Artist Slow Crush
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Album 『Hush』
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Tracklist
1. Drown
2. Blue
3. Swoon
4. Gloom
5. Swivel
6. Rêve
7. Hush
8. Lull
9. Thrill
10. Bent And Broken

「このベルギーのバンドめっちゃエエやん!」と気になったから調べてみた結果→え~っと、なになに・・・2018年作の1stアルバム『Aurora』をリリースしたレーベルがホーリーシーもといHoly Roar Recordsで、マスタリング・エンジニアがDeafheavenやWhirrでお馴染みのジャック・シャーリー・・・っと、フムフム・・・なるほど・・・あっ、ダメだダメだダメだダメだこいつダメだ、その組み合わせはもう実質チートだからダメだ完全に俺の負けだ」と悟った。しかし、その1stアルバムこそ【Holy Roar×Jack Shirley】という一部界隈における黄金ラインだったが、約3年ぶりとなる本作の2ndアルバム『Hush』に至っては、何故かレーベルがChurch Road Recordsという聞いた事もないレーベルに変わり、マスタリング・エンジニアもジャック・シャーリーと離れて業界最大手であるSterling Soundのライアン・スミスを迎えている。彼はフィラデルフィアのNothingやボストンのDefeaterの作品を手がけた人物でもある。

そもそもの話、UKが誇る気鋭のインディーズレーベルで知られるHoly Roar Recordsといえば、つい最近レーベル創始者であるアレックス・フィッツパトリックがやらかした、というか二人の女性に性的暴行を働いたとして告発されたらしく、そんなやらかし案件の影響もあってか、性被害に遭った“女性”をフロントウーマンとして擁するSlow Crushの作品がHoly Roarからリリースされる事は二度とないであろうことは想像に難くない。また、今回のホーリーシー案件を受けて、Holy Roarを代表するRolo Tomassiは既にレーベルからの離脱を表明している(即ちレーベルの終焉)。恐らく、同レーベルの支柱であるSvalbardも後に続くと予想(即ちレーベルの廃業)。

そんなリアルホーリーシー案件はさて置き、今はなきHoly Roarがシーンに残した功績および革新性というのを、レーベルを象徴するRolo TomassiSvalbardを例に出して簡潔に述べると、それこそ伝統的なUKポストハードコアの立ち位置からAlcestはもとより、同郷のOathbreakerDeafheavenなどのジャック・シャーリー案件の影響下にあるカオティック・ハードコア/Blackgazeの要素を積極的に取り入れた点にある。確かに、今回の2ndアルバムにはジャックは一切関わっていないものの、もとよりシューゲイザー界のレジェンドであるMBVスロウダイヴの影響下にあるコテコテのシューゲイザー/ドリーム・ポップを継承しながら、ちょうど今の季節にWhirrのデビューEP『Distressor』と出会って超弩級のエモい気持ちに苛まれた記憶が約10年の時を経てフラッシュバックさせるような、それこそ最初期のWhirrという現代シューゲイザー界の伝説が産み落としたエモさの“コア”をもって次世代仕様にアップデイトしたSlow Crushのシューゲイズ・サウンドは、皮肉にもバンドを引き抜く確かな審美眼だけはあったHoly Roarのフィッツパトリックに見出されるだけの特別な魅力を放っている。

このSlow Crushの非凡さって、いわゆる90年代前半の王道的なシューゲイザー/ドリーム・ポップというよりは、90年代後半のオルタナ/グランジにバックグラウンドを持つフィラデルフィアのNothingをはじめ、それこそDeftones『Ohms』とともに“20年代のヘヴィネス”を切り拓いたHum『Inlet』に代表されるような、いわゆる現代ポストメタル~ヘヴィ・シューゲとも繋がりを見せる、それら次世代のヘヴィネスともシンクロする文脈的な広さは、いかに彼らが「ただの90年代リバイバル」の一言で片付けられるようなバンドでは到底ない事を示している。もちろん、それは一部界隈を牛耳るジャック・シャーリーによるエンジニアとしての仕事を超えた実質的なプロデューサーとしての影響力によるものであると。ここでも改めて、あのMastodonの新作Hushed and Grimにもインスパイアされる『Inlet』の多大な影響力とその革新性に驚かされる。

しっかし、(過去にPelicanTorcheと一緒にツアーしたり、RoadburnやArcTanGentなどの著名なフェスに出演する実績を持つ)こんな良質なバンドを引く抜く審美眼が備わっているにも関わらず、その才能を活かす場というのを金輪際手放すようなやらかし事件を起こしてしまったHoly Roarのアレックス・フィッツパトリックには、今はただ一言「ご愁傷様です」と言いたい。彼の人生のピークは、それこそBFMVのマット・タックのメタルに対する意見に反対する煽り文章を送ってた瞬間に違いないですw