Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

レビュー (H)

Hey, ily! - Psychokinetic Love Songs

Artist Hey, ily!
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Album 『Psychokinetic Love Songs』
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Tracklist
01. Rebooting
02. Intrusive Thoughts Always
03. Stress Headache
04. Glass House
05. Dreaming
06. Psychokinetic Love Song
07. Machine?
08. The Tempest
09. Human!
10. Shutting Down

昨今、日に日に理解が深まってきた“ゲーム音楽”の素晴らしさ、その魅力の根幹部を司る存在こそ、いわゆるAAAタイトルと呼ばれるものではない、それこそアンダーグラウンドなインディーゲームにおける音楽およびサウンドトラックに他ならないだろう。

例として挙げると、昨年で言うところのテキサス出身のGonemageは、いわゆる8bit系のチップチューンとブラックメタルをエクストリーミーにかけ合わせた、言わばローグライクな2Dダンジョンの死にゲーのBGMみたいなサウンドを特徴としていたり、それこそ今年で言うところのサンフランシスコ出身のdynasticは、00年代のポップパンク/エモポップとケロケロボニトにも通じるハイパーポップ的な電子音楽をカオスに融合させたサブカル音楽を聴かせていた。

何を隠そう、モンタナ州はビリングス出身の5人組、Hey, ily!の1stアルバム『Psychokinetic Love Songs』は、海外のドット絵師が手がけたインディーゲームにありがちなアートワークをはじめ、(ビットポップなBGMをバックに)ゲーム音楽などの電子音楽系のミュージシャンであるとぼけがお氏がラジオパーソナリティとして日本語でHey, ily!の楽曲を紹介する#1“Rebooting”からしてサブカル然とした幕開けを飾ると、いわゆるマスロックやミッドウェスト・エモを経由したポップパンク/パワーポップでありながら、中盤から一転してカオティックなハードコア精神を垣間見せる#2“Intrusive Thoughts Always”では、例えるなら日本の9mm Parabellum Bulletが歌謡ロックながらも「メタルっぽい」と評される感覚に近い、そのスラッシュメタルmeetポストハードコアみたくプログレスな楽曲構成は実にユニークで、そして面白い。

他にもインディ/チェンバーポップやハイパーポップ的なアプローチを覗かせる#4“Glass House”、いかにもインディーゲームのBGMにありそうなローファイでチルいインストの#5“Dreaming”、ケロケロボニト的なアレンジを効かせたマスロッキーなポップパンクから急転してシティポップ的なレトロシンセと激情的なスクリーモが交錯する表題曲の#6“Psychokinetic Love Song”、ケロケロボニトを想起させるシティポップ/パワーポップの#7“Machine?”、クラシカルなピアノインストの#8“The Tempest”、そしてCoheed & CambriaFall Out Boyを連想させるコテコテなポップパンクの#9“Human!”は本作のハイライトで、そのアウトロを担うオープニングのラジオBGMをレトロゲームのエンドクレジット風にアレンジしたインストの#10“Shutting Down”まで、それこそ“インディーゲーム”の音楽的魅力を象徴していると言っても過言ではない『コーヒートーク』のサントラにも通じる、そのローファイ・ヒップホップや近年リバイバル化して久しい古き良きシティポップ的なシンセをフィーチャーしたチルい世界観に秒で魅了されること請け合いの一枚。

そんな「スマブラ大好き芸人」のトレヴィン・ベイカー率いるHey, ily!は、【サブカル】【インディーゲーム】【ポップパンク】【エモ】【ローファイ】【シティポップ】【ハイパーポップ】など、昨今のインディーゲームシーンやBandcamp界隈とも共鳴するトレンディなワードを網羅した、イマドキのゲーム音楽のトレンドと昨今の音楽シーンにおけるポップパンク・リバイバルの邂逅を実現させている。また、今作のマスタリングにはコア系のASkySoBlackやオルタナ/プログ系のThank You Scientistの作品でも知られるエンジニアが担当しているのも信用ポイント高しくん。

Havukruunu 『Uinuos Syömein Sota』

Artist Havukruunu
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Album 『Uinuos Syömein Sota』
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Tracklist
01. Uinuos Syömein Sota
02. Kunnes Varjot Saa
03. Ja Viimein On Yö
04. Pohjolan Tytär
05. Kuin Öinen Meri
06. Jumalten Hämär
07. Vähiin Päivät Käy
08. Tähti-Yö Ja Hevoiset

「ここは嵐吹き荒れる大海原の中を突き進む船の上。北欧フィンランドから出発したヴァルハラの民を乗せた船団Havukruunuは、毎夜の如く船上で宴を開いてはヤギの乳で作った酒を浴びるように飲み、イノシシの肉を飲むようにして貪り、そしてヴァイキング流の誉れとばかりに、大蛇ヨルムンガンドが化けたような荒れ狂う荒波に抗わんと怒号の如し歌声でヴァルハラの民に伝わる船歌を大海原に轟かせる。その船上の戦いという名の航海を乗り越え、標的の魔物が潜むとされる敵陣に上陸するや否や目の色を変え、漢と漢の激しい乳繰り合い、もとい激しいぶつかり合いを合図する狼煙とともに血肉湧き立つ戦いの火蓋が切って落とされる。二人の兄弟戦士が先陣を切ってヴァイキングの魂を宿した獣性むき出しの勇壮な咆哮と嵐の如く唸りを上げるトレモロ・リフの連携技で敵陣地に切り込めば、一人のイケメン戦士は北欧全土に言い伝えとして残る伝説のギターヒーロー“インギー”から継承したネオクラシカルなソロワークで味方をエピックに鼓舞するバフを与え、一人の戦士はヴァイキングに古くから伝わる伝説の聖剣ヴァルハラソードを片手にスラッシュ・メタルばりの切れ味鋭いキザミで魔物を真っ二つに一刀両断、一人の巨漢の戦士は粗暴なブラストビートで敵を容赦なく無慈悲に叩き潰す、ある一人は未だ船舶する船の上でアコギを片手にヴァイキングに伝わる民謡的なフォークソングを陽気に歌い続け大事な戦闘に乗り遅れるうっかりさん戦士、それら一人一人の個性豊かな雄々しくも勇敢なヴァイキンガーを束ねるキャプテンのラグナルの指示で戦況に応じて隊列を変化させながら陣形を構築し、敵軍をなし崩しに一網打尽にしていく。長い死闘の末、ついにラスボスの魔物を倒したヴァイキングは興奮冷めやらぬ雄叫びとともに勝鬨をあげ、いざ宴の準備に取りかかろうとしたその時、どこからともなく聞こえてくる幽玄でスピリチュアルな音色のアンビエント効果並の睡魔に襲われた船員一同は、2度と目覚める事のない深い眠りにつく。そう、彼らはヴァイキングの魂(ソウル)=エインヘリャルが復活した「死せる戦士たち」だったのだ。」

次回『ダークソウル4』、ご期待ください。

Haim 『Women In Music Pt.III』

Artist Haim
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Album 『Women In Music Pt.III』
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Tracklist
01. Los Angeles
04. Up From A Dream
05. Gasoline
06. 3 AM
08. Another Try
09. Leaning On You
10. I've Been Down
11. Man from the Magazine
12. All That Ever Mattered
13. FUBT
14. Now I'm In It (Bonus Track)
15. Hallelujah (Bonus Track)
16. Summer Girl (Bonus Track)

ハイムって自分のいる立ち位置からでは聴けないLAの三姉妹バンドで、しかし何の因果か2019年の後半に先行公開されたシングルの“Now I'm In It”“Hallelujah”“Summer Girl”、その中でも“ハイムなりのバンクシーもといマッシブ・アタック”“Summer Girl”“ハイムなりのチャーチズ”なシンセのビートとオシャンティなラップを絡めた“Now I'm In It”という自分の好みにピンズドな曲が立て続けにリリースされ、そして今年に入って遂に待ちに待ったフルアルバムがリリースされたとの事で、さっそく目玉となるであろうシングル曲は何曲目に置かれているか、トラックリストを上から順に眺めていったら途中から[Explicit]が続くばかりでお目当てのシングルは一向に姿を現さなくて、最後の方でようやく見つけたと思ったらタイトルの横に(Bonus Track)が付いてるのに気づいた瞬間「ホーリーシェイ!」ってなった。と同時に、あの先行シングルを全部ボートラ行きにするというバリキャリ並の“デキル女”感に、アルバムを聴く前から「参りました」と2秒で降参宣言。


この曲はチャーチズ顔負けのシンセのビートにイケてるラップを乗せた“ハイムなりのチャーチズ”で、まるで現代の男社を逞しく生きるオトナ女子の背中を後押しするような、目まぐるしく変化する都市部のOL女子の“朝の一曲”に相応しい明日への一歩を踏み出す勇気と前向きな力強さをまとった名曲。


この曲は姉妹それぞれの歌声が織りなすハーモニクスを活かした“ハイムなりのカーペンターズ”


もはや“ハイムなりのマッシブ・アタック”、厳密に言えば“ハイムなりのプロテクション”のジャズいトゥルットゥ〜!な夏女ソング。ちなみに、これら3つのMVは映画監督のポール・トーマス・アンダーソンが撮影している。あと3曲ともMV音源とアルバム音源とでは微妙に違いがあったりする。

本来なら4月にリリースされる予定だったのが某コロナの影響で延期になった結果、これらの名曲づくしの先行シングル全部ボーナストラック行きになった説あって、というかそうとしか思えなくて、しかし蓋を開けてみたらボートラ行きも納得せざるを得ない、本編の尋常じゃないクオリティの高さに脱帽する。さっきは「自分の立ち位置からは聴けないバンド」って書いたけど、それが急に聴けるようになった1番の理由、それは明らかに過去作とは一線を画した“色気”を醸し出してきたボートラとの引力的な部分が大きくて、しかし“色気”“色気”でも“女性らしさ”という古い価値観を真っ向から否定する事で生まれる真の音楽的な“色気”に満ち溢れた作品である。実際に島流し、もといボートラ流しの先行シングルをキッカケに改めて腰を据えて聴いてみると、UKのSSWマリカ・ハックマンや彼女のバックバンドを務めたガルバンのThe Big Moonがワンクッションになって全然普通に聴けるようになってたパティーンが本作。なんだろう、例えるならマリカ・ハックマンがイギリスの辺境大学に通うサブカル系の喪女(マイノリティ)なら、このハイムは名門カリフォルニア大学に通う地元でも評判の美人三姉妹(マジョリティ)みたいなイメージ(ただの偏見)。

わかりやすい結論として、なんでこんなに自分のツボにハマったのかを述べると、先行シングル兼ボートラを起因とする作品全体からそこはかとなく漂うチャーチズ臭は元より、デペッシュ・モードキリング・ジョーク、そしてバンクシーもといマッシブ・アタックに代表される80年代のオルタナ〜ニューウェイブをルーツとするシンセを駆使したアレンジ力の高さ←これに尽きる。バッチバチのUSメインストリームのトレンドに精通するモダンでイマドキな側面と、一方で80年代リバイバルとも取れるアンダーグラウンドな要素から垣間見せる“音楽好き”ならではの“こだわり”を両立させる天才的な才能に唸ること請け合い。

ハイム三姉妹って、端的に言ってしまえば何でもできちゃう天才姉妹で、例えばジャズやファンク、ヒップホップやR&B、レゲエやローファイ、シンセ・ポップやフォークなどの様々な音楽的素養を噛み砕いて、ここまで3分台の曲が羅列されているトラックリストって久々に見たかもってくらい、イマドキのメインストリーム・ポップシーンの流行を抑えた“ハイム流のポップス”としてパッケージングする、それこそ日本を代表するSSW岡田拓郎を凌ぐオシャなセンスは今作でも極めに極めまくっている。

まず“夏女”の名残を感じるサックスの陽気な音色から始まり、いかにもインディロックなユルい倦怠感を醸しながら「LAはウチらを輝かせてくれる最高の地元やねん」と地元愛を叫ぶ#1“Los Angeles”、リード曲ならではのコマーシャル性に富んだ陽キャな#2“The Steps”、陽(キャ)の当たる昼間のサマーガールとは打って変わって陽の当たらない“陰の顔”を持つロンリーガールの孤独な一面とその寂しさを埋めるような#3“I Know Alone”、インディロックならではのサウンド・プロダクションとノイジーなギタープレイが俄然マリカ・ハックマンをフラッシュバックさせる#4“Up From A Dream”、ファンキーなグルーヴ感とセンチメンタルな内省性がクロスした#5“Gasoline”、高確率でドレッドヘアーであることが容易に想像できる男声のスポークンワードからレゲエ調に展開する#6“3 AM”、ローファイな雰囲気を身にまといながらプログレスなオシャっぷりを発揮する#8“Another Try”、アコギのアルペジオとトライバリズム溢れるハンドドラムやマンドリンをフィーチャーしたオーガニックなカントリー/フォーク調の#9“Leaning on You”、ハンズクラップを擁しながら優美なピアノとアコギそしてサックスのソロパートで締める#10“I've Been Down”、アコギ主体でシンプルに聴かせる#11“Man from the Magazine”、先行シングルでありボートラの“Now I'm In It”を本編用にチューニングし直して再構築したような、いわゆる“ハイムなりのチャーチズ”を確信犯的にやってのけるダイナミックなドラムをはじめエレクトロなアレンジを効かせた#12“All That Ever Mattered”、日本のtricotに代表される「ガールズバンド、アルバム終盤の曲にX JAPANのTHE LAST SONGばりにエモいソロ入れがち」な#13“FUBT”まで、本作のプロデューサーにはヴァンパイア・ウィークエンド界隈の人脈を筆頭に、その他豪華な面々を揃えているだけあって、アルバム全体のアレンジが鬼エグいし捨て曲がない。そして何よりも、この本編の後に“裏の本編”と言っても過言じゃあない例のボートラが待ち受けている強さな。しかし本編を聴き終えてみると、このボートラを本編に組み込むとなるとキャッチー過ぎて少し浮いちゃうのも事実。しかし、何度聴いてもラストにこのボートラ3連発は反則過ぎるw

これは切実に日本で単独ライブが観たくなるレベルの傑作(なお)。もちろん本作が初ハイムでも全然問題ないし、むしろ新規ファンの獲得を意図して狙ったとしか思えない内容。でも結果的に、発売延期してこれからのサマーシーズンにドンピシャなタイミングで出せたのは夏女らしくて逆によかったのかもしれないw

Hum 『Inlet』

Artist Hum
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Album 『Inlet』
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Tracklist
01. Waves
02. In the Den
03. Desert Rambler
04. Step Into You
05. The Summoning
06. Cloud City
07. Folding
08. Shapeshifter

ハムことイリノイ州はシャンペーン出身のHumは、90年代のグランジ/オルタナ全盛の頃にちょっとしたヒットした曲が一つあったりなかったりする、少なくともメインストリームのシーンとは一線を画した、しかし一部ではレジェンド的な扱いをされていた知る人ぞ知るマイナーなバンドだったらしい(らしい)。自分は失礼ながらこれまで存じ上げてこなかったバンドで、そんな2001年に解散した彼らの約22年ぶりとなる復活作が90年代以降のヘヴィロックを総括するかのような歴史的名盤な件について。

まず幕開けを飾る#1“Waves”から、それこそ2000年代初頭にムーブメントを起こしたIsisPelicanを連想させるポストメタルの王道、そのド真ん中をブチ抜くオールドスクールなポストメタル・リフが津波の形相で押し寄せる濃密なヘヴィネスと、同90年代に産声を上げたポストロック〜シューゲイザーラインのATMSフィールドを張り巡らせる、一種のミニマリズムを極めたかのようなヘヴィロックで、この倦怠感剥き出しの歌や夢遊病患者の如し幽玄な浮遊感からして、いかにも90年代のオルタナ全盛を地肌で直に経験した人たちの音作りって感じ。打って変わって、イントロからそこはかとないIDM風味なスペース音とシューゲイザー由来のノイズ成分とTorche由来のコア成分を配合したハリと弾力のあるヘヴィネスがLiturgyJesuを連想させるドゥームゲイズの#2“In the Den”、まるで催眠術にかけられているような内省的な魅惑のリフレインともはやドゥーム・メタルに片足突っ込んじゃってるニューロシスばりの遅重なヘヴィネスが艶かしく官能的に絡み合う#3“Desert Rambler”は、それこそメタルの開祖であるブラック・サバスは元より、新世代ドゥーム・ベアラーことPallbearerと90年代のオルタナを象徴するシューゲイズレジェンドのマイブラが、この2020年というバグった世界線で運命的な邂逅を果たしてしまったような曲。

再びBPM指数を上げてハムのルーツであるイリノイ州を代表するエモレジェンド=アメリカン・フットボールばりのemo(イーモゥ)〜ポスト・ハードコアラインのニューウェイブなエモさとコアさを押し出していく#4“Step Into You”、まるで宇宙の暗黒物質をコーヒーミルですり潰したような“旨味”が焙煎された、ニューロシス顔負けのヘヴィネスという名の巨人の壁が“地ならし”を発動させ地底から大地を揺るがす#5“The Summoning”、古き良きオルタナを懐古するかのようなイントロから(こちらも13年ぶりに復活した)TOOLA Perfect Circle、そしてDeftonesなどの90年代後半から00年代のヘヴィロックを牽引していく偉大なバンドにもハムが影響を与えている可能性を示唆する#6“Cloud City”(デブ豚(ハム)だけにw)、再びマイブラ直系のシューゲイザー/ドリーム・ポップならではの夢心地な気分にさせるリバーブをかませたリフレインを繰り返し、アウトロは宇宙規模のスペース・アンビエントを展開する#7“Folding”、そしてノスタルジーを誘うメランコリックなメロディを引き連れて、90年代emo(イーモゥ)のように純粋無垢だった青春時代のあの頃の思い出が時が止まったままの姿で帰ってくるかのようなラストに号泣不可避の#8“Shapeshifter”まで、このまま永遠に優しく圧迫されたいと願うこと請け合いなお前を真綿で締めつけるようなヘヴィネスと、まるで「地球最後の日」みたいな非現実的な美しさを内包したメロディは、ある種の漫画『デビルマン』のラストシーンとも共振する美しくも残酷な終末思想的世界観を形成する。

まさに90年代以降の全ヘヴィロック大集合なアルバムで、何よりも肉厚で濃厚なヘヴィネスの「音がいい」。正直、この一言に尽きる。まず#1のセンスしかない転調部からはDeftones〜Juniusラインを、往年の90年代オルタナやエモ〜ポスト・ハードコアからはマイブラは元よりマイナーバンドという位置づけからもCave Inを、ハードコア/パンクルーツの“コアさ”からはNothingWhirrなどのDeafheaven界隈をフラッシュバックさせる。とにかく、ハードコア/パンクだったり、シューゲイザーだったり、メタルだったり、メタルはメタルでもドゥーム・メタルだったりポストメタルだったり、あるいはグランジだったり、実のところやってる事はあくまでシンプルイズベストで、ヘビネスはヘビネスでもその時代その時代の様々なルーツを持つヘビネスの多様性、それは人種の違いのようでもあり、同じ人種でも一人一人それぞれの個性とアイデンティティを持つ、その“多様性”こそが本作を傑作たらしめているのも事実。あと決して90年代懐古で終わるアルバムではなくて、90年代後半から00年代のヘヴィロック界を担うバンドへの影響を認知しつつ、一方で00年代から10年代のポストメタル界を担うバンドとも共鳴するヘヴィネス兼ヘヴィロックであり、例えばDeafheaven『普通の堕落した人間の愛』とも共振するのは流石にちょっと感動した。あとリフとメロディのリフレインが曲作りの根幹にあるところはスロウコアを聴いてる感覚に近いかもしれない。

確かに、そのバンドの過去やディスコグラフィーを知っている方がより一層楽しめるかもしれない。けど、逆に過去を知らなくとも純粋に「いい曲」と感じられる作品こそ、この世で最も素晴らしい音楽なんじゃねぇか説を証明するかのような、そんな全ヘヴィ・ミュージック好き必聴の一枚(この紫の色味が絶妙なアートワークからして優勝)。ちなみに、本作をBandcampで買うと正真正銘の“ありがた迷惑FLAC【24bit/88.2kHz】”でDLさせてくれます(容量1ギガ)。

Hacride 『Back to Where You've Never Been』 レビュー

Artist Hacride
Hacride

Album 『Back To Where You've Never Been』
Back To Where You've Never Been

Track List
01. Introversion
02. Strive Ever To More
03. Synesthesia
04. Overcome
05. Edification Of The Fall
06. To Numb The Pain
07. Ghosts Of The Modern World
08. Requiem For A Lullaby

フランスの西部はポアティエ出身の四人組、Hacrideの約四年ぶりとなる最新作で、ノルウェイの王手Indie Recordingsからリリースされた通算四作目『Back To Where You've Never Been』なんだけど、同郷のKloneと並び”Gojiraのフォロワー”として知られる彼らだが、前作『Lazarus』までのボーカルとドラマーの二人が脱退したとはいえ(新メンにKloneのドラマーFlorent Marcadetを迎えている)、オープニングの#1”Introversion”のオリエンタルな神秘性やUSグルーヴ/モダンヘヴィネスそして新ボーカリストLuiss RouxによるUSハーコー勢リスペクトな縦ノリ系の雄叫び、#2”Strive Ever To More”での変拍子を多用したエクストリーム・プログ/テクニカルなスタイルを耳にする限りでは、十分に本来の”Hacrideらしさ”を感じる実にダイナミズムかつexperimentalismに溢れた作風ではあるし、しかも#3”Synesthesia”では初期The Oceanもしくは初期Cult of Lunaを彷彿とさせるスラッジーな轟音ヘヴィネスを大地にズッシーンズッシーン轟かせていて、(あれっ?コイツらこんな音楽性だったっけ?イケるやん!)と度肝を抜かれた。そして中盤のインストがヤケにカッコイイ#4”Overcome”、Toolishなオルタナティブ・ヘヴィ成分およびDjent成分配合の鬼グルーヴが凄まじい#5”Edification Of The Fall”、インスト主体の#6、再びジェントライクなゴリゴリなリフ&モダンヘヴィネスを擁しながら怒涛の展開力を見せる#7”Ghosts Of The Modern World”、再びトゥーリッシュなラストの#8まで、いわゆる【大作志向】で全7曲トータル約1時間という妙な冗長さを感じた前作とは違い、全8曲トータル約42分というコンパクトに凝縮された作風かつ今時のDjent成分配合のシンプルでモダンなエクストリーム・メタルやってる本作すき。なんつーか、前作みたいなネットリ感のある混沌とした雰囲気は薄くなって、存外サッパリとした音に変わったというか、#6を筆頭にCynicTexturesそしてToolを連想させるオルタナ/プログレ成分配合のスペーシーな音響系【ATMS】空間の形成に意識を向けた作品、そんな印象。要するに、その手の好き者にグッと訴えかけるナニかがある。まぁ、この手の”流行り”の音に合わせてくる辺りは流石のIndie Recordingsといった所。良作。
 
Back To Where You’Ve Never Been
Hacride
Indie Recordings (2013-04-29)
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