Artist NEMOPHILA

Album 『REVIVE』

Tracklist
01. REVIVE
02. DISSENSION
03. 鬼灯
04. HYPNOSIS
05. GAME OVER
06. Life
07. SORAI
08. Rollin'Rollin'
09. Change the world
10. 雷霆 -RAITEI-
11. OIRAN

Album 『REVIVE』

Tracklist
01. REVIVE
02. DISSENSION
03. 鬼灯
04. HYPNOSIS
05. GAME OVER
06. Life
07. SORAI
08. Rollin'Rollin'
09. Change the world
10. 雷霆 -RAITEI-
11. OIRAN
つい最近まで「NEMOPHILAって誰?」状態だった自分とガールズメタルバンドNEMOPHILAの馴れ初め的な話をすると、もう十数年前に国内メタラーのバイブルとして一世を風靡し(そなの?)、あのタレントSHELLYを排出した音楽番組『ROCK FUJIYAMA』のyoutube版に天才少女ギタリストことLi-sa-Xが同番組のレギュラーでお馴染みのマーティ・フリードマンとROLLYと一緒にギター弾いてる姿を久々に見て、相変わらずギターうめぇなと感じるよりも先にまだ子供だった当時のイメージから急激に大人っぽく成長してる事にビビったわけ。で、その元?天才少女ギタリストが結成したLi-sa-X BANDの存在を認知したタイミングでオヌヌメに挙がってきた下記のギタープレイスルー動画を観たら、あのLi-sa-Xの超絶技巧派プレイに全く引けを取らず流麗にハモり散らかしているメガネっ娘ギタリストに萌えて「このメガネっ娘誰ッ?!」みたいな流れから、どうやらそのメガネっ娘がLi-sa-X BANDのギタリストでありNEMOPHILAってガールズメタルバンドのギタリストの葉月らしいと知る←この起点から今現在に至る。
何を隠そう、自分自身も当時『ROCK FUJIYAMA』でメタルを学んだ世代っちゃ世代のメタラーなのにも関わらず、あれから十数年が経過した今現在の自分の立ち位置すなわち世界線からでは、NEMOPHILAのネ(Ne)の字もバブリシャス(Obliviscaris)の字も出てこないし、ニアミスすらしたことないバンドだったのも事実。で、一体全体どこの文脈から派生してんの?と気になって調べてみたら、どうやらガールズメタルバンドMary's BloodのギタリストSAKIを中心に結成したバンドらしくて「なるほどガッテン」した。あと某界隈で有名人らしいドラマーのむらたたむの事も普通に知らなかった、というか普通に「村田らむ?」としかならんかった(←普段どこの辺境地に生息してんねんw)。
このように、NEMOPHILAに関して「何も知らないジョン・スノウ」ばりに何も知らない、ましてやリーダーのSAKIが在籍するMary's Bloodすら一度も聴いたことがない、通称ニワカFUJIYAMAメタラーの自分がNEMOPHILAの音楽を想像してみたところで、それこそ活動休止中のLOVEBITESのフォロワー程度のイメージしか浮かばなかったのも事実。しかし、いざバンドの記念すべき1stアルバム『REVIVE』を聴いてみたら、言うなれば「ベビメタ以降」のモダンなラウドロックをベースとしたゴリゴリのメタルやってて驚いた。というのも、初期の正統派メタルから徐々にシンフォニック・メタルに傾倒していったLOVEBITESとは真逆の音楽性に近いというか、いわゆるガールズメタルバンド=シンフォニック系みたいな安易なイメージとは一線を画した、侠気ならぬ姐気あふれる硬派なメタルを展開している事に好感しか沸かなかった。
まず何が衝撃だったかって、アルバムの幕開けを飾る表題曲の#1“REVIVE”からして、初っ端BMTHのEP『Post Human: Survival Horror』が始まったかと錯覚するギターの入りから、7弦ギターならではのローにローを重ねたモダンなヘヴィネスと共に在りし日のMachine Headばりにスラッシーかつソリッドに刻むリフ、そしてボーカルのマユはマユで開口一番に女性的な歌声ではなく激しいシャウトが織りなす、その想定外としか言いようがないゴッリゴリなサウンドに面食らいド肝を抜かれると、そのエクストリーミーな流れのまま地獄の底から響き轟くような悪魔的なスクリームをぶっ放す「スクリーマーとしてのマユ」を全面にフィーチャーしたゴリゴリのグルーヴ/メタルコアナンバーの#2“DISSENSION”、ここまで冒頭の殺傷力の高いブルータルな音波の激流によって2秒でメタラーのナニもといハートをグッと掴んでくる。
ヘタしたら「日本のガールズバンド史上最もヘヴィなんじゃねぇか説」が芽生える程度には鬼ヘヴィな冒頭の流れを引き継いで、今度は古代エジプトの黄金の装飾を身にまとったクレオパトラさながらの妖艶な存在感とフィメールボーカリストとしての表現力の高さを垣間見せる女帝マユの艷声を中心に、それこそ近年のAmorphisを彷彿とさせるオリエンタルラグいトライバリズムに溢れたフォークメタル的なアレンジを効かせた#3“鬼灯”や#4“HYPNOSIS”に象徴される、今風のヘヴィネスのみならず楽曲構成力の高さやアレンジ力の非凡さにも確かなセンスを覗かせる。
ヘヴィメタルにおいてバラードは必須科目とのことで、そのドラマー村田らむちゃんによる手数多めのドラミングのダイナミクスを“縁の下のちからむちゃん”とした、この手の情感溢れるメタルバラードを歌うために生まれてきたんじゃねぇかと錯覚するくらい映えに映えるマユのハスキーボイスから解き放たれるサビメロを聴いた瞬間、往年の演歌歌手ばりにコブシを握りながら「泣くがいい・・・セーソクの胸を借りて泣くがいい・・・」と呟いていた#5“GAME OVER”は、「バラードだから」とかそんなん関係なしに、本作において最も7弦の特性が活かされたギターのゴリッゴリなヘヴィネスで刻んでくるガチな間奏から、ギタリスト葉月とSAKIのツインギターによる慟哭のハーモニーを奏でる流麗なソロワークへと想いを紡いでいく様式美的な構成も含めて、まさに21世紀を代表するメタルバラードの名曲と呼ぶに相応しい一曲となっている。
その本作のハイライトを飾るメタルバラードと対になる、(90年代の大黒摩季あるいは相川七瀬をフラッシュバックさせる)希望に満ち溢れた前向きな明日を歌う往年のJ-POPスタイルの#7“Life”は、シンガロング推奨のアリーナロックにも映える柔軟性を内包したオールラウンダーなボーカリストと言ったら語弊がありそうだけど、とにかくメタル野郎のみならず一般大衆の琴線に訴えかける幅広いソングライティングとマユのフレキシブルな歌声は、まさにNEMOPHILAというバンドの底抜けなさと(そう遠くない未来にデカい箱で演ってる姿、その景色が目の前に浮かんでくるかのような)スケールのデカさ、および音の説得力に直結している。
ガールズメタル界のレジェンド=SHOW-YAに代表される、日本の伝統的なガールズメタル魂を継承する#7“SORAI”やハードロック調の#9“Change the world”、これまでの「ベースいらなくね」の雰囲気から一転して、どう考えても「ベースいるくね」としか言いようがないベース担当ハラグチサンによるソロプレイから始まる曲で、ベビメタはもとより既に対バンが決まっているPassCode風のシンセをはじめ、日本のアイドル文化に精通するノリのいいコール&レスポンスを擁するモダンなラウドロックの#8“Rollin'Rollin'”、メロデスばりに疾走感溢れるソリッドなリフにシンフォニーXのマイケル・ロメオ顔負けの超技巧ギターによるスリリングなソロバトルをフィーチャーした#10“雷霆”、イントロから「デレッデレッデレ」というエクストリームメタルの代名詞の如くスラッシーなリフから小悪魔が憑依したマユのスクリームにガッツポ不可避の#11“OIRAN”は、それこそジャパメタ界のレジェンドことラウドネスの二井原御大に代表される、80年代のヘヴィメタル全盛期のメタルマスターを現代的なメタルとしてREVIVEさせるかの如し、その女帝さながらのマユの雄雄しい歌声を耳にすれば2秒で跪くこと必須。
改めて、古き良きクラシックなヘヴィメタルや伝統的なジャパメタに対するリスペクトと「ベビメタ以降」の日本独自の文化的側面と現代的なヘヴィミュージックのモダンさを兼ね備えた、と同時に「ベースいらなくね」という各世代が受け継いできた“メタルあるある”を踏襲した、それこそDIR EN GREYの『DUM SPIRO SPERO』を軽くいなす7弦の重いサウンドを持ち味の一つとする、全世代のメタル愛に満ち溢れたイマドキのガールズメタルバンドがこのNEMOPHILAだ。中でも、長きにわたる様々なメタルの歴史を世代を超えた現代的な解釈をもって忠実に再現する「今」のヘヴィメタルを従えて、全盛期の寺田恵子に肉薄する強い女性像を司る表情やDIR EN GREYの京に肉薄するスクリームに象徴される小悪魔的な表情他、それこそ「女版DIR EN GREY京」と称すべきマユの多彩な表情筋で魅せる表現豊かなボイスパフォーマンスは、NEMOPHILAのセンターを担うに相応しい最大の魅力と言える。
そんな、NEMOPHILAについて本当に何も知らない、ましてやX JAPANの“ベニ”や“Rusty Nail”の楽曲Coverしまくってる事すら知らない、いわゆる“ニワカFUJIYAMAメタラー”の自分が2秒でドハマリするぐらいには、想像を超えた楽曲の完成度と各メンバーのスキルに裏打ちされたバンドサウンドの説得力に圧倒させられたし、大袈裟じゃなしに「ベビメタ以降」のラウドミュージックの現在地を示す革新的な最重要アルバムの一つだと思う。少なくとも「いま最もライブが観たいバンド」なのは確かです。