“1秒”、まるで第三次世界大戦の核戦争により人類が滅んだポストアポカリプスの世界で最後の生き残りとなった主人公と対核兵器として開発されたポストヒューマンのバイオロイドがハーレムを繰り広げるメタバース内のVR空間に迷い込んだかの如く、それこそCynicの2ndアルバム『Traced In Air』や4thアルバム『Ascension Codes』と共鳴する(スピ)リチュアリズムや神秘主義を内包したトランスヒューマニズムの思想にサイバーコネクツする#4“まぬけ”、先の第三次世界大戦においてオブジェのように破壊されてしまった生前のバイオロイドが結成していたアイドルグループ時代のキラキラした輝かしい記憶がフラッシュバックする#5“破壊されてしまったオブジェ”、そのようにして最終的彼女のバイオロイドとして魔改造されるも、敵国からのサイバー攻撃によりAIにバグリッチが混じり失敗作として“黒の砂漠”に廃棄処分され山積みとなった四人のアイドルが、まだ人間だった頃の思い出が断片的に蘇るラストの儚くも美しいオチまで、考察するに「シングル版のLASE」は第三次世界大戦が起こる以前の代代代が人の心と感情を持ち合わせていた頃の曲で、対する本作すなわち「アルバム版のLASE」は第三次世界大戦前夜に生身の人間の状態から強制的に魔改造(アセンション)させられて対核兵器としてトランスヒューマン化したAIの記憶がバグやグリッチのたびにフラッシュバックし続けている曲、みたいに解釈したら俄然エモすぎて泣ける。本作の何が凄いって、「アルバム版のLASE」におけるグリッチ/ノイズが代代代の音楽的な前衛性を高めているだけでなく、その歌詞から紐解ける文脈とともに『MAYBE PERFECT』のコンセプトおよび悲劇的な運命を辿る物語の根幹部を担っている点←これに尽きる。また、他の曲にもLASEのフレーズを引用することで「LASEへの帰結」を示唆する伏線の置き方も美しい。

面白いことに、本作のCD版は甲盤と乙盤の二枚組の作品(サブスクでは甲盤のみなので、このレビューは甲盤の視点から書いている)、しかし二枚組と言っても乙盤の方は甲盤を逆から再生した、つまり甲盤の最後の曲(黒の砂漠)から逆再生する形で曲順を入れ替えただけの作品となっている。要は運営側が甲/乙の二つの視点から聴くことを公式に推奨している。そこから分かる事と言えば、乙盤すなわち逆再生盤から記憶を手繰り寄せていけば、自ずとミスリードや伏線が張り巡らされた本作の「真実の物語」すなわち真エンディング(Eエンド)にたどり着ける可能性が高まるということ。では、この物語の鍵を握る甲盤のED曲であり、対する乙盤のOP曲となる“黒の砂漠”に何故バイオロイドが打ち捨てられていたのか?そこに本作の謎を紐解くヒントがある気がしてならなかった。

いずれ起きる第三次世界大戦で勝利を収めるには、主戦力である核の脅威に耐えうる強靭な精神とインダストリアルな肉体および細胞が必須となる。その高次元な能力を会得するには、まずは男女の性別における優劣やウィークポイントを克服する必要がある。そこで我々旧人類は、性別を故意にバグらせる事でジャンルの垣根を超えて新人類にトランスフォームしたLiturgyの超越者ハンターハント・ヘンドリックスを参照し、代代代という選ばれし四人の旧時代のアイドルグループを“アイドル”の概念はもとより、もはや人間としての性別や肉体を故意にバグらせて遂にはシンギュラリティを起こすことに成功したのである。つまるところ、ボーカロイド(AIDOL)と旧人類のハーフとして徐々にトランス化していく過程を描いたのが乙盤の物語なんですね。

乙盤の物語を簡潔に考察するとこうだ。#1“黒の砂漠”に壊れかけのローファイなラジオと一緒に投げ捨てられたバイオロイドの肉体に、#2“破壊されてしまったオブジェ”のアイドル精神をAIDOLに学習させる魔改造を#3“まぬけ”で行うも、その研究中に「レイズ」の天啓を得た新型ウイルスによりバグが生じて「アルバム版のLASE」と「シングル版のLASE」という二つの記憶に分裂し世界線が分岐、何とかして情緒不安定なAIDOLの精神を制御する研究を終え、核の脅威に耐えうる最終的彼女が完成したことを示唆する#5“1秒”、そして遂に第三次世界大戦が勃発、『MAYBE PERFECT』に出来上がったはずの最終的彼女は超越的(Transcendental)な能力を発揮すると、AI(愛)を知らないバイオロイドがAI(愛)の力で地球もろとも旧人類を滅ぼし全てを無に還す...。そして唯一生き残った旧人類の主人公と四人のバイオロイドによるハーレム云々でEエンドを迎える。

このように、甲盤の曲順が示す曖昧な物語よりも乙盤の逆再生順が示す悲劇的な物語の方が真エンドっぽいかもしれない。乙盤において徐々に薄れゆくアイドル時代の記憶、そして心と体が最終的彼女へと移行していく中で、やがて記憶と記憶の邂逅が真実を呼び起こすように、古の終末戦争時に開発された最終兵器彼女の記憶が「レイズ」の記憶と交錯し、時空を超えて現代アイドルの代代代に受け継がれているエモさったらない。

ここまでの話は冗談として聞き流してくれていいけど、しかし神パンチラインゲー『ニーアオートマタ』、というよりは虚淵玄作品に近いポストアポカリプス的な荒廃した世界観がシックリくる至極難解なSF作品なのは確か。それこそ『ニーアオートマタ』の前日譚を描いた舞台『少女/少年ヨルハ』のような演劇的なライブアレンジが映えそう、というか複雑な転調を繰り返す楽曲構成的にも面白い演出が期待できそうな予感。とにかく、代代代の作品としては2ndアルバム『∅』以来の大大大名盤です。

乙盤
01.黒の砂漠
02.破壊されてしまったオブジェ
03.まぬけ
04.LASE
05.1秒
06.THRO美美NG

神使轟く、激情の如く。 - RAGNARΦCK

Artist 神使轟く、激情の如く。
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Album 『RAGNARΦCK』
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Tracklist
01. 自己都合主義メタモルフォーゼ
02. 夏声蝉時雨
03. 神奏曲:テンペスト
04. 瞬間成仏NEXTYOU→
05. 新世界エクソダス
06. 残響カタストロフィー
07. さよならネガティブ
08. 発狂的発散案件=惰性
09. STAGE
10. 風Zing!雷Zing!
11. 宣戦布告
12. 不器用HERO
13. 暁光センチメンタル
14. Supernova

先日、次世代のシーンを担う「ラウドル界の神激の巨人」こと神使轟く、激情の如く。という7人組グループについて、ある程度理解度が進んだタイミングで、昨年10月に発表された(初期のシングルまで網羅した)実質的な意味で1stアルバムとなる『RAGNARΦCK』を聴いてみた。

幕開けを飾る2018年リリースのシングル#1“自己都合主義メタモルフォーゼ”から、神激の音楽面での謳い文句の一つである様々な“ジャンル”を超越(transcendental)した、Post-PassCodeを襲名するかのようなヒュンヒュンシンセのイントロから、持ち前の転調を繰り返しながら神激バンザーイ!神激バンザーイ!という神者(神激ヲタの呼称)による合唱、からの生牡蠣いもこ作のエモい歌詞から繰り出されるアイドル然としたサビ、からの「V系顔の理想」兼「悠介くんの妹」こと涙染あまねによる葉月と京を超えるエグいグロウル、そして謎の人物によるスポークンワードを駆使した「アイドル界の宝塚歌劇団」じゃないけど、その帝国華撃団的なオペラティックかつシンフォニックな要素を散りばめたアブノーマルで超スペクタクルな楽曲構成は、たかだか5分程度の尺に2時間ドラマ並のストーリーが凝縮されたような音の詰め込み具合で、それこそ「アイドル界のIwrestledabearonce」と称すべき神激の予測不能な楽曲的魅力は、このように初期の頃から既に形作られていたことがわかる。


PassCode的なピコリーモをベースに、今度は「青春バンザーイ!」な夏合宿的なMVと同調するかのような、儚くも爽やかな潤いを帯びた夏メロを聴かせる#2“夏声蝉時雨”は、この時期に新加入したラップ担当よいこによるBTSのJ-HOPEリスペクトなラップパートが最大のキモとなっている。


神激といえば、その主語のデカいグループ名はもとより、その曲名にも「神の奏でる曲」と書いて「神奏曲」を冠する、それこそメタルゴッドちゃんもビックリの曲名も並々ならぬ個性を放っており、この「神奏曲」を冠する#3“神奏曲:テンペスト”は、毎度のピコリーモをベースに、三笠エヴァによる必殺技ワッワワワッワワンパンチ!しょっしょっしょしょっしょ昇龍拳!二日よいこのラップをフィーチャーしつつ、(MV観てて)ブレイクダウン突入からあまねによるゴリゴリのグロウルが炸裂・・・と思いきや、最近のシングルのMVにはいなかった誰か知らないめちゃくちゃ可愛い推し不可避のメンバーがエグ過ぎるグロウルしてて、「ちょっと待って、この可愛いメンバー誰?もしかしてGODちゃんの中の人?」と思って調べてみたら、どうやら昨年8月に脱退したメンバーだった模様(ここで#1“自己都合主義~”のグロウルも妖精かなめだと理解する)。神激メンバーの中でダントツに可愛いのに、シャウト担当のあまねを子供扱いするデスボイスぶっ放してて2秒でガチ恋した、でもガチ恋した次の瞬間脱退のショックで泣いた・・・。で思ったのが、涙染バンギャあまねのシャウトの模範って、もしかすると京や葉月ではなくて元メンバーの妖精かなめなんじゃねぇかって事。つまり、あまねのシャウトをフィーチャーした最新シングルの“神奏曲:インフェルノ”は、涙染あまねから元メンバー妖精かなめへの「鎮魂曲」だと解釈したら俄然エモ過ぎて泣く。その元メンバーが永久欠番メンバー扱いなのも2秒で納得だし、逆に一番の戦力が脱退して今の神激大丈夫なん?って心配になったw

このように本作は、過去に様々なメンバー脱退/加入の変遷を経て今に至っている事を書き記す、そういった意味でも「神激の歴史」が刻まれた1stアルバムと言っても過言じゃあない。その永久欠番メンバーの妖精かなめ他、元メンバー在籍時の過去の楽曲と現神激の楽曲を比較するのも面白くて、なんだろう初期の頃は(完成度自体は高いが)あくまでPost-PassCodeの粋を出ないというか、それこそ「アイドル界のIwrestledabearonce」を襲名する“BAD CAKE”ほどのハチャメチャな変態性に乏しい(逆に言えば、シングルを出すたびに曲が良くなっている)。


そんな中でも、ラップはラップでも春ねむりリスペクトなポエトリーラップがキマってる#5“新世界エクソダス”では、DIR EN GREYの京を超える妖精かなめのグロウルに再びガチ恋し(あまねのクリーンってBiSHのアユニに似てね?)、よいこのラップや妖精かなめの低域を強調した宝塚的なスポークンワード、そしてアユニ化したあまねいもこのエモいクリーンをフィーチャーしたシンプルにエモい#6“残響カタストロフィー”、アイドルらしいキラキラしたシンセや打ち込みでアップテンポに始まったかと思えば、転調を効かせてさしずめ奇劇『はぐれ刑事神激派』のEDさながらsukekiyo顔負けの昭和歌謡パートから、某バニラの求人オマージュやバッキバキのEDMが急転直下に入り乱れる、まさに神激らしい予測不能な曲構成が光る#7“さよならネガティブ”、珍しく最後までkawaiiノリで歌う曲で、いもこが手がけた妖精かなめを紹介する歌詞が笑えると同時にエモい#8“発狂的発散案件=惰性”、またまた音の毛色を変えてオルタナティブやフュージョン要素を盛り込んだ#9“STAGE”、初期のベビメタというか“メギツネ”を想起させる和風のオリエンタルなアレンジをフィーチャーした初期シングルの10“風Zing!雷Zing!”、2017年に発表したデビューシングルの#11“宣戦布告”、ある意味で“BAD CAKE”の原型と呼べる変態的かつ暴虐的なギターが炸裂するゴリゴリのメタルコアチューンの#12“不器用HERO”、リーダーことのYOSHIKIリスペクトな英詞のスポークンワードをフィーチャーした、希望に満ちた前向きなリリックを力強く歌い上げるJ-POP調の#13“暁センチメンタル”、アルバムの最後を飾るに相応しい大団円的なアイドルポップスの#14“supernova”まで、最後まで聴いてみて真っ先に思ったのは、このアルバムは昨年脱退した妖精かなめへの鎮魂曲としての側面が著しく強調された作品なんだってこと。

改めて本作の楽曲において、永久欠番メンバー妖精かなめのグロウルが示す存在証明が神激の存在証明に直結している気がしてやまなくて、そんな妖精かなめのグラビア画像を偶然発見して「ホーリーシー」ってなった話はさて置き、とにかく自分がシャウト担当のあまね推しになった理由が本作を聴いてわかった。それは他でもない、あまねのシャウトの裏にかなめの存在があったからだ(名前も微妙に被ってるしw)。要するに、あまねはデビュー当時からず~~~っとかなめの背中を『ルックバック』してきた、すなわちかなめの「過去」を追憶してきたからこそ今のあまねが存在していられるんだって、そうエクストリーム解釈したらクソ泣ける(僕がガチ恋したのはあまねじゃなくて「あまねが背負っているかなめ」だった説)。確かに、あまねのシャウトはDIR EN GREYの京をも凌駕するかなめのグロウルには現状足元にも及ばないのも事実(しかし、最新シングルの“インフェルノ”や“BAD CAKE”には色んな意味でかなめの面影と片鱗はある)。しかし、そういった本作に内在する過去メンバーに対する因縁/関係性だったり、今現在まで紡いできた「神激の歴史」だったりを絡めて聴くor聴かないでは、このアルバム『RAGNARΦCK』に対する想いというのが大きく変わってきそう。

そんな、端的に言うと「そうだ!パスコに妖精かなめが加入すれば万事解決!」もとい「あまね頑張れあまね」みたいな話はさて置き(野球ユーチューバーの向は今すぐあまねをオカルト部に推薦してくれw)、こうなってくると先日発表された2つの新曲を含むダブルミニアルバムのリリースが今から待ち遠し過ぎて泣く(10月開催の対バンのチケ取ったw)。どうでもいいけど、もし願いが叶うなら『神使轟く、神宿の如く。』のタイトルで“神激”ד神宿”でツーマンしてほしいw

神激こと神使轟く、激情の如く。は「アイドル界のIwrestledabearonce」なのか?

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PassCode
のシャウト担当ちゆなの勇退、BABYMETALのLEGEND(ライブ)封印の発表をトリガーに、世はまさに大ラウドル時代に突入するかしないかは知らんけど、それはそうと先日「何このアイドル版Iwrestledabearonce」って笑ったのが、神激こと神使轟く、激情の如く。の今年リリースされたシングルの“BAD CAKE”という名の神曲だ。それこそ次世代を担うラウドルとして当然のようにラップ担当のメンバーが在籍し、これまたラウドルとして当前のようにスクリームボイス担当のメンバーとクリーンボイス担当のメンバーが在籍、楽曲は楽曲で当前のようにパスコの平地もビックリの転調やブレイクダウンを繰り返す、そんな急転直下型かつ予測不能系のメタルコア/マスコアをベースとしたエクストリームかつプログレッシブ、そして超弩級で超スペクタクルな次世代アイドルがこの神激である。


MVもMVで、それこそIWABO私は一度、熊と格闘したことがあります。的なわけのわからない変態的なノリを継承するかのような、名斜め上に突き抜けた個性しかないMVでサイコーなんだけど、そんな事よりもアブノーマル過ぎる曲のド変態っぷりに注目してほしい。可愛いJ-POPみたいな冒頭から一転、急転直下でIWABOばりのカオティックかつブルータルなヘヴィネスとスクリーム担当涙染あまねの獣性むき出しのシャウトが織りなす地獄のカーニバルが開演したかと思えば、中盤からはラップ担当二日よいこによるイマドキのフロウを交えたソロラップから、再びDIR EN GREYリスペクト(知らんけど)な涙染あまねのグロウル、クリーン担当TiNAのソロパート→ジャズい生牡蠣いもこのソロパート、それぞれ各メンバーの個が活かされた奇々怪々なキラーチューンとなっている。


そもそも、「神奏曲」と題した主語のデカい良い意味でダサい事を全力でやってのける感じはメタル以外のナニモノでもなくて、それこそ「神奏曲」シリーズとしてつい先月リリースされた最新シングルの“神奏曲:インフェルノ”は、DIR EN GREYの超絶駄曲でお馴染みの“インフェルノ”の名を冠するだけあって、冒頭から最期まで一貫してPassCodeのちゆなの正統後継者を襲名するかのような涙染あまねのシャウトを主演にエクストリームなメタルを繰り広げる。そして、涙染あまねと並び“もう一人のスクリームボイス担当”こと三笠エヴァオラオラオラオラ無駄無駄無駄無駄!!という露骨にジョジョ要素がブチ込まれた新曲が発表されたタイミングで、“DNAレベルで日本一のジョジョヲタ”である僕が神激と引かれ合ったのは、果たして偶然だろうか・・・?いやいや、シャウト系アイドルの開祖みたいなPassCodeのちゆなが勇退したタイミングで、神激のあまね&エヴァというスクリームコンビが目の前に降臨するという(謎のジョジョ要素含めw)、これがホントの“神”展開w


その「神奏曲」は「神奏曲」シリーズでも“インフェルノ”とは少しテイストの違う今年の2月にリリースされたシングルの“神奏曲:ガイア”は、“BAD CAKE”では地味系青メガネだったリーダー兼クリーン担当の実久里ことのを一番にフィーチャーしたMVで花魁に扮している点もDIR EN GREYというか実にヴィジュアル系的で、その花魁衣装とメタルゴッドちゃんばりの革ジャン衣装が表現する“二面性”は曲の内容とリンクしており、つまり花魁アイドル然としたキャッチーなポップさとメタルゴッドちゃんらしいモッシュッシュ推奨のブレイクダウンを軸にした鬼ヘヴィネスの“二面性”、そのギャップ萌えを極め尽くしたようなミクスチャー・ポップ・メタルコアで、ここでもあまね(シャウト)とよいこ(ラップ)のバトルを織り交ぜつつ、主語のデカいスケール感を誇示するアウトロまで何から何までメタル。そして、さっきの“インフェルノ”ではオラオラオラオラ無駄無駄無駄無駄!!アピールしてたエヴァは、今度は波動拳太陽拳気円斬かめはめ波をブッ放すという謎の二次元要素を再確認。というかこのMV、実久里ことのの花魁似合いすぎ問題はもとより、あまねの花魁姿がリアル吉原に在籍してそうな本職の嬢に見間違えるほど似合ってるというか(“神”だけに神宿の塩見が闇堕ちしたイメージw)、あまりに似合いすぎて「オメーぜってー普段からたぬきに入り浸ってるバンギャだろwww」とツッコミ不可避w


上記のシングルとは一番テイストの違う、昨年末リリースのシングル“生まれ変わっても自分になりたい”は、嘘偽ない真っ直ぐな歌詞を乗せた(シャウトもラップもない)アイドルらしい爽やかなギターロック系J-POPで安心したのもつかの間、7人目のメンバーであるマニピュレータ担当のGODちゃんが突然「無音」ぶっ込んでくるからこのグループほんと怖い・・・。このコンマ数秒に過ぎない、ほんの一瞬の「無音」だけでいかにこのグループが“普通”ではない“異端”で“アブノーマル”なアイドルであるかをメタ的に暗喩している。


アダルティなジャズ~シャッフルソング的な、それこそAcid Black Cherryみたいな冒頭からして→「やっぱこいつらたぬきに入り浸ってるバンギャじゃんwww」と確信する「神奏曲」シリーズの“神奏曲:アブソルートゼロ”は、神激らしい転調を駆使した無駄にドラムがカッコいい急転直下型のミクスチャーで、この曲のエヴァはアタタタタ百裂拳!カッカカカッカ界王拳!を打ち込んできて笑ったというか、この手のネタっぽく感じる部分をよいこのバチクソにイカしたラップと絡めてカッコよく昇華させからブレイクダウンさせる作曲者MTRの才能にただただ感心する。あと、このMVのあまねが終始Lynch.の悠介くんに見えてしょうがない(はいV系w)。

こう一通り最新シングルから遡って聴いてみただけでも、その楽曲の突き抜けた個性はもとより、同時に(GODちゃん含む)各メンバーのキャラ立ち(位置)が十二分に理解できた。楽曲では、やっぱ一番最初に聴いた“BAD CAKE”が(MV含め)群を抜いて完成度が高いと思う(アイドル版Iwrestledabearonceとして)。グループ内の人気も、歌詞担当の生牡蠣いもこを中心に、シャウト担当のあまねとラップ担当よいこの三人で人気を分け合っているんだろうなってのはわかる。個人的に推しメンを挙げるとするなら、(最新シングルが“インフェルノ”的な意味でも)DIR EN GREYをリスペクトしてそうなバンギャの涙染あまねしかないでしょ(←だから勝手にバンギャ認定すんなw)。なんだろう、ちゆな勇退のニュースでめっきり傷心しきってたタイミングで、突如目の前に現れたシャウト界の始祖ちゆなの生まれ変わりであるあまねというシャウト界のバンギャもとい女神にガチ恋したわ(神宿の塩見とデュエット組んでほしいw)。なんだろう、こう言ったら怒られるかもしれんけど、「パスコにあまね加入してくれ!」って懇願したくなるくらいには、ちゆなの後釜として最善いやベストな選択だと思っちゃったんだからしょうがないけど、そんな事は神激ファン以上にメンバーが許さないだろうね。でも、冷静に考えたらバンギャのあまねがパスコのメンバーとしてやっていくには、いかんせんキャラが濃すぎることに気づいたw

冗談じゃなしに、自分のようにちゆな勇退で心にポッカリと風穴が空いたパスコのオタクを半数は引き抜いてこれるだけのメンバースキルと個々のポテンシャル、また楽曲派のみならずメタルゴッドちゃんばりに硬派なメタラーもヴィジュアル系オタクも「虜」にするだけの寛容性の広い楽曲と変態的なビジュアルイメージ、そして何よりシンプルに「日本一カッコいいアイドル」を称するに相応しい本物の次世代ハイブリッドアイドルが、この神激こと神使轟く、激情の如く。なんですね。冒頭にも書いたけど、正直このラウドル界に亀裂が生まれ、その亀裂から漏れ出したパスコのハッカーやベビメタのメイトを迎え入れる受け皿として、今の神激は引くくらい“立ち位置”が完璧過ぎる。恐らく、我儘ラキアなんかより全然売れると思うし(売れなきゃおかしい)、というか既に2022年に武道館公演を発表しているのも全然納得だし、恐らくラキアよりも先にサマソニ出演すると思う。だから、お前ら今のうちに古参アピールしとけ!っつーか、神激のライブ観た過ぎて泣くw

Zsasz - ⸮

Artist Zsasz
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Album 『⸮』
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Tracklist
01. Z ALERT
02. KAWAII NANKAII
03. ときどきひかる
04. 食事 [2021]
05. おバカなポップ
06. 麺屋ぐろてすく [2021]
07. ピーターピーター [2021]
08. 看板娘の悪巫山戯 [2021]
09. 生きてるおばけは生きている
10. MASSIVE EMOJI
11. ぬいぐるみになりたい [2021]

先日、ボカロPで知られる鬱Pが2019年に立ち上げた5人組アイドルグループのZsaszが、予想だにしないヒョンな出来事から我儘ラキアと対バンしてるのを見たら、やっぱり今年の3月にリリースされたZsaszの記念すべき1stアルバム『⸮』について書かなアカンなという話。

とりあえず、サウンドプロデュースを手がける鬱Pの出自がハードコア・バンドってのが一番の驚きだけど、そんなバックグラウンドを持つ鬱Pがプロデュースするアイドルってんだから、その音楽スタイルも我儘ラキアに負けじ劣らずな男勝りのラウドロック、そんなラウドル界のニューカマーがZsaszである。しかし、このZsaszはあくまでも“アイドル”のフォーマットの上で、Djent以降のモダン・ヘヴィネスやメタルコアを経由したラキアよりも重心の低いラウドロックに、初期のベビメタにも通じるkawaii系ジャパニーズカルチャーをはじめ、イマドキのラップ/ヒップホップやボカロ界隈ならではのSY8ERチックなフューチャーベース、そしてコブシ突き上げる系の押せ押せ青春パンク、それらのロックとヒップホップと電子音楽を組み合わせたエクストリーム・ポップだ。こうやって文字に起こすと我儘ラキアZsaszはやっている事の大部分は一緒のように見えて、その実は真逆な事をやってるアイドルなんですね。主に楽曲面では、複数の外部プロデュースを迎えて楽曲に多様性を持ち寄るラキアに対して、このZsaszは全ての楽曲を鬱Pただ一人の手でバリエーション豊かな楽曲を展開している。


なんだろう、ラキアよりもZsaszはもっと「自由」で「極端」な事やってるイメージで、そんなZsaszの“エクストリーム・ポップ”ぶりを象徴するのが、皆んな大好き“ラーメン”についてのユニークな歌詞なのにバックのサウンドがデスメタル並にヘヴィな#6“麺屋ぐろてすく”、いわゆる“お化け”についての歌詞なのにバックのサウンドがゴリゴリのDjent(シャウト入り)の#9“生きているおばけは生きている”、そして“絵文字”についての可愛い歌詞なのにバックのサウンドが近年のDIR EN GREY的なヘヴィロックとBiS界隈のエモ系アイドルがエクストリーム合体した#10“MASSIVE EMOJI”を筆頭に、正直ここまで極端なアイドル見たことないってくらい、もしもDIR EN GREYSY8ERが光の速さで邂逅したら、あるいはBMTH『amo』で本当にやりたかった事がコレのような気にさせる、そんな1stアルバム『⸮』中で垣間見せる様々な「極端」と「自由」がぶつかり合って解き放たれるシンのギャップ萌えは、次世代ハイブリッドアイドルの我儘ラキアが謳う多様性に肉薄する、いやワンチャンそれを凌駕する勢いすら感じる。

ほぼ同時期に、グループのアイデンティティであるシャウト担当のちゆなが勇退したPassCodeやLEGEND(=ライブ)を封印したBABYMETAL、そして古き良き地下時代のBiS(H)から逸れたラウド/パンク専ドルヲタの受け皿として、あくまで選択枠の一つとしてディグってみる価値は大アリのグループだと思う。確かに、ボーカルの面ではラキアの星熊に、ラップの面ではラキアのMIRIに、ダンスの面ではラキアの怜奈に、シャウト/スクリームの面ではex-PassCodeのちゆなの足元にも及ばないものの、しかしラウドルシーンに生じた谷間の波に上手く乗ることができれば、様々なアイドル活動が制限されるこのご時世でも地下から脱出できる可能性は決して高くはないが、低くもないのかもしれない。というか、それら諸々の事情は全て鬱P次第といったところw
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