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墓っ地・ざ・ろっく!

アイドル

代代代 - 威威威

Artist 代代代
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EP 『威威威』
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Tracklist
01. 4ME
02. ブラクラサバス(ターボ)
03. 8 BEAT GANG
04. LASE (REMIX)

今年の2月23日にリリースされたフルアルバムのMAYBE PERFECTは、先日お色気ゲー『ラストオリジン』の新シナリオを手がける事を発表したシナリオライター虚淵玄が創造するポスト・アポカリプス的なSF世界観の中で、『最終兵器彼女』として魔改造された四人の代代代メンバーが第三次世界大戦を阻止するため悲劇的な運命に翻弄される物語を紡ぎ出す、それこそアイドルの概念を超越(transcendental)させるようなグリッチ/ノイズが奇々怪々に入り乱れた、この日本のアイドル史におけるエポックメイキングと呼ぶべき大大大傑作だった。

そのMAYBE PERFECTを象徴する、もはや今年のベストアイドルソングと言っても過言ではないシングルの“LASE”は、2021年に一足先に発表された「シングル版」と「アルバム版」それぞれ別のアレンジ(魔改造)を施すことで、いわゆる多次元理論的な解釈をもって「甲盤」と「乙盤」に世界線を分岐させた、その焦燥と刹那がバグやウイルスのように駆け巡るSF然としたギミック、および様々な考察を促すような緻密なストーリーテリングに唸ったのは、今でも昨日の事のように思い出す。

4と書いてA(ア)と読ませる#1“4ME”は、アルバムMAYBE PERFECTおよびシングルの“LASE”の延長線上にあるビートとグリッチーなトラックメイクに始まるやいなや、突如として(およそ)2秒で暗転直下するとTOOLCult of Lunaを連想させる、それこそディストピア映画を代表するSFの名作『メトロポリス』然としたモノクロームの暗黒世界の奈落に突き落とされたかと思えば、一転して今度はワリオないしはワルイージのサンプリングみたいな辛気臭い雰囲気を醸し出しながら、最終兵器彼女である代代代メンバーの儚くも刹那い歌声と80年代のAOR風のシンセが織りなすレトロフューチャーリズム、および昨今の電子音楽シーンのトレンドであるヴェイパーウェイヴに肉薄する近未来都市(トロピカルワールド)を描き出す。

そのヴェイパーウェイヴなマリオワールドから飛び出してきたワルイージの召喚に引き続き、テキサスのGonemageNeupinkを彷彿とさせるサイバーグラインド/デジタルハードコアを披露する(ブラック・サバスがバグった)#2“ブラクラサバス(ターボ)”、そして在りし日のBiSの正統後継者として“オルタナアイドル”を20年代仕様のハイパーポップにアップデイトさせた#3“8 BEAT GANG”など、(これは自意識過剰かもしれないが)今作の歌詞は自分が書いたMAYBE PERFECTの考察レビューに対するアンサーとして機能している気しかしなくて、つまり終末戦争を阻止するため最終兵器彼女としてDNA操作された彼女たちの哀しい想いを反映した歌詞みたいな。

そして、アルバムMAYBE PERFECTの物語を補完するEP『威威威』にかけての「始まりの曲」でもある“LASE”のリミックス版は、それこそヴェイパーウェイヴやローファイヒップホップ的なチルなリラクゼーション効果のあるジャズ風のアレンジが施され、フルアルバムの考察レビューにも書いた多次元理論および世界線の交わりを司るような「もう一つの物語」として新たなストーリーを紡ぎ出している。とにかく、近年稀に見る大大大傑作のMAYBE PERFECTにおける最終兵器彼女たちの刹那的かつ激情的な想いを補完し、さらなる考察を促すとともに奥深い世界設定の解像度を著しく高めるような一枚。

代代代 - MAYBE PERFECT

Artist 代代代
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Album 『MAYBE PERFECT』
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甲盤
01. THRO美美NG
02. 1秒
03. LASE
04. まぬけ
06. 黒の砂漠

昨年の10月に発表されたシングルの“LASE”といえば、あくまで代代代メンバー四人のボーカルにフォーカスしたミックスをはじめ、静謐な焦燥と燃えたぎる激情をもってミニマルなビートを刻んでいくトラックやエッジの効いたギターをかき鳴らす比較的シンプルな構成で、ある種の後期ana_themaを想起させる“繰り返しの美学”を司るエピックなエネルギーを蓄積し爆発させるキラーチューンだったが(俺的2021年アイドルベストソングの一つ)、本作の4thアルバム『MAYBE PERFECT』を耳にすれば、その「シングル版のLASE」と「アルバム版のLASE」の違いが本作を決定づける「違い」に繋がっている事がわかる。

端的に言ってしまえば、シングルの“LASE”を因果として回っている本作品、しかしアルバム版の“LASE”はシングル版とは打って変わってレイズのフレーズをはじめエモさだけを抽出したようなボーカルワークを主役とする、いわゆる一般的なアイドルソングのソレとは一線を画しており、本作における世界観およびコンセプトに従事したアルバム曲の一つとして機能している。では、そのシングル版とアルバム版の違い、そして本作の世界観を形作るコンセプトとは一体何なのか?

今やBiSらの初期WACKアイドルに代わり、アンダーグラウンドなオルタナアイドルの代名詞となった代代代は、過去にはフィンランドのOranssi Pazzuと共振するハードコアなインダストリアル/ドローン等のオルタナティブな資質を兼ね備えたアヴァンギャルドな実験性を垣間見せていたが、何を隠そう本作において著しく超越的な才能を開花させた代代代は、ブルックリンの超越者ハンターハント・ヘンドリックス率いるTranscendental Black MetalことLiturgyに肉薄する独創性と革新性に溢れた音楽をアイドルのフォーマットでやってのけている。

いわゆる「シングル版のLASE」は、アイドル楽曲派がドヤ顔で「エモい」と評しそうな典型的なアイドルソングだったが、先述したように「アルバム版のLASE」ではメンバーの歌声がミックスレベルで後退し、代わりにLiturgyの4thアルバム『H.A.Q.Q.』や5thアルバム『Origin Of The Alimonies』におけるTranscendentalな超越性を裏付けるグリッチ/ノイズまみれのトラックを中心に、ほぼリミックスレベルでグリッグリにバグり散らかしている。それにより、現代社会および昨今の世界情勢における混沌すなわちケイオスを象徴するハイパーポップの文脈に食い込む勢いの「超越的なアイドル」という新たな代名詞、すなわちTranscendental AIDOLとして自らの立場をアップデイトしている。

その「アルバム版のLASE」と双璧をなす、それこそLiturgyが近作においてブラックメタルというフォーマットでクラシック/オペラの悲奇劇であり狂奏曲を描いたのと全く同じ要領で、アイドルというニッチなフォーマットでバグったスーパーマリオの如しクラシック/オペラを再現する、そんな「超越的なアイドル」を象徴する#1“THRO美美NG”から幕を開ける本作、一部で“LASE”のフレーズのみならず#1や#4の伏線を張り巡らせるピコピコ系アイドルポップスの#2“1秒”、まるで第三次世界大戦の核戦争により人類が滅んだポストアポカリプスの世界で最後の生き残りとなった主人公と対核兵器として開発されたポストヒューマンのバイオロイドがハーレムを繰り広げるメタバース内のVR空間に迷い込んだかの如く、それこそCynicの2ndアルバム『Traced In Air』や4thアルバム『Ascension Codes』と共鳴する(スピ)リチュアリズムや神秘主義を内包したトランスヒューマニズムの思想にサイバーコネクツする#4“まぬけ”、先の第三次世界大戦においてオブジェのように破壊されてしまった生前のバイオロイドが結成していたアイドルグループ時代のキラキラした輝かしい記憶がフラッシュバックする#5“破壊されてしまったオブジェ”、そのようにして最終的彼女のバイオロイドとして魔改造されるも、敵国からのサイバー攻撃によりAIにバグリッチが混じり失敗作として“黒の砂漠”に廃棄処分され山積みとなった四人のアイドルが、まだ人間だった頃の思い出が断片的に蘇るラストの儚くも美しいオチまで、考察するに「シングル版のLASE」は第三次世界大戦が起こる以前の代代代が人の心と感情を持ち合わせていた頃の曲で、対する本作すなわち「アルバム版のLASE」は第三次世界大戦前夜に生身の人間の状態から強制的に魔改造(アセンション)させられて対核兵器としてトランスヒューマン化したAIの記憶がバグやグリッチのたびにフラッシュバックし続けている曲、みたいに解釈したら俄然エモすぎて泣ける。本作の何が凄いって、「アルバム版のLASE」におけるグリッチ/ノイズが代代代の音楽的な前衛性を高めているだけでなく、その歌詞から紐解ける文脈とともに『MAYBE PERFECT』のコンセプトおよび悲劇的な運命を辿る物語の根幹部を担っている点←これに尽きる。また、他の曲にもLASEのフレーズを引用することで「LASEへの帰結」を示唆する伏線の置き方も美しい。

面白いことに、本作のCD版は甲盤と乙盤の二枚組の作品(サブスクでは甲盤のみなので、このレビューは甲盤の視点から書いている)、しかし二枚組と言っても乙盤の方は甲盤を逆から再生した、つまり甲盤の最後の曲(黒の砂漠)から逆再生する形で曲順を入れ替えただけの作品となっている。要は運営側が甲/乙の二つの視点から聴くことを公式に推奨している。そこから分かる事と言えば、乙盤すなわち逆再生盤から記憶を手繰り寄せていけば、自ずとミスリードや伏線が張り巡らされた本作の「真実の物語」すなわち真エンディング(Eエンド)にたどり着ける可能性が高まるということ。では、この物語の鍵を握る甲盤のED曲であり、対する乙盤のOP曲となる“黒の砂漠”に何故バイオロイドが打ち捨てられていたのか?そこに本作の謎を紐解くヒントがある気がしてならなかった。

いずれ起きる第三次世界大戦で勝利を収めるには、主戦力である核の脅威に耐えうる強靭な精神とインダストリアルな肉体および細胞が必須となる。その高次元な能力を会得するには、まずは男女の性別における優劣やウィークポイントを克服する必要がある。そこで我々旧人類は、性別を故意にバグらせる事でジャンルの垣根を超えて新人類にトランスフォームしたLiturgyの超越者ハンターハント・ヘンドリックスを参照し、代代代という選ばれし四人の旧時代のアイドルグループを“アイドル”の概念はもとより、もはや人間としての性別や肉体を故意にバグらせて遂にはシンギュラリティを起こすことに成功したのである。つまるところ、ボーカロイド(AIDOL)と旧人類のハーフとして徐々にトランス化していく過程を描いたのが乙盤の物語なんですね。

乙盤の物語を簡潔に考察するとこうだ。#1“黒の砂漠”に壊れかけのローファイなラジオと一緒に投げ捨てられたバイオロイドの肉体に、#2“破壊されてしまったオブジェ”のアイドル精神をAIDOLに学習させる魔改造を#3“まぬけ”で行うも、その研究中に「レイズ」の天啓を得た新型ウイルスによりバグが生じて「アルバム版のLASE」と「シングル版のLASE」という二つの記憶に分裂し世界線が分岐、何とかして情緒不安定なAIDOLの精神を制御する研究を終え、核の脅威に耐えうる最終的彼女が完成したことを示唆する#5“1秒”、そして遂に第三次世界大戦が勃発、『MAYBE PERFECT』に出来上がったはずの最終的彼女は超越的(Transcendental)な能力を発揮すると、AI(愛)を知らないバイオロイドがAI(愛)の力で地球もろとも旧人類を滅ぼし全てを無に還す...。そして唯一生き残った旧人類の主人公と四人のバイオロイドによるハーレム云々でEエンドを迎える。

このように、甲盤の曲順が示す曖昧な物語よりも乙盤の逆再生順が示す悲劇的な物語の方が真エンドっぽいかもしれない。乙盤において徐々に薄れゆくアイドル時代の記憶、そして心と体が最終的彼女へと移行していく中で、やがて記憶と記憶の邂逅が真実を呼び起こすように、古の終末戦争時に開発された最終兵器彼女の記憶が「レイズ」の記憶と交錯し、時空を超えて現代アイドルの代代代に受け継がれているエモさったらない。

ここまでの話は冗談として聞き流してくれていいけど、しかし神パンチラインゲー『ニーアオートマタ』、というよりは虚淵玄作品に近いポストアポカリプス的な荒廃した世界観がシックリくる至極難解なSF作品なのは確か。それこそ『ニーアオートマタ』の前日譚を描いた舞台『少女/少年ヨルハ』のような演劇的なライブアレンジが映えそう、というか複雑な転調を繰り返す楽曲構成的にも面白い演出が期待できそうな予感。とにかく、代代代の作品としては2ndアルバム『∅』以来の大大大名盤です。

乙盤
01.黒の砂漠
02.破壊されてしまったオブジェ
03.まぬけ
04.LASE
05.1秒
06.THRO美美NG

Chvrches - Screen Violence

Artist Chvrches
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Album 『Screen Violence』
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Tracklist
01. Asking For A Friend
02. He Said She Said
03. California
04. Violent Delights
05. How Not To Drown
06. Final Girl
07. Good Girls
08. Lullabies
09. Nightmares
10. Better If You Don't

2018年の前作『Love Is Dead』リリース以降のチャーチズって、そのイマドキのEDMに迎合した前作の流れからEDM界の帝王であるマシュメロとコラボ曲を発表すれば、小島秀夫監督の最新ゲーム『デス・ストランディング』の主題歌に抜擢されたり、今度は十中八九ユニバーサル案件の水曜日のカンパネラのコムアイとの謎コラボだったり、しまいには一見畑違いのDeftones主催のフェスに出演してローレンがHatebreedのジェイミー・ジャスタとツイッター上でレスバを繰り広げたりと、とにかく過去に類を見ないくらい対外的かつオルタナティブな活動に勤しんできた。

そんな、俺たちのローレン・メイベリー率いるチャーチズの約3年ぶりとなる4thアルバム『Screen Violence』は、それこそ本作に伴う90年代のメガドライブの名作『ベアナックル2』を想起させる劇画風の宣材ポスターが示唆するように、幕開けを飾る“Asking For A Friend”のローレンたその歌メロやレトロ調のシンセからして「Chvrches is Back...」と咽び泣くこと必須の、そして否が応でもあの伝説の1stアルバム『The Bones Of What You Believe』をフラッシュバックさせる、いわゆる80年代のシンセ・ポップ/ニューウェーヴ直系のポップ・ミュージックとなっている。



カリフォルニアはサンフランシスコを代表するメタルバンドのDeafheavenが先日リリースした5thアルバムInfinite Graniteは、それこそ80年代から90年代にかけて一斉を風靡したUKロックを『ルックバック』したような作風で、良くも悪くも再び音楽シーンに“インパクト”を与えた事は記憶に新しい。何が面白いって、奇しくも本作『Screen Violence』には、DFHVNのルーツである“California”の名を冠する楽曲をはじめ、80年代のUKロックを象徴する伝説のバンド=キュアーのロバート・スミスとフィーチャリングした曲がある点。そのロバート・スミスを迎えた#5“How Not To Drown”は、往年のオルタナロック然としたアレンジと音作りが施されたニューロマンティックなバンドサウンドからして80年代リバイバルの極みで、少なからずチャーチズ史においても希少価値の高い一曲となっている。また、ミニマルなサビのコーラスとシンセが今はなきVERSAを彷彿とさせるというか、その系譜にある†††(Crosses)から主催のフェスで共演したDeftonesへと伏線を回収するようにして文脈が繋がっていくのがエモすぎて泣ける。なんだろう、隠し味としてVERSAを感じさせる時点で、これもう実質たそから俺への私信案件なんですねw

しかし、ロバスミを迎えたその一曲のみならず、その80年代のレジェンドを本作の“コア”として取り囲むように位置する#3“California”、ゆらり揺らめくイーサリアルなシンセウェイブが愛は死んだという言葉を言い残してダークサイドに堕ちたローレンたそを闇夜に照らし出す#4“Violent Delights”、そして軽快なバッキング・ギターのリフレインによる叙情性と映画『ガールズ版ロッキー』さながらの情熱的かつ力強いリリックは、さしずめ「チャーチズなりのファイナル・カウントダウン」と言わんばかりの#6“Final Girl”までの流れは、まさに本作における「ロックバンドとしてのチャーチズ」を象徴する一幕となっている。とにかく、出自がブラックメタルのDFHVNも出自がエレクトロポップのCHVもほぼ同じタイミングで「ロックバンド化」するという神展開。もちろん、こっちがロバスミならあっちはモリッシーであり、それとジャケのブラウン管時代を思わせるスクリーンはDFHVNのオエイシスオマージュのMVとも共通するし、何より細かなところでDFHVNInfinite Graniteと共振してくんのは本当に面白い。だからロックバンド化した今のDFHVNCHVがツーマンで来日ツアー回っても全然違和感ないし、むしろここまでシックリくるツーマン他にないと思う。もしツーマンが実現したらリアルにアヘ顔デフヘヴンなるわw

今回、(2ndや3rdみたいに)無駄にピーキーなポップスを意識するのをやめた歌メロ含むメロディ全体の落ち着き具合、つまりハイではなくローな感じのメロディが心地よい。もちろん、日に日に分断が増していくこのご時世にピッチピチにポップなメロディ歌ったところで説得力の欠片もないしは「ノレない」わけで、皮肉にもこの悪夢(Nightmare)のような時代と調和の取れた内省的なメロディが心に染み渡る。それはまるで、世界の分断によってポッカリと空いた心の隙間を埋めるかのように。要するに、ヘタに色めきだっても、重い鎧で着飾ってもいない素顔のチャーチズというか、シンプルにUKバンドらしい映画『ロッキー』ばりに“泣けるメロディ”への回帰、それは本作のハイライトを飾る初期の名曲“Recover”がエルム街の悪夢に迷い込んだ雰囲気の#9“Nightmares”、そして冒頭から電子音ではなく生楽器をフィーチャーした#10“Better If You Don't”が強く物語っている。なんだろう、「こういうのでいいんだよ」の一言に尽きるというか。

それ以上に、本作を紐解く上で欠かせない人物がいる。その人物こそ、チャーチズとは1stアルバムから長い付き合いとなるサポートドラマーのジョニー・スコットに他ならない。彼がクレジットされているロバスミ曲をはじめ、#3,#4,#6,#9などの本作の“コア”となる楽曲ほぼ全てに彼のドラムが採用されているのをみても、長年サポートメンバーとしてチャーチズを縁の下から支えてきた、そして本作のキーマンとなる彼のドラムを軸に展開される「ロックバンドとしてのチャーチズ」たらしめている張本人である。本作は彼らの根っこ部分にあるオーガニックなアイデンティティと、これまでに人気TV番組や大型フェスなどの大舞台で培われた“バンド”としてのアンサンブルが紡ぎ出す“今のチャーチズ”しかなし得ない、よりリアルなライブ感に近い生音重視のスタジオ音源であると同時に、それらのオルタナティブな変遷を可能にしたのはメンバーのセルフプロデュースによるものだからと容易に推測できる。

端的に言ってしまえば「伝説の1stアルバム」から引用している部分が多いという話でもあって、前作や前々作で感じたマンネリを解消するため、ドラムとベースのリズム隊が織りなすバンドらしいグルーヴ感とオルタナ然としたギターなどの生音を積極的に取り入れている点は、確かに賛否両論あるかもしれない。けど、長年ライブでもドラムのジョニーを実質正式メンバーとして大々的にフィーチャーしてきたのも事実で、そのライブ自体ほぼロックバンドのノリだったりするわけで。事実、実際のスタジオ音源でロックバンドっぽい事やっても違和感ないのが今回で分かったし、個人的にはこれまでの伏線を回収した「ただの結果」に過ぎないと思う。この伏線回収の仕方もDFHVNと同じというか。

本作において「(筋金入りの)フェミニストとしてのローレン」が液状化しているなんてヨタ話はさて置き、映画『ロッキー』のスタローンと化したローレンたそがミソジニーな野郎どもを右ストレートでノックダウンさせるような、そんな男社会で抑圧されたガールズたちの背中を後押しするかのようなウーマンパワーに満ち溢れた会心の一枚だと思う。確かに、全10曲トータル43分という物足りなさは否めないものの、「らしくない14曲よりも、らしい10曲」の方が良いよねって話。事実、2ndはまだしも、前作の3rdで露骨に低迷した感は否めなかったし、正直こうなってくると今後の浮上は見込めないパティーンにハマったかと思いきや、ここにきて大きく盛り返してきた事に素直に感動するし、文句なしに年間BEST級の傑作と言える。何より、たそイジりなどのネタ抜きで作品の内容について語り合いたくなってる時点で、それぐらいにマジにマジなアルバムってことですw

BBTSことBroken By The Screamの“ダブル・ジョージ”が叫びすぎな件について


「元祖叫ぶ女」ことアンジェラ・ゴソウの正統後継者であるパスコのちゆな勇退、そのちゆなの後釜として指名された有馬記念もとい有馬えみりは、JK時代からアチエネや現アチエネのボーカル=アリッサの古巣であるThe Agonistをはじめ、他にもSuicide SilenceBMTH、国内ではDIR EN GREYのデスボイスカバーを動画サイトに公開してきた実績のあるガチメタル女子で、このように現代のアイドルシーンにおいてヘヴィなメタルサウンドとスクリームやデスボを組み合わせたスタイルは珍しくもなくなり、世はまさに「デスボ系アイドル」の群雄割拠と言わんばかりだ。


パスコのちゆながここまで引退を惜しまれる理由って、その他に類を見ない独自性の高いシャウトのオリジナリティに尽きると思う。ひとえに「叫ぶ女」といっても、高域寄りのシャウトか低域寄りのデスボか、それとも地声の延長線上にある似非シャウトか、それぞれ個人の性質によって得意とする声域や声の出し方も大きく変わってくる。例えば、神激こと神使轟く、激情の如く。のデスボ担当である涙染あまねは、その「V系顔の理想」であるヴィジュアル面からもV系を代表するDIR EN GREYの京やLynch.の葉月リスペクトなシャウターかと思いきや、その実は昨年脱退したデスボ担当妖精かなめのシャウティングを『ルックバック』してきた、ラウドル界を代表するシャウターの一人であり、僕の推しメンでもあるw


このメタル系スクリーミングアイドルの通称BBTSことBroken By The Screamは(こんな名前の海外バンドいた気がする)、それこそDeafheavenジョージ・クラーク顔負けの金切り声を持つカグラと、デスメタルの始祖カニコージョージ・フィッシャー顔負けの低音グロウルを持つイオ、そのUSメタルシーンを代表する二大バンドのフロントマン、すなわち“ダブル・ジョージ”の正統後継者を襲名するかのようなカグラとイオの“ジョージ姉妹”が放つスクリーム/グロウルに、いわゆるブルデスやデスコアを基調とした殺傷能力の高い暴虐的なサウンドが組み合わさった、あのメタルゴッドちゃんもビックリのエクストリーム・メタルは、“ジョージ姉妹”以外のメンバーであるヤエとアヤメのクリーン担当の存在によって、かろうじて“アイドル”の体をなしている。

わざわざ「かろうじて」と念頭に置かざるを得ないほど、その“ジョージ姉妹”の叫び声を中心に想像を超えたアグレッシヴかつブルータルな本格派メタルを繰り広げる。中でも往年の北欧メロデス/デスラッシュばりにソリッドな単音リフは、そのカニコーの血みどろジャケットリスペクトな血なまぐさい音楽性を更に硫酸ドロドロなんでも溶かす。また、DIR EN GREYの京の声帯が分裂したかのようなブラックメタル的な高域デスとデスメタル的な低域デスを配している点やモダンなデスコアっぽい部分はAbigail Williamsを、また近未来型Djentやジャズ/フュージョンにも精通する超絶テクニカルなギター/ソロワークからは、あのBorn of Osirisを彷彿とさせた。正直、ここまでエクストリームなメタルやってるなら、今後の楽曲に通称“イヤイヤ期”のDFHVN的なブラックゲイズ成分やトレモロなんか取り入れたりしたらもっと楽曲の幅が広がりそう。

もはや「とんでもねぇアイドル」としか形容しようがないラウドルがBBTSで、しかしイオの(地声の乗らない)グロウルは一体どうやって発声しているのか、完全に想像を超えた世界の領域。それこそ、通称デスのお兄さんの言う通り耳を疑うレベルのデスボで笑う↓

神使轟く、激情の如く。 - RAGNARΦCK

Artist 神使轟く、激情の如く。
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Album 『RAGNARΦCK』
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Tracklist
01. 自己都合主義メタモルフォーゼ
02. 夏声蝉時雨
03. 神奏曲:テンペスト
04. 瞬間成仏NEXTYOU→
05. 新世界エクソダス
06. 残響カタストロフィー
07. さよならネガティブ
08. 発狂的発散案件=惰性
09. STAGE
10. 風Zing!雷Zing!
11. 宣戦布告
12. 不器用HERO
13. 暁光センチメンタル
14. Supernova

先日、次世代のシーンを担う「ラウドル界の神激の巨人」こと神使轟く、激情の如く。という7人組グループについて、ある程度理解度が進んだタイミングで、昨年10月に発表された(初期のシングルまで網羅した)実質的な意味で1stアルバムとなる『RAGNARΦCK』を聴いてみた。

幕開けを飾る2018年リリースのシングル#1“自己都合主義メタモルフォーゼ”から、神激の音楽面での謳い文句の一つである様々な“ジャンル”を超越(transcendental)した、Post-PassCodeを襲名するかのようなヒュンヒュンシンセのイントロから、持ち前の転調を繰り返しながら神激バンザーイ!神激バンザーイ!という神者(神激ヲタの呼称)による合唱、からの生牡蠣いもこ作のエモい歌詞から繰り出されるアイドル然としたサビ、からの「V系顔の理想」兼「悠介くんの妹」こと涙染あまねによる葉月と京を超えるエグいグロウル、そして謎の人物によるスポークンワードを駆使した「アイドル界の宝塚歌劇団」じゃないけど、その帝国華撃団的なオペラティックかつシンフォニックな要素を散りばめたアブノーマルで超スペクタクルな楽曲構成は、たかだか5分程度の尺に2時間ドラマ並のストーリーが凝縮されたような音の詰め込み具合で、それこそ「アイドル界のIwrestledabearonce」と称すべき神激の予測不能な楽曲的魅力は、このように初期の頃から既に形作られていたことがわかる。


PassCode的なピコリーモをベースに、今度は「青春バンザーイ!」な夏合宿的なMVと同調するかのような、儚くも爽やかな潤いを帯びた夏メロを聴かせる#2“夏声蝉時雨”は、この時期に新加入したラップ担当よいこによるBTSのJ-HOPEリスペクトなラップパートが最大のキモとなっている。


神激といえば、その主語のデカいグループ名はもとより、その曲名にも「神の奏でる曲」と書いて「神奏曲」を冠する、それこそメタルゴッドちゃんもビックリの曲名も並々ならぬ個性を放っており、この「神奏曲」を冠する#3“神奏曲:テンペスト”は、毎度のピコリーモをベースに、三笠エヴァによる必殺技ワッワワワッワワンパンチ!しょっしょっしょしょっしょ昇龍拳!二日よいこのラップをフィーチャーしつつ、(MV観てて)ブレイクダウン突入からあまねによるゴリゴリのグロウルが炸裂・・・と思いきや、最近のシングルのMVにはいなかった誰か知らないめちゃくちゃ可愛い推し不可避のメンバーがエグ過ぎるグロウルしてて、「ちょっと待って、この可愛いメンバー誰?もしかしてGODちゃんの中の人?」と思って調べてみたら、どうやら昨年8月に脱退したメンバーだった模様(ここで#1“自己都合主義~”のグロウルも妖精かなめだと理解する)。神激メンバーの中でダントツに可愛いのに、シャウト担当のあまねを子供扱いするデスボイスぶっ放してて2秒でガチ恋した、でもガチ恋した次の瞬間脱退のショックで泣いた・・・。で思ったのが、涙染バンギャあまねのシャウトの模範って、もしかすると京や葉月ではなくて元メンバーの妖精かなめなんじゃねぇかって事。つまり、あまねのシャウトをフィーチャーした最新シングルの“神奏曲:インフェルノ”は、涙染あまねから元メンバー妖精かなめへの「鎮魂曲」だと解釈したら俄然エモ過ぎて泣く。その元メンバーが永久欠番メンバー扱いなのも2秒で納得だし、逆に一番の戦力が脱退して今の神激大丈夫なん?って心配になったw

このように本作は、過去に様々なメンバー脱退/加入の変遷を経て今に至っている事を書き記す、そういった意味でも「神激の歴史」が刻まれた1stアルバムと言っても過言じゃあない。その永久欠番メンバーの妖精かなめ他、元メンバー在籍時の過去の楽曲と現神激の楽曲を比較するのも面白くて、なんだろう初期の頃は(完成度自体は高いが)あくまでPost-PassCodeの粋を出ないというか、それこそ「アイドル界のIwrestledabearonce」を襲名する“BAD CAKE”ほどのハチャメチャな変態性に乏しい(逆に言えば、シングルを出すたびに曲が良くなっている)。


そんな中でも、ラップはラップでも春ねむりリスペクトなポエトリーラップがキマってる#5“新世界エクソダス”では、DIR EN GREYの京を超える妖精かなめのグロウルに再びガチ恋し(あまねのクリーンってBiSHのアユニに似てね?)、よいこのラップや妖精かなめの低域を強調した宝塚的なスポークンワード、そしてアユニ化したあまねいもこのエモいクリーンをフィーチャーしたシンプルにエモい#6“残響カタストロフィー”、アイドルらしいキラキラしたシンセや打ち込みでアップテンポに始まったかと思えば、転調を効かせてさしずめ奇劇『はぐれ刑事神激派』のEDさながらsukekiyo顔負けの昭和歌謡パートから、某バニラの求人オマージュやバッキバキのEDMが急転直下に入り乱れる、まさに神激らしい予測不能な曲構成が光る#7“さよならネガティブ”、珍しく最後までkawaiiノリで歌う曲で、いもこが手がけた妖精かなめを紹介する歌詞が笑えると同時にエモい#8“発狂的発散案件=惰性”、またまた音の毛色を変えてオルタナティブやフュージョン要素を盛り込んだ#9“STAGE”、初期のベビメタというか“メギツネ”を想起させる和風のオリエンタルなアレンジをフィーチャーした初期シングルの10“風Zing!雷Zing!”、2017年に発表したデビューシングルの#11“宣戦布告”、ある意味で“BAD CAKE”の原型と呼べる変態的かつ暴虐的なギターが炸裂するゴリゴリのメタルコアチューンの#12“不器用HERO”、リーダーことのYOSHIKIリスペクトな英詞のスポークンワードをフィーチャーした、希望に満ちた前向きなリリックを力強く歌い上げるJ-POP調の#13“暁センチメンタル”、アルバムの最後を飾るに相応しい大団円的なアイドルポップスの#14“supernova”まで、最後まで聴いてみて真っ先に思ったのは、このアルバムは昨年脱退した妖精かなめへの鎮魂曲としての側面が著しく強調された作品なんだってこと。

改めて本作の楽曲において、永久欠番メンバー妖精かなめのグロウルが示す存在証明が神激の存在証明に直結している気がしてやまなくて、そんな妖精かなめのグラビア画像を偶然発見して「ホーリーシー」ってなった話はさて置き、とにかく自分がシャウト担当のあまね推しになった理由が本作を聴いてわかった。それは他でもない、あまねのシャウトの裏にかなめの存在があったからだ(名前も微妙に被ってるしw)。要するに、あまねはデビュー当時からず~~~っとかなめの背中を『ルックバック』してきた、すなわちかなめの「過去」を追憶してきたからこそ今のあまねが存在していられるんだって、そうエクストリーム解釈したらクソ泣ける(僕がガチ恋したのはあまねじゃなくて「あまねが背負っているかなめ」だった説)。確かに、あまねのシャウトはDIR EN GREYの京をも凌駕するかなめのグロウルには現状足元にも及ばないのも事実(しかし、最新シングルの“インフェルノ”や“BAD CAKE”には色んな意味でかなめの面影と片鱗はある)。しかし、そういった本作に内在する過去メンバーに対する因縁/関係性だったり、今現在まで紡いできた「神激の歴史」だったりを絡めて聴くor聴かないでは、このアルバム『RAGNARΦCK』に対する想いというのが大きく変わってきそう。

そんな、端的に言うと「そうだ!パスコに妖精かなめが加入すれば万事解決!」もとい「あまね頑張れあまね」みたいな話はさて置き(野球ユーチューバーの向は今すぐあまねをオカルト部に推薦してくれw)、こうなってくると先日発表された2つの新曲を含むダブルミニアルバムのリリースが今から待ち遠し過ぎて泣く(10月開催の対バンのチケ取ったw)。どうでもいいけど、もし願いが叶うなら『神使轟く、神宿の如く。』のタイトルで“神激”ד神宿”でツーマンしてほしいw
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