Artist Kreator
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Album 『Hate über alles』
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Tracklist
01. Sergio Corbucci Is Dead
02. Hate Über Alles
03. Killer Of Jesus
04. Crush The Tyrants
05. Strongest Of The Strong [feat. Patrik Baboumian]
06. Become Immortal
07. Conquer And Destroy
08. Midnight Sun [feat. Sofia Portanet]
09. Demonic Future
10. Pride Comes Before The Fall
11. Dying Planet

デイヴ・ムステイン率いるスラッシュ四天王の一角であるメガデスも、今やギタリストがex-Angraのキコ・ルーレイロ、ドラムにはex-Soilworkのダークらを中堅バンドから引き抜いて寿命を延命させているバンドだが、同じくジャーマンスラッシュを代表するKreatorもその「若返り」の潮流を汲むようにして、2019年にベーシストのクリスティアンが脱退した代わりに、ex-DragonForceのフレデリクを迎えてからは初となる本作の『Hate über alles』は、前作の『Gods of Violence』から約5年ぶり通算15作目のフルアルバム。

近作のKreatorといえば、10年代のメタルシーンを裏方の立場から支えたエンジニア/プロデューサーのイェンス・ボグレンを迎え、バンドの「若作り」もとい「若返り」を模索するかのように、積極的な新陳代謝を促していた。そんな彼らは、本作の『Hate über alles』においてイェンス・ボグレンとの決別を果たし、新たなプロデューサーとして現行メタルシーンを裏から支配する“ポスト・イェンス”の最有力候補と名高いUSのアーサー・リザークを迎えるという、それこそ未だ衰えを知らない攻撃的な音楽性とシンクロするかの如く、シーンにおけるトレンドその審美眼をピンズドに捉えた用意周到っぷりは、改めてUKのパラダイス・ロストと双璧をなす“メタル界のイケおじ”と呼ぶに相応しい存在であると。

幕開けを飾るイントロの#1に次ぐ#2“Hate Über Alles”の冒頭のリフからして、2009年作の『Hordes of Chaos』への回帰を予感させるが、ひとえに回帰と言ってみても、サウンド・プロダクション的には『Hordes of Chaos』以前の寒色系ではなく、近作すなわちイェンス以降の暖色系を素直に踏襲した比較的フラットなスラッシュメタルの印象で、しかし一方でイェンス時代の音とも明確な違いがあるのも事実。とにかく、“イェンス”に「近づくタイミング」と“イェンス”から「離れるタイミング」を熟知しているKreatorほど信頼できるメタラーは他にいないかもしれない。事実、イェンス・ボグレンという名の『未知との遭遇』を図った2012年作の『Phantom Antichrist』に対して、継続してイェンスを起用した2017年作の『Gods of Violence』は、その内容に「ん?」と懐疑的な気持ちが微塵も浮かばなかったと言ったら嘘になる。

その「脱イェンス」を印象付ける、アーサー・リザークが手駒にしていた今はなきPowe Tripの新世代スラッシュメタルの意志を受け継ぐ男臭いコールを交えた#5“Strongest Of The Strong”や、在りし日のMACHINE HEADを彷彿とさせる#7“Conquer And Destroy”に象徴されるように、本作は様々な面においてアメリカナイズされた作風と言えなくもないが、そんな雑念すらも芸歴ウン十年のバンドとは思えない柔軟性に溢れたイケおじムーブを前にすれば無価値だ。事実、メタル文脈とは無関係のドイツの女性ボーカルSofia Portanetをフィーチャーした8曲目の“Midnight Sun”では、今なお現役バリバリのモテモテなイケおじっぷりを見せつけている。

総評すると、ヘヴィメタル全盛の時代に第一線でシノギを削ったバンドだからこそ成せるオールドスクールのヘビメタイズムと、トレンディなプロデューサーならではのモダンなUSスラッシュ勢からの影響、そしてイケメン要素などの若くてフレッシュなエネルギーがシナジーを引き起こすエクストリーム・ミュージックの良作です。