Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

2018年度BEST

デフヘヴン - 普通の堕落した人間の愛

Artist Deafheaven
deafheaven

Album Ordinary Corrupt Human Love
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Tracklist
1. You Without End
3. Canary Yellow
4. Near
5. Glint
7. Worthless Animal

人は心のなかに、いまだ存在していないいくつかの場をもっており、そこに苦しみが入ることでその場は存在するようになる----------レオン・ブロワ


『真実の愛』とは・・・それは多分、もしかすると、例えばこのクソサイテーな世界の片隅で、クソみたいな胸いっぱいの愛を叫ぶのが新生アイドル研究会のBiS(二期)なら、このクソサイコーな西海岸のド真ん中で普通の堕落した人間の愛を叫ぶバンドが彼らDeafheavenなのかもしれない。そんなDFHVNの約3年ぶりとなる4thアルバムOrdinary Corrupt Human Love、このタイトルはイギリスの小説家グレアム・グリーン『情事の終り(The End Of The Affair)』から引用したものでで、そのOrdinary Corrupt Human Loveすなわち普通堕落した人間とは、物語の主人公である作家モーリスベンドリックスと不倫関係にある人妻サラ・マイルズが自身の日記に書き残した言葉である(いわゆる「不倫」を少しカッコよく言ったのが普通の堕落した人間の愛というわけ)。この小説の内容としては、それは「禁断の愛」か?それとも「真実の愛」か?その狭間で神(キリスト)の存在すなわち神(あなた)への信仰心を問いかけ、そして「愛と神」の間で激しく揺れ動く人間の情念を赤裸々に暴き出す究極のラブ・ストーリーである。

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おいら、彼らの音楽を比喩する時に必ずと言っていいほど用意する画像がある。それが、日系三世のグレッグ・アラキ監督の映画『ミステリアス・スキン(謎めいた肌)』の冒頭、いわゆるBUKKAKEのメタファーを描写する衝撃のシーンだ。DFHVNは、いわゆる新世代メタルの金字塔と呼び声の高い歴史的名盤サンベイザーの中で、思春期真っ只中のティーンエイジャーが生まれて初めて精通する瞬間を刹那的に描き出したかと思えば、一転して次作の3rdアルバム『シン・バミューダ』では、「イカなきゃ」という使命感に駆られた汁男優の白濁色のラブシャワーをBUKKAKEられたAV女優の笑顔の裏側に潜むドス黒い闇、あるいはAV男優吉村卓に顔面ベロチュウされまくって引退した桃谷エリカの絶望感を、地平線のように果てしなく続く激情をもって描ききっていた。彼らは、いつだって自らの音楽の中に人間が犯した「罪と罰」、「祈りと赦し」を神に乞い続けてきた。

近年、自分の中でここ数年で最も衝撃的な出来事が、音楽界隈ではなく海外ドラマ界隈で起こった。それこそ、シーズン1が公開されるとまたたく間に世界中でブームを起こしたNetflixオリジナルドラマ『13の理由』のシーズン2の1話をちょうど見終えた時だった。普段からNetflixにあるドラマシリーズを嗜んでいる人には伝わるはずだけど、Netflixドラマ特有の最後のクレジットをすっ飛ばして次の話に移る自動スキップ機能が発動する前にほんの一瞬だけ映る一番最初のクレジットに、あのグレッグ・アラキ(Gregg Araki)の名前が出てきた。その瞬間、僕は「え、ちょっと待って、いまグレッグ・アラキ(GREGG ARAKI)って出なかった?え?」って、初めは幻覚なんじゃねぇかと自分の目を疑った。「絶対にありえないこと」が起こっていることに一瞬戸惑った。そのまま続けて2話も見た。2話のクレジットもグレッグ・アラキだった。僕は嬉しくて涙が出た。

林家ペー

何を隠そう、おいら、もう10年以上も前に映画『ミステリアス・スキン』を観て、まだ今ほどブレイクしていない精々子役上がりのジョセフ・ゴードン=レヴィットくんを初めて目にした時、その役柄といいアジア人体型に近い華奢な体つきに妙な親近感を感じて男ながらに一目惚れしたのと、しまいには「抱きたい」と思っちゃったんだからしょうがない(それぐらい衝撃的な出会いだった)。で、この映画での体を張った演技やラブコメ映画『500日のサマー』をキッカケに一気にハリウッドスターに駆け上がったジョセフくんと、映画『ドント・ブリーズ』『13の理由』の主演を務め一躍人気俳優の仲間入りを果たしたディラン・ミネットくんは似た者同士というか、役者としてかなり近いフィーリングを僕は感じ取っていた。だから尚さら、こうやってグレッグ・アラキ『13の理由』が十数年の時を経て繋がったのは、こんな引かれ合い見たことないってくらい驚きというか奇跡的な出来事で、というか、また今気づいたけどシーズン1から複数話監督してたみたいで俄然驚いた(自分の気づかなさに)。そもそも『13の理由』のテーマの一つであるLGBTQ.Q.に対する差別や性暴力みたいな事って、それこそグレッグ・アラキ『ミステリアス・スキン』の中で表現してたりするわけで。ちなみに、グレッグが監督したドラマシリーズで最も重要な1話と2話ともにグレッグ・アラキのゲイならではの”性的嗜好”が画に表れていて、個人的にこれはもう『ミステリアス・スキン』の地続きの続編としか観れなかった。そう考えたら、この出会いは奇跡でも何でもない、ただの必然だったように思う。しかし、映画『ミステリアス・スキン』の内容が内容だけに、今や売れっ子となったジョセフくんが円盤化NGにしてるんじゃねえかと疑ってて、もしそうならNetflixが責任を持って配信すべきでしょってずっと思ってたんだけど、ちょっと調べてみたら2017年に日本でも円盤化されたと知ってソッコーでポチったけど、何か質問ある?(ちなみに、円盤の特典はゴードンくんの生写真w)

(ここまでの文章は、2018年8月13日に書いた文を微編集したもの)

本作のアートワークに描かれた、風を切るように颯爽と情熱的にマフラーを靡かせるダンディなグラサン姿のパンク婆からして、何やらこれまでとは違う雰囲気を醸し出す。幕開けを飾る#1“You Without End”からして、彼らの地元であるサンフランシスコが位置する西海岸のビーチの浜辺に寄せては返す美しいさざ波(浜辺美波)のSEとともに、まるで官能小説の一幕にありがちな事後のピロートークのような、フェミニンでアンニュイ、ホモセクシャルでハラスメントな倦怠感むき出しのギター、そしてエルトン・ジョン顔負けのジャズ風のピアノが流れ出し、“あの頃”をフラッシュバックさせる女性の語り声(スポークン・ワード)が「過去」の記憶を呼び起こす。それはまるで、かつてのダチでありバンドメンバーだったニック・バセット率いるWhirrというルーツと原点回帰を示唆するような、まだプロではなくただ純粋に音楽が好きだった“あの頃”の親友ニックと共に「この指Demoマジにサイコー過ぎるだろwww俺たちピッチに見つかっちゃうかもなwwwチュパチュパwwwこの指ハッピーターンの粉の味して超ウメェwwwお前も舐めてみな、飛ぶぞwww」だなんだと、西海岸の浜辺でワチャワチャはしゃいでいた“あの頃”の淡い思い出が蘇る。

未来への希望に満ちていた青春時代、いつしか疎遠になってしまったニックと交わした言葉、それが最後の会話になるとも知らずに、And then the world will grow(ズッ友だよ~♪)And then the world will grow(ズッ友だよ~♪)と約束したひと夏の青春の記憶を運んでくるコーラスワークと共鳴するように、ズットモダヤ゛ォ゛ォ゛!!ズットモダヤ゛ォ゛ォ゛!!と青春の痛みを痛みで補うようにシャウトするフロントマンのジョージ・クラーク、そして思春期の黒歴史が走馬灯のようにフラッシュバックさせる、衝動的に胸を掻きむしりたくなるアキバ系ギタリスト=ケリー・マッコイが奏でるトレモロに呼応する、それは怒りか、それとも愛か、もはや体がねじ切れるんじゃねぇかくらいのスクリーム→イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛ヤ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!は、それはまるで西海岸の名所である砂漠地帯のデスバレー(死の谷)へと続く道、道路脇にパームツリーが立ち並ぶ灼熱のアスファルトが照らし出す蜃気楼の中で、亡霊のように浮かんでは消え、そしてまたおぼろげに浮かんでは消える、そんな燃え盛るようなむき出しの愛を込めたジョージ・クラークの叫びは、それこそ冒頭に書いた「人は心の隙間を苦痛で埋めることで、その存在証明を示す」というフランスの小説家レオン・ブロワの言葉を実践するように、苦しみや痛みを叫ぶことで心に空いた隙間を埋めていくかのごとし。

確かに、DFHVNの作品にはピアノをフィーチャーした楽曲がバンドの個性を際立たせる役割を担っており、そういった意味ではDFHVNを象徴する最たる楽器がピアノと言っても過言ではないほど、彼らにとってピアノは切っても切れない関係にあって、特に本作ではそのピアノが音出しの一発目からメインの旋律として機能させている所からも、あらゆる面で過去作と一線を画す作品である事を示唆している。というよりは、それこそ2ndアルバム『サンベイザー』の根幹部を担う“Dream House”からの“Irresistible”というピアノインストの世界線と現在を紡ぎ出す続編と解釈するのもアリかもしれない。また、この“You Without End”に至っては、他の楽曲と比較しても意図的にマイルドなサウンド・プロダクションに聴こえるというか、なんだろう、いい意味で普通のロックバンドじゃないけど、ある種のピアノ・ロック的な“エルトンメタル”あるいは“エルトンゲイズ”とでも呼称したいくらいには、ピアノを軸に構築された楽曲と言える。


デスバレーの熱波に頭がやられた影響か、二曲目の“Honeycomb”では先ほどまでの優美で甘味な音世界から一転、冒頭の不穏なSEから青春時代の淡い思い出がズタズタに切り裂かれ、エルム街の悪夢が襲いかかるようなBlackgaze然としたゲイズギターや思春期のトラウマをエグり出すようなトレモロが、激しい動悸とともに徐々に加速していくBPM(平常心)に合わせて狂気乱舞したかと思えば、4分30秒以降の「シュ~」とパンク婆が高速で風を切るような擬音を合図に、まるで気分は海外ドラマ『フルハウス』のOPとばかり、(地元愛に溢れたMVにも登場する)西海岸の名所であるゴールデン・ゲート・ブリッジを時速300キロで(道路脇から飛び抜けちゃう勢いで)リア充がウェーイ!と突っ走るような、まるで日本のメロコアや青春パンクばりに爽やかなギターソロが炸裂するロックンロールゲイズを繰り広げる(この時のドラムがクソ気持ちいい)。このタイミングでメタル界の格言であるアチエネはメロコアの正統後継者としてデフヘヴンはメロコアが爆誕するという神展開。

アメリカ屈指の経済都市としても知られるカリフォルニア州といえば、バークレー出身のグリーン・デイをはじめとする青春パンクやメロコア、90年代のパンクブームを象徴する通称“エピタフ系”と呼ばれるバンドが主流である。ある意味で「デフヘヴンはメロコア」と仮定するならば、このDFHVNもLAパンクの一種としてカテゴライズできなくもない。もちろん、彼らの地元サンフランシスコのバンドといえばメタル界のレジェンドであるメタリカが最も有名だが、そんな彼らに対するジモティー愛は既に前作の『シン・バミューダ』で示している通りだ。

実は、この『普通の堕落した人間の愛』って、サンフランシスコという“一つの州”の概念を超えた“一つの国”への地元愛や土着愛に満ち溢れたマイルドヤンキー系ブラックであると同時に、DFHVNのもう一つのルーツ=第二の故郷がアメリカ中西部にあることを示唆する作品でもある。そのアメリカ中西部といえば、90年代に独自のエモシーンを確立した土地として知られ、いわゆる「エモ」ではなく伝統的な「emo(イーモゥ)」の精神を受け継ぐ、American Footballに代表されるようなMidwest emoが盛んである。何を隠そう、本作は全編に渡ってメロディの湿度がMidwest emoを経由している気がしてならなくて、そのアメリカ中西部が生み出した本物のemo(イーモゥ)への憧憬が顕著に現れたのが三曲目の“Canary Yellow”である。この曲はemoやポスト・ハードコアをルーツとするポストメタルで、このクソサイテーなモノクロの世界に蜜蜂風味のキャンディポップのフルーティな香りとカラフルな彩りを施すメロディ、リズム隊が織りなすマスロックをイメージさせる徹底したグルーヴ、そしてクライマックスでのケリー・マッコイによるギタリストとしての遊び心を忘れないブルージーなソロワークから、“あの頃”の地元のマブダチと一緒に肩を組んで童話『かごめかごめ』のような円を作って、皆でOn and on and on we choke on(死ぬまで一生ズッ友だよ~♪)On and on and on we choke on(死ぬまで一生ズッ友だよ~♪)とシンガロングする輪の中心で『真実の愛』を叫ぶジョージ・クラーク→

ズットモダヤ゛ォ゛ォ゛!!ズットモダヤ゛ォ゛ォ゛!!

四曲目の“Near”は、Alcestとのコラボでも知られるスロウダイヴや一発屋と化したシガレッツ・アフター・セックスを連想させるスロウコア/ドリーム・ポップで、この曲では驚くべき事にジョージがバンド史上初となるクリーンボイスを披露している。このジョージのクリーンボイス導入は、2021年8月20日にリリースされる彼らの5thアルバム『Infinite Granite』への伏線となっている。


小説『情事の終り』の主人公モーリス・ベンドリックスとその愛人サラ、二人の間を引き裂くのは悪魔か、それとも神か。憎しみと妬みが欺瞞と疑惑を生み、互いの想いはすれ違い、そして神への信仰から食い違う愛の形に対面した二人の苦悩が儚く散りゆくイントロのメロディから、突如としてシングルの“From The Kettle Onto The Coil”のセルフオマージュの如く唸るようなゲイズギターが炸裂する#5“Glint”、複数の作家・小説家から引用した情緒的で官能的な本作品のロマン主義を象徴する#6“Night People”は、『普通の堕落した人間の愛』を求めて暗闇の世界を彷徨うサラの情熱的な想いと『真実の愛』に気づいたモーリスが悲哀の恋文あるいは激情的なロマンスを語り合うかのような二人の求愛行為、その二人を演じるようにしてレーベルメイトのSSWチェルシー・ウルフとジョージ(クリーンボイス)がデュエットするピアノバラードで、いわゆるコンセプト・アルバムとしての側面が色濃い作風だからこそ可能にした楽曲と言える。

ピアノをフィーチャーした#1“You Without End”から漂うそこはかとないジャズ・ロック的な伏線は、アルバムのラストを飾る#7“Worthless Animal”で見事に回収される事となる。#1における「いい意味で普通のロックバンド」たらしめている“普遍性”とその要因となるキーマンこそ、他ならぬ本作から新加入したベーシストのクリス・ジョンソンによるものだと確信できる。何故なら、以前までのDFHVNって極端な話だけどメタル界の格言である「ベースいらなくね」案件のサウンドで、しかし本作では一転して「ベースいるくね」のバンドに大変身を遂げている。特に#7ではジャズいアプローチをもってバンドに新しい風を運んでおり、そんな彼のブッリブリなベースラインとドラムのダニエル・トレイシーが織りなすリズム隊のプレイが、バンド史上最高のグルーヴ感とバチグソなタイト感を生み出している。気のせいか、BPM指数が体感的に歴代最低に感じるのも、同じBPMなのに彼のプレイによって俄然タイトなイメージに錯覚させるというか、なんだろう、「ロックバンドとしてのデフヘヴン」を司る上で欠かせない最後のピースがカチッとハマった感。そして、その「ロックバンドとしての普遍性」が今後の彼らにもたらすものとは?それこそメタルというジャンルを超越したモンスターロックバンドとしての、つまり“ポスト・メタリカ”としての座である(ごめん盛った)。そういった意味では、今の彼らは俄然フジロックじゃなくてサマソニで観たいバンドになった。

全ての物語に“始まり”があれば、それはいつか“終わり”を迎える。愛人サラの突然の死によって、悲劇的な幕切れを迎えた三角関係のその後。小説『情事の終り』の終盤に示される答えは、不倫という『普通の堕落した人間の愛』ではなく、妬みや憎悪を超えた先にある“隣人愛”だった。著者であるグレアム・グリーンは、キリスト教における“隣人愛”もまた、人間を肯定する正しい愛の形、あるいは性別を超えた人間愛であると。小説の終盤、いわゆる腐女子視点だとカップリングできちゃう主人公モーリス・ベンドリックスとサラの夫ヘンリー・マイルズの間に奇妙な友情が芽生え、サラの亡き後に恋敵であるはずの男二人で同棲生活を始めちゃうも、なんだかんだで最終的には神に全てを寝取られるという、これがホントの神展開w

「こいつらどんだけしたたかで頭いいんだ」と改めて感心するのは、小説『情事の終り』の終盤で提示されたサラと主人公ベンドリックスの『真実の愛』と見せかけた男同士の禁断の“隣人愛”と、本作『普通の堕落した人間の愛』における地元愛と見せかけた中西部(Midwest emo)に対する“隣人愛”を共振させている点で(これはゲイと揶揄されたDFHVNの隠語的なメタファーである)、つまり本作は地元愛と中西部への憧憬、この2つの州や地域を股にかけた青春時代の記憶(ノスタルジー)と自らのルーツ(DNA)を辿る音の旅であると。それこそ“音の旅”といえば、イギリスのアナセマも西海岸を舞台にした遺作を発表したが、本作もまたサンフランシスコ生まれのネイティブ仲間で地元を巡ってたら飛ばし過ぎて中西部にも寄り道しちゃった音の旅。寄り道したと言っても、#1の冒頭と#7のアウトロが同じ浜辺に寄せて返す美しい波(浜辺美波)SEを使っている事から、地元サンフランシスコで燃えるような大恋愛を経験したパンク婆が年月を経て地元に帰ると、まだ若かりし頃に「やっぱ地元サイコー!」とか言いながら仲間とビーチでサンバイザーを付けてウェーイ!してた思い出が蘇り、そして「過去」と「現在」が無限ループする輪廻転生的な考察や解釈の余地を持つ“シスコゲイズ”であると。

確かに、基本的なギターのフレーズや楽曲構成諸々に関しては過去作を踏襲している、言い換えれば“集大成”と呼んでも差し支えない内容で、その一方でクリーンボイスの導入やロックバンドとしての普遍的なアプローチなど、次作への布石が要所に散りばめられている。しかし本作は、音楽的な部分よりも諸々のコンセプトありきの作品であることは確かで、それこそ一冊の小説を読んでいるかのような純文学的な作風で、その小説『情事の終り』などから引用したコンセプティブな隣人愛と中西部のemo(イーモゥ)愛を共振させる『真実の愛』に気づいた当時は、正直これは凄すぎて書けないと途中で断念したくらいには、リアルタイムというか今でも思い入れのある作品の一つと断言してもいいくらいには当時めちゃくちゃ聴き込んでて、でも逆に思い入れが強くなり過ぎて当時は書ききれなかった代物。それくらい、ここまでたどり着いてようやく正当な評価を下せる作品だと、2018年のリリース当時から約3年経ってようやく書けた今だからこそ改めて思う。しかし今となっては、当時まだ存命していたBiS二期が解散し、映画『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノが手がけた新作ドラマ『僕らのままで/WE ARE WHO WE ARE』が制作される始末...(時の流れ怖い)。ちなみに、当時(2018年)に書き残していた冒頭文の微編集した箇所は時系列のタイムパラドックス修正がほとんど。

事実、来月に本作から約3年ぶりの新作となる5thアルバム『Infinite Granite』のリリースが予定されている状況の中、本作について書けるラストチャンスが今このタイミングだった。というより、上半期のBandcamp界隈でバズったParannoul『To See the Next Part of the Dream』に触発されたのが一番大きくて、何故ならその作品におけるemo(イーモゥ)とシューゲイザーの邂逅的な音楽性って、まさにDFHVNが数年前にやった事でもあったから。ちなみに、そのParannoulの新譜と本作『普通の堕落した人間の愛』は、奇しくもトータルタイムが1時間1分と全く同じなのも偶然にしては面白いなって。

逆に、観客が10人くらいしかいなかった「伝説の名古屋公演」をほぼ最前で観ている自分が書かなきゃ誰が書くねん的な謎の使命感と、あとは単純に自らのモチベを奮い立たせるために「デッへのレビュー書けたら可愛い女の子と3Pできる!デッへのレビュー書けたら可愛い女の子と3Pできる!絶対に3Pできる!」と自分をだまくらかした結果、なんだかんだ当時のiPadにメモっといた膨大な短文(黒歴史)を引っ張り出して、それをいつもどおりパズルのように組み立てたら、恐らく当時もこのような事が書きたかったんだろうな~的な感じのレビューが書けたと思うので・・・今から僕と3Pしてくれる可愛い読者の女の子募集します!某選手村に対抗して選手ムラムラ3P堕落プレイがしたいです!僕の目の前に『NHKにようこそ!』における岬ちゃん現れてください!もし3Pしてくれたら当時海外マーチから取り寄せた『サンベイザー』5周年記念ピンクTシャツをプレゼントします!(←林家ペー・パー子かよw)というか、むしろそれを女の子に着てもらって3Pしたいです!よろしくお願いします!3Pーー!!3Pーーー!!3Pーーーー!!

Crystal Lake 『HELIX』

Artist Crystal Lake
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Album 『HELIX』
HELIXMINI

Tracklist
01. Helix
02. Aeon
03. Agony
04. +81
06. Outgrow
07. Ritual
10. Just Confusing
11. Apollo
12. Sanctuary

宇垣美里も大好きな“ラウドロック”って一言で言ってしまえば“チンカス”なんですけど、そんなフリーアナウンサー宇垣美里も大学生時代にライブでモッシュやサーフするほど大好きな、いわゆるS◯Mやナントカレインや狼バンドをはじめとした主に激ロックがプッシュするチンカスラウドロック勢の中でも、日本のメタルメディア界を牛耳る俺ィたちメタルエリートが唯一認めているバンドが東京出身のCrystal Lakeなんだよね。

そんな俺たちメタルエリートが唯一認めるほどのCrystal Lakeの一体何が凄いのか?それこそ、彼らも強く影響を受けているBMTHの最新作amoCrystal Lakeの“凄さ”が散りばめられているんじゃあないかって。改めてBMTH『amo』は、オリイが昨年末に書いたBTS→デンゼル・カリー→Sadistikまでのいわゆる“トラップ祭り”の“伏線”としてあった、2019年のBESTアルバムは元より、当ブログWelcome to My “俺ィの感性”のここ10年間の後半の5年間を総括するような、まさにメタル側から“ポップスの再定義”を図った色々な意味で歴史的と呼べる作品だった。しかし、その“歴史的”の伏線となった昨年末の“トラップ祭り”は、実はその『amo』の伏線でも、ましてやIZ*ONEの伏線でもなく、本当はこのCrystal Lakeの6thアルバム『HELIX』のための伏線だったんじゃねぇか説。


基本的にCrystal Lakeの音楽性って、ラウドロックはラウドロックでもいわゆるナントカスクール系ハードコアやFuneral for a Friendなポストハードコア、メタルコアはメタルコアでもAs I Lay DyingAugust Burns Redのような叙情派からオールドスクールなConvergeまで、初期BMTHや全盛期のBorn Of Osirisをはじめとしたデスコア系、同時にSOILWORK的な北欧メロデスからのモダンな影響を巧みに吸収しつつ、かと思えば10年代のメタルを象徴するPeripheryTesseracTに代表されるDjent系まで、これら新旧メタルやパンク/ハードコアからの影響をただの既聴感で終わらせない美意識の高い豊富なアレンジと、楽器隊のテクに裏打ちされた目まぐるしい展開および曲構成からなる曲の良さ、これに尽きる。また、惜しまれつつ解散したオランダのTexturesやUSHCのKen modeを皮切りに、俺ィが過去に聴いてきた“メタル”をしっかりと聴いてきてるのが音を通してわかるし、むしろ日本の“メタルメディア界のキング”である俺ィ以上にメタルを聴いてきてるからここまで質の高い曲が書けるんだと思うし、今の時代ろくに音楽を聴いてないやつばかりの中で、しっかりとメタルを聴いてる安心感と信頼感しかなくて、要するにこいつら“メタル知ってる人たち”なんですね。

話を戻して、BMTHオリィがインタビューで“今のロックはクソ”だと、“今の時代、ラップ/ヒップホップこそロックでありパンクである”と炎上覚悟で発言したように、最新作であるamoオリィのラップ/ヒップ・ホップに対するコンプレックスが炸裂したアルバムで、ここでその『amo』に影響を与えたのって実はCrystal Lakeなんじゃねぇか説が浮上した。さっきも言ったように、Crystal Lakeって世界中のメタルを聴いてきているだけでなく、アングラな存在であるメタルの対極に位置するラップ/ヒップ・ホップの影響を積極的に取り込んでいるバンドでもあって、そう言った意味でも様々なジャンルから器用に咀嚼する前衛的な姿勢と“メタルダイスキ”を兼ね備えた、つまりBMTHの2ndアルバム『Suicide Season』が持つデスいコア性と4thアルバム『Sempiternal』が持つオルタナティブな前衛性を継承した、その手の他バンドとは一線をがした実に日本人らしい日本人ならではのメタル、ある意味では日本人らしからぬメタルと呼べる。

BMTHamoに収録された、ヒューマンビートボックス界のキングことラゼールとコラボした“Heavy Metal”、そして“Why You Gotta Kick Me When I'm Down”オリィがやってのけたのは、“ブラック・メタル・テロリストこ”デンゼル・カリー顔負けのハードコアはハードコアでもハードコア・ラップを載せたTrap-Rapだった。実はCrystal Lakeも今作の『HELIX』の中にトラップの音を持ち込んでいて、トラップ自体は前々作あたりから匂わせてはいたけど、今作ではその実験性が極限まで極まったと言っていいくらい豪快にトラップを持ち込んでて、もはやTrap指数では『amo』よりも『HELIX』のが断然上だし(何の勝負だ)、“メタル”と“ヒップ・ホップ”の融合という意味ではBMTHを優に超えてます。つまり、BMTH『amo』でやったこと=既にCrystal Lakeがやったことと言っても過言じゃあなくて、もはや『amo』への回答という名の“時代の先取り”みたいな、ある意味でBMTHがメインストリーム・チャートを目指さなかった場合、つまり初期のメタル路線を貫き通したパティーン=もしも=ifをやったらこうなった、みたいなね。それこそ、BMTHが失った音的な意味でのハードコア精神とオルタナティブな前衛性を全部ひっくるめて受け継ぐ覚悟、みたいな格好良さったらない。

要するに、昨年末の“トラップ祭り”は全てCrystal Lake“繋”がる伏線だったというオチ、ちょっと面白くないですか?みたいな話で、これはamoのレビューにも書いたけど、【メタルとヒップ・ホップ】を両方聴いてないやつは信用できない今の時代に、【メタルとヒップ・ホップ】を両方ちゃんと聴いてきてるCrystal Lakeは信用の塊しかないくらい信用できる数少ないバンドです。まさに新時代の幕開けに相応しい新世代メタルの金字塔と呼べる一枚だし(なお、その道15年超のベテラン)、完全にオモテの『amo』とウラの『HELIX』で韻踏めちゃうやつ。間違いなく日本のメタルで一番カッコいいバンドなのにも関わらず、その辺のチンカスラウドロック勢とツルンでる頭の良さも推せる。もし、もしBMTHがクソみたいなサマソニじゃなくて単独で来日したら前座はこいつらしか考えられない。もし実現したら、晴れてフリーアナウンサーとなった宇垣美里もダイブ&サーフ解禁不可避w

「ゾマ゛ッ゛ゾマ゛ッ゛」
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デンゼル・カリー 『タブー』

Artist Denzel Curry
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Album 『TA13OO』
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Tracklist
01. TABOO | TA13OO
02. BLACK BALLOONS | 13LACK 13ALLOONZ 
03. CASH MANIAC | CAZH MAN1AC
05. SUPER SAIYAN SUPERMAN | ZUPER ZA1YAN ZUPERMAN
06. SWITCH IT UP | ZWITCH 1T UP
07. MAD I GOT IT | MAD 1 GOT 1T
08. SIRENS | Z1RENZ
10. THE BLACKEST BALLOON | THE 13LACKEZT 13ALLOON
11. PERCS | PERCZ
12. VENGEANCE | VENGEANCE
13. BLACK METAL TERRORIST | 13 M T

昨年11月に行われたスティーヴン・ウィルソンの奇跡の来日公演を終えてから今まで一体ナニをしてたかっつーと、ザックリ言ってしまえばマイアミのラッパーデンゼル・カリー『タブー』しか聴いてなかったっつーのが正直なところ(仕事が忙しかったなんて言えない)。それというのも、実はSWデンゼル・カリーって地続きで韻を踏めちゃう話の流れがあって、というのもデンゼルが所属するレーベルがユニバーサル傘下のCaroline InternationalというSWNine Inch Nails、そしてマソソソ・マソソソと同じレーベルメイトで、となればこの『タブー』の国内盤もSWと同じHostess Entertainmentからリリースされていて、これもう完全にSW『To the Bone』以降の流れがあるなって、個人的に強烈な“引力”を感じたからに他ならない。しかし改めて、SWチャーチズがレーベルメイトなのホント笑える。

おいら、ラップ/ヒップ・ホップについては全く詳しくないので、この『タブー』のドコが凄いかなんて偉そうな事は言えないんだけど、とりあえず聴けばその凄さが分かるハズだからとにかく聴けって感じのアルバム。なんだろう、2017年のラップを代表する作品がケンドリック・ラマー『DAMM.』だとするなら、2018年のラップを象徴する作品はこのデンゼル・カリー『タブー』と断言していいレベルの傑作。


その名が世界中に知れ渡ることとなった2016年作の2ndアルバム『Imperial』は、幕開けを飾るULTのイントロから、90年代の日本のサスペンスドラマの劇伴みたいな80年代のニューウェーブあるいは80年代のYMOばりにセンセーショナルな衝撃を感じさせたけど、3rdアルバムとなる『タブー』は幕開けを飾る表題曲からして、それこそケンドリック・ラマー『DAMM.』“YAH.”を追従するかのような、倦怠感のあるスローなBPMとジャズいムードに包まれたアダルティな曲で、この時点で「これ完全に『DAMM.』の再来や・・・」と確信して鳥肌たちまくり。もう既にラマーと肩を並べるカリスマラッパーの様相を醸し出してる。

前作は童貞クサいクソほどマジメにオラついたトラップ・ラップって感じだったけど、今作はいい意味で大人になったというか、誤解を恐れずに言えば童貞卒業したようなポップでキャッチーな雰囲気というか、いい具合に肩の力が抜けて一皮向けた感あって、それこそフロリダのリゾート地でもあるマイアミビーチの陽気ャな空気感を醸し出す80年代のAOR色マシマシな冒頭の3曲が示唆するように、デンゼルの生まれ故郷からこの物語は始まる。

歌詞は、今や全米を代表するラッパーに成り上がったデンゼルを妬んだ地元のギャングにお前の女はヤリマンだから興味ないと煽りを食らわす自身の“名声”に関するリリックから、この混沌とした時代に生きる人々の“痛み”や“自殺”、ピッチフォーク批判やトランプ批判を巧みに織り交ぜながらも、その中心にあるのは“俺”=デンゼル・カリー自身が歩んできた人生の物語であり、そんな彼のパーソナルな部分が可視化されている。なんだろう、最近の映画で例えるなら『フロリダプロジェクト』が描き出した“アメリカの闇”=“タブー”にフォーカスしたような、映画好きとしてはタイムリーに感じるリリックで、そのある種の自伝的なリリックやコンセプティブなトラックの世界観も名盤『DAMM.』に匹敵する。もちろん、『DAMM.』も曲の中でトラップとか色んなことしてるのにきちんと一つにまとまってる完成度の高さがあって、この『TA13OO』にもそれと近い匂いを感じさせる(でもヤリマン)。ちなみに、歌詞の中には“ブラックサバス”の名前もあったり、5曲目の“スーパーサイヤ人”ネタはチャイルディッシュ・ガンビーノ主演の『アトランタ』7話の神回を思い出して笑うし、4曲目の「SUMO」ってまさかあの“スモウ”じゃねーよなって調べてみたらやっぱりあの“相撲”で笑った。あと7曲目の”MAD I GOT IT | MAD 1 GOT 1T”の後半部分のラップはMEGARYU思い出したし、女性ボーカルをフィーチャーした8曲目の”SIRENS | Z1RENZ”は今作のハイライトで、2018年のBESTラップソングはこれに決まりです。


そんなスモウ!スモウ!とハードコアに叫んでる、自称“Raven Miyagi”またの名を“ブラック・メタル・テロリスト”としても知られるデンゼル・カリーが、今月の19日に初来日公演を果たすのもSW来日の流れで韻を踏めちゃう案件で、もはやSWともケンドリック・ラマーともSadistikともやくしまるえつこともBTSとも韻踏めちゃう“神”みたいな存在なので、このタイミングでの来日はグッドタイミング過ぎる。だからライブめちゃめちゃ行きてぇ。つうか行くかもスモウ!

結論「自称ブラック・メタル・テロリストのデンゼルはメタル」

BTS(防弾少年団) 『Love Yourself 結 'Answer'』

Artist BTS(防弾少年団)
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Album 『Love Yourself 結 'Answer'』
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Tracklist
(CD1)
1. Euphoria
2. Trivia 起 : Just Dance
3. Serendipity
4. DNA
5. Dimple
6. Trivia 承 : Love
7. Her
8. Singularity
10. The Truth Untold (Feat. Steve Aoki)
11. Trivia 轉 : Seesaw
12. Tear
13. Epiphany
14. I'm Fine
15. IDOL
16. Answer : Love Myself

(CD2)
1. Magic Shop
2. Best Of Me
3. Airplane pt.2
4. Go Go
5. Anpanman
6. MIC Drop
7. DNA (Pedal 2 LA Mix)
8. FAKE LOVE (Rocking Vibe Mix)
9. MIC Drop (Steve Aoki Remix)

Mステ出演中止という名の自らで放った爆弾が防弾服を突き破り、背後からはアーミー(Army)からフレンドリーファイアの弾を撃ち込まれるという、そして日本のメディアを皮切りに、イギリスはBBCやガーディアン紙、しいてはユダヤ人権団体まで飛び火した今回の騒動。世はまさに「BTS包囲網」を敷き始めている。この絶体絶命のピンチをBTSはどう乗り越えるのか?

次回『男ハリー、BTSに喝だッ!!』ご期待下さい。

気を取り直して、今や全米スタジアム公演を成功させ、あのピッチフォークからはワン・ダイレクションの正統な後継者として指名されたボーイズグループBTS(防弾少年団)。暴力根絶を訴えた国連でのスピーチも話題を呼んだ彼らが、今この日本でちょっとした炎上案件によってMステ出演が急遽取り止めとなる騒動が起こった。まるでそれが合図であったかのように、昨今著しく急激に冷え込みつつある日韓関係なんだが、でもおいら、なんとなくこうなることは分かっていたので、ここ最近の記事でDreamcatcherTWICE、そして日韓合同ガールズグループのIZ*ONEを取り上げて着々と伏線を立ててきたわけです。で、いわゆる“皮肉大好き芸人”としては各方面に対して俄然ニチャア・・・ってなったりならなかったりする今回の炎上案件、そんなことより津田何某をはじめとしたアーミー擁護派と高須院長をはじめとしたネトウヨ一派の泥沼の攻防はまさに“地獄”としか言いようがない光景で、しかし「ここまで計算通り・・・」とシメシメしてるのはBTSと因縁のある秋元康だけ説・・・!

今回の騒動、個人的な意見を述べるとするなら、確かに、確かに擁護はできない、しかし“理解”することはできるんじゃないの?って。この件を擁護できる人物って、それこそBTSのファンであるArmyしかいない。でも何故そうなったのか?何故その結果に行き着いたのか?を、僕たちは擁護できないなりに理解することはできるんじゃあないの?知ることはできるんじゃあないの?って。それこそ歴史的に見ても当事者である日本人こそ、事の発端となったBTSの行動を世界で最も理解できる立場にいるんじゃあないの?って。なんだろう、何か物事が起こったことに対して、真っ向から否定や肯定をするのではなくて、その物事の“その先”=“未来”にある“真実”に向き合うことの大切さ、並びに“知ること”の大事さが今回の件で最も必要とされている考え方なんじゃないかと思った。その考え方こそ、今を生きる日韓双方の国民が持つべき“未来志向”の考え方なんじゃないかって。これを起点に、お互いにそろそろ一歩先の未来に進むべき時なんじゃあないか?

しっかし、このタイミングでBTSが所属する事務所が謝罪にも近い声明を発表したことで、逆にその回答として日本はBTSを紅白に出さざるを得なくなった。というか、こうなったらもう絶対に出さなきゃいけない、というか今回の騒動の“落とし所”は“そこ”しかないです。この騒動によりBTSが今年2018年の紅白に出場する可能性は途絶えたが、その一方でTWICEは2年連続の紅白出場を決めたのは好材料でもあって、騒動により紅白出場の悪影響が一番懸念された TWICEが無事当確して紅白のK-POP締め出しを回避できたのは本当に良かった(姐さんマジ姐さん)。何故なら、これで来年の紅白にBTSIZ*ONEがKポ枠として出演する可能性、その未来を繋いだわけだから。というわけなんで、NHKは今からスケジュール調整頼むな〜。

結局のところ、僕がこのBTSについて書きたいことはただ一つ。それが「韓国でロックが主流じゃないのは、BTSが韓国音楽史上最もロックだからなんじゃねぇか説」だ。

その説について書く前に、この平成も終わりを告げようとしている時代に、耳にタコができるくらい聞いたのが“ロックは死んだ”というフレーズ、それに対して当事者であるロックバンドが口を揃えて語る言葉が“いま一番ロックしているのはラップ/ヒップホップ”であるということ。僕自身、その言葉を痛感する出来事が数年前に起こった。それこそ、他ならぬシアトルのメンへラッパーSadistikの亡き父へと捧げるアルバムを聴いたときの衝撃ったらなくて、一体ナニが衝撃だったかって、初っ端から「え、ラップにこんなギターリフ入れていいのかよ!?」とか「え、リフだけじゃなくギターソロとかありなん!?」とか、「この曲もはやリンキンパークかよ!?」とか「こんなにトリップホップみたいな女性ボーカル使いまくっていいのかよ!?それもう実質ラップ版マッシブアタックじゃん!」とか、とにかくこれまで自分の中にあった「父ちゃん母ちゃんマジ感謝」みたいな“ラップ”のイメージを根底から覆すような作品で、同時に自分の中にある音楽についての価値観すら変えてしまうほどの衝撃だった。まさにいま一番ロックしているのはラップと。


再び話をBTSに戻して、何を隠そう、本来なら今年の紅白歌合戦で歌うはずだった“FAKE LOVE”を初めて聴いた時、初っ端からBTS一のイケメンVの「春日井サーサー」という空耳とともに、バッキング・ギターのアルペジオとアブストラクトなヒップ・ホップ然としたトラックが、それこそSadistikの曲を聴いた時と全く同じデジャブを感じたのは言うまでもなくて、からのボーカル担当ジンジミンの一気にブチあげるバチクソエモいサビ、そのバッキングで鳴り響くA Perfect Circleビリー・ハワーデル顔負けの空間表現(ATMSフィールド)を発揮するギターのリフレイン、そしてラップ担当でありリーダーのRMジェイホープシュガによる本場の黒人ラップリスペクトなラップとトラップ・ミュージックに精通するオルタナティブなトラックで構成されている。なんだろう、この曲の凄さって、K-POPならではのブチ抜いてくるエモさとUSメインストリームのトレンドであるトラップ・ラップ、そして“ロックは死んだ”時代のギターの居場所を再提示するかのような、つまり“いま一番ロックしているラップ”と自らのアイデンティティである韓国語を駆使したK-POPがクロスオーバーした、もはや”俺の感性”をピンズドで狙って書いた曲なんじゃねえかってくらい、正直ここまで完璧なポップスって少なくとJ-POPには存在しないんじゃねえかくらいの名曲だ(MV版の間奏とかX JAPAN味あってすき)。もはやSadistikの地続きで聴けちゃう最高にロックなヒップホップであり、イントロからサビのバッキングまでギターをフルに使いまくった、まさに“ギターを必要とするポップス”で、この一曲だけでBTSがいかに“ロック”なボーイ・バンドなのかを指し示している。

結局、ロック目線でしか見れないのは許して欲しいのだけど、ともかく今ってポップスの中にあるギターが最もロックな時代なんじゃねえか説あって、この曲でBTSがやってる事ってまさにそれを再認識させる事案でもあって、でもこれが今の時代におけるギターの正しい使い方なんですね。なんだろう、APCの新譜を聴いた時は「これからの時代のギターはプログレの中で生き続ける」と思ったけど、BTSSadistikを聴いたら「これからのギターはポップスおよびラップの中で生き続ける」んだなって。とにかく、過激派Armyのせいで何かと話題になるBTSなんですが、ロック好きから見たBTSはロックバンド以外のナニモノでもなくて、少なくとも日本のクソみたいな邦ロックなんかより全然ロックしてます。

さすがにビルボード1位を取るだけあって、BTSの音楽ってUSメインストリームのポップスを完コピしてるのは散々知られていることだけど、それこそカルヴィン・ハリスマシュメロをはじめとした世界的なDJに追従するメインストリームのポップ・ミュージックの王道、そのド真ん中をブチ抜いている。この世界で、アメリカで今何が流行っているのか?そのトレンドを的確に分析するKポのサーチ力の高さは日本人こそ見習うべき所でもあって、もっともBTSが凄いのは英語で歌ってアメリカ進出に失敗した宇多田ヒカルと違って、BTSとして唯一のオリジナリティであり韓国人としてのアイデンティティである韓国語で世界に打って出て見事に成功しているところだ。おいら、人が持つ最大のアイデンティティって血や遺伝子(DNA)ではなくて、その人が話す言語/言葉こそ人の最たるアイデンティティだと思っていて、このBTSは韓国語を自らのアイデンティティとして、歌詞の内容も今の鬱屈した韓国社会で抑圧された若者の想いを代弁し、韓国国内はもとより世界中の若者から共感を得ている。

さっきも少し書いたけど、BTSの音楽ってR &Bやダンスポップをルーツの一つとしていて、その中でもトラップ・ラップはBTSの音楽には欠かせない要素としてあって、例えば“FAKE LOVE”で聴けるジェイホープのラップなんかはほぼほぼトラップ界でお馴染みのヤング・サグをリスペクトしてて、実はSadistikもここ最近のアルバムでトラップ・ラップらしきことやってて、それこそトラップ界の重鎮トラヴィス・スコットは言わずもがな、フューチャーや2019年に来日公演を控えているマイアミの新星デンゼル・カリーを経由してBTSSadistikを共振させる俺すごい。そういった意味でも、このBTSのアルバムほど(トラヴィス・スコットフューチャーが参加した)カルヴィン・ハリスの昨年の新譜とここまで韻が踏める“新時代のポップス”を称するに相応しいアルバムって他にないと思う。事実、BTSは“IDOL”という曲で女性ラッパーニッキー・ミナージュとコラボしている。ちなみに、今作のディスク2に“アンパンマン”とかいう「アンパンマーーン!!」って歌う曲があって、そのネタっぽい曲でもトラップやっててこいつらマジサイコーw

じゃあ、じゃあJ-POPでトラップっぽいことやったのって誰かおる?って思い返してみたらおった。おいら、相対性理論『天声ジングル』って“やくりまるえつこなりのヒップホップ”だと思ってやまなくて、そのアルバムって相対性理論史上最高にJ-POP感があったのだけど、実はそのアルバムに収録された“弁天様はスピリチュア”とかいう曲でトラップっぽいことやってて、しかも“FLASHBACK”とかいう曲のトラックもほぼほぼヒップホップ以外のナニモノでもなくて、こうやって半ば強引にBTSSadistik相対性理論を共振させる俺すごいとか思いながら、こんなところにも顔を出してくる今の相対性理論って相当すごいなって。まあ、単にやくしまるえつこ“いま一番ロックしているのはラップ”ってのを知ってる人なんだろうね。


BTSミッキー・ミナージュだけに止まらず、日系人DJとして世界的に名を馳せるスティーヴ・アオキともコラボしていて、おいら、実は東京五輪が決まって開会式に誰を出すべきかの問いの答えがスティーヴ・アオキで、なぜスティーヴ・アオキなのか?ってのはNetflixのドキュメンタリーを見ればわかるはずなのに、椎名林檎をはじめとした五輪関係者からはスティーヴ・アオキの“ス”の字も出てこなくてダメだこりゃってなった記憶がある。あっ、椎名林檎も所詮はネトウヨおばさんでしかないんだなって。なんだろう、とりあえずアオキ出しときゃ五輪の開会式は成功するし、逆にアオキ出さなきゃ開会式は失敗するレベルのキーマンだと思ってる人物で、そんなアオキとコラボするBTSってやっぱ“わかってる”なって。そもそも曲タイトルに”FAKE””LOVE””Truth”という2018年を司るキーワードを使ってる時点で信頼しかない。そもそも阪神タイガース贔屓な時点で推せる。

アーミーのお陰で色々と話題に欠かさないBTSだけど、結局のところ“曲がいい”に尽きるわけです。そもそも一曲目のEuphoriaからギターの音で始まってるのが全てで、幕開けに相応しいソフト目なEDMのアプローチとジンジョングクのエモいコーラス・ワーク、そして隙あらばトラップの顔を覗かせるDJ界隈直径のメインストリームド真ん中のポップスブチ抜きソングで、この曲聴いてちょっと思ったのは、WACKのEMPiREはこの曲みたいなソフトEDM路線に行った方が売れるなって思ったけど、肝心の渡辺と松隈のサゲチンコンビはそのことに全く気づいていないという悪夢(エンパぜってー売れねえ)。

一転して今度はR&B調の中でジェイホープRMのラップが光るダンス・ポップチューンの#2”Trivia 起 : Just Dance”、アコギを中心にキーボードやシンセの美メロをフィーチャーしたジミンのソロバラード曲の#3”Serendipity”、再び北風小僧の寒太郎的な颯爽としたアレンジが印象的なアッパーDJ系の#4”DNA”、いわゆる「K-POP、チャーチズ好きすぎ問題」をここでも再認させるエレクトロ・ポップチューンの#5”Dimple”、大々的にトラップ・ラップをフィーチャーした#6”Trivia 承 : Love”、ベースと鍵盤が織りなすジャズい雰囲気がオシャンティなVのソロバラード曲の#8”Singularity”スティーヴ・アオキをフィーチャリングしたラブバラードの#10”The Truth Untold”、女性ボーカルや90sのemoっぽい西海岸系のギターが最高にオシャいシュガのソロ曲の#11”Trivia 轉 : Seesaw”、ラップ面の三人が本場のヒップホップに追従するバッキバキのラップを吐き散らす#12”Tear”BTSにしては珍しく韓国ドラマの主題歌に起用されてそうなストリングスをフィーチャーした歌謡曲でジンのソロ曲の#13”Epiphany”、再びトラップ・ラップ的かつエレクトロ・ポップ的な#14”I'm Fine”、今や”IDOL”といえばBiSではなくBTSに取って代わられた感のある、ニッキー・ミナージュとのコラボでもお馴染みの#15”IDOL”、未来へ向かって前向きな希望に満ち溢れた#16”Answer : Love Myself”まで、決して”ただのポップス”に陥らない豊富なアレンジと、ボーイズグループのトップに相応しい各メンバーの圧倒的なスキルとポテンシャルによってもたらされた楽曲陣は、あらゆる意味で2018年を象徴する、ここまでギターの使い方を知ってるポップスは他にないってくらい文句なしの名盤です。何度も言うけど、これで来年の紅白でBTS”FAKE LOVE”歌ってるとこ観ながら俺すごいしたいのでNHKさんヨロシクです。ちなみに、ディスク2に収録されている“DNA”“FAKE LOVE”のロックMIXも普通にカッコいいです。

つうか、これでDIR EN GREYがアジアツアーの一環で韓国でライブやって”VINUSHKA”演ったら面白いなって。薫くん頼むわ。つうか、オメーらそれくらいやれよって感じw

結論「BTSはメタル」

Vein 『errorzone』

Artist Vein
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Album 『errorzone』
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Tracklist
02. old data in a dead machine
03. rebirth protocol
04. broken glass complexion
05. anesthesia
06. demise automation
08. untitled
09. end eternal
11. quitting infinity

おいら、DIR EN GREY薫くんファンクラブ会員2号なので、薫くんが好きそうな音楽にはめっぽう目がなくて、例えば先日初来日公演を行ったPower Tripが昨年発表した2ndアルバム『Nightmare Logic』は、まさに中期Dir en grey薫くんがライブの開演前BGMに流しそうなクロスオーバーの名盤だと思った。そして今年、薫くんファンクラブ会員2号の僕が新たに「あ、これ薫くん絶対好きなやつや」と思ったバンドこそ、USハードコア・シーンの聖地ボストン出身のVeinだ。そんな彼らの1stフルアルバム『errorzone』は、さすがに”ポスト-パワー・トリップ”とまではいかないものの、しかし昨年のPower Tripがメタルシーンに与えた衝撃と限りなく近い”バズり”を予感させた。



とりあえずグロいジャケと曲タイトルが全て小文字表記の所から、こいつらが普通じゃないヤベーやつらだってことを分かりやすく視覚化してて、まるで「この世の全てがバグってる」とばかり、一曲目の”virus://vibrance”から初っ端のリフ「デデッ デッ ドゥ~ンw」「ドゥ~ンw」の部分が『ARCHE』以降のDIR EN GREYを、からの「亮くんこれ聴いてヘルニア悪化させた説」が自分の中で生まれたくらい、それこそマキシマムザホルモンのビンビンに殺気立った(折りたたみ式ヘドバン不可避の)ライブ・ステージングを、そして突如として襲いかかるグラインドコア顔負けのカオティックな転調/変拍子をブチかます展開はConvergeTDEPを、とにかく開始早々にDIR EN GREYホルモンとかいう国内二大ヘヴィ・ロックバンドを連想させる、いわゆる典型的なヌー・メタル/ヘヴィ・ロックとマスいハードコアがクロスオーバーしたハイブリッドなスタイルからして、「やっぱこいつらタダ者じゃねぇ」とド肝抜かれる。ちなみに、亮くんホルモンのライブでPower TripのTシャツを着てたりするので、そんなヘルニア静養中の亮くんにこそ、是非このVeinのアルバムを聴いて欲しい。

その一曲目と二曲目の曲間をギャップレスで繋ぐアルバム構成はConvergeの常套手段だし、その#2”old data in a dead machine”のウネりを効かせた病んだリフ回しは中期のDir en grey的だし、そして「Code Orangeぶっ生き返す!」勢いのスラッジ・メタルばりに鬼ヘヴィなブレイクダウンもエグい。#3”rebirth protocol”では「約1分のFear Factory」やったかと思えば、続く#4”broken glass complexion”ではデブ豚『Diamond Eyes』リスペクトなモダン・ヘヴィネスを披露したかと思えば、今度は「約1分のGojira」とばかりキチガイじみたエクスペリメンタルな側面を垣間見せる#5”anesthesia”、今作のハイライトを飾るスラッジーなメタルコアの#7”doomtech”、今度は再び「約1分のデブ豚」やってのける#8”untitled”、ここまではSOAD以降のヌーメタ、ディルやホルモン等の国産ヘヴィロック、同郷のConvergeTDEP等のマスコア、MastodonGojira等のプログレッシブ/スラッジ、Fear Factoryなどのインダストリアルをはじめ、様々なジャンルやバンドの影響がたった1,2分という短い尺の中に圧迫祭りの如くギュウギュウに敷き詰められていて、例えるならヘヴィロック化したコンヴァージ?それとも演奏がバチクソ上手くなってハードコアに振り切ったディル?確かに、どのジャンルにも属さない=”カテゴライズ不能かつ不要”のエクスペリメンタルな唯一無二の存在感は俄然ディルっぽい。

とにかく、どんだけ自分らConverge『Jane Doe』好きなん?ってくらい、いわゆる”ボストン・ハードコア”の正統な継承者と見せかけて、ありとあらゆる影響の中で最たる存在なのが同郷のConvergeじゃなくて、実は欧州フランスのGojiraだったりするのがこのバンドの面白さで、その証拠に表題曲の”errorzone”ではGojira屈指の名曲”The Art Of Dying”をカバー曲かと勘違いするレベルにリスペクトしている。もちろん、Gojira自身もUSのConvergeLamb of Godに強く影響されてるし、GojiraといえばDIR EN GREYというかと関わりのあるバンドでもあって、そういった意味でも薫くんは絶対にこいつら好きでしょ(特にインダストリアルなアプローチが)。そもそも、今作はメタルコア系の作品でお馴染みのスタジオGraphic Nature Audioでレコーディング、そして同スタジオお抱えのプロデューサーWill Putneyとともに制作されており、何を隠そうWill PutneyGojira『Magma』にもエンジニアとして関わっていて、そういった面でも彼らの「ゴジラ好き」は確信犯なほど役満で、回り回って最終的にそのGojiraがインスパイアされている「コンヴァージ凄い」という結論に行き着く。なので、皆さん来年の2月に開催されるコンヴァージニューロシスのツーマンに行きましょう。で、アルバムを締めくくる#11”quitting infinity”では「実は俺らメシュガーも好きやねんwww」とカミングアウトしてて、その最初から最後まで「好き」を隠さない姿勢がメチャメチャ可愛い。涙目のルカの目玉をペロペロしちゃいたいくらい。

この手のごった煮カオティック系マスかきヌーメタっつーとUKのSikTh、ならぬ”USのSikTh”と例えるのはまたちょっと違うかもだけど、少なくともSikThの2ndアルバムを初めて聴いた時と同じ規模の衝撃はあった。このギターとドラムのプロダクションと肉厚の重厚感はちょっとクセになるし、それこそThe Human AbstractWill Putneyが同スタジオでプロデュースした遺作『Digital Veil』やミルウォーキーのMisery Signalsを思い出して俄然好きになる。その辺の懐かしい作品や”ハードコア”なバンドがピンズドで好きな人はマストです。なんだろう、”新世代メタルコア”なんて言ったら少しチープに聞こえるけど、少なくとも今やキッズコアと化したCode Orangeなんかより全然かっこいいし、オレンジ野郎なんかより全然メタル知ってます。もしかしたらDeathwish本家からの引き抜きもあるかもしれない(いや、既にか)。とにかく、昨年のPower Tripから地続きで押し寄せる”新世代”の波がッ!センセーショナルを感じろッ!

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