Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

2021年度BEST

Album of The Year 2021

13位 スティーブン・ウィルソン 『ザー・フューチャー・バイツ』
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ソロ6作目となる本作リリース後に本家Porcupine Treeの復活を宣言したことが全てで、わかりやすく端的に言ってしまえば、2009年のPT活動休止前最後の賛否両論作『The Incident』がSWソロにおけるこの『ザー・フューチャー・バイツ』というわけ。逆に言えば、音楽的にもコンセプト的にもソロとして描きたいことは全て描ききったって事なんだと思う。自身でインターネットコミュニティが存在しなければ自分の音楽キャリアは既に終わっていたと語るだけあって、SWはその辺の(評判に対する)見極めが本当にうまいね。とにかく、2021年に起こった出来事の伏線が本作のコンセプトみたいな所あって、というのもシングルのMVにディープフェイクとして登場するFacebookのCEOマーク・ザッカーバーグが社名をMeta(メタバース)に変更したり、アマゾン元CEOのジェフ・ベゾスや前澤友作が宇宙旅行というコロナ禍で拍車のかかった格差社会を象徴する“金持ちの道楽”を見せつけたり、任天堂が有機ELモデルのスイッチを発表したり、日本を含む世界中で火山の噴火が活発化すると同時に富士山噴火の危機感を煽る陰毛論者が活発化したり、SDGsのハンパないゴリ押し、そして一部の曲で引用しているカニエ・ウェストがイェに改名したりと、本作は一種の未来予測的な作品となっていたのも事実。そんな2021年を象徴する一枚として、内容云々よりも今年の年間BESTのドンケツを飾るに相応しいという理由でのランクイン(これ以上は順位で察してとしか言えない)。ともあれ、来たるべき2022年に完全復活を予定しているPTが一足先にFソニーUK(Music For Nations)から発表したシングルの“Harridan”は、黒歴史もとい賛否両論の問題作となった『The Incident』ではなく、一作前の『Fear Of A Blank Planet』を彷彿とさせる作りで、恐らく来年リリースされるであろうアルバムが今から待ち遠しいし、その暁には2018年に行われたSWソロの奇跡の来日公演以来となる、そして伝説のウドーフェス以来?となる本家PTでの来日公演を期待したい(ドラムのギャヴィン・ハリソンは先日のキンクリで一足先に来日してるけど)。しかし、未だにこれが今年の作品なのが信じられないというか、もう遠い昔のような気がする。

12位 Deafheaven 『Infinite Granite』
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本作をレビューする前に前作の『普通の堕落した人間の愛』の(当時のままストップしていた)レビューを書き終わらなきゃで、やっとのことでその記事を完成させた後にTEAM-ABCの一員である某ノクティス王子が『普通の堕落した人間の愛』すなわち『不倫』をやらかしたという文春砲をブチ込まれたかと思えば、満を持して本作のレビュー記事をアップした直後に本作の鍵を握る「浜辺に寄せて返す美しい波」こと女優の浜辺美波が文春砲をブチ込まれてから、その直後に本作におけるもう一つの鍵を握る『シン・エヴァンゲリオン』の庵野秀明監督が手がける『シン・仮面ライダー』のヒロインとして浜辺美波が抜擢されたと聞いた時は、流石にSWもビックリの未来予測感あって笑った。でもOLDCODEXの解散は「シャレにならない、もう笑えない」し、同じTEAM-ABC男子部の立場からアドバイスするなら、ノクティス王子は硬派ゲーことFANZA版ラスオリのロボット役から人生やり直せばいいと思うよ。そのノクティス王子繋がりで例えるなら、少なくとも前作の『不倫』までは「私はFF14を続けるよ!」ならぬ「私はブラックゲイズを続けるよ!」を貫いてきたが、本作ではついにその牙城が崩れ去った。しかし、本作におけるUKロックおよびシューゲイザー化の伏線として、パワハラやらかし芸人こと伊集院光の深夜ラジオで日本のシューゲイザーバンドFor Tracy Hydeの曲が流れたのはちょっとした引力というか、ある種の未来予知だったのかもしれない。本作もSWの新譜と同様に賛否両論あるかもしれないが、少なからず個人的な今年の「Spotifyまとめ」の音楽ジャンルランキング2位にブラックゲイズが支持された大きな要因の一つである事には変わりない。

11位 For Tracy Hyde 『Ethernity』
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前途したように、今年の初めに伊集院パワハラ光の深夜ラジオから流れてきた時に「シューゲイザー化したYUKIじゃん」と思ってビビッときたバンドの一つ。そして、Deafheavenの『不倫』における西海岸と中西部のemo(イーモゥ)を紡ぎ出すロードムービー要素と、『Infinite Granite』におけるシューゲイザー/ドリーム・ポップ路線をつなぎ合わせる中間地点がフォトハイであり本作だった。もはや日本でツーマンしても全然おかしくないくらい、とにかく近作におけるDFHVNとのシンクロ率が異常で、往年のJ-POPを経由したフックに富んだキャッチーでノスタルジックなメロディとシューゲ/ドリーム・ポップあるいはインディフォークなどの様々なスタイルが調和したフォトハイ流のギターロックは、インディーズの青春ロードムービーさながらの物語を映し出す。また、作中にオバマ前大統領の演説をサンプリングしてるのもSWの新譜と共振してて面白い。

10位 CVLTE 『HEDONIST』
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今年のBMTH枠。正直、今年に入ってBMTHがシングルとしてポスト・マローンをオマージュした“DiE4u”をリリースした意図が全く読めなかったんだけど、先日リリースされた同曲のハイパーポップ風リミックスを耳にしたら、『amo』はもとより昨年末のEP『Post Human: Survival Horror』に始まりK-POPのaespaを経由してCVLTEの本EPまで一直線に繋がった瞬間、全てに納得した。要するに「最近のBMTHってハイパーポップ路線だったのか」と。本作の何がすごいって、一言で例えるなら「K-POP化したFuneral For A Friend」でありながらも、新世代メタルのコード・オレンジ・キッズが産み落とした日本の新世代ラウドシーンを代表するペことPaleduskをフィーチャリングする事で、ハイパーポップ化した近年のBMTHと直接的ではなく間接的に繋がるしたたかな頭の良さ、この一点に尽きる。そして、本作でフィーチャリングしている日本のハイパーポップ界におけるシャイニングスターである4s4kiは、(今年のフジロックで初めて観たけど)日本のアーティストで唯一BMTHとコラボできる存在だと確信させた。

9位 Mastodon 『Hushed and Grim』
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今年の俺感読者なんじゃねぇか説。というのも、昨年にDeftonesが発表した『Ohms』がヘヴィミュージックシーンに提示した“20年代のヘヴィネス”に対するドンからの回答が本作。その伊集院パワハラ光もといDeftonesとHum、そして盟友のBaronessが提示したオルタナティブな現代ポストメタルをはじめ、SWソロ等の対外的な要素で成り立った一枚。

8位 Every Time I Die 『Radical』
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曲がいい。

7位 ZillaKami 『DOG BOY』
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もう一つのBMTH枠。というのも、BMTHのフロントマンであるオリヴァー・サイクスがロシアの国民的音楽ユニットのIC3PEAKとのコラボ曲を発表したのは、BMTHのハイパーポップ化の流れを汲んだ動きなのは理解できたけど、まさか既に、というか昨年にトラップメタル界の二大巨頭であるジラとGhostmaneがIC3PEAKとコラボしてるなんて思ってもみなかったから、それを知った時は素で「嘘だろ・・・そこに直結する案件なのかよ」ってなった。ジラが敬愛するコリィ・テイラーのアナウンスから始まる本作は、Nirvanaに代表される90年代のオルタナ/グランジ、そして90年代後半に一世を風靡したKornやDeftonesに代表されるヌーメタルの解釈を通したエモラップならぬエモロックの傑作で、もはやラップそっちのけでカート・コバーンやコリィリスペクトに溢れたボーカルワークは愛しかない。紛れもなく昨年末の『Post Human: Survival Horror』以降のつながりの一部として組み込まれている一枚。完全に同じZ世代であり日本の(sic)boyをワンパンKOしちゃってる。

6位 Ulver 『Hexahedron』
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今年のエヴァ・インフィニティ枠。いわゆるライブ音源って普段なら年間ベストに入れるもんじゃないと思うけど、本作だけは完全に別。2020年に発表された『惡の華』の再構築であり、さしずめUlverフィーチャリング坂本龍一&久石譲&岡田拓郎みたいなインプロ感に溢れたミニマル・ミュージックは、聴いているだけで無限(インフィニティ)にトリップからのマトリックス状態に陥ること請け合いの一枚。

5位 The Armed 『Ultrapop』
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今年の俺的GOTYである『サイバーパンク2077』のサントラにも参加しているバンドならではの「ハイパーポップ!ハ~イ!」ならぬ「ウルトラポップ!ハ~イ!」な一枚。日本のハイパーポップ界を牽引する4s4kiは、それこそ『サイバーパンク2077』にビジュアル的にも音楽的にも適合するアーティストで、自分の中でThe Armedと4s4kiはほぼほぼ同ジャンル扱い。

4位 Parannoul / Asian Glow / sonhos tomam conta
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今年の碇シンジ枠。韓国ソウルとブラジルのサンパウロで活動するブッ壊れローファイメンタル三人衆が碇シンジ級のパリパリATフィールドを互いに中和させて、最終的に3本の槍(ガイウス・カシウス・ロンギヌス)を自分自身に突き刺してメンタル完全崩壊しちゃう傑作。

3位 Parannoul 『To See The Next Part Of The Dream』
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いわゆるぶっ壊れローファイメンタル三人衆のリーダー格が放つ、『新世紀エヴァンゲリオン』や『リリィシュシュのすべて』をはじめとする日本の90年代サブカルチャーの影響下にある新世代シューゲイザーの歴史的ぶっ壊れ名盤。

2位 Ad Nauseam 『Imperative Imperceptible Impulse』
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今年の俺的「Spotifyまとめ」の音楽ジャンルランキング3位の“デスメタル”を象徴する一枚。

1位 東京事変 『音楽』
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あくまで林檎ソロ派で、復活以前の事変は全くと言っていいほど刺さらなかったんだけど、本作は今年の年間ベストにランクインした全13枚の作品を一つに『総合』するに相応しい伊澤っち無双であり、「誰か」や「何か」に代わってドドンパ級にドンピシャのポスト・プログレッシブやってる名盤。事実、この年間ベスト記事も先日リリースした『総合』を聴きながら書いている。しかし、ドンケツとド頭がスティーヴン・ウィルソンと(日本のスティーヴン・ウィルソンである)椎名林檎なのは示唆的というか対比的というか、この二人でランキングの中道(センターライン)を保ってる気がして、とにかく色々な意味であまりにシックリし過ぎて好き。

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最後に年間BEST書いたのっていつだ?って、直ぐに思い出せないくらい久々の年間BESTを今年は何故書けているのか理由を述べると、それは11年間勤めたブラックメタル企業から退職してニートtokyoになったから、それ以上でもそれ以下でもないです。このランキングの選考理由としては、単純に今年を振り返って頭ん中に思い浮かんだ順から上に書いていっただけの雑なランキングでしかないんだけど、トップオブザ・トップを飾る東京事変が先日リリースしたオールタイム・ベストアルバム『総合』的な意味でも、一枚一枚の個人力は低いけど総合力だけは異常に高いAlbum of The Yearみたいな。また、事変や斉藤和義が参加したOriginal Loveのカバーアルバムというシティポップを経由して、今年の年間ベストソングの一つであるDADARAYの“花は買わない”や竹内まりや、そしてYUKIKAからのIUに繋がる感じも好き。

今年の俺的AOTY(Album of The Year)が上記の13枚の作品ならば、今年の俺的GOTY(Game of the Year)は間違いなく『サイバーパンク2077』だ。というのも、ハイパーポップ界の女王であるグライムスや日本のナマコプリ、年間BEST入りしたThe ArmedやデスメタルのTomb Moldなど多種多様な音楽ジャンルを網羅したハイパーポップなサントラをはじめ、『ポストヒューマン』以降にハイパーポップ路線に移行したBMTHを起点にPoppyやDana Dentata等のプレイリスト「Misfits 2.0」勢を経由して、日本の4s4kiやCVLTEまで今年一年の繋がりを示すような神ゲーであり、その音楽的な影響力や諸々の引力を加味したら余裕のGOTYですね。要するに、なぜ人々がPS5やXbox seriesXに飛びつくのかというと、サイパンのような本物のAAAタイトルのゲームを快適にプレイするためであり、決してインディーゲームをプレイするためではないんですね。

それに少し関わる話で、2021年は日本の音楽コンテンツで久々にくっせーコンテンツが登場して話題を呼んだ。それがFソニー案件の「THE FIRST TAKE」である。個人的に、最近のクソつまんねぇ日本の音楽業界には何かが足りないと思ってたんだけど、その回答とばかりに「THE FIRST TAKE」なるコンテンツが出てきて一周回って嬉しくなった。正直、「THE FIRST TAKE」に出てる奴ら全員消えたら日本の音楽偏差値バク上がりするんじゃねぇか説あって(←コラ)、ベセスダ期待の新作『スターフィールド』や『TES6』がプレイできない=負けハードが確定しているPS5を抱えたゲーム業界においても、超弩級にクッサいコンテンツを抱えた音楽業界においても、全てにおいてクソダサいことやってるFソニーは2秒で倒産しろって感じの2021年でした。ともあれ、来年2022年に期待する新作としては、FソニーUKからリリースされるであろうPTの復活作は当然の事ながら、DIR EN GREYの京とラルクのyukihiroを中心に結成されたPetit Brabanconのアルバムに期待したいのと、元ZOCの香椎かてぃが始めたガールズバンドHazeの動向に注目したい。というか、Petit BrabanconとHazeの対バンに期待w

晴れてニートtokyoとなった僕個人の2022年の目標としては、ベーシックインカムすら議論にならない時代遅れの化石国家日本は過去に置いてきたつもりで、暫くというか半年くらいは人ではなくお馬さんから毎月の給料を頂く未来人として生きていきたいと思います(Fソニー煽ったら先日の有馬記念でF4勝ってもうたやん・・・だる)。しかし、ニートになった途端に(少なくとも日本では)コロナ終息しつつあって笑うというか、ニート2秒で早くも世界が俺に労働を強制してきている・・・。そんなエセ未来人である僕が2022年の未来予測をするなら、11年前に仕事を始めた翌年に大きな災害が起こったので、その11年後に仕事を辞めた翌年となる2022年に(僕をトリガーとして)再び大きな災害が起こる予感がするので、日本列島の皆さん気をつけてください!富士山噴火!日本沈没!(←オメーが一番の陰毛論者だよw)

CVLTE - HEDONIST

Artist CVLTE
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EP 『HEDONIST』
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Tracklist
01. amen.
02. eat acid, see god.
03. hedonist.
04. dancing in the rain.
05. kuromi.

『amo』以降のBring Me The Horizonって、いわゆるハイパーポップの文脈で語るべきバンドに突然変異したのかもしれない。というのも、現代のポスト・インターネット~ハイパーポップの原点である伝説のMステバックレロシアンガールことt.A.T.u.、その正統後継者でありイーロン・マスクのパートナーでもあるグライムスとのコラボ曲を皮切りに、次作のEP『POST HUMAN:SURVIVAL HORROR』ではインターネット世代を象徴するアシュニコの代役としか思えなかったロンドンのNova Twinsとのコラボや、ハイパーポップの素養の一つであるLGBTQに代表されるジェンダーの垣根を超越した存在であるヤングブラッドとのコラボ、そして今年リリースした新曲となるポスト・マローンの“I Fall Apart”をオマージュした“DiE4u”、その現代ポップスターを模した同曲をsix impalaの手によりハイパーポップ風にリミックスするBMTHのしたたかさたるや。そして極めつけは現代ロシアの国民的男女ユニットであるIC3PEAKとオリヴァー・サイクスのコラボ、そのDiE4uIC3PEAKにおけるHELL 2 U!みたいなノリで数字の3をEと読ませたり、数字の4を前置詞のforと読ませる置き換え文化もヒップホップやハイパーポップ界隈では常套手段である。ちなみに、そのIC3PEAKがトラップメタル界の猛犬であるZillaKamiGhostmaneの二人とコラボしていると知った時は全てが繋がった気がしたというか、それこそSpotifyのハイパーポップ系プレイリストの「misfits 2.0」の一部としてBMTHが組み込まれているのが全ての答えです。つまりメタルとハイパーポップって一見遠い存在のようでいて、実は一部のシーンではめちゃくちゃ近い音楽ジャンルなんですね。


そのようにして、最近のBMTHおよびオリヴァー・サイクスはハイパーポップやヒップホップにおけるフィーチャリング文化を意識した活動をしている。また、ハイパーポップを語る上で欠かせない国の一つであるロシアのアーティストとのコラボをはじめ、ベセスダゲーこと『DOOM』のサントラを手がけたミック・ゴードンをエンジニアに迎え、小島秀夫ゲーこと『デス・ストランディング』とのコラボ曲を収録したEP『POST HUMAN:SURVIVAL HORROR』において、日本のカワイイメタルを代表するベビメタことBABYMETALとコラボすることで、ゲーム業界におけるハイパーポップを(The Armedやグライムス、日本のナマコプリが参加している)音楽的にもパンキッシュなビジュアル的にも“ポスト・ヒューマン”化した俺的GOTYこと『サイバーパンク2077』のサブカル文脈とシンクロさせる事に成功していた。また、そのベビメタとBMTHをダブルでパクってるボストン娘のPoppyもハイパーポップの文脈で語られるポッピスターである事は、グライムスとのコラボをはじめt.A.T.u.の名曲“All the Things She Said”をカヴァーしている点からも明らかだ。逆に言えば、ベビメタが急激にオワコン化した理由はハイパーポップ路線に移行できなかったこと、この一点に尽きるのかもしれない。

前述したように、昨今のBMTHおよびオリヴァー・サイクスと全く同じ価値観や現代ロックシーンに対する洞察力を持ったバンドがこの日本にも存在する。そのバンドこそ、今年の5月に1stアルバムとなる『praystation 2』を(PS2といい、一部の曲でキンハーの効果音を使ってたりするからケツ持ちはFソニーか?)、そして先日EPの『HEDONIST』をリリースした札幌出身のCVLTEだ。

彼らの音楽性を誤解を恐れずに極端な表現を用いて例えるなら、それは「ゾンビの如く土の中から蘇ってK-POP化したFuneral For A Friend」である。というのも、というのも、というのも、彼らこそ新世代メタルとハイパーポップをシンクロさせる事に世界で唯一成功したバンドなんじゃねぇか説あって、それこそ「セカンドライフとは一体なんだったのか?」みたいなメタバース的な世界観全開のジャケはもとより、そもそも「K-POP化したFuneral For A Friend」って何やねんというツッコミに対し、ハイパーポップならではのジェンダーレスなラップを披露する同郷の次世代ラッパーSleet Mageをフィーチャリングした一曲目の“amen.”を例に出して答えると、(ニートtokyoに出演経験がある時点で一方的にシンパシーを感じる)バンドのフロントマンでありFFAFのマシュー・デイヴィスの歌声にクリソツなAVIELのオートチューンを効かせたBTSばりのフロウを刻むエモラップと、00年代のUKロックというか往年のポストハードコアというかFFAF的な湿り気のあるメロディの作り方、また表題曲である三曲目の“hedonist.”ではイントロからクリーントーンのギターやK-POPのボーイズグループ然としたオートチューン/エモボイスを聴かせるキャッチーなポップチューンで、そして四曲目の“dancing in the rain.”では本家のFFAFとしか思えないような往年のUK69然とした懐かしいメロディが炸裂する。そんな彼らのメロディセンスは、UK新世代メタルのLoatheや今はなきロスプロとも否応にもシン9ロする。


ハイパーポップの影響下にあるK-POPといえば、それこそ自分のもう一人の自我であるアバターに出会い、新しい世界を経験するという、いかにもアバターを使った仮想空間=メタバースの世界観をコンセプトにSMエンターテインメントが送り出す次世代グループことaespaがその名をネクストレベルに轟かせているように(僕はウィンター推しと見せかけてジゼル推しのピョンテです)、五曲目の“kuromi.”でフィーチャリングした(グライムスやAlice Glassの影響下にある)日本のハイパーポップ界を牽引する4をA(ア)と読ませる246ッカーこと4s4kiからの影響は本作のジャケにメタ(バース)的に現れており、そしてCVLTEがいかにBMTHレベルの才能を持つバンドであるかを裏付けるのが、それこそ日本の若手ラウドロックシーンを牽引するハイパーポップ野郎と言っても過言じゃあないコード・オレンジ・キッズことPaleduskを(1stアルバムに引き続き)フィーチャリングした#2“eat acid, see god.”における、いわゆる『amo』以降に象徴される“20年代のヘヴィネス”すなわちGojiraから新世代メタルのCode OrangeBMTHに血脈を分かち合った(ダニ・フィルスをフィーチャリングした某曲の)金字塔的なリフ/ヘヴィネスを応用した、要するにCVLTEが持つハイパーポップの側面とPaleduskが持つハイパーポップという名のカオスな側面を『HEDONIST』というメタバース内で配合させるという、ちょっとトンデモナイことやってるんですね。しかし改めて、コード・オレンジ・キッズとして日本に産み落とされたがこの国内の革新的なバンドと一緒に「ハイパーポップ!ハ~イ!」みたいにピョンテごっこしてるのは素直に感慨深いものがある。


この曲のNYのアーティスト=Puppetをフィーチャリングした部分の歌メロをオリヴァー・サイクスに置き換えても俄然シックリくるというか、それこそNova Twinsコラボの逆バージョンとしか思えなかった。もしベビメタの次にBMTHが日本のアーティストとコラボする可能性があるとするなら、それは4s4kiしかいないと確信しているくらい、そんな国内のハイパーポップシーンにおける最先端とラウドシーンにおける最先端を多様性の一つとしてEPならではのバラエティに富んだ実験的な作風に昇華し、そして最近のBMTH(=オリヴァー・サイクス)と同じようにヒップホップのフィーチャリング文化を尊重するCVLTEの洞察力および審美眼は、彼らが(sic)boyよりも信用に値するバンドでありアーティストであることを意味している。

ハイパーポップならではのオートチューンはもとより、ノイズやグリッチなどの新世代メタルとシン96するヒップホップとラウドロックの中間点みたいな次世代を象徴するウルトラッピーなトラックメイクは、これからの現代ラウドミュージック界を林家ペーとともに盛り上げていくバンドである事を確信させる(正直、5月にリリースした1stアルバムよりも要点がまとまってて好き)。しっかし、そのヘヴィロックからのアプローチとヒップホップからのアプローチをミクスチャーした二大トラップメタルの『BOG BOY』ことZillaKamiと遊戯ボーイことGhostmaneの偉大さたるや・・・。ともあれ、aespaが創造するサイバーパンクなメタバース空間の中でずっと書きたかった伏線、その全てをシン9ロさせて(伏線)回収できたので(つまりaespaはメタル)、改めて彼らCVLTEには感謝しかない(4s4kiについての深堀りは別の機会に、別の視点で書くかも)。

Every Time I Die - Radical

Artist Every Time I Die
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Album 『Radical』
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Tracklist
01. Dark Distance
02. Sly
03. Planet Shit
05. A Colossal Wreck
06. Desperate Pleasures
07. All This And War
09. Hostile Architecture
10. AWOL
11. The Whip
12. White Void
13. Distress Rehearsal
14. sexsexsex
15. People Verses
16. We Go Together

ニューヨークはバッファロー出身の5人組、Every Time I Dieの約5年ぶり通算9作目となる『Radical』の何が凄いって、シンプルに「曲がいい」←この一言に尽きる。本当にこの一言に尽きるから他に言及する事がない。要するに、いわゆるエピタフ系ならではのカオティックな“コアさ”を極め尽くした強度の高い楽曲の連続。

それこそ、Knocked LooseVeinなどの今勢いに乗る新世代メタルの作品に携わっているウィル・パットニーが前作に引き続きプロデュース/エンジニアを担当しているだけあって、アルバムの幕開けを飾る#1“Dark Distance”からして、最近のKORNさながらのヌーイズムを感じさせるグルーヴィなリフでカオティックに展開すれば、PTHばりの狂騒曲的なアレンジとソリッドに刻むリフでゴッリゴリに畳みかける#2“Sly”、イントロからETIDとともに二大エピタフ系の一角を担うConvergeや初期のMastodonが光の速さで衝突した破天荒なロックンロールの#3“Planet Shit”、サザンロッカーとしてのブルージーな側面をチラ見せしながらダイナミックに展開するマヨマヨレーションなメロディック・パンクの#4“Post-Boredom”、打って変わってサノバビッチでカオティックなマスコア~ハードコア・パンクの#5“A Colossal Wreck”、メタルコアらしい強烈なブレイクダウンが炸裂する#6“Desperate Pleasures”、ニッコー・ヤマダ擁するアトランタの'68とコラボしたノイズコアの#7“All This And War”、クリーンボイス主体の哀愁のサザンロックを繰り広げる#8“Thing With Feathers”、ETIDの本領発揮とばかりのウネリを効かせたグルーヴィなリフを擁する#9“Hostile Architecture”、スラッジーなヘヴィネスをもって牛歩戦術を成功させる#11“The Whip”、初っ端からスラッシーな轟音リフで猪突猛進しながらケイオスがケイオスを呼ぶ#13“Distress Rehearsal”、【sex×3=3P】した過ぎて咽び泣いてる俺の煩悩が具現化したような#14“sexsexsex”、もはやGojira級のヘヴィネスを叩き込むドラマティックな#15“People Verses”、終始勃ちっぱなしのヘヴィネスの全てをぶっ放す#15“We Go Together”まで、なんだろう(飲んだことないけど)バイアグラを飲んだような気分に(錯覚)させる捨て曲なしの傑作です。

総合的に、過去イチでヘヴィ/メタリックかつガッツリとソリッドに刻んできているのでメタル耳にも馴染むし、前作比では彼らのアイデンティティの一つであるストーナーやサザンロック特有の南部臭が薄まり、それらを飛び越えてスラッジ級の重厚感溢れる鬼ヘヴィネスを轟かせる一方で、台頭する新世代メタルに負けじと芸歴20年を超えるベテランの意地を見せつけるような強靭なリフに次ぐリフの応酬が、ド頭からドン尻までポテンシャルを維持しながら終始勃ちっぱなしなのがEDとは無縁そうで素直に羨ましくなった。

Cynic - Ascension Codes

Artist Cynic
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Album 『Ascension Codes』
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Tracklist
1. Mu-54*
2. The Winged Ones
3. A'-va432
4. Elements and their Inhabitants
5. Ha-144
6. Mythical Serpents
7. Sha48*
8. 6th Dimensional Archetype
9. DNA Activation Template
10. Shar-216
11. Architects of Consciousness
12. DA'z-a86.4
13. Aurora
14. DU-*61.714285...
15. In a Multiverse Where Atoms Sing
16. A'jha108
18. Ec-ka72

なんだろう、今のCynicほど闇が深いバンドってなかなかお目にかかれない気がする。というのも、2014年に発表された前作の3rdアルバム『Kindly Bent to Free Us』以降、彼らの不仲説がにわかに囁かれ始めると、間もなくしてDEATHのドラマーでもありCynicの創始メンバーであるショーン・レイナートが脱退、そして2020年の初めに原因不明の事故で亡くなると、その数カ月後、同年の12月にベーシストであるショーン・マローンが亡くなったという信じられないような訃報が舞い込んでくる。正直、その時は「ん?ショーンってもっと前に亡くなったよな?これが噂のマンデラエフェクトか!?」と思いきや、“ショーン”は“ショーン”でも「もう一人のショーン」であるベースのショーン・マローンが亡くなったとの事で、シンプルに「同年に同名の二人のメンバーが亡くなるって、そんな事ある?」としか思えないような不幸というか、以前から不仲説が囁かれていた事を考えると余計に闇が深すぎてシャレにならない、もう笑えないってなった。

・・・そんなわけなんで、これから僕が書くCynicの約7年ぶりとなる4thアルバム『Ascension Codes』に関してのレビューは正統な評価ではないので信用しないでください。何故なら、もし批判的な文章を書いたら最後、フロントマンのポール・マスヴィダルもとい何者かによってインド密教の魔術で消されかねないというか、単純に命の危険に晒されたくないのでw

ポール・マスヴィダルの脳ミソ

ポール・マスヴィダルの頭脳と題して当時作った上記のクソコラ画像を見ながら前作の『Kindly Bent to Free Us』を振り返ってみると(これ何の画像だっけ?みたいなのもいくつかあるw)、少し言い方は悪いけどフォロワーのScale the Summitからのパクリや、近年のOpethPorcupine Tree『Fear Of A Blank Planet』からパクりまくった平凡なプログレで、それこそデビュー当時の『Focus』や奇跡の復活作となった『Traced in Air』のような(シシ)神がかり的な(シシ)神通力がまるで感じられない、パクリ魔のポッピーもビックリの駄作だった。

そんな、フォロワーからパクるという最低最悪の駄作から7年、鮮烈なデビューから解散、奇跡の再結成から不仲説、そしてカミングアウトからダブル・ショーンの死という、この長きにわたるメタル史においてその名を深く刻むであろう壮絶なバンド人生を歩んできたバンドの頭脳であるポール・マスヴィダルが放つ本作の『Ascension Codes』は、それこそタイトル通り人類を高次元の存在にアセンションする“コード”を打ち込むような、死(DEATH)を乗り越えるのでなく死(DEATH)をも超越する神や宗教における信仰すらないディストピアな精神世界を築き上げている。

本作におけるディストピア的な世界観を司る、曲タイトルが数字や記号で表記されたインタールード的な短い間奏からもわかるように、Cynicならではというかポールの特異な趣味嗜好が垣間見れるスピリチュアルなアンビエント~ニューエイジの自然崇拝、そのネイチャー的思想と民俗学的なオリエンタリズムが織りなす音響意識からは、他ならぬ名作ゲー『ニーア・オートマタ』のポスト・アポカリプティックな世界観に直結、および美しいサウンドトラックと共振するような、それはまるで地上に送り込まれた人間型アンドロイド(ヒューマノイド)と異星人が製造した機械生命体が争う傍らで、絶滅を逃れた人類はいかにアセンションするか?を思考に思考を重ねる、そんな『三体』の劉慈欣もビックリのSFチックな物語をイメージさせる。それこそ、復活作でリアル『もののけ姫』のシシ神様を地上に降臨させるも、人類が調子に乗ってパクりまくったら滅亡の危機に瀕し、そして地上にはムチムチのバイオロイドと機械兵器しか存在しなくなったディストピアみたいな。つまり、立て続けにメンバー二人を喪ったポールの喪失感が本作の世界観およびコンセプトの根っこの部分にあると言える。


デスメタルとジャズ/フュージョンを組み合わせた先駆者であり革新的な存在、そのパクリカスとは一線を画す真のオリジネイターとして、もはやニーチェばりに深淵を覗き説くかのような思慮深きプログレッシブ・ミュージックは、その世界観を構成する青葉市子ばりのアンビエント/ニューエイジの音響空間の中で著しい相乗効果をもたらしている。中でも、例えるなら巨匠キューブリックの名作SF映画『2001年宇宙の旅』における人工知能(AI)の先駆けであるHAL、あるいは『ニーア・オートマタ』におけるポッド153やポッド042を連想させるボカロSEの#9“DNA Activation Template”をはじめ、中盤のハイライトを飾る“Architects of Consciousness”は2ndアルバム『Traced in Air』をアセンションさせたような曲で、終盤のハイライトを飾るトラッピーなハイハットを刻む“Diamond Light Body”も近未来型バイオロイドのCynicを20年代仕様の高次元にアセンションプリーズさせた結果と言える。とにかく、最初から最後まで一貫して意識的(Consciousness)な思考をもって高次元へとエボリューションしてマトリックス状態(瞑想状態)に陥ること請け合いの、それこそTOCANAの女編集長がハマりそうなほどスピった作風となっている。確かに、ショーンの二人が欠けた状態であるはずの本作のが前作よりもCynicらしいという、何ともヒニックもとい皮肉な事態になってるのはアレっちゃアレだが、少なくとも僕が断言できるのは「前作は超えている」の一言だけです。それこそパクリマクリスティの前作は一体なんだったんだ?ってくらいに、あくまでCynicの体を成して曲が書けている事に驚かされた。ともあれ、冒頭でも言ったように信用しなくて結構ですけど、忖度なしに傑作ですこれ。

本作のスピった世界観を通して20年以降に現実世界で起こった悲劇的な出来事を解釈するならば、それこそダブル・ショーンの二人は亡くなったのではなくアセンショーンして高次元の存在に上昇しただけと考えたら、なんだろう少しばかり悲しみが癒えるというか、(普段から胡散臭いカルト的存在としてバカにしてるけど)たまにはスピってみるのも悪くないなって。

Mastodon - Hushed and Grim

Artist Mastodon
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Album 『Hushed and Grim』
Mastodon-Hushed-And-Grim

Tracklist
Disc I
01. Pain With An Anchor
02. The Crux
03. Sickle And Peace
04. More Than I Could Chew
05. The Beast
06. Skeleton Of Splendor

Disc II
01. Peace And Tranquility
02. Dagger
03. Had It All
04. Savage Lands
05. Gobblers Of Dregs
06. Eyes Of Serpents
07. Gigantium

USヘヴィミュージック界の“ドンファン”ことMastodonの約4年ぶり通算8作目となる『Hushed and Grim』。事前に先行シングルとなる“Pushing The Tides”を聴く限りでは、それこそ初期の獣性むき出しのカオティックなコアさとポストハードコア路線の5thアルバム『The Hunter』のキャッチーなリズムをミックスしたような、しかし『The Hunter』よりもっと初期型のリフで畳みかけるスタイルみたいな。実のところ、本作において露骨に歴代マストドンの面影を感じさせる曲って実質そのシングルだけで、バンド史上最長となる二枚組約86分に及ぶ本作の全貌は、たった数曲のシングルだけで説明できるようなそんなスケールの狭い作品では到底なかった。

本作のプロデュースには、キング・クリムゾンやラッシュの関連作品をはじめ、ピーター・ガブリエルやデヴィッド・シルヴィアン、TOOLやMuseなどのオルタナ/プログレ界を代表するバンドの作品に携わっているDavid Bottrillを迎えているだけあって、ディスク1の幕開けを飾る#1“Pain With An Anchor”からして、オールドスタイルのヘヴィメタルならではのクサメロを経由した叙情的なメロディ、不協和音を奏でるアトモスフェリックかつサイケデリックなリフレイン、ソリッドな“キザミ”を駆使した破天荒なヘヴィネス、プログレ然としたソロワークやダイナミックな楽曲構成まで、まさに本作の鍵を握る要素を一つに凝縮したような曲となっている。

まずは“キザミ”について。ディスク1では冒頭を飾る#1の低域をタイトに刻み込むソリッドなキザミを皮切りに、#2“The Crux”のプログレッシブ・ロックの専売特許であるテクニカルなインストパートにおける質量の低いスタイリッシュなキザミ、ソフトなプログレパートとポストメタル級の重厚感溢れる質量を蓄積したタイトなキザミ主体のヘヴィネスの対比を効かせた#3“Sickle And Peace”、引き続きイントロから質量豊富のポストメタリックなキザミを擁する#4“More Than I Could Chew”など、このディスク1では(それこそ“スラッシュメタル”という言葉を生み出したマルコム・ドームに捧げるかのような)往年のスラッシュメタルを希釈したポスト・スラッシュメタルならではの“キザミ”を軸とした、俄然ポストメタリックなスタイルを展開している。それこそ、彼らが歴史的名盤と謳われる4thアルバム『Crack The Skye』を境に“キザミの世界”に入門した結果、俗に言う黄金のキザミ”を会得したバンドが為せるファストからミドルに、質量/BPMを変幻自在に操ってキザミにキザミ尽くしている。もはやキザミ界の王であるTOOLFear Inoculumへの回答であるかの如し、そのキザミ意識の高さは過去イチと言っても過言じゃあない。

ここでTOOLFear Inoculumに関連する話を述べると、その“キザミ”のみならず、主にギターの音色やトーンを耳にすればわかるように、本作はサウンドプロダクションを含めた音作りという音楽制作における根本的な面でも従来のマストドンと一線を画してきている。それこそ、ヘヴィロック界のキングであるDeftonesが2020年に発表したOhmsにおいて“10年代のヘヴィネス”から“20年代のヘヴィネス”に更新してみせた、その現代ポストメタルの新しい形として披露された次世代のヘヴィネスと共鳴するかのような、それ即ち“20年代のヘヴィネス”に対するマストドンなりの回答であり、従来のクラシックな傾向から一転してモダンな音像に振り切って現代ポストメタル然としたヘヴィネスを轟かせている本作品は、お馴染みのPaul Romano氏が手がけたアートワークとシンクロするような発色のないモノクロームの世界観を描くように、名盤『Crack The Skye』経由のブルージーかつサイケデリックな側面を強調しながらも、過去一でテクニカル/プログレメタル然とした大胆不敵な楽曲構成力の高さと、その強度の高さが全盛期に肉薄する勢いすら感じさせる1枚となっている。

ディスク1の鍵を握る“キザミ”の他に、もう一つ別の鍵となる要素を挙げるとするなら、それは“プログレ”に他ならない。そもそもの話として、今ではマストドン=プログレのイメージを持っている人も少なくないだろうし、それは全くもって間違いではない。しかし、このディスク1における“プログレ”の概念は、例えばドンの代表作である『Crack The Skye』から連想される“プログレ”のソレとはまるで違っている。その本作におけるプログレを象徴する#5“The Beast”では、それこそ西海岸系インストみたいなイントロを皮切りに、曲中は『Crack The Skye』の系譜にあるサイケデリックでブルージーな雰囲気を漂わせるも、筆頭すべきギターのソロパートではスティーヴン・ウィルソンの4thアルバム『Hand. Cannot. Erase.』や5thアルバム『To The Bone』を連想させる明瞭なギターソロを披露している。続く“Skeleton Of Splendor”でも、冒頭のアルペジオギターが醸し出す湿り気のある仄暗い雰囲気からしてSWソロを彷彿とさせつつ、そして専属の鍵盤奏者が在籍するコテコテのプログレバンドみたいなキーボードのソロパートが導入されている。そのプログレらしいキーボードソロは、もはや頭から“メロディアス”な領域に突っ込んでるクラシックなハードロックチューンでシングルの#7“Teardrinker”にも容易く取り入れられている。

本作におけるアルペジオギターを積極的に多用したメロディアスでサイケデリックな世界観形成も、展開の豊富さも、ブルース/ハードロック的なソロワークも、現代プログレの代名詞であるドリムシの影響というよりは、先日復活を宣言したPorcupine Treeの頭脳であるスティーヴン・ウィルソンのソロ作品からインスパイアされたフレキシブルなオルタナ/プログレといった印象。そういった意味では、現代プログレの名盤『Crack The Skye』のプロデューサーであるブレンダン・オブライエンを再起用した前作の7thアルバム『Emperor Of Sand』みたいな、ガワだけを取り繕った形だけの『Crack The Skye』リバイバルではなく、いわゆるプログレという概念を新たに刷新した本作こそ『Crack The Skye』が正統進化した作品と言えるのかもしれない。

ここまで外に開かれたマストドンは未だかつて見た事がなかった。それこそ歴代最長のトータルタイムを誇る二枚組の超大作志向は、長年のライバルであり盟友Baronessを意識しての事だろうと容易に推測できるし、また本作における著しいオルタナ/プログレ志向についても、Baronessが一足先にオルタナ化した2019年作の傑作Gold & Greyという現代ポストメタルの最先端を誇示する、その名の通り金字塔であり革新的な内容に対する危機感というものが、これまで保守的な姿勢を貫いてきたドンの思想をリベラル側に突き動かしたのかもしれない。

ディスク1を司るオルタナ/プログレなアプローチを引き継いで、ディスク2の幕開けを飾る“Peace And Tranquility”では、冒頭からプログレはプログレでもバンドのテクニカルな側面を押し出した盟友Baronessリスペクトなストーナーメタルを繰り広げる。インド周辺の民族楽器であるサーランギーやパーカッションが織りなす、オリエンタルでサイケデリックな世界観を強調した“Dagger”、往年のDTを彷彿とさせる哀愁むき出しのアルペジオギターを軸にThou顔負けのスローなヘヴィロックを展開する“Had It All”、ディスク1のアグレッシブでメタリックな側面を踏襲した“Savage Lands”、それこそ現代ポストメタル/ドゥームメタル界を牽引するPallbearerと共振するドゥーミーな序盤から、一転してオルタナティブな側面を強調しながらダイナミックに展開する“Gobblers Of Dregs”、ドンの音楽史においてこんな洗練されたメロディ聴いたことないってくらい、それこそSWソロと錯覚するレベルのイントロのキーボードから始まる“Eyes Of Serpents”、そしてディスク2のラストを飾る“Gigantium”は、DeftonesOhmsとともに“20年代のヘヴィネス”をアップデイトしたHumInletリスペクトなヘヴィ・シューゲイズ然としたギターワークを耳にしたら、なんだか急に微笑ましくなってクソ気持ち悪い顔で(ニチャア)ってなった。何故なら、ここで、最後の最後で全部繋がるカタルシスったらないというか、この曲のシューゲイザー然としたギターに本作の全てが詰まってるからね。

そんな風に現代ポストメタルを象徴するPallbearerからのHumというヘヴィミュージックシーンのトレンドをかっ喰らい、いかに本作がオルタナや現代ポストメタルを新規の軸に制作されたのかを証明すると同時に、本作の裏コンセプトとしてある「オルタナ化したバロネス」に対する「オルタナ化したマストドン」なりの答えが起承転結を迎える。とにかく特定のどこがとか、特定の何かが凄いとか、そういう次元の話じゃなくて、芸歴20年を超えるベテランの経験からくるプレイヤーとしてのパフォーマンス/スキル、それらを踏まえた総合力の高さとメタルとしての強度が尋常じゃなく高い。なんだろう、コロナ禍において内に抱えた暗黒エネルギーみたいなのを全て外側に開放して、やれること全部やってみた結果が本作というか、例えばジャンルは違うけどオルタナ化したAlcestでお馴染みのアルバム『Kodama』を聴いてるような感覚に近い。

確かに、確かにデビュー当時から一貫してヘヴィミュージック界のオリジネイターとしてシーンの一線を張ってきた彼らが、悪く言えばその辺のテクニカル/プログレ・メタルバンド勢がやってそうなアルペジオギターを多用した過去イチでメロディアスなインストゥルメンタルを筆頭に、プログロック的な小技を効かせたリフメイクや雰囲気シンセというより明瞭な姿形をしたシンセのメロディ、そして近年のメタル界におけるトレンドに迎合するかのような、過去イチで“ドンらしからぬ”姿勢に違和感を覚える人も少なくないと思う。しかし、それは決してオリジナリティが欠如しているのではなく、逆にオリジナリティを確立したバンドだからこそ可能にした作品だと思う。それを肯定的に言うなら、過去作のどれとも干渉しない対外的な外的要因を軸とした本作の中だけで完結する高いオリジナリティを内包している。何故なら人間、歳を重ねれば重ねるほど「変化」を嫌う傾向にあるのが定説なのにも関わらず、この歳になっても新しい試みに挑戦する獣性むき出しの若々しくストイックな姿勢に、そしてコレをドンがやるという新鮮なギャップとフレキシブルな感性に只々驚かされたし、改めてやっぱこいつら天才だと唸った一枚。これは何度も言ってるけど、おいら、今回のようなシーンを代表するオリジネイターがトレンドに迎合した作品を生み出す瞬間に猛烈な“エモさ”を見い出す変態という名の紳士なんで、この『Hushed and Grim』はまさにその“エモさ”を体感できる作品なんですね。

結論からすると、やはり2019年のBaronessの名盤Gold & Greyをはじめ、2020年にDeftonesOhmsHumInletが提唱した“20年代のヘヴィネス”が早くもシーンに行き届いていた事を、これ以上ない圧倒的な説得力をもって回答してみせたのが、他ならぬヘヴィミュージック界の異端児であるドンだった。もはや、こいつらWelcome To My ”俺の感性” の読者なんじゃねぇか説が芽生えるほど、過去に自分が書いた“20年代のヘヴィネス”に関する話の流れをスムースにアップデイトしている気がしてならなかった。つまり「僕が考えた最強のドン」をそのままやってきてるような作品で、恐らく日本で俺しか解けない本作という名の問題は流石に解読しがいがあったわ。しっかし、こいつら日本のラジオネーム【スティーヴン・ウィルソン】をナメ過ぎだろ・・・むしろ俺レベルになると、聴く前からDeftonesOhmsをブログのヘッダー/トップ絵にする事で既にほぼ解読してるっつーの。そして、このタイミングでPorcupine Treeの復活だろ?こんなん“引力”エグ過ぎるし、興奮しすぎて自律神経バグるってw
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