Artist Unto Others
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Album 『Strength』
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Tracklist
01. Heroin
04. No Children Laughing Now
05. Destiny
06. Little Bird
07. Why
08. Just A Matter Of Time
09. Hell Is For Children [Pat Benatar cover]
10. Summer Lightning
11. Instinct
12. Strength

オレゴンはポートランド出身のゴシック・ロックバンド、Idle Handsが大手メジャーレーベルのロードランナーに引き抜かれたのを境に、Unto Othersと改名して発表された本作の2ndアルバム『Strength』は、80年代に一世を風靡したニューウェイブ/ポスト・パンクの系譜にあるゴシック・ロック然としたビートを刻む若手バンドで、そのサウンドも流石に大手メジャーレーベルに引き抜かれるだけあって、いわゆる“ゴシック”から連想されるダークなイメージというよりは、現代のアリーナロックを代表するモンスターバンドことVolbeatにも通ずる、いわゆるMTV世代ならガッツポーズ不可避の古き良きヘヴィメタル/ハードロックを展開している。


MVの映像やメンバーの衣装を筆頭に、バンドの中心人物であるガブリエル・フランコによるフェルナンド(Moonspell)顔負けの雄々しくもダンディな咆哮、80年代のヘビメタを象徴するツインギターの叙情的なソロワークやツインリード、80年代のニューロマンティックな綺羅びやかなシンセ、そして80年代仕込みのサウンド・プロダクションまでも、とにかく楽曲的な面でもビジュアル的な面でも一貫してHR/HM全盛の80sスタイルを現代にリバイバルさせているバンドで、それらの何から何まで80年代愛に溢れすぎている意図してダサい要素以上に、彼らの80年代愛をより強固なものとするその最たる部分こそ、80年代に名を馳せた女性ハードロッカーの原点であるレジェンド=パット・ベネターのカバー曲(#8)の存在に他ならない。

もっとも面白いのは、アメリカのバンドなのに往年のゴシック・ロック然とした哀愁と官能に満ちたメランコリックなリフレイン/メロディを大胆に聴かせるそのギャップをはじめ、そして何より本作のプロデュース/エンジニアとしてGhosteManePower Trip、そしてCode Orangeなどの各シーンの“顔”となるバンドの作品に数多く関わっているアーサー・リザークを迎えている点からも、いかに彼らがロードランナーに激推しされているバンドなのかがわかるし(現に前作比で楽曲の強度が歴然の差)、そしていかに「ポスト・ヴォルビート」の座に向けて育てていくか、否が応でも今後も注目せざるを得ない期待の大型新人バンドと言える。

しっかし、これまでロードランナーの“ゴシック”を背負ってきたレジェンド=Type O Negativeの後継者としてIdle Handsを指名するとか・・・さすがRR、目の付け所が違うなって。少なくとも、未来のシン・ゴシックシーンを牽引すること請け合いのバンドです。また、本作は毛艶が黒光りしたGⅠ級のダークホース的なジャケがカッコ良すぎるのも含めて、とにかくMoonspellの名盤『Extinct』が好きな人やライト版Tribulationとしてオススメしたい、間違いなく今年のダークホースアルバムとなる一枚です。