Artist Defeater
Album 『Defeater』
Tracklist
久々に2ndアルバムの名曲“Dear Father”を聴いたら「ディァ゙ファ゙ザァ゙!ディァ゙ファ゙ザァ゙!」と顔クシャクシャにして泣き叫びながら胸掻きむしりたくなる衝動に駆られた、そんなマサチューセッツはボストン出身のメロディック・ハードコアバンド=Defeaterの名門エピタフレコードからリリースされた約4年ぶりとなる5thアルバムは、自身のバンド名を掲げた初のセルフタイトル作品。
Album 『Defeater』
Tracklist
01. The Worst of Fates
02. List & Heel
03. Atheists in Foxholes
04. Mothers' Sons
05. Desperate
06. All Roads
07. Stale Smoke
08. Dealer / Debtor
09. No Guilt
10. Hourglass
11. No Man Born Evil
久々に2ndアルバムの名曲“Dear Father”を聴いたら「ディァ゙ファ゙ザァ゙!ディァ゙ファ゙ザァ゙!」と顔クシャクシャにして泣き叫びながら胸掻きむしりたくなる衝動に駆られた、そんなマサチューセッツはボストン出身のメロディック・ハードコアバンド=Defeaterの名門エピタフレコードからリリースされた約4年ぶりとなる5thアルバムは、自身のバンド名を掲げた初のセルフタイトル作品。
初っ端から「I Won’t Be Coming Back Home」という意味深な歌詞から不穏な幕開けを暗示する#1“The Worst of Fates”からして、仲間たちとバカやって青春時代を謳歌していたあの頃の青春パンクとは一転して重苦しいダークでヘヴィな世界観を繰り広げ、続く#2“List & Heel”では仄暗い水の底から、あるいは陽の当たらない真っ暗闇の独房の片隅で虚しくこだまする助けを呼ぶ悲痛な叫びと堕ちるとこまで堕ちた男の悲壮感が溢れ出す慟哭のメロディが、聴き手のメンタルを“ドン底”へと突き落とすかのような一種の“堕落コア”で、今から9年前の2ndアルバム『Empty Days & Sleepless Nights』の冒頭と今作の冒頭を比較すると同じバンドとは到底思えない変貌っぷりに驚愕した。
この変貌っぷりを例えるなら、人生無敵だったはずの10代のイキリハーコーキッズがある時から道を踏み外して、ギャンブル、ドラッグ、酒に溺れてアラフォー髭面のヤサグレたおっさんになって、人生最後の一発逆転狙いで裏カジノのポーカーに残りの全財産を全ベットするも見事に惨敗して、「もう終わりだぁ!」と人生に絶望して悲観主義者=ペシミストとなったリアルカイジの転落人生を見ているかの如し劇的な変わりよう。なんだろう、ドラッグでハイになった反動で極度の鬱状態に陥ってる感覚。それこそ日本の公営ギャンブルの競馬で例えるなら、つい最近で言うと芝のG1馬が初ダート挑戦で重賞勝利したモズアスコットみたいな感じ(モズアスコットは買えた)(なお相手)。
まず一つ目にフロントマン=デレク・アーシャンボルトの声が汚な過ぎて、初めて聴いた時は本当にボーカル変わったかと思った。初期BMTHのオリヴァー・サイクスっぽい典型的なエモ/スクリーモスタイルの歌声だったのが、なんだか酒焼けしてPower Tripのライリー・ゲイルみたくなってる。この辺も悲観主義者のオッサンが主役の“堕落コア”に合わせて“あえて”喉を潰したのか、それともリアルに堕落した生活を送った「ありのままの姿」なのかは不明。
二つ目は、その冒頭の冒頭から体の軋みや歪みを体現するかのような歪んだギター、それこそ在りし日のKEN modeを彷彿とさせるノイズロックばりに低音効かせまくりの骨太なベースライン、それらの「とにかく汚い音の変化」を象徴する、冒頭からザラついたギターを乗せて猪突猛進するBlack Breathばりのクラストパンクの#3“Atheists in Foxholes”、筆頭すべき今作のパンチラインとなる#5“Desperate”は、レジェンドEarthやTrue Widowなどのストーナー/サイケならではの泥臭いダーティさと、Cult of Lunaをはじめとする轟音系ポストメタル/スロウコアの内省的なダウナーさが共存した、要するにバンドのローなテンションや音の感度がドゥームやスラッジあるいはクラストのそれで、まるで年を重ねるにつれて高域が聞き取りづらくなるという医学的な根拠を身をもって証明するかのように、年齢と反比例するかの如く音の腰は低い重心を保ち、中年のおっさんが聞き取りやすい低域重視のサウンド・スタイルに変化している。そう言った意味でも、俄然それらのアンダーグランド・メタル界隈に精通するヘヴィでダークならぬ“ダート”な音作りで、(初期の頃からメタリックな側面はあったし、だからこそ気に入ったバンドなんだけど)同時にメロディの作りがメロコアよりもメタル寄りの点でも俄然メタリック・ハードコアに近いノリで聴けなくもない。これはどうでもいいけど、#3のアウトロがMastodonの『Crack the Skye』っぽくて半ば強引に丼と共振できなくもないw
じゃあ完全にメロコアからメタルになったかと言えばそうでもなくて、息つく暇も与えないノンストップかつギャップレスに曲を繋いでいく流れはメロコアならではの焦燥感を作る演出だし、またそのギャップレスな流れを利用した激情的な曲構成(主に#7〜#8の流れ)や持ち前の胸掻き毟りたくなる衝動的かつ刹那的なメロディは、言うなれば2ndアルバムのハイな高揚感から転換してローな高揚感=静なる激情を誘発する。このメロディの本質的な部分は紛れもなく『Defeater』そのものだし、つまり扇情的かつエピックで激情的なメロディセンスは美メロが悲メロに変わっただけで本質的には何一つ不変。むしろ地べたに這いつくばって泥まみれになりながらも生きながらえる、“底”まで堕ちきったド底辺男の背中が醸し出す哀愁が宿ったメロディは、その辺のヘタなエモよりもエモい「本物のエモ」である。
そして、今作が何故セルフタイトルを掲げているのか?その意味を知ることとなるのがラストの#11“No Man Born Evil”で、まるで失った青春を取り戻すかのように、真っ暗闇の道に希望という名の光が差し込んでくるかのようなカタルシス全開のラストは、それこそ全世界の悲観主義者=ペシミストに贈るレクイエムだ。つい衝動的に胸掻き毟りたくなって胸掻きむしったら中年オジサンのモジャモジャの胸毛を掻きむしっていた気分だ。ハッ、この毟り取った胸毛が「エモさ」の代償なのか・・・?
ちょっと待って、めちゃめちゃ完成度高いやんと。これ普通に傑作やんと。これヘタしたら2ndアルバム超えてますやんと。それもそのはず、今作の共同プロデューサーにはNothingの2ndアルバムやLa Disputeでもお馴染みの、この手のエモ/スクリーモ界隈で知らない人はいない信頼と安心のウィル・イップってんだから納得(ちなみにマスタリングはSterling Sound)。しかしながら【エピタフ× Will Yip】とか、競馬で例えるならこの【血統×調教師】コンビは「買い」と言ってるようなもんです。しかし改めて、あの2ndアルバム以降全く冴えなかった終わったバンドを完全復活させるウィル・イップってやっぱ天才だと思うし、この復活作でセルフタイトルを冠する意味を考えたらエモ過ぎて泣ける。