Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

レビュー (W)

World of Pleasure - World of Pleasure & Friends

Artist World of Pleasure
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EP 『World of Pleasure & Friends』
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Tracklist
01. Domination 2 (feat. Dominic Vargaz)
02. Carbon Copy (feat. Shaun Alexander)
03. Everybody Finds Love (feat. Jaxon Craig)
04. Penitence (feat. Chad Pingree)

カナダはカルガリー出身のWorld of Pleasureが文字通りフレンズ達と制作した1st EP『World of Pleasure & Friends』の何が凄いって、それこそ現代ボストン・ハードコアのVeinさながらのマシズモみなぎるカオティックなハードコアをベースに、いわゆるドラムンベースや昨今のParannoulに代表されるBandcampミュージックのトレンドである90年代サブカルを象徴するジャパニーズアニメのサンプリングを邂逅させた、それこそヴェイパーウェイヴ然としたアートワークが示唆するように、頭のネジがぶっ飛んだパーリーピーポーな音楽性を特徴としており、それこそヴェイパーウェイヴならではのゲーム音楽的なキラキラシンセのイントロから幕を開ける#1“Domination 2”からして、初期のVeinに肉薄するゴリゴリのメタルコアをブチかました後のブレイクに、ローファイ・ヒップホップmeet日本アニメのサンプリングを導入する大胆不敵な曲展開を垣間見せると、同様にVein顔負けのブルータルなメタルコアを展開する#2“Carbon Copy”、そして#3“Everybody Finds Love”ではグルーヴィなハードコアmeetドラムンベース=ハイパーメタルコアを聴かせたりと、この先どうメガ進化していくのか、俄然フルアルバムに期待がかかる要注目のバンドです。

Whitearmor - In the Abyss: Music for Weddings

Artist Whitearmor
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Album 『In the Abyss: Music for Weddings』
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Tracklist
01. Wedding Bells
02. Could be us
03. Kisses and Hugs
04. Eternal hills highest crest
05. Smile (reprise)
06. tar feathers
07. Cold Nights pt 2
08. Slow Dance
09. Gåvor
10. Outro

スウェーデンはストックホルムのDJ/プロデューサーであるLudwig Rosenbergの音楽プロジェクト、Whitearmorの1stアルバム『In the Abyss: Music for Weddings』は、それこそ純白のウエディングベールとドレスを身にまとった新婦の花嫁が将来の結婚生活という茨の道、その深淵を暗示する意味深なアートワークからして優勝案件だが、逆に解釈すれば邪悪な棘や新郎のセフレや元カノの生霊から花嫁を守護する魔除けの意味合いとしての“ウエディングベール”を身に着けているって事でもある。しかし、そんな俗話や不吉な前触れを他所に、いざ蓋を開ければめちゃくちゃ幸福感溢れるアンビエント/エレクトロニカを繰り広げている件について。

まるで婚姻届を役所に提出した瞬間における「幸せ」の押し売り、もとい“おすそ分け”とばかりに幸福のベールに包まれる冒頭の#1“Wedding Bells”からして、喜多郎さながらのシンセが織りなすファンタジックかつノスタルジックなニューエイジ/アンビエントのサウンドスケープを張り巡らせたかと思えば、一転して新郎新婦がこれまで経験してきたキスやハグなどの(などの)思い出をフラッシュバックさせながら、トクマルシューゴ顔負けの鍵盤打楽器的な(スウェーデン産のポストロック勢にも通じる)瑞々しいポップなメロディが新郎新婦を盛大に祝福するフォークトロニカの側面を垣間見せる#3“Kisses and Hugs”、披露宴の目玉の一つである両親への感謝を伝える号泣不可避のシーンで流れてそうな#6“tar feathers”、まるで春ねむりのトラックを彷彿とさせる崇高かつ神聖さに満ち溢れた一種の「祈り」にも近い#7“Cold Nights pt 2”、そして披露宴のクライマックスを飾る#10“Outro”では、何このハッピーウエディングソングみたいな雰囲気で新郎新婦が永遠の愛を誓い合う。

この披露宴に参加している京都出身の女性は「(はぁ?隣の新郎、ウチの元セフレやで!つまりアンタとウチは竿姉妹や!)」と京都女らしい腹黒い心裏を覗かせ、ある一人の独身中年男性は「幸せをおすそ分けしてくれるなんざありがた迷惑な話や、死ぬまで一生幸せでいやがれ!」みたいにキザを気取ったりする中、いざ「幸せのおすそ分け」を象徴するブーケトスが始まると、さっきまで宴に無関心だったセフレや元カノの生霊が死物狂いでブーケを奪い合い、最終的に彼氏いない歴年齢のメガネ喪女がウエディングブーケを掴み取るオチまで完璧なストーリー展開。

この手のDJ出身らしいIDM的なアレンジを効かせたチルいアンビエント・ポップは、ブルックリンのJulianna Barwickやポートランド出身のLiz HarrisによるGrouperと同じ感覚で聴けると思うので、これから暑くなる季節的にもピッタリなんで本当にオススメ。

Wolves In The Throne Room - Primordial Arcana

Artist Wolves In The Throne Room
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Album 『Primordial Arcana』
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Tracklist
02. Spirit Of Lightning
03. Through Eternal Fields
04. Primal Chasm (Gift Of Fire)
05. Underworld Aurora
06. Masters Of Rain And Storm
07. Eostre
08. Skyclad Passage [bonus]

「姉さん事件です!」って、あの自然大好きDIY系USBMの雄ことWolves In The Throne RoomがRelapse Records/Century Mediaと契約した時ほど叫ばなかった言葉はなくて、だって映画『もののけ姫』のサン顔負けのスピ/リチュアルなDIY精神を貫き通してきた、約20年のキャリアを誇るあのWITTが故郷であるワシントン州の森の中から離れて、コンクリートの壁に覆われたオフィスで現代メタルシーンを代表するレーベルと契約、そしてこの最新作でIsis(アーロン・ターナー)界隈でもお馴染みのMatt Coltonをエンジニアとして迎え入れ、それこそDFHVNもビックリの現代的なポストメタル~ポスト・ブラックメタルをレコーディングするとか一体どんな風の吹き回し?それこそ「姉さん事件です!」ってならない方がおかしい。

いわゆるLiturgy=典礼あるいは儀式=Ritualな、と言っても次期総理候補の高市早苗ちゃんがハマってそうな胡散臭いスピ系に頭がやられちゃった人ではなく、それはまるで真っ当に自然を愛する心を持つDIY精神と、彼らの原典と称すべき初期の荒涼感溢れるアトモスフェリック・ブラックメタルが、いわゆる文明の利器すなわち現代のテスラ・テクノロジーによって著しくモダンに洗練された事で未知なる化学反応を起こし、ソーシャルのソの字もない幽玄かつ神秘的な森の中で動物や自然と一体化して暮らす“アンダーグラウンド”なニューエイジャーと、カリフォルニア州はサンフランシスコなど人々が密集する都市部で『マスク』と『サンバイザー』を着用しながら生活する“メインストリーム”な現代人の魂をつなぎ合わせる“イコン”即ちシシ神様の代弁者として、ソーシャルディスタンスが強制され都市部の一極集中が見直されつつある時代に、この『Primordial Arcana』という名の儀式(Ritual)を通して生きてるって何だろ 生きてるってな~に?の意味を人類に問いかけるかのよう。


それこそアイルランドのブラック・メタルバンド=Primordialばりに勇壮で超絶エピックな、そしてヘヴィでメタリックなATMSUSBMを繰り広げる#1“Mountain Magick”からして「Relapseと契約した結果」を示し、民謡的なフォーク・ミュージックとシンセが奏でる幻想的なシンフォニーがプログレスに交錯しながら自然崇拝の儀式を執り行う#2“Spirit Of Lightning”、その荘厳な“儀式”に必要不可欠となる未開の部族だけに伝わるトライバリズムをフィーチャーした曲で、ボーカルにTrap ThemGalen Baudhuinを迎えた#3“Through Eternal Fields”、US版森メタルに棲む妖精の立場から都市部に奏でるポストメタルの#4“Primal Chasm (Gift Of Fire)”、再び住む森に帰り水辺に佇むシシ神様を呼び起こす#5“Underworld Aurora”、そして自然界で暮らす人々の魂を浄化するシンフォニックなATMSBMと、都市部で暮らす人々の魂を浄化するAltar Of Plaguesさながらの現代的なポストメタル、その分断された二つの魂が一つに邂逅する#6“Masters Of Rain And Storm”は本作のハイライトで、WITTがアイデンティティとしている喜多郎リスペクトなアンビエントやニューエイジと呼ばれる環境音楽的なスピ系インストの#7“Eostre”を最後に、本編は幕を閉じる。そして、本編における自然崇拝と対をなす悪魔崇拝、すなわち邪教的な儀式という名の『人類はっぱ隊計画』による魂の浄化、すなわち『エヴァ・チンフィニティ』を完了させるボートラの#8“Skyclad Passage”まで、いわゆるアンビエント主体の抽象的(ファンタジー)な音楽に逃げず、とにかく過去イチでクソ真面目に現実的かつ叙情的な「(ブラック)メタル」やってるギャップが最高の1枚。要するに「AoP化」ですね。

The Weeknd 『After Hours』

Artist The Weeknd
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Album 『After Hours』
After-Hours

Tracklist
1. Alone Again
2. Too Late
3. Hardest To Love
4. Scared To Live
5. Snowchild
6. Escape From L.A.
8. Faith
11. Save Your Tears
12. Repeat After Me (Interlude)
13. After Hours

新作の『Underneath』がメタルバンドとしては20年代初の米ビルボートチャートトップ10入り(2位)を果たしたCode Orange。と同時に、Code Orangeのビルボード1位の快挙を拒んのは一体誰だ!?と気になったので、急いでビルボードチャートを見に行ってみたら、そこで目に留まったのがThe Weekndとかいう人物で、「ウィーケンド・・・?名前は聞いたことあるけど一体何者なんだ・・・?」と思い、ちょうどいいキッカケとしてそのビルボード1位に輝いた新作の『After Hours』を聴いてみた。すると、そこには20年代最高のメタルがCode Orangeの『Underneath』に対する、20年代最高のポップスがThe Weekndの『After Hours』としか言いようがない“シン・キング・オブ・ポップ”の世界が広がっていた。

とりまウィーケンドの本名が【エイベル・マッコネン・テスファイ】である事と【エチオピア系カナダ人のR&Bシンガー】という出で立ち以外のバックグラウンド的な話は洋楽専門の主要メディアから取得してって感じなんですけど、今作の何が凄いって、とにかくシンセが凄いポップスで、そのタイトルからしてCode Orange『Underneath』がグリッチーに脳裏を過ぎってタダヒトリ『悪夢』が蘇る#1“Alone Again”から、まるで“20年代”という新たなる時代の夜明けを告げるかのような、往年の坂本龍一あるいは久石譲を連想させる映画のサントラ風の電子音と日本の歌姫=宇多田ヒカル顔負けのセンチで繊細な歌声にEDM(トラップ)を交えたイマドキのポップスを繰り広げるや否や、ダークウェイブなシンセが夜空を煌びやかに彩る#2“Too Late”、80年をド派手に彩ったMTV全盛の黄金時代を記憶したシンセのメロディとワム!ジョージ・マイケル顔負けのポップな歌声が耳をキャッチーする#3“Hardest To Love”、一転してBPMを落とした真珠のバラードナンバーの#4“Scared To Live”、ヒップ・ホップ(トラップ)をポップスとして昇華したベッドルーム系ポップ・ラップの#5“Snowchild”やトラップ化したマイケル・ジャクソンの#7“Heartless”、かと思えば今度は某界隈で有名なYouTubeチャンネルがアカBANされてちょっとした騒動になったLo-Fiヒップ・ホップ系のアプローチを垣間見せる#6“Escape From L.A.”は、いわゆる日本のJ-POPと共振する切ないメロディからアウトロの繊細な感情描写を表現するウィーケンドの叙情的な歌声まで、もはや最初から最後まで宇多田ヒカル“桜流し”を連想させる名曲となっている。

エレポップなビートを刻む電子音やアンビエントがかったモノクロームのアトモスフィアを描写するアウトロの演出がUlverやUKのThe Japanese Houseっぽくて最高に泣ける#8“Faith”、そして再び黄金の80年代が蘇るシンセのバブリーな旋律とポスト・パンク然としたビートを刻むイントロのドラムからしてDuran Durana-ha、そしてデペッシュ・モードに代表される80年代のニューウェイブを連想させる#9“Blinding Lights”とニューロマンティック化したマイケル・ジャクソンな#10“In Your Eyes”の、まるで80年代リバイバルと言わんばかりのシンセウェイブ祭りは今作のハイライトで、中でも#10のアウトロのカウボーイ・ビバップばりにファンキーなサックスとかスウェーデンのアレややくしまるえつこソロを連想させて最高。

まるで春の香りを運んでくるかのようなシンセが色鮮やかに波打つ#11“Save Your Tears”は、それこそThe Japanese Houseと繋がりのあるマリカ・ハックマン的な海外人気の高い日本のシティポップ/AORをイメージさせ、そういえばウィーケンドってR&Bシンガーだったことを思い出すアダルティな#12“Repeat After Me”、今度はトラップ化したThe Rasmusみたいなダークでメランコリックな表題曲の#13“After Hours”、そして見知らぬ誰かへのレクイエムを贈るかのようなシンセのリリカルな旋律とともにアルバムのクライマックスを飾る#14“Until I Bleed Out”まで(ボートラの#15は歌謡曲っぽい)、なんだろう、端的に言って昨年末から絶賛発動中の“完全究極体伏線回収”の一環アルバムとしか言いようがなくて、ただただ最高の一言。とにかく最高だから黙って聴けばいいじゃんとしか言えない。ジャンルとかどうでもよくなるぐらいには極上の(シンセ)ポップスだから。

もはやR&Bというよりは完全に80年代に一世を風靡したニューウェイブのソレで、大袈裟な話10秒に一回は確かにどこかで聴いたことあるような既視感やデジャブに襲われるぐらい、もはや全曲80年代のポップスのカバー曲なんじゃねぇかと思うぐらい、つまり“キング・オブ・ポップ”ことマイケル・ジャクソンやUK発のニューウェイブに象徴されるMTV全盛の80年代、それすなわち世界の音楽の全盛期が記録された“時代”を記憶している音楽で、一方で日本の宇多田ヒカルやUKのThe Japanese Houseを聴いてるかのような、語弊を恐れずに言うとJ-POPの亜種を聴いているかのような錯覚を憶えるのも事実で、言ってしまうと今昔のUKサウンドがクロスオーバーしたような感覚。特に80年代リバイバル化が著しくなる中盤以降は、近年のUlverThe Japanese House的なアンビエント・ポップ感ある。逆に歌をフィーチャーした序盤はヒッキー的な意味でもトータルで“Japanese”感凄い。ここで繋がってくるのかよと。それぐらい、今作を自分の中でザックリと例えるなら、【宇多田ヒカル(マイケル・ジャクソン)× The Japanese House×The Rasmus×Ulver×ケニーG=ウィーケンド】って感じ。いや、これガチでヒッキーウィーケンドのコラボ熱望したいわ。7曲目の“ハートレス”=キンハーの主題歌=ヒッキー的な意味でもw

“伏線”という意味では、この手の80年代愛に溢れたシンセ主体の“メインストリーム”のポップスを聴いて真っ先に思い出したのが、広義の意味でウィーケンドと同じユニバーサル所属であり、70年代のプログレマイスターでお馴染みのスティーヴン・ウィルソンが80年代の“ポップス”をオマージュした『To the Bone』で、その次に一時代を築いたキリング・ジョーク“Youth”がエンジニアとして参加したUlver『ユリウス・カエサルの暗殺』、そしてメタル界から初めてメインストリームのポップスへ進出したBMTH『amo』の3枚だった。この『After Hours』は、まさにその3本のラインと地続きで繋がってるアルバムだと断言できる。

改めて、コロナ禍とともに20年代として初めての春が訪れるや否や、Code OrangeThe Weekndという“20年代のニューウェイブ”という名の“新世代の波”がメインストリームのポップス界とメタル界で同時刻に押し寄せてきたのは果たして偶然なのだろうか?春を迎えたと同時に、“20年代のメタル”を象徴する『Underneath』を発表したCode Orangeと、その翌週に“20年代のポップス”を象徴する『After Hours』を発表したThe Weeknd、厳密に言えば一周ズレてビルボードチャートの2位と1位を飾ったのは果たして本当に偶然なのだろうか?もしそれが必然であったと仮定して、突如として目の前に現れたこの難題を、“日本のメタルメディア界のキング”を自称する僕はいかにして彼らの“必然性”を導き出したのか?そして最終的にたどり着いた答えがもしかしてポップス=メタルなんじゃねぇか説だった。

いや、コロナ禍のせいで自粛からの引きこもり生活が続いて頭おかしくなったんじゃねえかと思うかもだけど、これ実は冗談じゃなくてわりとガチな話。確かに、確かに“ポップス”“メタル”って誰の目から見ても真逆のジャンルだし、恐らくそのイメージを否定する人もいないと思う。まず、このウィーケンド『After Hours』を例に出すと、先ほども書いたようにダブル・マイケルやニューウェイブに代表される80年代のMTV全盛を記憶しつつ、一方で00年代以降のポップス界の主流であるEDM(トラップ)をはじめ、10年代以降のユーチューブ/SNS時代における(Lo-fi)ヒップ・ホップ(トラップ)、そしてASMRを含めたメインストリームでトレンドのトラックを記録している。つまり、80年代のポップスの記憶と00年代から現在までのポップスの記録を繋ぎ合わせたのが、このウィーケンドによる“20年代のポップス”であるということ。彼が今作の中でやってるのは、まさに歴代のポップスが積み重ねてきた歴史のアップデイト(20.20ver)であるということ。

ポップスの歴史は長ければ、そのポップスに負けじとメタルの歴史も長い。古くは60年代イギリスのビートルズに始まったポップスの歴史、一方で古くは70年代イギリスのブラック・サバスに始まったメタルの歴史、80年代イギリスのニューウェイブやマイケル・ジャクソンを記憶したポップスの歴史、一方で80年代カルフォルニア・ベイエリア・スラッシュメタルやメタリカを中心とする“ビッグ4”を記憶したメタルの歴史、そして00年代以降のヒップ・ホップやEDMやR&Bを経由して現在のトラップを記録したウィーケンド『After Hours』における“20年代のポップス”、90年代のヌー・メタルやモダン・ヘヴィネスを経由して、そしてメシュガー以降著しく先鋭的にエクストリーム化が進行した現在のメタルを記録したCode Orange『Underneath』における“20年代のヘヴィネス”、僕が言いたいのはポップスが既視感(デジャブ)と歴史の積み重ねならば、そのポップスと同じようにメタルも既視感(デジャブ)と歴史の積み重ねの音楽、つまりポップスとメタルどちらも“アップデイトの音楽”であるということ。そう言った意味では、ある意味でMTVの音楽を20年代にアップデイトしたウィーケンドと、90年代のモダン・ヘヴィネスから00年代以降のメタルのトレンドを20年代にアップデイトしたコード・オレンジは全く同じで、ただ一つ確実的に言える事は、どちらもアンダーグラウンドとは無縁の“メインストリームの音楽”ということ。そういっった意味では、実はロックのサブジャンルの一つに過ぎないメタルって実は“裏のポップス”なんじゃねえかって。だから“表のポップス”と繋がった“裏のポップス”と仮定したメタルは、歴史的に見えても同時進行(連動)しているような気がしてならない。この20年代のポップス代表のウィーケンドと、20年代のメタル代表のコード・オレンジの新作に共通する、それぞれの“歴史”を照らし合わせるともうそうとしか思えない。

そんな中、“裏のポップス”であるメタルシーンから、表のポップシーンと裏のメタルシーンの間にある“壁”をブチ破ってしまったオキテ破りがBMTH『amo』だったんですね。BMTH『amo』でやってのけたのは、世界の行く末を握るテスラCEOことイーロン・マスクのパートナーであるグライムス(現在懐妊中)とのコラボ、そしてウィーケンドと負けず劣らずなEDM(トラップ)やヒップ・ホップ(トラップ)を取り入れた、まさしく“メインストリームのポップス”だった。その“オモテ(陽)とウラ(陰)”の境目をなくしてしまった結果、Xperiaの広告塔として地上波のTVCMで放映されて、遂にはしょうたんもといしょこたんに見つかってしまうオチまで、言ってしまえばBMTH“裏のポップス”であるメタルシーンから“表のポップス”にメタラーで初めて到達した偉大なバンドなんですね。それはまるで人類が初めて月に到達した事のように、それ世界に証明したのがBMTHの正統後継者であるCode Orangeであり、前週ビルボードチャート2位のコード・オレンジとその翌週ビルボードチャート1位のウィーケンドを繋ぎ合わせる、“表(ポップス)と裏(メタル)”を知ってる唯一の存在がBMTHなんですね。そうなんだよね、全ては「繋がってる」んだよね。

しっかし、“20年代”の幕開けと同時に世界中がコロナ禍によって厳しい自粛生活を余儀なくされている最中、皮肉にも音楽界隈では早くも“20年代”を象徴する、20年代最高のポップス20年代最高のメタルが一周ズレで立て続けにリリースされたのは、ささやかならに“春”を感じさせる出来事だった。まさに激動の“20年代”を迎える全人類が聴くべき必聴盤です。

Whirr 『Feel Like You』

Atrist Whirr
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Album 『Feel Like You』
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Tracklist
01. Mellow
02. Wavelength
03. Younger Than You
04. Rose Cold
05. Before You Head Off
06. How Time Stretches
07. Rental
08. Vividly
09. Play The Slow Ones
10. Under The Same Name

今でも思い出す。もう10年前近く前に伝説のデビュー作『桃尻女とシューゲイザー』と出会った時の衝撃を。10年近く経った今でも、このEPと共にPhantogramのEP『Nightlife』を聴いて、ちょうど今ぐらいからの孤独のクリスマスシーズンを乗り越えた甘酸っぱい記憶が色あせず鮮明に蘇る。

そして遂に、俺たちのニック・バセットが、俺たちのWhirrが帰ってきた。2010年作のデビューEP『桃尻女とシューゲイザー』アンダーグラウンド・シーンに衝撃を与えるも、相次ぐ女性ボーカルの脱退という幾多の苦難を経験し、もう開き直って男性ボーカルに鞍替えして、因縁の相手=Deafheavenでもお馴染みのジャック・シャーリーをプロデューサーに迎えた2014年作の3rdアルバム『Sway』から約5年ぶりとなる4thアルバム『Feel Like You』は、これでもかというぐらい素直なシューゲイザーを聴かせる、完全復活を告げるに相応しい「Whirr is Back...」な一枚となっている。

セルフリリースとなった今作では、かのRelapse Recods所属のCloakroomを手掛けたザック・モンテスをプロデューサーに迎え、そのCloakroom譲りのスロウコアmeetシューゲイザーを展開していく。前作までは、オルタナやノイズ・ポップ、あるいはJesuリスペクトなドローン〜ポストメタル的なアプローチをもって、時にポップな疾走感、時に轟音なヘヴィネスを鳴らしてたけど、それよりもずっとシューゲイザー〜ドリーム・ポップ寄りの、(レジェンドのマイブラスロウダイブは元より)それこそ数年前に話題となったブルックリンのCigarettes After Sexを彷彿とさせる文字通り“Mellow”な幕開けから、今にも消えてしまいそうなウィスパー・ボイスと(今作のアートワークからイメージされる)1950年代の古き良きハリウッドのラブロマンス映画さながらのセクシャルでハラスメント、そしてエロティックでロマンティックな官能世界へと誘うドリーミーでリバーヴィな魅惑のリフレインを中心に、これからの独身男性に容赦なく襲いかかる悪夢のクリスマスシーズンに向けて、胸キュン不可避な“甘味で繊細な美メロ”という名の凶器を持って殺しにくる。その鋭利な凶器に対して、僕ら独身男性はなす術なくSOSの遭難信号を発信し続ける・・・(キュン死)。

特に、物語の終幕を飾る男女の官能的なセリフ混じりの“Under The Same Name”は今作イチのパンチラインで、それこそ伝説のデビューEPの幕開けを飾った“Preface”の女性のセリフを“Flashback”させる、それこそ“Cigarettes After Sex=セックスの後のタバコ”に対抗してじゃないけど、いわゆる事後のピロートークでこの愛は永遠さみたいなメロドラマ臭い男女の会話演出は、完全に往年のラブロマンス映画『昼下がりの情事』そのもの。また、曲間をギャップレスに繋いでいく演出も一本の映画を観ているかのような没入感を与える。この妙に生々しい演出は、ヘタしたらCigarettes After Sexよりも童貞煽り度高いかもしれない。いや、もはや今のCigarettes After Sexみたいな“変態”とは比べ物にならないほどの完成度バリタカで、ブルックリンの“変態野郎”みたいな童貞煽りのフェイクバンドとは違う“本物感”しかない。

ようやく真正面から伝説の『桃尻女とシューゲイザー』と対等に渡り合える“美尻の桃尻男”、すなわち『桃尻男とシューゲイザー』が出てきた感じ。世の独身男性は、僕と一緒にこの桃尻男の美尻を愛でながらこれからの悪夢を乗り越えよう!SOS!SOS!
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