Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

レビュー (S)

Soreption - Jord

Artist Soreption
Soreption-2022

Album 『Jord』
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Tracklist
01. The Artificial North
02. The Forever Born
03. Prophet
04. Each Death More Hollow
05. A Story Never Told
06. The Chasm
07. The Nether Realm's Machinery
08. Död Jord

いわゆるテクデスと聞いて一般的?にイメージするものといえば、直訳的に言ってしまえば楽器隊のバカテクなスキルを惜しげも無く発揮したデスメタルだと思われるが、2005年にスウェーデンはスンズヴァルで結成されたSoreptionは、それこそ一般的にイメージされるようなテクデスとは一線を画す、誤解を恐れずに言うと「ポップなテクデス」、あるいは「楽しいテクデス」という新ジャンルを開拓している気鋭のデスメタルバンドだ。

確かに、「ポップ」という表現は語弊を生むかもしれない。しかし、「ポップ」という言葉を用いたくなるほどに彼らのスタイルは、複雑な変拍子や緩急を効かせた転調で構築されたテクデスらしい楽曲を基調としながらも、一方でバチクソにタイトでリズミックかつトリッキーに刻むリフ回しをはじめ、コンセプトを司るSFライクなミステリアスなカーニバリズムを内包したアレンジに関しても、カナダを代表する「ポップ」なテクニカルメタルバンドことProtest The Heroの初期を彷彿とさせる。それもそのはず、本作は2021年に脱退したギタリストの代わりに、カナダのテクデスコアバンドArchspireのギタリストをはじめ、多数のゲストギタリストやキーボーディストの協力のもと完成にこぎ着けた作品であり、あらゆる面で過去作とは一線を画す一枚となっている。

その「(さしずめ)テクデス化したPTH」とでも称すべき、Soreptionならではのモダンなテクデスは本作の4thアルバム『Jord』でも不変で、前作の3rdアルバム『Monument Of The End』を若手のモダンなメタルバンドを数多く有するSumerian Recordsからリリースしたその意外性に裏打ちされたモダンさと、界隈のレジェンドであるカニコーやクリプトプシーに認知されているOSDMならではの暴虐性が調和したエクストリーミーなサウンドは一聴の価値あり。

Saidan - Onryō II: Her Spirit Eternal

Artist Saidan
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Album 『Onryō II: Her Spirit Eternal』
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Tracklist
01. Kissed By Lunar’s Silvery Gleam
02. Queen Of The Haunted Dell
03. Girl Hell 1999
04. Kate
05. Pale Imitation
06. Yuki Onna
07. I Am The Witch

「ブラックメタルホラー」を掲げるテネシー州はナッシュビル出身のSaidanは、日本の詩人である西條八十が1919年に発表した詩集『砂金』に収められた「トミノの地獄」から着想を得た、2021年作の1stアルバム『Jigoku: Spiraling Chasms of The Blackest Hell』における(日本の同人ブラックメタルみたいな)和風のアートワークからもわかるように、古き良き日本の古典的ホラーで知られる四谷怪談のお岩さんや都市伝説の元祖であるテケテケをはじめ、いわゆるジャパニーズ・ホラーにおける“ゾッとする呪い”や怨念をモチーフとしたブラックメタル・バンドだ。ちなみに、「トミノの地獄」とは「この詩を声に出して朗読すると呪いに罹って死ぬ」という都市伝説でも知られ、作者の西條八十の孫にあたる西條八兄はギターメーカーのSaijo GUITARSの創業者でもある。

「地獄」を表題に冠する1stアルバムに対して、日本の国歌である“君が代”をサンプリングした2020年のEP『Onryō: Vengeful Spirits In The Eastern Night』の続編に当たる本作の2ndアルバム『Onryō II: Her Spirit Eternal』では、アニメ『地獄少女』ではなく山内大輔監督の『少女地獄一九九九』という鬼畜エログロナンセンスな映画からインスパイアされた#3“Girl Hell 1999”や、冒頭から「この間さ、変なビデオ見ちゃって」とかいう日本のホラー映画(恐らく『リング』だと思う)のセリフをサンプリングした曲で、テケテケと並び日本の都市伝説および怪談におけるレジェンド的存在である雪女をモチーフとした#6“Yuki Onna”を筆頭に、そのジャパニーズホラーの影響下にあるコンセプトのみならず、日本人好みのおどろおどろしいクサメロをフィーチャーした、昭和日本の日活ホラー的な雰囲気をまとった荒涼感溢れるメロディック・ブラックメタルは不変で、過去作と比較してもトレモロやシンフォニックなシンセを全面に押し出した、アトモスフェリック/ポスト・ブラックやハードコア/パンクに精通する超絶epicッ!!なメロブラに振り切っている印象。ともあれ、世はまさに日本の怪談ブーム!?と錯覚すること請け合いの一枚。

Soul Glo - Diaspora Problems

Artist Soul Glo
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Album 『Diaspora Problems』
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Tracklist
01. Gold Chain Punk (whogonbeatmyass?)
02. Coming Correct Is Cheaper
03. Thumbsucker
04. Fucked Up If True
05. Jump!! (Or Get Jumped!!!)((by the future))
06. Driponomics (feat. Mother Maryrose)
07. (Five Years And) My Family
08. The Thangs I Carry (feat. BEARCAT)
09. We Wants Revenge
10. John J (feat. Kathryn Edwards and Zula Wildheart)
11. GODBLESSYALLREALGOOD
12. Spiritual Level Of Gang Shit (feat. McKinley Dixon and Lojii)

フィラデルフィア出身の4人組、Soul Gloの2ndアルバム『Diaspora Problems』の何がヤバスンギるって、カリフォルニアのGulch並に頭のネジが飛んじゃってる系のカオティック/ハードコア・パンクをベースに、RATM直伝のアナーキズムを吐き散らすラップメタルや本作と同じウィル・イップ案件で知られるテキサスのportrayal of guiltに肉薄するスクリーモならではの激情と焦燥、コアさを伴ったバチクソタイトでポストメタリックなヘヴィネスやノイズロックを孕んだ一癖も二癖もあるトリッキーなリフメイクが織りなす目まぐるしい楽曲構成、そしてラテン系らしいサックスやトランペットを擁するスカパンクの要素がエクストリーム合体した、それこそ“エピタフ系の最終兵器”と称すべきオルタナティブな(一種の)トラップメタルを展開している件について。なんだろう、2019年の1stアルバム『The Nigga In Me Is Me』における脳直的なトラップメタルmeetノイズラップを、天才エンジニアことウィル・イップという名の神の手によって著しくブラッシュアップした結果、とんでもない傑作が生まれちゃった感じ。

あくまで1stアルバム由来のアンダーグラウンドなハードコア/パンクを、次世代のエピタフ系を担う存在としてメジャー寄りに正統進化させた#1“Gold Chain Punk (whogonbeatmyass?)”を皮切りに、変則的なリズムとアソビの緩急を効かせた#2“Coming Correct Is Cheaper”、ノイズロックにアプローチしながらグルーヴィかつカオティックに展開していく#4“Fucked Up If True”、本作のリード曲でありコテコテの王道ハードコアパンクながらもデンゼル・カリーの『タブー』ばりの高速ラップを刻む#5“Jump!! (Or Get Jumped!!!)((by the future))”、そしてスカパンクとしての本領を発揮する#3“Thumbsucker”など、アルバム前半は従来のSoul Gloらしいハードコア/パンク路線をウィル・イップ節に裏打ちされたメタリックな質感(プロダクション)の良さをもって現代的にアップデイトさせている。


リード曲における現代ラッパーの面影を匂わせる伏線を回収するかの如し、それこそ本作のヤバさを象徴するフィメールラッパーのMother Maryroseをフィーチャリングした#6“Driponomics”では、いわゆるトラップメタル的なフロウや瞬間的に垣間見せるハイパーポップ的なアレンジまでも日本の4s4kiを想起させると、これまでの混沌とした雰囲気を一旦リセットするオルタナ風のイントロから素っ頓狂なハードコア/パンクに一変する#7“(Five Years And) My Family”、テネシー・ハードコアの有識者とラッパーのZula Wildheartを異種格闘技させた曲で、それこそportrayal of guiltばりの自傷作用をもたらす邪悪スンギる激情ノイズコアの#10“John J”、いわゆる90年代のヌーメタルというかRATM直系のグルーヴィなヘヴィロックを現代的なトラップメタルに昇華させた#11“GODBLESSYALLREALGOOD”、そしてフィラデルフィアのLojiiやリッチモンドのMcKinley Dixonをフィーチャーしたネオソウルなジャズラップと持ち前のスカパンク~ハードコアの全部乗せ、すなわち本作の根幹部にある“ケイオス”を総括するに相応しい#12“Spiritual Level Of Gang Shit”まで、アルバム前半ではハードコア/パンクの要素を強調しているのに対して、アルバム後半では複数のラッパーをフィーチャーしたヒップホップ的な側面を強く打ち出しており、そのSoul Gloを司るアンダーグラウンドなハードコア/パンクと現代的なブラック・ミュージックの二つのアイデンティティがエクストリーミーに交わる瞬間の刹那的なエモさったらない。

ちょっと異質、というか常軌を逸した実験的なハードコアパンクという意味ではThe Armed『ULTRAPOP』を、アングラ系のハードコアな作風からオルタナティブな化けっぷりでは、Turnstile『Glow On』がイメージとしては近いのかもしれない。要するに、ウィル・イップ最強!

Shapeshifter - Dark Ritual

Album 『Dark Ritual』
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Tracklist
01. Dark Ritual
02. Black Liquid
03. Erase
04. Rust
05. Dead Man
06. Mind Twist
07. Hereditary
08. Hollow
09. Abortive Flower
10. Psycho Eyes
11. Toxic

2020年に結成された東京のグラインドコアバンド、Shapeshifterの2ndアルバム『Dark Ritual』の何が凄いって、例えるなら灰野敬二やBoris、そしてENDONに代表されるジャパニーズ・ノイズとカニコーも裸足で逃げ出す殺傷性の高い残虐性を内包したパワー・バイオレンス/グラインドコアを量子レベルの光の速さで衝突させたような作風で、何と言ってもその聴いてるだけで脳ミソが掻き回されそうになるエゲツないサウンド・プロダクション、それはまるで“ノイズキング”ことスティーヴ・アルビニの文脈で語られるべき音作りの尋常じゃないほどの“こだわり”、この「音作り」一つ取ってみても彼らの非凡さが伺える。

再生ボタンを押した途端、言わば実質アルビニ仕様のノイズが約50秒流れるだけの曲と呼べないような曲を表題としている所からして「こいつらただもんじゃない」と約50秒で理解させてから、そのノイジーな波長を維持した状態のままカニコーばりにグロテスクかつブルータルなリフでエゲツない殺戮を繰り広げる#2“Black Liquid”、いわゆるDビートを刻みながらカオティックに展開する#3“Erase”、一転してマスロック的な一般人アピールというかインテリジェンスな側面を垣間見せるユルいイントロから急転直下にノイズ地獄へと突き落とす#4“Rust”、クラブのDJがハイになりながらターンテーブルをキュッキュしてる雰囲気の近未来型ノイズ/ポスト・ハードコアの#7“Hereditary”は本作のハイライトで、そしてBPMを抑えてThouやENDON級のドゥーム/スラッジーな轟音ヘヴィネスを叩き込む#9“Abortive Flower”、グリッチ/ノイズでバグり散らかしている#10“Psycho Eyes”、オルタナティブな側面を垣間見せながら18秒に全てを濃縮した#11“Toxic”まで、そのサウンド・プロダクション並びにソリッドなリフメイク、並びに海外バンドと比べてどうしてもキレ負けする印象の国産バンド特有のモタつきを一切感じさせないキレッキレな演奏力の高さにも驚かされるというか、とにかく今年のInfant Island枠およびportrayal of guilt枠として認知できるバンドが、まさか日本のアンダーグラウンドシーンから出てくるなんて夢にも思わなかった。

シンプルに気になって2021年作の1stアルバム『The Darkest Night』を(8分だし)チョロっと聴いてみたら、わりとありがちなDビート/ブラッケンドコアで少し意外だったというか、それ故に本作のノイズ象印の音作りは一体どこで学び、この一年も満たない短いスパンで一体どんな暗黒儀式(黒魔術)に手を染めたのかと変に邪推せざるを得なかったのも事実。それこそ幽霊や爬虫類人など、さまざまな姿に変身する妖怪とされる“シェイプシフター”という名が体を表すように、#4のイントロをはじめ要所で垣間見せるオルタナティブな側面もステレオタイプのグラインドコアとは一線を画す、その独自の革新性とエクストリーミーな思考回路に裏打ちされた彼らの実験的および超越的(Transcendental)な音楽スタイルを紐解く鍵は、レーベルメイト(ungulates)である日本のスリーピースオルタナバンドことdowntの音源を聴けば自ずと理解できるはず。大袈裟じゃなしに、もはやノイズの神様に取り憑かれたとしか思えないような覚醒の仕方というか。とにかく、その辺の裁量は個人レベルの感想でしかないけど、少なくとも彼らが世界基準の新鋭バンドであることには変わりないです(正直、ピッチフォークのメタル担当にフックアップされても何らおかしくない)。

SeeYouSpaceCowboy... - The Romance Of Affliction

Artist SeeYouSpaceCowboy
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Album 『The Romance Of Affliction』
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Tracklist
01. Life As A Soap Opera Plot, 26 Years Running
04. Sharpen What You Can
05. With Arms That Bind And Lips That Lock
06. Losing Sight Of The Exit...
07. ...And My Faded Reflection In Your Eyes
08. Intersecting Storylines To The Same Tragedy
09. Ouroboros As An Overused Metaphor
10. Anything To Take Me Anywhere But Here
11. The Peace In Disillusion
12. Melodrama Between Two Entirely Bored Individuals
13. The Romance Of Affliction

2021年の「Spotifyまとめ」によると「よく聴いた音楽ジャンルランキング」の4位が“メタルコア”とのことで、そんな昨年のメタルコアを語る上で欠かせないアルバムを幾何挙げるとすれば、それは新世代メタルコアのKnocked LooseのEP『A Tear In The Fabric Of Life』とエピタフ系男子ことEvery Time I Die『Radical』という二枚の傑作に他ならない。

このサンディエゴ出身の4人組、(アニメ『カウボーイビバップ』からバンド名を引用した)SeeYouSpaceCowboy...が昨年発表した2ndアルバム『The Romance Of Affliction』も2021年のメタルコアを象徴する一枚であることは確かで、というのも、本作はレーベルメイトでもあるKnocked Looseのギタリスト=アイザックがプロデュースを担当、エンジニアとして一曲目にもボーカルのキースがゲスト参加しているEvery Time I DieThe Human Abstract、そしてニュークリアブラストに引き抜かれたVein改めVein.fmの作品でもお馴染みのウィル・パットニーという黄金コンビを迎えて制作された、まさに昨今激化する新世代メタル(コア)の熾烈な縄張り争いに食い込んでくること必須の、それこそ新世代筆頭株のKnocked Looseと真正面からスクラム組みにきてるエゲツないハードコアを展開している。


彼らの持ち味であり、また彼らが根ざしているLGBTQ.Q.の自由な表現や反レイシズムや反資本主義などの政治的メッセージが込められた、ボーカルのコニー・スガルボッサによるスクリーモ系のアンニュイな歌声と強烈な金切りシャウトを軸とした往年のエモ/ポスト・ハードコアならではのパンク精神溢れるスタイルに、Knocked Loose直伝のイカつい鬼ブレイクダウンとEvery Time I Die譲りのカオティックでマッシーなコアさがカチ込み合う新旧ハイブリッド型のブルータルなハードコアを繰り広げる本作は、まさにその雑な説明文を象徴する#1を皮切りに、男性的なシャウト担当である姉コニーの弟であり元ドラムで現ギタリストのイーサンによる中性的な歌声とベースボーカル担当のタイラー・アレンによるemo(イーモゥ)然とした女性的なハイトーンのトリプルボーカルが性別の垣根を超えて交錯する#3、マッシーがよりマッシーにマスを×るカオティック・ハードコアの#4や#5、メタルコアとしての強度が異常に高すぎるキレまくりな#9、Knocked Looseリスペクトなエゲツないヘヴィネスから途中で素っ頓狂なアホパートに切り替わる#10、ピアノインストの#11で小休止を挟んでからメロディック/ポスト・ハードコア軸の#12、カリフォルニアのポストハードコアIf I Die Firstとコラボした#13まで、まさに第二次メタルコア大戦の開幕を告げるに相応しい傑作です。
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