Artist Oranssi Pazuzu
Album 『Mestarin kynsi』
Tracklist
オレンジパズズことフィンランド出身のOranssi Pazuzuって、まずこの手のアヴァンギャルドなブラックメタルって隣国ノルウェーの専売特許なイメージあるけど、しかしこのOranssi Pazuzuも2009年にデビューして以来、コンスタントにアルバムを発表するたびにエクストリーム・メタルの常識を覆してきた気鋭バンドの一つだ。そんなパズズは、念願のメタル最大手ニュークリア・ブラストに移籍して約4年ぶりに発表された5thアルバム『Mestarin kynsi』において、長きにわたるブラックメタル史においても前人未到の“シン・ブラックメタル”の極地に到達している。これはでのアルバムとは明らかに一線を画す“黒い公園”を耳にした瞬間、僕はある一つの仮説にたどり着いた。それが、それこそが「パズズ=JK説」だった。
Album 『Mestarin kynsi』
Tracklist
1. Ilmestys
2. Tyhjyyden sakramentti
4. Oikeamielisten sali
5. Kuulen ääniä maan alta
6. Taivaan portti
オレンジパズズことフィンランド出身のOranssi Pazuzuって、まずこの手のアヴァンギャルドなブラックメタルって隣国ノルウェーの専売特許なイメージあるけど、しかしこのOranssi Pazuzuも2009年にデビューして以来、コンスタントにアルバムを発表するたびにエクストリーム・メタルの常識を覆してきた気鋭バンドの一つだ。そんなパズズは、念願のメタル最大手ニュークリア・ブラストに移籍して約4年ぶりに発表された5thアルバム『Mestarin kynsi』において、長きにわたるブラックメタル史においても前人未到の“シン・ブラックメタル”の極地に到達している。これはでのアルバムとは明らかに一線を画す“黒い公園”を耳にした瞬間、僕はある一つの仮説にたどり着いた。それが、それこそが「パズズ=JK説」だった。
冒頭の#1“Ilmestys”や#2“Tyhjyyden sakramentti”は、お化け屋敷のSEみたいに不気味な不協和音を執拗に繰り返しながら、日常が足元から崩れ落ちていく恐怖を演出する。問題は次の#3“Uusi teknokratia”に関する話で、“黒い公園”の番人である道化がアヒャヒャヒャヒャ オヒョヒョヒョヒョヒョという不敵な笑みを浮かべながら人々に不安と恐怖を煽るような不規則なメロディとDjent以降の洗練されたモダンなリズムをもって混沌の禍に引きずり込まれたかと思えば、急な転調から今度は女の人の声で「ナ~ナ~ナ~フフフ~」みたいな萌え声が聴こえてきて、その瞬間「何ィ!?公園に迷い込んだ!?ここはどこだァ!?赤い公園・・・?いや、ここはまさか・・・夜中の4:44分になると赤い公園が“真っ黒”に染まる都市伝説で有名なあの黒い公園!?」ってなった。個人の勝手なイメージで例えるなら、#StayHomeからの休校でお家の子供部屋に引きこもり過ぎて頭がパズって波動に目覚めたタダヒトリの“ロンリーガール”ことJKパズズが真夜中の黒い公園で暗黒舞踏ばりのコンテンポラリーなダンスを舞い踊り黒い結界を張り巡らせている、そんな自粛期間中のJKの闇が暴発したイメージ。
その瞬間にフラッシュバックしたのは、まさしく日本のガールズバンド赤い公園に対する黒い公園と言わんばかりの、それこそメジャーデビューして佐藤千明が脱退した今現在にはないインディーズ時代の赤い公園における『ランドリーで漂白を』と『透明なのか黒なのか』という通称“白黒盤”が醸し出す天性のアヴァンギャリズムに他ならなかった。遂にパズズはアヴァンギャルドの概念を超越した先にあるイマドキのJKならではのコンテンポラリーなkawaiiセンスを会得してしまった感あって、これはもうブラックメタルの皮をかぶったエクストリーム・ガールズロックだと思ったね。北欧の毛むくじゃらのオッサンメタラーがJKのコスプレしてメタル演奏してる姿を想像したら萌えたし、ここまで萌え萌えキュンキュンしたブラックメタルってAlcest以来かも。
少し話は変わるけど、2015年以降のアンダーグラウンドのシーンで、マイアミのラッパーデンゼル・カリーを中心とする“トラップ・メタル”なるジャンルが創成期を迎えていたのを読者はご存知だろうか?2020年の初めにデンゼル・カリーが発表した新作のDJミックスでフィーチャリングしているGhostemaneとZillaKamiこそトラップ・メタルシーンの第一人者と呼ばれる人物である。当然、2018年の年末に「デンゼル・カリーはメタル」だ何だと冗談交じりに書いてた頃は、アングラシーンでそんな新興ジャンルが産声を上げていたなんて全く知らなかったし、むしろこの“トラップ・メタル”という名の“新世代ニューメタル”の“基準”みたいなカリーの新作で初めて知ったぐらいの勢いなんだけど、逆に言えば2018年の時点で既に「デンゼル・カリーはメタル」という“伏線”を立てて、間接的に“トラップ・メタル”の存在を潜在的かつ無意識のうちに認知していたと考えたら、やっぱ音楽って“引力”で成り立ってるんだなって。というか、ZillaKamiはカリーの名盤『タブー』にも参加してるし、Ghostemaneに至ってはカリーとBMTHも出演した昨年のロラパルーザのメインステージでパフォーマンスしてる事を今さら気づく奴←ウケる。
何を隠そう、本作がこれまでの作品と一線を画す最大の要因となる5曲目の“Kuulen ääniä maan alta”では、それこそ“トラップ・メタル”じみたシン・ブラストビートやバグったグリッチ/ノイズなどのイマドキのトレンドを応用した、それこそ“ブラック・トラップ(EDM)”と称すべき全く新しい異形のジャンルを生み出してしまっている。しかし20年代に突入したばかりのこのタイミングで、2015年以降のアングラシーンにおけるトレンドの一つだったデンゼル・カリーをボスとするGhostemane(舎弟1号)やZillaKami(舎弟2号)らの“トラップ・メタル”と点と点がバッチバチに繋がって一本の線になる完全究極体伏線回収案件は流石にエグいて、エグ過ぎるて。
正直、この辺のデンゼル・カリーが取り仕切るトラップ・メタル界隈の話題はいつか書きたいと前々から思ってたけど、その初出しがJKパズズになるなんて想像もしてなかった。もちろん、これまでも広義の意味でEDMと呼べる前衛的な側面は決してないわけではなかったし、そのわずかなEDM成分をイマドキのJK的な解釈をもって20年代仕様にアップデイトした結果、その回答が今作の“Kuulen ääniä maan alta”における“ブラック・トラップ(EDM)”だと考えたら、今回の件は何ら意外性のない話かもしれない。なんだろう、ブラックメタルからオルタナティブに方向転換したバンドといえば同じ北欧ノルウェーのUlverが有名だけど、今作の中でJKパズズがやってる事って、まさに偉大なる先人のUlverが辿ってきた音楽遍歴の進化という名の突然変異と全く同じ音楽進化論なんですね。もはや人類における進化の歴史、その決定的瞬間を目の当たりにしちゃった気がする。
正直、この辺のデンゼル・カリーが取り仕切るトラップ・メタル界隈の話題はいつか書きたいと前々から思ってたけど、その初出しがJKパズズになるなんて想像もしてなかった。もちろん、これまでも広義の意味でEDMと呼べる前衛的な側面は決してないわけではなかったし、そのわずかなEDM成分をイマドキのJK的な解釈をもって20年代仕様にアップデイトした結果、その回答が今作の“Kuulen ääniä maan alta”における“ブラック・トラップ(EDM)”だと考えたら、今回の件は何ら意外性のない話かもしれない。なんだろう、ブラックメタルからオルタナティブに方向転換したバンドといえば同じ北欧ノルウェーのUlverが有名だけど、今作の中でJKパズズがやってる事って、まさに偉大なる先人のUlverが辿ってきた音楽遍歴の進化という名の突然変異と全く同じ音楽進化論なんですね。もはや人類における進化の歴史、その決定的瞬間を目の当たりにしちゃった気がする。
恐らく誰もが予想していたように、遂にニュークリア・ブラストに買われて音が格段にブラッシュアップされて“色気”を出してきたのは紛れもない事実だけど、結果的にこれが功を奏している。過去作で培ってきた、まるで醜形恐怖症患者の精神状態を反映したかのような不快感を催す邪悪な奇音をベースメイクとしながらも、70年代のスペース・サイケ/プログレ成分だったり、Djent以降のモダンなリズムだったり、晴れてレーベルメイトとなったポスト・ブラック界のレジェンドAlcestのポスト成分だったり、(業界最大手ニュークリア・ブラストだからといって極端にメインストリーム=売れ線になるのではなく)あくまでも日本のガールズバンドとも共鳴する“ポップなアヴァンギャルド”が構築する黒い公園の世界観(コンセプト)だったり、そして2010年代後半のアングラシーンで産声をあげたJKに大人気のトラップ・メタルというイマドキのトレンドだったり、とにかくあらゆる面で洗練化(オーバーグラウンド化)が進んだ結果、日本の某ガールズバンドみたいに女装化もといミニスカJKに化けた大傑作ですこれ。まさにブラック・メタルというジャンルをNEXTステージへとブチ上げた、それこそポスト・コロナ時代のブラックメタルのあり方、その特例であり、もはや今年だけじゃなく20年代を象徴する歴史的名盤です。
とにかく感心したのは、これまではアンダーグランド・メタルの重鎮的なイメージの強かったパズズのニュークリア・ブラスト入りに伴う「オーバーグランド化計画」で、まず過去作比でも輪郭のハッキリした泣きのメロディの増加は言わずもがな、“メタル”の醍醐味の一つである転調を駆使した曲構成に対する色気、ブラックメタル以前にメタルバンドとしての“リズム感”に対するモダンな色気、Ulverの正統後継者を襲名するかのようなアングラシーンのトレンド先取りに対する色気、これらの様々な“色気”は、これ以上増え過ぎてもダメだし、これ以上少な過ぎてもダメだし、それぞれの色気というか塩梅のさじ加減が絶の妙。そして何よりも、あくまで過去作と比較した上で“ポップ化”を推進するその問いに対する答えが、まさかの“ジャパニーズ・ガールズバンドのインディーズ時代”という発想がまず前衛的過ぎる変態もとい天才(仮に変態だとしても、変態という名の紳士だよ)。これを時代の突然変異とも呼べる、新時代の幕開けを宣言する2020年にやってのけるしたたかな頭の良さも推せる。ちなみに、バンド名にあるフィンランド語の“Oranssi”って、英語だと“Orange”を意味していて、まさかのここでもオレンジに繋がってくるのちょっとホラーだなって。
ある種の映画『未知との遭遇』みたいな体験だったから、未だに自分でも何書いてんのか分かんねぇ。でもちょっと泣けたのは、個人的なフィンランドの推しバンドだった、例の「深いところでオルタナティブ・ヘヴィを舐めている」アルバムのゴミみたいな音質をディスったせいで自然消滅=実質解散したGhost Brigadeへのレクイエムとしても解釈可能な点で、少なからず言えるのは、これでパズズがフィンランド最高のメタルバンドになったということ。もちろん、ここ最近のニュークリア・ブラストの囲い込みあるいは青田買いもとい商売では最高レベルの仕事です。やっぱニュークリア・ブラストってサイコーーーーーー!!あとやっぱJKってサイコーーーーーーー!!