Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

レビュー (O)

Oranssi Pazuzu 『Mestarin kynsi』

Artist Oranssi Pazuzu
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Album 『Mestarin kynsi』

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Tracklist
1. Ilmestys
2. Tyhjyyden sakramentti
4. Oikeamielisten sali
5. Kuulen ääniä maan alta
6. Taivaan portti

オレンジパズズことフィンランド出身のOranssi Pazuzuって、まずこの手のアヴァンギャルドなブラックメタルって隣国ノルウェーの専売特許なイメージあるけど、しかしこのOranssi Pazuzuも2009年にデビューして以来、コンスタントにアルバムを発表するたびにエクストリーム・メタルの常識を覆してきた気鋭バンドの一つだ。そんなパズズは、念願のメタル最大手ニュークリア・ブラストに移籍して約4年ぶりに発表された5thアルバム『Mestarin kynsi』において、長きにわたるブラックメタル史においても前人未到の“シン・ブラックメタル”の極地に到達している。これはでのアルバムとは明らかに一線を画す“黒い公園”を耳にした瞬間、僕はある一つの仮説にたどり着いた。それが、それこそが「パズズ=JK説」だった。


冒頭の#1“Ilmestys”や#2“Tyhjyyden sakramentti”は、お化け屋敷のSEみたいに不気味な不協和音を執拗に繰り返しながら、日常が足元から崩れ落ちていく恐怖を演出する。問題は次の#3“Uusi teknokratia”に関する話で、“黒い公園”の番人である道化がアヒャヒャヒャヒャ オヒョヒョヒョヒョヒョという不敵な笑みを浮かべながら人々に不安と恐怖を煽るような不規則なメロディとDjent以降の洗練されたモダンなリズムをもって混沌の禍に引きずり込まれたかと思えば、急な転調から今度は女の人の声で「ナ~ナ~ナ~フフフ~」みたいな萌え声が聴こえてきて、その瞬間何ィ!?公園に迷い込んだ!?ここはどこだァ!?赤い公園・・・?いや、ここはまさか・・・夜中の4:44分になると赤い公園が“真っ黒”に染まる都市伝説で有名なあの黒い公園!?ってなった。個人の勝手なイメージで例えるなら、#StayHomeからの休校でお家の子供部屋に引きこもり過ぎて頭がパズって波動に目覚めたタダヒトリの“ロンリーガール”ことJKパズズが真夜中の黒い公園で暗黒舞踏ばりのコンテンポラリーなダンスを舞い踊り黒い結界を張り巡らせている、そんな自粛期間中のJKの闇が暴発したイメージ。

その瞬間にフラッシュバックしたのは、まさしく日本のガールズバンド赤い公園に対する黒い公園と言わんばかりの、それこそメジャーデビューして佐藤千明が脱退した今現在にはないインディーズ時代の赤い公園におけるランドリーで漂白を『透明なのか黒なのか』という通称黒盤”が醸し出す天性のアヴァンギャリズムに他ならなかった。遂にパズズはアヴァンギャルドの概念を超越した先にあるイマドキのJKならではのコンテンポラリーなkawaiiセンスを会得してしまった感あって、これはもうブラックメタルの皮をかぶったエクストリーム・ガールズロックだと思ったね。北欧の毛むくじゃらのオッサンメタラーがJKのコスプレしてメタル演奏してる姿を想像したら萌えたし、ここまで萌え萌えキュンキュンしたブラックメタルってAlcest以来かも。


少し話は変わるけど、2015年以降のアンダーグラウンドのシーンで、マイアミのラッパーデンゼル・カリーを中心とする“トラップ・メタル”なるジャンルが創成期を迎えていたのを読者はご存知だろうか?2020年の初めにデンゼル・カリーが発表した新作のDJミックスでフィーチャリングしているGhostemaneZillaKamiこそトラップ・メタルシーンの第一人者と呼ばれる人物である。当然、2018年の年末にデンゼル・カリーはメタルだ何だと冗談交じりに書いてた頃は、アングラシーンでそんな新興ジャンルが産声を上げていたなんて全く知らなかったし、むしろこの“トラップ・メタル”という名の“新世代ニューメタル”“基準”みたいなカリーの新作で初めて知ったぐらいの勢いなんだけど、逆に言えば2018年の時点で既にデンゼル・カリーはメタルという“伏線”を立てて、間接的に“トラップ・メタル”の存在を潜在的かつ無意識のうちに認知していたと考えたら、やっぱ音楽って“引力”で成り立ってるんだなって。というか、ZillaKamiカリーの名盤『タブー』にも参加してるし、Ghostemaneに至ってはカリーBMTHも出演した昨年のロラパルーザのメインステージでパフォーマンスしてる事を今さら気づく奴←ウケる。

何を隠そう、本作がこれまでの作品と一線を画す最大の要因となる5曲目の“Kuulen ääniä maan alta”では、それこそ“トラップ・メタル”じみたシン・ブラストビートやバグったグリッチ/ノイズなどのイマドキのトレンドを応用した、それこそ“ブラック・トラップ(EDM)”と称すべき全く新しい異形のジャンルを生み出してしまっている。しかし20年代に突入したばかりのこのタイミングで、2015年以降のアングラシーンにおけるトレンドの一つだったデンゼル・カリーをボスとするGhostemane(舎弟1号)ZillaKami(舎弟2号)らの“トラップ・メタル”と点と点がバッチバチに繋がって一本の線になる完全究極体伏線回収案件は流石にエグいて、エグ過ぎるて。

正直、この辺のデンゼル・カリーが取り仕切るトラップ・メタル界隈の話題はいつか書きたいと前々から思ってたけど、その初出しがJKパズズになるなんて想像もしてなかった。もちろん、これまでも広義の意味でEDMと呼べる前衛的な側面は決してないわけではなかったし、そのわずかなEDM成分をイマドキのJK的な解釈をもって20年代仕様にアップデイトした結果、その回答が今作の“Kuulen ääniä maan alta”における“ブラック・トラップ(EDM)”だと考えたら、今回の件は何ら意外性のない話かもしれない。なんだろう、ブラックメタルからオルタナティブに方向転換したバンドといえば同じ北欧ノルウェーのUlverが有名だけど、今作の中でJKパズズがやってる事って、まさに偉大なる先人のUlverが辿ってきた音楽遍歴の進化という名の突然変異と全く同じ音楽進化論なんですね。もはや人類における進化の歴史、その決定的瞬間を目の当たりにしちゃった気がする。

恐らく誰もが予想していたように、遂にニュークリア・ブラストに買われて音が格段にブラッシュアップされて“色気”を出してきたのは紛れもない事実だけど、結果的にこれが功を奏している。過去作で培ってきた、まるで醜形恐怖症患者の精神状態を反映したかのような不快感を催す邪悪な奇音をベースメイクとしながらも、70年代のスペース・サイケ/プログレ成分だったり、Djent以降のモダンなリズムだったり、晴れてレーベルメイトとなったポスト・ブラック界のレジェンドAlcestのポスト成分だったり、(業界最大手ニュークリア・ブラストだからといって極端にメインストリーム=売れ線になるのではなく)あくまでも日本のガールズバンドとも共鳴する“ポップなアヴァンギャルド”が構築する黒い公園の世界観(コンセプト)だったり、そして2010年代後半のアングラシーンで産声をあげたJKに大人気のトラップ・メタルというイマドキのトレンドだったり、とにかくあらゆる面で洗練化(オーバーグラウンド化)が進んだ結果、日本の某ガールズバンドみたいに女装化もといミニスカJKに化けた大傑作ですこれ。まさにブラック・メタルというジャンルをNEXTステージへとブチ上げた、それこそポスト・コロナ時代のブラックメタルのあり方、その特例であり、もはや今年だけじゃなく20年代を象徴する歴史的名盤です。

とにかく感心したのは、これまではアンダーグランド・メタルの重鎮的なイメージの強かったパズズニュークリア・ブラスト入りに伴う「オーバーグランド化計画」で、まず過去作比でも輪郭のハッキリした泣きのメロディの増加は言わずもがな、“メタル”の醍醐味の一つである転調を駆使した曲構成に対する色気、ブラックメタル以前にメタルバンドとしての“リズム感”に対するモダンな色気、Ulverの正統後継者を襲名するかのようなアングラシーンのトレンド先取りに対する色気、これらの様々な“色気”は、これ以上増え過ぎてもダメだし、これ以上少な過ぎてもダメだし、それぞれの色気というか塩梅のさじ加減が絶の妙。そして何よりも、あくまで過去作と比較した上で“ポップ化”を推進するその問いに対する答えが、まさかの“ジャパニーズ・ガールズバンドのインディーズ時代”という発想がまず前衛的過ぎる変態もとい天才(仮に変態だとしても、変態という名の紳士だよ)。これを時代の突然変異とも呼べる、新時代の幕開けを宣言する2020年にやってのけるしたたかな頭の良さも推せる。ちなみに、バンド名にあるフィンランド語の“Oranssi”って、英語だとOrangeを意味していて、まさかのここでもオレンジに繋がってくるのちょっとホラーだなって。

ある種の映画『未知との遭遇』みたいな体験だったから、未だに自分でも何書いてんのか分かんねぇ。でもちょっと泣けたのは、個人的なフィンランドの推しバンドだった、例の「深いところでオルタナティブ・ヘヴィを舐めている」アルバムのゴミみたいな音質をディスったせいで自然消滅=実質解散したGhost Brigadeへのレクイエムとしても解釈可能な点で、少なからず言えるのは、これでパズズがフィンランド最高のメタルバンドになったということ。もちろん、ここ最近のニュークリア・ブラストの囲い込みあるいは青田買いもとい商売では最高レベルの仕事です。やっぱニュークリア・ブラストってサイコーーーーーー!!あとやっぱJKってサイコーーーーーーー!!

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Opeth 『Pale Communion』

Artist Opeth
Opeth

Mixing/Sexual Steven Wilson
Steven Wilson

Album 『Pale Communion』
Pale Communion

Tracklist
04. Elysian Woes
05. Goblin
06. River
07. Voice Of Treason
08. Faith In Others
 
ミカエル・オーカーフェルトの頭脳

カミングアウト ・・・今年、2014年度のメタル界を最も賑わせた衝撃ニュースといえば→USのレジェンドCynicの頭脳ポール・マスヴィダル”ホモ”をカミングアウトした事だと思うが、まさか北欧スウェーデンが誇るゆるキャラ”オペにゃん”ことOpethも約三年ぶりの11thアルバム『Pale Communion』”ホモ”をカミングアウトするなんて...一足先にリークされたフェイクのアートワークを目にして「パチもんクセぇw」なーんて笑い転げていた当時は、まるで知る由もなかった。で、ここで前回までのOpethをおさらいしてみると、自分の中で前作の10thアルバムHeritageというのは→”9thアルバムWatershedという伏線()があって、結成から20周年を迎えた記念すべき10作目という事から”納得”した作品”だった。では本作の作風はどうだろう?結論から言ってしまえば→問題作となった『Heritage』の流れを踏襲した、言うなれば”70年代回帰路線”である。そんな彼らオペットゥの11作目は、”髭もじゃおじさん”ことペルが脱退して元イングヴェイのヨアキムが正式加入してから初のアルバムで、7thアルバムの『Damnation』以来約10年ぶりの再会となる、いわゆる”俺の界隈”の代表取締役兼CEOとして知られるスティーヴン・ウィルソンをミックスに迎え、そしてバンドのフロントマンミカエル・オーカーフェルトがセルフプロデュースを手がけている。

Opeth is Djent!! ・・・一概に”70年代回帰路線”と言ってみても、前作の『Heritage』のようなディープ・パープル系のヴィンテージ臭あふれるクラシック・ハード・ロックあるいはフォーク・ロックというよりは、これは明らかに盟友スティーヴン・ウィルソンの影響だろうけど、70sは70sでも前作とは一転して今回はインテリ風のモダン・プログレに大きく舵を切っている。その”プログレ大好きおじさん”っぷりは幕開けを飾る#1”Eternal Rains Will Come”からフルスロットルに発揮されていて、まずイントロから「Animals as Leadersかな?」って「遂にオペにゃんがDjent化したか!?」ってくらいのオシャンティでジャジーなリズム&グルーヴに意表を突かれ、前作譲りのクラシックなリフ回しやSWソロの2nd『Grace For Drowning』と3rd『The Raven That Refused To Sing』に通じるユラユラ~~~っとしたメロトロンとピアノが曲全体を一際叙情的に演出しながら、中盤以降はリリカルでヒロイックなメロディと共にミカエルの叙情的なボーカルとウィルソンのコーラスが織りなす黄金のホーモニーからの初期Riversideを思わせる哀愁のGソロという、ベッタベタでありながらも確かな展開力を見せつける。とにかく”プログレ”に特化したレトロ感あふれる少し湿り気のある音使いを中心とした、要するに前作よりは本来のオペットゥらしい音に回帰している事が理解できる、というよりSWソロを嫌でも思い浮かばせる情緒感に溢れた淡い音使いに驚かされる。とにかく”アコースティック”で”メロウ”、そんな印象を聴き手に強く与える。

あのキザミ ・・・今年はホモもといポール・マスヴィダル率いるUSのCynicも3rdアルバムKindly Bent to Free Usの中で古典的なプログレに挑んでいたが、それで言うところの”True Hallucination Speak”を彷彿とさせる、ジュクジュクと前立腺を刺激する”あのキザミ”リフを軸に展開する#2”Cusp Of Eternity”は、そのキザミリフを中心とした申し訳程度の幽玄な世界観からは中期すなわち全盛期のオペットゥをフラッシュバックさせたりして、その”70年代回帰路線”であると同時に今作は”オペットゥ回帰路線”でもある事に気がつくと、無性に(ニヤリ)とせざるを得なかった。元々、4thアルバムの『Still Life』や5th『Blackwater Park』そして8th『Ghost Reveries』の中でも”あのキザミ”の只ならぬセンスを要所で垣間みせていたし、あらためてこうやってガッツリと刻んでくれると素直にブヒれるってもんです。鍵番が主導権を握る今作で唯一”リフ主体”のメタリックなナンバーでもあって、アルバムの二曲目に動きの激しい曲を配置する構成は、Mastodonクラック・ザ・スカイ的な匂いを感じる。

再構築 ・・・10分を超える大作で早くも今作のハイライトを飾る#3”Moon Above, Sun Below”は、再びSW譲りの少し仄暗いサイケデリカやアコースティック中心の情緒豊かな音使い、名盤『Still Life』の流れを汲んだ暗黒リフや『Heritage』譲りのオーガニックなリフが繊細かつ鮮やかに交錯していき、中盤にさしかかると一転して不穏な空気感を纏った漆黒の表情を垣間みせ、来たるクライマックスでは『Watershed』”Heir Apparent””Burden”で聴けたような”繰り返し”の美学、その作法が用いられている。まるで過去のOpetを今の70s型Opethの解釈をもって再構築したような、それこそOpetの”旨味”その全てが凝縮されたような集大成と呼べる楽曲だ。それこそナチスドイツ(ヒトラー)が終戦間際、秘密裏に建設した地下シェルターの最奥部に眠るとされる3つの歴史的な宗教画のように、お馴染みのトラヴィス・スミス氏が手がけたアートワークが醸し出す崇高であり深淵な音世界に不思議と吸い寄せられるようだ。

イタリアン・ホラー ・・・ここでも名盤『Still Life』を思わせる、寂寥感に苛まれそうになるムーディ&フォーキーなアコギがミニマルに響き渡る#4”Elysian Woes”は、”ノルウェイの森のクマさん”ことUlverKristoffer Rygg顔負けの妖艶なダンディズムが込められたミカエルの歌声、そのミカエルのボーカリストとしての才能を再確認させるダーティな一曲だ。そして、もはや本作品の主役と言っても決して過言じゃあない、新メンの鍵盤奏者ヨアキムが奏でる時にユラユラユウゲンと、時にトリトリトリッキーなメロディ、そのヨアキムの腕前が顕著に表れているのが五曲目の”Goblin”だ。その名のとおり、70年代に活躍したイタリアのプログレッシブ・ロック・バンドゴブリンをリスペクトしたインストナンバーで、そのゴブリンが音楽を手がけたイタリアの巨匠ダリオ・アルジェント監督の映画『ゾンビ』『サスペリア』シリーズなどの代表的なイタリアン・ホラーに登場する、主人公の背後に一歩づつ忍び寄る”姿のない恐怖”を主観映像で追体験させるハラハラドキドキした緊迫感とB級ゾンビ映画特有のコミカルでファンキーなノリが融合したような、それこそ70sプログレがソックリそのまま現代に蘇ったかのような楽曲で、まさしく本作の作風を象徴するかのような一曲と言える。そしてこの曲には→??「オペットゥはドラマーが代わって終わった」と言われるほど、??「オペットゥはマーティン(メンデスじゃない方)が辞めて終わった」と言われるまでの人物であり、オペットゥの黄金を支えたドラマーのマーティン・ロペスがゲストで参加している、そんなファン泣かせの粋な計らいがなされている。もしこの曲のMVを作るとしたら→オペットゥが演奏するレトロなジャズバーに(過去メンバーを含む)大量のゾンビがやってきて観客をコミカルに食い荒らしていく映像が浮かんだ。

今年のトレンドはホモ ・・・ここまで散々Cynicポール・マスヴィダルスティーヴン・ウィルソンの面影を感じさせた、それらの伏線()が遂に回収される、満を持して今年のメタル界のトレンドは”ホモ”だと確信させる曲の登場だ。今年の初めにAlcestシェルターの記事の中で、Opethミカエル・オーカーフェルトAlcestネージュの親和性について少し言及したが、この6曲目の”River”という曲は、まるで古代スカンジナビアの遊牧民と化したミカエルとその親友ウィルソンとその仲間たちが青々とした草原の中で仲良く手を繋いでキャッキャウフフ♥と股間辺りを弄り合っている、とっさに目を背けてしまいそうになる危険な情事が瞼の裏に半ば強制的に映し出されるような民謡歌で、つまり晴れて念願のシューゲイザーバンドになれたアルセスト=ネージュのように、子供の頃から憧れていた念願のプログレバンドになれて人生最大の『幸福』を感じているミカエル・オーカーフェルトのリアルな心情を歌ったような、これはもうミカエルとウィルソンとその愉快な仲間たちによる男だらけのミュージカル『愛と哀しみのホモ』あるいはアニメ『月刊少女ミカエルくん』だ。そんな風にミカエルとネージュの親和性を改めて考察させる曲なんだけど、それをより決定的な物にするかの如く、このたび目出度くOpethとAlcestのカップリングツアーが決まったらしい、そんな面白さもある。まぁ、そんな冗談は置いといて→これまでのオペットゥからは想像できないような、温もりのあるホットホットなホモーションもといエモーションに満ち溢れたこの曲では、コーラスを担当する脇役のウィルソン君と主演のミカエル君が織りなす黄金のホーモニーに只ならぬ恍惚感を味わうことができる。それこそ腐女子が大喜びしそうな801展開に絶頂不可避だし、この曲では他の楽曲同様に『Ghost Reveries』を彷彿とさせる”へゔぃ”なリフ回しを台風の目とした怒涛のインストバトルを繰り広げている。

真っ昼間の淫夢 ・・・イントロからサスペンスドラマ風のミステリアスなストリングスを大胆に取り入れた#7”Voice Of Treason”は、その荘厳なストリングスを軸にアラビアン・ミュージックリスペクトなエスニックなアレンジが際立った曲で、中でもクライマックスを飾るミカエルの情感(ホモーション)が溢れ出す歌声は大きなヌキどころ...もとい聴きどころだ。その”クサい”流れを引き継いで始まるラストの#8”Faith In Others”は、悲哀を奏でるストリングスで昼ドラばりにドロドロした悲壮感を演出し、それと同調するかのように、同郷レジェンドABBA直系のスウェディッシュ・ムード歌謡リスペクトなミカエルの通称”ウッフン歌唱”は真骨頂すなわち絶頂を迎え(この瞬間は、ミカエル・オーカーフェルト『世界一美しいデスボイス』『世界一醜いウッフンボイス』に敗北した瞬間でもあった)、歴代のプログレ勢とも決して引けを取らない中盤以降のガチで泣かせにくる感動的なシーンを最後に、このメタルゴッドロブ・ハルフォード主催の恋物語『真っ昼間の淫夢』は盛大に幕を閉じる...(ここでエンドクレジット)。

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ミカエル「俺気づいたんだ、やっぱお前がいないとダメなんだって」

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ウィルソン「どうやらそうみたいだね(ニコッ)」

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ミカエル「10年も待たせてゴメンな。また俺という名の楽器を奏で...もとい、また俺たちの音をミックスしてくれるかい?」

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ウィルソン「もちろんさ///」

ミカエル・オーカーフェルト
ミカエル「ア-ア-ア-ア-ア-ア-ア-ア-ア-ア-ア-ア-♪」

スティーヴン・ウィルソン
ウィルソン「アーイキソ」

ミカエルバンド ・・・自分の中で、このオペットゥというのは1stの『Orchid』から3rdの『My Arms, Your Hearse』までが初期の第一期で、4thの『Still Life』から8thの『Ghost Reveries』までが第二期つまりオペットゥの全盛期、そして9thの『Watershed』から現在までがプログレ期つまり第三期Opeth・・・そんなザックリした認識を持っているんだけれど、ハッキリ言って9th『Watershed』以降のオペットゥはフロントマンミカエル・オーカーフェルトのワンマンバンド、つまり実質ミカエルのソロバンドすなわち”ミカエルバンド”だという事は否定しようがない事実で、その”ミカエルバンド”感は今作で俄然強くなっている。そして、やはり約10年ぶりの再会を果たした盟友ウィルソンの存在も大きくて、勿論そのSWソロからの影響もそうなんだけど、2012年に発足されたミカエルとウィルソンの”初めての共同作業”ことStorm Corrosionからの影響も隠しきれていなくて、やっぱり二年前の味が忘れられなかったのか?なんて事は知る由もないけど、要するに『Pale Communion』の本質はOpethという名のブヨブヨの皮を被ったSWなんじゃあないか?って。もはや「これオペットゥちゃうやん、SWやん!」って、それくらいスティーヴン・ウィルソンの影が異様にチラつく。そのSWによるミックスだけあって存外アッサリした感じで、前作のように徹底してヴィンテージな雰囲気はないし、どちらかと言えばクラシック・ロックというよりモダンなプログレっつーイメージのが強い。だから変に外れた音は一つもないし、むしろ僕のようなプログレ耳にはドン引きするぐらい馴染みのある音なんだけど、その代わり”意外性”というのは皆無だし、「いや、今更これやるのかよ?それならまだ『ヘリテイジ』のがインパクトあったんじゃねーか?」というような批判にも全然納得できる。結局のところ→前作の鍵を握るのがディープ・パープルなら、今作の鍵を握るのはゴブリンっつー至ってシンプルな話でしかなくて、要するに「プログレ好きによるプログレ好きのためのプログレ」で、もうなんかプログレ好きだけが楽しめればいいじゃん(いいじゃん)的な作品だから、その間口は意外と狭いのかもしれない。けれど『ヘリテイジ』との差別化はハッキリしているんで、ホント、プログレが好きかそうでないかの世界です。ただ一つ僕が心配しているのは、はたしてミカエル・オーカーフェルトは憧れのスティーヴン・ウィルソンになれたのだろうか?という一点だけ。

俺の金玉の方がヘヴィだ! ・・・レーベル側のウリ文句として→【深遠な静けさを感じさせるような曲や、獰猛に炎を吹き出すかのようなヘヴィな曲、さらには、初期オーペスを想起させるようなオールド・スクールなオーペス・サウンド】とのプロパガンダらしき謳い文句があって、とりあえず【深遠な静けさを感じさせるような曲】←わかる、【獰猛に炎を吹き出すかのようなヘヴィな曲】←うーん?、【初期オーペスを想起させるようなオールド・スクールなオーペス・サウンド】←??!!!?!?!!!??といった感想を持った人が大多数だと思われる。これって結局、何をして”ヘヴィ”と捉えるか?の話であって、別にそのプロパガンダを擁護するわけじゃあないけど、事実『Ghost Reveries』や最高傑作『Still Life』をはじめとした、(当然、その音像はいわゆるデスメタル然としたデロデロ感はないが)オペットゥ自らのルーツを廻るような往年のヘヴィなリフ回しを露骨に意識して曲を書いていると率直に感じた、と同時に名盤『Blackwater Park』を彷彿とさせる幽玄な空間形成は全盛期のオペットゥそのもの...と言ってみても完全に別物だし今さら無意味かもしれないけど、あの頃のオペットゥを幾度となく連想させるギターのリフがフレーズが、ユラユラとユラめく鍵番のメロディが、マーティン・ロペスのヤンデレドラミングが、そしてAya-StyleもといOpe-Style然としたドラマティックな展開が、それらに加えてストリングスなどの新要素も積極的に取り込んできているのは確かで、だから【獰猛に炎を吹き出すかのような~】【初期オーペスを想起させる~】とかいう謳い文句もあながち間違っちゃあいないわけです。要するに→所詮”オペットゥ回帰路線”というのはキモチの問題で、あくまでも前作の『ヘリテイジ』を基礎に、過去作のリフやメロディを今のオペットゥで再解釈し、ドヤ顔でオマージュしてみせる一種の余裕というか、実にミカエルらしいユニークな感性ここに極まれりって感じだし、それこそ6部で世界を一巡させた荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険』のように、世界が一巡して過去(70s)からリスタートしたパラレル世界のオペットゥを僕たちは目撃しているんじゃあないか?って。あのホモもといCynic『Kindly Bent to Free Us』で21世紀のプログレをクラシックな視点から総括していたが、そのホモと決定的に違うのは→「ポール・マスヴィダルは21位世紀のプログレを総括したが、ミカエルは自身の過去を精算し、そして総括した」ところだ。つまり、これはOpetであってOpethではない、いやOpethであってOpetではない、そんな”一巡説”を考察として織り込みながら本作を聴けば、より一層楽しく面白く聴けるに違いない。これはもはや-君はどれだけオペットゥを理解しているか?君はどれだけプログレを理解しているか?-これはオペットゥからオペサーへの挑戦状です。だから今さらメタルだメタルじゃないなんて言ってる輩には回答権すら与えられていないんです。

・・・しっかし、ミカエルって本当にドSだよなぁって、絶対に”攻め”だよなぁって。ここで、あらためて宣言しよう!今年のトレンドは”ホモ”だ!この『Pale Communion』を今年のBESTに挙げる奴らはホモだ!俺もホモだ!お前ら全員ホモダチだ!

(PS. ミカエルへ、訴えないでください)

ペイル・コミュニオン
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Orphaned Land 『All Is One』 レビュー

Artist Orphaned Land
Orphaned Land
Mixed/Mastered Jens Bogren
Jens Bogren

Album 『All Is One』
All Is One

Track List
02. The Simple Man
05. Through Fire And Water
06. Fail
07. Freedom
08. Shama'im
09. Ya Benaye
11. Children

『Orphaned Land×イェンス・ボグレン=oh...Jesus Christ!』

イスラエル出身の五人組、Orphaned Landの約三年ぶり通算五作目となる『All Is One』なんだけど、2004年作の3rd『Mabool』でその人気に火がつき、その3rdに感銘を受けたPTSW先生をプロデューサーとして迎えた前作の4thThe Never Ending Way of ORwarriORでは、Opethの名盤『黒水公園』のイスラエルVerをやってみせた彼らだが、今回はもはや当然いや必然であるかのように俺たちのイェンス・ボグレンをミキシング/マスタリングとして迎え入れ...つーか、なんかもう「イェンス・ボグレンはSW先生を超えた」とでも言いたいぐらい、ここ最近の”イェンス祭り”には只々笑うしかないんだけど、まぁ、それはそうとして、本作は名盤3rdや前作の4thで確立した【Orphaned Land=イスラエルのオペにゃん】といったイメージつまりデス/プログ・メタル的な要素は希薄...というより、もはや皆無となっていて、それは本作の【キリスト/ユダヤ/イスラム】という3つのアブラハムの宗教を題材としたコンセプティブな世界観を映像化したMVが見所の#1All Is Oneを耳にすれば理解ッできるように、イスラエルという土地柄を強く匂わせる、伝統的なアラビアン・ミュージックをベースとしたオリエンタルなフォーク・ロックを展開していて、カーヌーンなどのアラブを代表する民族楽器を中心に壮麗優美な旋律(シンフォニー)を奏でるオーケストラやクワイヤ、より一段とクリーンボイスに磨きがかかったフロントマンKobi Farhiによる情緒感に溢れた歌声やアルト/ソプラノ/テノールを駆使した女性ボーカルなどの多彩な演出によって、それこそ映画『アラビアのロレンス』を観ているかのような空前のスケールで描かれる、シネマティックかつドラマティックな世界観を築き上げ、より身近な例え方だと「ようこそクラブ『アラビアンナイト』へ」的な夜の世界へと、ある種の非現実的な空間へと迷い込んだかのような、そんなスパイシーかつエスニックな気分にさせてくれる、とにかく香ばしく味わい深~い作品。で、少なくとも、SW先生によって半ば強制的に『黒水公園』を”やらされてた”感がなくもなかった前作よりは全然違和感なく聴けるというか、まるで「あの頃の僕たちは少しおかしかったのさ。やりたくないことを強制的にやらされていたんだ。あいつらはまるでナチスのようだったよ・・・」もしくは「俺たちはオペにゃんのモノマネ芸人なんかじゃないんだッ!」とジーザスに訴えかけるような、むしろ自分達が本当にやりたかったオリジナル(土着)の音楽やってる感がスゴい。ちなみに、本作のアートワークはMetastazisによるもので、コンセプトのキリスト教=十字架、ユダヤ教=六芒星、イスラム教=三日月というアブラハムの宗教のシンボルマークが合体したものとなっている。

  『Orphaned Landはキリストを超えた』

 本作、彼らに対して何を求めるかによって、その評価というのが大きく変わってきそう。名盤の3rdや4thのプログレ/デス路線を期待している人には総スカンを食らいそうだが、リフそのものは至ってシンプルな作りで、過去最高に民族性を強調したバリバリの歌モノ歌謡曲やってる所からして、いわゆるクサメタル好きにはウケが良さそうな感じはする。特に#9”Ya Benaye”以降は昭和の時代にタイムスリップしたかのような、まるでさだまさしを聴いてるかのような錯覚を憶えるほど、いい意味で古臭くもありどこか新しくもある、まるでイスラエル人としてのアイデンティティが開放された時のような”生命エネルギー”が宿りし民謡音楽は、もはや『Orphaned Landはキリストを超えた』とかいう超新約聖書を執筆しながら「キリスト復活の時間だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」とかナントカ隆法総裁の如く叫びたいナニがある。

 「イェンス・ボグレンはSW先生を超えた」

 ハッキリ言って、SW先生のミックスよりもイェンス兄さんが手がけたミックスのが相性いいです。SW先生が手がけた前作の音には妙な”違和感”というのがあったけど、今回はイェンスが得意とするオーガニックな音作りとOrphaned Landのオリエンタルな音楽性との相性が驚くほど抜群で、もはやある種の洗練さというか大物感すら感じられるほど。その運命的な出会いは、まるで『アダムとイヴ』のような関係性だ。それにしても、今やメタル界一の売れっ子エンジニアとなったイェンスのここ最近の仕事っぷりを拝見して彼ら、間違いなく「oh...Jesus Christ!(おお...神よ!)」と思っただろうね。つうか、なんかアレだな、このタイミングでイェンスを迎えるってのも過去のオペにゃんと丸っきり同じなんだよなぁ・・・分かりすい話→オペにゃんの名盤『Still Life』=『Mabool』スティーヴン・ウィルソン先生に見っかっちゃった結果→そのSW先生をPに迎えた次作の『黒水公園』=『The Never Ending Way of ORwarriOR』でその名声を確固たるものとし、そして『Ghost Reveries』=本作の『All Is One』で目出度くイェンス・墓愚連隊の一員となる...というお話。なんだ、やっぱオペにゃん大好きなんじゃんw

All Is One
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Orphaned Land
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October Tide 『Tunnel Of No Light』 レビュー

Artist October Tide
October Tide

Album 『Tunnel Of No Light』
October Tide - Tunnel of No Light

Track List
01. Of Wounds To Come
02. Our Constellation
03. Emptiness Fulfilled
04. Caught In Silence
05. The Day I Dissolved
06. Watching The Drowners
07. In Hopeless Pursuit
08. Adoring Ashes

KATATONIAノーマン兄弟擁する北欧スウェーデンはストックホルム出身の五人組、October Tideの前作A Thin Shellからは約三年ぶりとなる通算四作目『Tunnel Of No Light』なんだけど、前作のVo&BassにはIn Mourningトビアス(Vo)とピエール(Bass)が担当していたが、昨年に早くもそのIn Mourning勢が脱退してしまった。その代わりに、本作ではノーマン弟(マティアス)VolturyonのVoアレクサンダーが新加入し、前作と同様にスカシンのJonas Kjellgrenをミックス/マスタリングとして迎え入れ、新体制となった形で再びッBlack Lounge Studiosにてレコーディングされた作品。というわけなんだけど、メンバーが代わったとは言えど、本作でやってる音楽は実にOctober Tideらしい【ATMS】系モダン・メロドゥームの王道を相も変わらずに展開してて、今や死の王と化してしまった今のKATATONIAにはない、初期~中期のKATATONIA直系つまり本家本元のメロドゥームとやらを、まるで「KATATONIAよ、これがメロドゥームだ」と言わんばかりのナニを見せつけている。そして本作を聴き、更にノーマン兄弟のいない『死の王』を聴くと改めて、KATATONIAの根っこにある【漆黒の意志】すなわち【ヒキコモリ精神】の大部分はこのノーマン兄弟が担っていたんだなぁと、シミジミ思ったりするわけです。でも正直なところ、ウチのブログでも贔屓にさせてもらってるIn Mourningのメンバーが速攻で脱退したのは地味に残念だったが、しかし本作の内容を聴けば、彼らの脱退なんぞほんの些細な事でしかなかったと、そう聴き手に納得させるほどの良作だと理解できるハズ。とか言うても、曲のクオリティは単純に前作のが上だったりするw なんつーか、今回は全体的にDaylight Dies的なダークメタル成分が増した感。

 ところで、新Voアレクサンダーの歌が思いの外いい感じだった件。声質的にはIn Mourningのトビアスとテイストの似た感じのグロウルだが、そのグロウルのバリエーションが高音から低音デスまで幅が広いというか、ノーマン兄弟が織りなす鬱々しく幽玄に揺らめいて寂寥感を煽るメランコリックなメロディと絶妙に相まって、文句のつけようがないド迫力のパフォーマンスを見せている。ちなみに、今回の曲の歌詞はヨナスきゅんが書いてたりする。

Tunnel of No Light
Tunnel of No Light
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October Tide
Pulverised (2013-04-16)
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Obsidian Kingdom 『Mantiis』 レビュー

Artist Obsidian Kingdom
Obsidian Kingdom

Album 『Mantiis』
Mantiis

Track List
01. Not Yet Five
02. Oncoming Dark
03. Through the Glass
04. Cinnamon Balls
05. The Nurse
06. Answers Revealing
07. Last of the Light
08. Genteel to Mention
09. Awake until Dawn
10. Haunts of the Underworld
11. Endless Wall
12. Fingers in Anguish
13. Ball-Room
14. And Then it Was

スペインはバルセロナ出身の五人組、Obsidian Kingdomの1stフル『Mantiis』がナニかおかしな事やっとる。そのスタイルとしては、主にOpethからの影響を強く伺わせる”プログレッシブ・ヘヴィ/デスメタル”が持つ暴虐性と、Porcupine TreeNo-Manを連想させる”アトモス/オルタナ/アートロック/ダークロック/ポストロック/ポストメタル”などのありとあらゆるジャンルの要素を、アヴァンギャルドなセンスと解釈をもってシンプルに融合(クロスオーヴァー)させた結果→独自のexperimental系エクストリーム・ミュージックの確立に成功し、そして俺たちのイェンス・ボグレンが本作のマスタリングを手掛けたってんだから、そらもう”納得納得アンド納得ッ”の完成度よ。主にIhsahnLeprousのジャケ/デザインで知られるスペイン人のRitxi Ostáriz氏による、このクッソシュールでクッソ芸術的なアートワークからは到底想像つかない、まるでUlverPink Floydのような前衛的なアプローチとCult of LunaEnslavedのようなブラック/スラッジに至るまでの轟音ヘヴィネスを合わせ持ち、時として中期ANATHEMACynicPortalを彷彿とさせたりと、いわゆる”俺の界隈”という一つの小さな共同体に棲む住人がウキウキしそうな、これ以上ないほど実に理想的なスタイル...いいゾ~これ。 単純な話、いわゆる”俺の界隈”に属する主に”プログレ/オルタナ”界隈の重鎮もしくは幹部の名を(ニッコリ)と連想させる音楽性なんだが、先日紹介した”愛すべきバカメタル”ことXanthochroidと同じように、”オリジナルとそのフォロワー”という概念を超越した先にある、もはや”オリジナルを超えたニュー・オリジナル”と評しても決して大袈裟じゃあない、それぐらいの自己流エクストリーム・ミュージックを展開している。まさに昨年解散した同郷Nahemahの意志を受け継ぐ存在でもある彼ら、今ッ最も失業率がヤバ~いスペイン生まれというだけあって、少しクセのあるネチっこい歌なんだけども、またそれが味わい深かったりする。なにはともあれ、ホント久々にスペインのバンドからビビッっとキター!と同時に、何くわぬ顔してこんな良質なバンドと引き合わせてくれるなんて...”やイス”って。

 まずは...物哀しさを演出するピアノとアンビエンスの効いた音響メインのインスト#1”Not Yet Five”から独特のexperimentalismを醸し出し、PTライクなクリーンVo+アコギ主体のArt-Rockかと思いきや後半から激しくヘヴィに展開する#2”Oncoming Dark”、Cynic及びPortalを連想させる宇宙空間大好き♥(byカーズ)なスペース成分とOpeth大好き♥なプログレッシヴ・ヘヴィネスが共存するインストの#3”Through the Glass”、そしてデスメタル然とした暴虐性とジェントリー風のモダンなアプローチを垣間見せる#4”Cinnamon Balls”までの流れは壮絶かつ圧巻の一言で、ここまでの流れだけで”コイツらただ者じゃあない...”という事が理解ッできる。次いで短いピアノインストの#5、『Judgement』期のANATHEMAを彷彿とさせる荘厳かつ神聖なるオルタナ系ダークロックの#6”Answers Revealing”、そしてトランペットを用いたジャズ/ブルース/アヴァンギャルドな要素とブラック/デス特有の狂性が交錯する#7”Last of the Light”は本作のハイライト。で、その後もデス/スラッジばりの”轟音の壁”を形成する#11、No-Manちっくな#12、まるでCult of Luna顔負けのド轟音ヘヴィネスをブチかますラストの#14まで...約2,3分のコンパクトな曲が14曲繋がって(トータル約47分)一つの作品が完成する。要所要所に聴き応えのあるインストを挟んで物語のドラマ性を一層高める構成は、それこそANATHEMAの名盤『Judgement』を聴いてる時のような感覚に近い。つーわけで、最近で言うならスウェーデンのAtomaとか、この手の好き者ならアヘ顔しながら聴いて、どうぞ。

Mantiis
Mantiis
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Obsidian Kingdom (2012-11-16)
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