Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

レビュー (F)

foxtails - fawn

Artist foxtails
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Album 『fawn』
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Tracklist
01. ego death
02. star-crossed
03. ataque de nervios
04. gazelle
05. bbq
06. gallons of spiders went flying thru the stratosphere
07. so it goes
08. space orphan
09. life is a death scene, princess
10. catalyst
11. la belle indifférence
12. paper tiger

コネチカット出身の4人組、foxtailsの4thアルバム『fawn』が良い。いわゆるミッドウェスト・エモの影響下にある荒涼と寂寥が互いに譲り合うアルペジオを軸としたスクリーモ/ポストハードコアをベースに、彼らのオルタナティブな側面を司る叙情的なチェンバー・ミュージックが織りなす、それはまるで静謐な日常が不協和音を奏でながら崩れ落ちていく様を描き出すかの如く、その痛みと苦しみを叫びながら冷静と激情の狭間で揺れ動く喜劇とも呼べる狂奏の音世界は、時にプログレッシブでマッシーなインテリジェンスを、時にカオティックでブルータルな暴虐性を垣間見せる。

いわゆるロックミュージックにクラシカルなチェンバー・ミュージックを添えたスタイルといえば、最近ではジャンルこそ違えどブラックゲイズのSo Hideousに近いジャジーでアヴァンギャルディな雰囲気がある。また、フロントウーマンでありベースボーカルのメガネ女子ことメーガン・カデナ=フェルナンデスは、有色人種として直面する差別や自身の実体験を元にしたPTSDをテーマに、パンク魂全開のロックアイコンとしてその絶望と苦しみを金切り声に変えて外界へと吐き散らしている。

著しくミッドウェスト・エモに傾倒していた過去作と比較しても本作はバンドを喰らう勢いでクラシカルなチェンバー・ミュージックが全編にわたって広域展開している印象で、この変貌ぶりは「化けた」と表現しても差し支えないほどの強度がバキバキの傑作と言える。中でも積極的な転調や変拍子を駆使したマシズモ全開のプログレッシブな楽曲構成が俄然ハードコアなダイナミズムとスケール感を寄与しており、これはバンドとしてのパフォーマンスがネクストレベルに到達した事の証左でもある。要するに最高傑作なのでオヌヌメ。

First Fragment - Gloire Éternelle

Artist First Fragment
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Album 『Gloire Éternelle』
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Tracklist
01. Gloire Éternelle
02. Solus
03. La Veuve Et Le Martyr
04. Pantheum
05. De Chair Et De Haine
06. Sonata En Mi Mineur
07. Ataraxie
08. Soif Brûlante
09. In'el
10. Mort Éphémère

2021年はCynicの新作をはじめ、いわゆるテクデスの年と言っても過言ではないくらいテクデスの良作がデスメタルシーン全体を賑わせた。このカナダはケベック(ロンゲール)出身のFirst Fragmentの約5年ぶり通算二作目となる『Gloire Éternelle』も今年のテクデス界を象徴する一枚であることは確かで、それこそCynicリスペクトなジャズ/フュージョンとデスメタルをクロスさせたテクデスの王道をベースとしつつ、フィルとニックのギターコンビのテクニックに裏打ちされたリズミカルでトリッキーなグルーヴを刻むリフ回しや豚貴族ことインギーもビックリのネオクラシカルな超絶ソロワーク、そしてバンドのキーマンとなるForestことドミニク・ラポイントによる超越ベースプレイ、その二本のギターと一本のベースで主導権を奪い合う「21世紀最高のバカテク集団」と称するに相応しい楽器隊の土台に、OpethのミカエルやAmon Amarthのヨハンを連想させるデスボイスの持ち主であるフロントマンのデヴィッドの存在やマチズモ溢れる男達の勇壮な遠吠えも相まって、テクデスの王道とヴァイキングメタルやクサメタルにおけるアドレナリン全開のエピックな高揚感がエクストリーミーにクロスしたテクデスでもあり、また隠し味としてフラメンコギターを用いてスパニッシュな香辛料をまぶすことで、テクデスはテクデスでも一般的なテクデスの邪悪ネスや殺傷力よりも南米はじめスペイン語圏をイメージさせる情熱的かつダンサブルなテクデス、俄然そんなイメージがシックリくる。

渚に打ち寄せる荒波が嵐の前の静けさを暗喩するSEとともに、その激しい波から伝わるフラメンコギターを情熱的に靡かせるイントロから、ネオクラシカル/ヴァイキングメタルmeetテクデスすなわち蛮族化したCynicを展開する#1“Gloire Éternelle”、イントロの可憐に舞い踊るフラメンコギターの情熱的な魂を受け継いだベースとギターがフラメンコダンスを踊るかの如しリズミカルなコンビネーションを発揮する#3“La Veuve Et Le Martyr”、豚貴族も嫉妬するネオクラシカルギターを聴かせる#4“Pantheum”、もはやネオクラ通り越してクサメタルの領域に両足突っ込んじゃう#5“De Chair Et De Haine”、カルロス・サンタナもビックリの泣きのギターソロやカルメン・マキもビックリのフラメンコギターの情熱的なプレイを披露するインストの#6“Sonata En Mi Mineur”、約19分にわたる超大作の#9“In'el”、そして#1の渚に打ち寄せる荒波のSEをアウトロ(#10)に持ってくるコンセプトアルバム的な演出は、それこそ浜辺美波(浜辺に寄せて返す美しい波)のSEに始まり浜辺美波のSEに終わるDeafheavan『普通の堕落した人間の愛』に通じるSEの使い方も本作の傑作ぶりに拍車をかけている。とにかく、テクデスやデスメタルのみならず、パワーメタルやヴァイキングメタル、あるいはインギーなどのネオクラシカルなメタルが好きな人にもオヌヌメできる文句なしの傑作です。

Frontierer - Oxidized

Artist Frontierer
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Album 『Oxidized』
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Tracklist
01. Heirloom
02. Corrosive Wash
04. Death/
05. Disintegrative
06. This Magnetic Drift
07. LK WX
08. Southern Hemorrhage
09. SVVANS
10. Stereopticon
11. Removal Of The Copper Iris And The Lightning Pill
12. Motherboard
13. Daydark
15. The Damage And The Sift
16. /Hope

UKはスコットランド出身の5人組、Frontiererの3rdアルバム『Oxidized』の何が凄いって、いわゆるTDEPの系譜にあるカオティック/マスコアやジェント以降のモダン・ヘヴィネスを効かせた急転直下型のブレイクダウン、マシンガールコード・オレンジ譲りのバッキバキのグリッチ/ノイズや打ち込みを大胆に取り入れたイマドキかつエクスペリメンタルなアプローチ、そしてUK新世代メタル界の新星PUPIL SLICERにも通ずるエモバイオレンスな激情的かつ叙情的なメロディを、テクデス顔負けの暴虐性をもってエクストリーム合体させたハチャメチャなメタルコアやってる件について。極端に言えば、コード・オレンジに光の速さでPUPIL SLICERを投げつけたらこうなった、みたいな。


それもそのはず、このFrontiererのメンバーには同郷のメタルコアバンド=Sectionedのギタリストで知られるPedram Valianiがエンジニア兼プロデュースを担当しており、他ならぬ彼は今年のメタルアルバムにおけるマスターピースの一つであるPUPIL SLICERの1stアルバム『Mirrors』のプロデュースを手がけた張本人である。確かに、その最高にハイにキマっちゃってるカオティックなテンションはまんまPUPIL SLICERだし、ジェント以降のモダン・ヘヴィネスの音作りもまんまSectioned譲りのゴム毬みたいなヘヴィネスを踏襲しており、そう考えたら確かに二番煎じ感は否めないけど、正直ここまで20年代を象徴する新世代メタルのテクスチャを起用に切り抜きしているバンドもなかなかお目にかかれないのも事実。よって彼らは旧世代のTDEPではなく、ボストンのveinコード・オレンジ、そしてカナダのSpiritboxあたりの新世代メタル/ハードコアと同じ文脈で語るべきバンドだと言える。少なからず、本作の『Oxidized』コード・オレンジに対するスコットランドからの回答である事は確かです。何故なら、彼らが2015年にリリースした1stアルバムのタイトルはOrange Mathematicsだからw

Fractal Generator 『Macrocosmos』

Artist Fractal Generator
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Album 『Macrocosmos』
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Tracklist
01. Macrocosmos
02. Aeon
03. Serpentine
04. Contagion
05. Chaosphere
06. Shadows Of Infinity
07. Pendulum
08. Primordial
09. Ethereal

2019年の末頃に「アヌンナキ降臨系デスメタル」ことBlood Incantationの2ndアルバム『Hidden History of the Human Race』が“10年代最高のデスメタル”として降臨してからというもの、最近の自分の中でちょっとしたSF系デスメタルブームが巻き起こっていて、それこそ昨年では「土星の水ぜんぶ抜く系童貞デスメタル」のCRYPTIC SHIFTや最新ゲーム『サイバーパンク2077』のサントラにも参加しているTomb Moldに代表される、近年著しく賑わいを見せ始めているSF系デスメタルの系譜その流れを汲んでいるのが、コードネーム040118180514(ベース&ボーカル)と040114090512(ドラム)と102119200914(ギター&ボーカル)の3人からなるカナダ出身のデスメタルトリオことFractal Generatorである。

そんな彼らの2ndアルバム『Macrocosmos』は、そのワートワークからして土星の水を全部抜くために数光年先の太陽系に旅立った人類代表の童貞デスメタルが地底人と対峙するも2秒で瞬殺、その救出に向かった第二部隊は土星に降り立つと漆黒のモノリスらしき未知の生命体と遭遇し、この宇宙がシミュレーションであるという証拠(いわゆるシミュレーション仮説)を発見した瞬間、モノリスの中からアヌンナキの神々が姿を現して「人類が知ってはいけない宇宙の真実』を知ってしまいましたね・・・はい、Your GO TO Hell」と謎の呪術を唱えられて0.2秒で第二部隊も瞬殺される、そんな映画『マトリックス』もビックリのSF然とした物語を描いたデスメタルとなっている。

真面目な話、その音楽性としては同郷のTomb Moldに肉薄する、ソリッドでヘヴィなリフでタイトにザックザクに刻んでくるBPM指数高めのテクニカル・デスメタルで、しかしゴリゴリのテクデスというよりはもっとスラッシュ・メタル寄り...とまではいかないが、それこそNetflixドラマ『コブラ会』の俳優も自身のバンドでカヴァーしちゃうくらい大好きなフランスのGojiraとも共振するポスト・スラッシュ/エクストリーム・メタルの側面や、Blood Incantationの影響下にあるイマドキのトレンドも盛り込んだSF系デスメタル。で、SF映画のオープニングらしい未知との遭遇を示すシンセから、それこそ殺傷能力の高めのソリッドなキザミを駆使した暴虐的なスタイルに、アトモスフェリックでクラシカルなアプローチを加えたエクストリーム・メタルの#1“Macrocosmos”を皮切りに、往年のOpethにも精通するダイナミックな展開力を発揮する#3“Serpentine”、シンセを応用したダークでサイケデリックな世界観に誘う#5“Chaosphere”など、最後まで一貫して自分たちがやりたいイメージ通りのデスメタル、決して他のジャンルに日和らない硬派なデスメタルを貫き通している。昨今のSF系デスメタルが好きな人なら一聴の価値あり。

For Tracy Hyde 『Ethernity』

Artist For Tracy Hyde
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Album 『Ethernity』
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Tracklist
1. Dream Baby Dream (Theme for Ethernity)
2. Just Like Fireflies
3. Interdependence Day (Part I)
4. Interdependence Day (Part II)
5. Welcome to Cookieville
6. Radio Days
7. Desert Bloom
8. Chewing Gum USA
9. City Limits
10. ヘヴンリイ
11. The Nearest Faraway Place
12. Orca
13. Sister Carrie
14. スロウボートのゆくえ

伊集院光の深夜ラジオ『深夜の馬鹿力』でこのバンドの曲が流れてきた時、率直にシューゲイザー化したYUKIじゃんと思った。それもそのはず、シューゲイザー・アイドルで知られる・・・・・・・・・RAYに楽曲提供しているメンバーで構成された5人組バンドのFor Tracy Hyde、その音楽性としては、伊集院光のラジオでも流れた4thアルバム『Ethernity』からリード曲の#2“Just Like Fireflies”みたいな露骨に海外のシューゲイザー~ドリーム・ポップの影響下にある楽曲を中心に、同様に本作のリード曲を担う#3“Interdependence Day (Part I)”とオバマ?か牧師の演説?が記録されたアウトロの#4“Interdependence Day (Part II)”の組曲という「アルバム」のフォーマットだからこそ可能にさせるストーリー性に溢れたアルバム構成、アルバム序盤のハイライトを飾るメランコリックなエモエモ渋谷系ナンバーの#6“Radio Days”、ギタボの夏botをフィーチャーした疾走感溢れる懐かしのポップパンク風の#7“Desert Bloom”、90年代のグランジというか初期の椎名林檎オマージュの#8“Chewing Gum USA”、再び夏botをフィーチャーした曲でSSWの岡田拓郎やUSインディのThe War on Drugsを連想させるマンドリンを駆使したアコースティックなサイケデリック/インディー・フォーク的な#9“City Limits”、もはや初期Alcestばりのニューロマンティックな雰囲気を漂わせる#10“ヘヴンリイ”、神聖かつ幻想的でノスタルジックなアレンジを効かせた#11“The Nearest Faraway Place”、アルバム終盤のハイライトを飾る曲でeurekaのフックの効いたアッパーな歌声が炸裂する#13“Sister Carrie”、再びThe War on Drugs的なカントリー風の優美なピアノと新しい門出を祝うかのようなサックス、そしてイマドキらしいトラップ的なトラックをフィーチャーした#14“スロウボートのゆくえ”は、#2のeurekaパートを引用することで、都会の若者たちは物語の始まりの地である「ハイウェイ」と物語の最終目的地である「スロウボート」に乗り込んで、このクソサイテーな現実世界からの逃避行は大団円を迎える。


基本は海外の音楽から影響を受けつつも、ミニシアター系の青春映画にありそうな文学的な歌詞を綴る紅一点eurekaの歌メロに日本人好みのグッとくるフックを置いている点は好感が持てる。しかし、昨今の日本の音楽シーンで90年代に流行ったようなこの手のジャンルの音楽が売れるのか?と聞かれたらほぼ間違いなく売れないのも事実で、事実MVの再生数を見ても不当とも言える人気の低さからも過小評価されていると思うし(そもそも所属レーベルのP-VINEがゴリ押しの効くレーベルでもないし)、それこそ全14曲トータル54分の今時のストリーミング時代には珍しい「アルバム」としての強みを打ち出した本作を聴く限り、バンド自身もかなり勝負しにきている作品だと見受けられるので、確かに今時こういうバンドを支えるファン層が日本に存在しているのかは知る由もないけど、少なからず初期のWhirrNothing、ピンポイントで名を挙げるとすればスウェーデンのPostiljonen辺りのシューゲイザー/チルウェイブ界隈が好きなら十分満足できる良盤なのは確か、というよりむしろ逆にJ-POP好きにこそ響きそうな(アイドルは元より)、女性ボーカルと男性ボーカルの二面性を軸に、その曲調も多様性のある感情表現豊かな音楽を展開している。素直に「ライブ見たいな」と思わせるくらいには過小評価されたバンドだと思うし、明らかに勝負をかけてきた本作の登場により少しでも人気が出れば日本の音楽市場にもまだちょっとは期待が持てるかも・・・?ともあれ、一部で椎名林檎の影響下にあったり、ミニシアター系映画的な音楽という点では、話題の映画『花束みたいな恋をした』の劇中にも登場するきのこ帝国(クロノスタシス)を彷彿とさせなくもないし、紅一点ボーカルのeurekaは、YUKIというよりはパスピエの大胡田なつきの歌声に近いかもしれない(歌自体は決して上手いとは言えないけど)。

ウマ娘な有村架純「クロノジェネシスって知ってる?

菅田将暉「知らない」

ウマ娘な有村架純「めちゃくちゃ強い競走馬のことだよ

菅田将暉「(・・・別れよう)」
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