Artist DVNE
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Album 『Etemen Ænka』
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Tracklist
01. Enûma Eliš
02. Towers
03. Court Of The Matriarch
04. Weighing Of The Heart
06. Adræden
08. Mleccha
09. Asphodel
10. Satuya

20年代に入り、メタルシーンにも続々と新世代の波風が押し寄せている。このUKはエディンバラ出身の5人組、DVNEの2ndアルバム『Etemen Ænka』は、ポストメタル界のレジェンド=Isisを長とする、アメリカのポストメタル王=Mastodon、スウェーデンのポストメタル王=Cult Of Luna、ドイツのポストメタル王=The Ocean、日本のポストメタル王=envy、それら各国を代表するポストメタル界の偉大な先人達が紡いできたポストメタルというヘヴィ・ミュージックの進化論、そのネクストステージの幕開けを告げるかのような、まさに20年代を代表する新世代ポストメタルを繰り広げている。


その音楽性としては、古き良き大英帝国産プログレッシブ・ロックをルーツとするキーボードを駆使したスペース/ネオ・サイケデリックな叙情性と、ポストメタル界の偉人からの色濃い影響下にあるスラッジ/ポストメタリックなヘヴィネスから放たれるダイナミズムがハイコンテクストする“新世代ハイブリッド・メタル”で、そんな彼らを象徴する名曲であり、まるでスウェーデン王であるCult Of Lunaの6thアルバム『Vertikal』の超大作“Vicarious Redemption”に対する新世代からの回答とばかりの#2“Towers”は、まるで初期Mastodonのトロイ・サンダース直伝の獣性むき出しの咆哮とCoL直伝のスラッジーなヘヴィネスが融合したビーストモードを発動しながら、宇宙空間のワームホールの入り口が開かれるようなキーボード、まるで“ポストメタル界のInsomnium”を襲名するかのようなエピックな単音リフは同フィンランドの今はなきGhost Brigadeを彷彿とさせ、中盤の転調以降はプログレ〜ポストメタルラインの王道をブチ抜くかのようなリフに次ぐリフの波状攻撃で畳みかけ、そして終盤のクライマックスでは初期のドゥーム・メタルからモダンなプログレへと進化した後期ana_thema顔負けのリリカルでエピックなキーボードを擁しながら、メタル然としたスケール感溢れるドラマティックな展開へと収束していく。

この「ザ・転調」を駆使したプログレッシブでエピックな楽曲構成は、例えるなら「ポストメタル化したElder」あるいは「ポストメタル化したANATHEMA」と言えば存外シックリくるかもしれない。また、いかにもUK産ポストハードコア然とした少しハスキーな歌声と、SF然とした宇宙空間系のスペーシーなキーボードや耽美的なアンビエントなどのモダンなアプローチは、いかにDVNEが現代的なバンドであるかを示唆すると同時に、新世代UKメタルのLoatheTesseracTをはじめとするDjent勢やUK開催のArcTanGent Festivalに出演しているようなポスト系のバンドとも共振する近未来志向のインストゥルメンタルを展開する、そんな一面も兼ね備えている。

何を隠そう、本作のマスタリングにはレーベルメイト(Metal Blade)でもお馴染みのCult Of Lunaマグヌス・リンドバーグが担当している時点でもう勝確なんですが、そのように明確にポストメタルからの影響を包み隠さないポストメタル然としたスタイルでありながらも、そこはやはりUK出身だけあって、随所にプログレッシブ・ロックのルーツやウェットでエモーショナルなメロディをふんだんに盛り込んできている点は、彼らなりのオリジナリティとして活かされいる。中でも、女性ボーカルを駆使したフェミニンで内省的な雰囲気は、それこそ現代プログレ界の王であるスティーヴン・ウィルソンを想起させなくもない。特にアルバム後半の女性ボーカルを起用した#9“Asphodel”から、アルバムのラストを飾る曲でThe Oceanリスペクトが過ぎる大作の#10“Satuya”までの組曲的な流れは、彼らの非凡な才能を体現している。