Artist MØL

Album 『JORD』

Tracklist
01. Storm

Album 『JORD』

Tracklist
01. Storm
02. Penumbra
03. Bruma
04. Vakuum
05. Lambda
06. Ligament
07. Virga
08. Jord
あの歴史的名盤『サンベイザー』を境にdeafheavenが大ブレイクしてからというもの、各界隈のレーベルが血眼になりながら”Post-deafheaven”のポスト、あるいは原石を求めて奔走していた。UKを拠点とするHoly Roar Recordsもその一つで、Holy Roarは所属するUKマスコア界のエースRolo Tomassiを”女版デフヘヴン”に魔改造することに成功した腕利きのレーベルである。そして2018年、そのHoly Roarから”Post-deafheaven”の最終兵器として満を持して登場したのが、2012年にデンマークはオーフスで結成された5人組のMØLだ。
幕開けを飾る”Storm”のイントロから、ポストブラック界のレジェンドAlcestの『KODAMA』を彷彿させるノスタルジックでドリーミーな音響意識の高い甘味なメロディ、そしてブラック・メタル然としたトレモロ・リフをバックに、デフヘヴンの”ジョージ・クラークの妹分”がRolo Tomassiのエバちゃんだとするなら、このMØLのフロントマンキムは”ジョージ・クラークの弟分”と言わんばかりの激情的な金切り声を「イ゛ヤ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア!!」と吐き散らす、その名のとおり”嵐”のような冒頭の展開からして、なんかもう「ウェーイ!!僕たちデフヘヴンのサンベイザーとアルセストのコダマに感動してポストブラックはじめました!!」みたいな微笑ましさすらあって、端的に言ってしまうと「Alcestとdeafheavenがエクストリーム合体した場合」、そのif=もしもの世界(タブー)を現実に再現してしまった禁断のバンドがMØLだ。
確かに、10年代以降Alcestやdeafheavenのフォロワーはポッと現れては2秒で消え、あるいは2秒で伝説と化していったけど、正直ここまでポストブラック界の二大レジェンドの影響やエレメンツを咀嚼し、それを完全に自分たちのモノ(音)にしてるブラゲって実はこのMØLが初めてなんじゃねえか?ってくらい、既に姉貴分のRolo Tomassiやana_thema、そしてAlcestや同郷のMyrkurもラインナップされているUK最大のPost-系フェス『ArcTanGent 2018』に名を連ねている所からも彼らの注目度の高さを物語っているし、だてにHoly Roarの秘蔵っ子やってないってのが、この『JORD』を再生して数分もしないうちに理解できる。実際、レーベルメイトでもあるRolo TomassiのメンバーはライブでMØLのTシャツ着ちゃうほどの大フアンだ。
アルバム冒頭から自らの存在がAlcestとdeafheavenの間の子であると現代メタルシーンに堂々宣言してから、初期デフヘヴンをハイグレードにブラッシュアップしたブラゲナンバーの#2”Penumbra”、今度はAlcestの2ndアルバム『Écailles de lune』直系の童話を元にしたフレンチアニメの幻夢世界の入り口へと誘うアルペジオをフィーチャーした#3”Bruma”、中でも今作のハイライトを飾る#6”Ligament”は、極悪ブラゲ~Alcestリスペクト~ポストメタルを大陸横断のごとく流動的に行き来する、まさに「MØLとはナニか?」を一つに集約したような曲で、ここまで来るともう「ポストブラック全部のせ」みたいな贅沢感がとにかく半端ない。
確かに、この手の『サンベイザー』の表題曲みたいな天国から地獄みたいな急転直下型の緩急を織り交ぜた標準的なギャップ萌えのブラゲスタイルを特徴とした、いわゆる”フォロワー”タイプのブラゲってワンパターンな曲調/アレンジに陥りがちだけど、#4”Vakuum”のようなOpethをはじめとしたエクストリーム系のメタリックでヘヴィな曲もイケるのは北欧ならではだし、一方で#5”Lambda”のようなD F H V Nもビックリの西海岸系のインストもイケちゃうし、表題曲の#8”Jord”に至ってはAlcestもドン引きするレベルの80sポスト・パンク/ニューウェーブ的な「意外性」のある側面を垣間見せたりと、決してフォロワーの枠に留まらないそのメロディやフレーズには光るものがあるし、想像以上に幅広いアレンジやリフの引き出しもあって、この手の”フォロワー止まり”のブラゲ勢とは一線を画した非凡なセンスと確かなオリジナリティがある。
楽曲もAlcestやdeafheavenみたいな10分超えの長尺はないし、曲構成も比較的シンプルなブラゲで(と言いながらわりと展開する)、いわゆる激情ハードコアとも呼べるスタイルなのだけど、そんなMØLの中で最も魅力的に映るのはやっぱり”メロディ”の良さだろう。まず、その郷愁に溢れたメロディやリバーブの扱い方とか完全にAlcestをはじめ90sシューゲイザーの影響下にあるし、#2や#4や#7みたいなドチャクソエピックなテンションをドーピングかまして常に絶頂期を維持し続け、未曾有のアドレナリンを垂れ流しながら目の前に広がるお花畑をルンルン気分で走り回る恍惚感と高揚感に塗れたメロディの洪水は、初期のLiturgyに匹敵する「最高にハイ!」ってやつだ。
まさに欧州であったりUKであったりUSであったり北欧の”いいとこ取り”みたいな、お前は一体どこの国のバンドやねん!とツッコミたくなるくらいインターナショナルなハイブリット型サウンドで、1stアルバムでこれだけやれるのは素直に半端ないし、普通に完成度が高いです。そらブラゲ界に衝撃走るわ。この手の激情ハードコア案件としては、日本支部のenvyやHeaven In Her Arms、アイドル支部ではネクロ魔、そして最近では凛として時雨が『#5』とかいうAlcestとdeafheavenの正統後継者、そのハイブリットとして名乗りを上げるような傑作を発表してPost-界隈のド肝を抜いた。その凛として時雨の襲名式に「待った!」をかける新世代のバンドが、それもまさか北欧デンマークから誕生したのは本当に面白くて、この機運は間違いなく同郷のMyrkurが作り出した流れがあることも色々な意味で確かな事で、恐らく今年のPost-界隈では1番のマスト案件です。これは余計なお世話だけど、今年のArcTanGentに凛として時雨が出ない意味がわからない。





