Artist Bad Omens
Album 『The Death Of Peace Of Mind』
Tracklist
Album 『The Death Of Peace Of Mind』
Tracklist
01. Concrete Jungle
02. Nowhere To Go
03. Take Me First
05. What It Cost
06. Like A Villain
07. Bad Decisions
08. Just Pretend
09. The Grey
10. Who Are You?
11. Somebody Else.
12. IDWT$
13. What Do You Want From Me?
15. Miracle
今年のBMTH枠。というのも、リッチモンド出身のBad OmensといえばBMTHのフォロワー、厳密に言えば『Sempiternal』や『That's The Spirit』前後のBMTHフォロワーとして有名なメタルコアバンドで、何を隠そう前作から約3年ぶりとなる3rdアルバム『The Death Of Peace Of Mind』は、それこそ前作と同年(2019年)にBMTHが発表した6thアルバム『amo』において彼らが未来へ向けて示し出した“20年代のヘヴィネス”をフォロワー最右翼ならではの正しい視点から丸々コピーしている件について。
改めて、BMTHの『amo』の革新性って、一見ただのメジャーなポップ・ミュージックと見せかけて、10年代の終りに未来を見据えた“20年代のヘヴィネス”の基準の一つをヘヴィロックシーンに提示した事にある。その象徴的な曲であるダニ・フィルスをフィーチャーした“Wonderful Life”は、つい最近その某曲のリフメイクにおける(10年代メタル総合ランキング同率1位のGojiraとメシュガーを的確に捉えた)10年代のヘヴィネスを20年代のヘヴィネスとして次世代の解釈と独自の視点からアップデイトしたのが、他ならぬ日本のCVLTEとPaleduskがコラボした“eat acid, see god.”である。それでは、BMTHのコピバンもといフォロワーのBad Omensは、本作において如何様にして『amo』を自分達のモノとして料理したのか?
それこそ、本作の幕開けを飾る#1“Concrete Jungle”からして、シングルの“Wonderful Life”とともに『amo』を象徴する一曲目の“I Apologise If You Feel Something”から二曲目の“Mantra”までの一連の流れを一曲に集約したかのような、トリップホップ/アートポップ風のキレイめな打ち込みとバンドの中心人物でありリードボーカルのノア・セバスチャンによるオリヴァー・サイクス顔負けのクリーンボイス、そして“Mantra”を模したドライブ感あふれるグルーヴィなリフを『amo』のサウンドを模したプロダクションに乗せて、そしてタイトルの「Concrete Jungle」というノルウェーの歌姫AURORAの“Animal”を想起させるニューエイジ思想に傾倒したリリック/ポップなメロディを中性的な歌声で歌い上げる。つまり、昨今のオリィの発言におけるリベラルな立ち位置と、今やケツモチがディズニーことAURORAの立ち位置の近親ぶりを理解したフォロワー脳じゃなきゃ実現不可能な一曲となっている。
Amorphisの『Under The Red Cloud』や近年のTOOLに精通するポストキザミから形作られるポストヘヴィネスと、BMTHが“Wonderful Life”で示した現代ポストメタルにおける“20年代のヘヴィネス”の邂逅をいともたやすくやってのける#3“Take Me First”、もはやBMTHフォロワーの肩書きをブチ破るかの如し現代ポストメタルの一つの回答であるかのようなプロダクションおよびヘヴィネスを展開する#4“The Death Of Peace Of Mind”や#5“What It Cost”など、アルバム前半における全てのリフおよびヘヴィネスが“Wonderful Life”を多角的な視点から解釈した結果と言っても過言じゃあなくて、兎に角その逐一徹底したBMTH愛に脱帽する。
冒頭のAURORAのみならず、アルバム後半はEDM(Trap)のアプローチを効かせたBMTH直系バラードの#7“Bad Decisions”を皮切りに、ElsianeやVERSAを連想させるエレクトロニカ/トリップホップ志向の強い#10“Who Are You?”、『amo』の隠し要素だったK-POPのLOONA顔負けのヤーウェイ系EDMをフィーチャーした#11“Somebody Else.”におけるノア・セバスチャンのジェンダーを超えた女性的な歌声は本作の聴きどころの一つと言える。もはやグライムスとフィーチャリングできないならできないなりにセルフで女体化すればイイじゃんのノリでフェミニンな色気を醸し出している。と同時に、もはや自分の中で伝説化してるVERSAをフォローアップしている時点で俺感の読者なんじゃねぇか説が芽生えるなど。とにかく、要所で垣間見せるストリングスの鳴らし方とかエレクトロな打ち込み要素をはじめ、その他細部に至るアレンジまでも『amo』をモデリングしている徹底ぶり。
ジョーダン・フィッシュ顔負けのシンセやストリングスを擁する#13“What Do You Want From Me?”は、『amo』のハイライトを担う“Mother Tongue”をラウド寄りに仕立て上げたようなポップメタルのソレで、BMTHがグライムスとコラボした“Nihilist Blues”を模したミニマルなエレクトロビーツを刻む#13“What Do You Want From Me?”、そしてアルバムの終わりがけに自分たちの出自がメタルコアバンドであるという記憶を取り戻し、アリバイ作りのために仕方なくゴリゴリのメタルコアをやってのける#14“Artificial Suicide”からの#15“Miracle”まで、総評するとオリジナリティは皆無に近いけど「BMTHフォロワー」としては100点満点だし、あの『amo』を世界一のフォロワーなりに独自解釈した結果、人によっては本家『amo』と同等、いやそれ以上に凄いことやってんじゃねぇか説を唱える人も多数いそう。
なんだろう、そのBMTHフォロワーとしてのネタ的な視点、BMTHが『amo』で紡ぎ出した“20年代のヘヴィネス”の回答としてのオルタナティブな革新性、そしてAURORAやVERSAを連想させるフェミニンな隠し要素が多数盛り込まれた、決して「いわゆるフォロワー」の枠にとどまらない凄みが本作にはある。かろうじてハイパーポップ化だけはしなかったのは唯一の救いか。