Artist Sadistik
Sadistik

Album 『Ultraviolet』
Ultraviolet

Tracklist
01. Cult Leader
02. 1984
03. Chemical Burns
04. Into the Night
05. Cubic Zirconia
06. Orange
07. Nowhere
08. Witching Hour
09. Still Awake
10. Blue Sunshine
11. Death Warrant
12. Gummo
13. The Rabbithole

【ヒップ・ホップ化したCBL】・・・最近ではCunninLynguists『Strange Journey Volume Three 』に参加した事で知られ、昨年のFlowers for My Father2014年度BESTの実質的な一位を飾った、いわゆる”俺の界隈”のヒップ・ホップ枠を担当するラッパーコディ・フォスターが指揮するSadistikの新作『Ultraviolet』が早くもリリースされた。コディの亡き父に捧げる作品であり、同郷であるシアトルの重鎮Blue Sky Black Deathをプロデューサーに迎えて制作された昨年の『Flowers for My Father』といえば→Trespassers WilliamのボーカリストAnna-Lynne Williamsのソロ・プロジェクトLotte KestnerYes Alexanderらの癒し系女性ボーカルをフューチャーした、ヒップ・ホップ界隈にもこんな音楽があるのか!と衝撃を受けるくらい、まさしく”キング・オブ・アトモスフェリック”なATMS系アブストラクト・ヒップ・ホップで、ダディを失ったコディの深い悲しみがリリックに込められた、深い慈悲に満ち溢れたエモーショナルな音世界(レクイエム)を奏でていた。その神秘的かつ耽美な世界観は、さながら”ヒップ・ホップ化したCarbon Based Lifeforms”の如しフェミニンな香りを漂わせていた。

【シューゲイザー×ヒップ・ホップ】・・・その大成功を収めた傑作『Flowers for My Father』は、”Petrichor””Seven Devils”などのギターをフューチャーしたオルタナティブな側面を垣間みせると同時に、実にロックなヒップ・ホップでもあったが、今作の『Ultraviolet』は前作とは打って変わって過剰な味付けはなく、余計な音が一切ない非常にナチュラルな本格派ヒップ・ホップ作品となっている。それはオープニングを飾る#1Cult Leaderやリードトラックの#21984の至ってシンプルな音使いを聴けば顕著で、シリアスで陰鬱なムードを形成する持ち前のミニマルな音使いをバックに、コディのヤンデレ系ラップが妖しく交錯していく。で、前作でもお馴染みのLotte KestnerとミネソタのラッパーEyedeaをフューチャーした#3”Chemical Burns”は、一聴する限りでは前作の”City in Amber”直系のトリップ・ホップだが、容赦なく畳みかけるEyedeaの高速ラップとロッテの聖なる天使の歌声が織りなす、静と動の狭間で揺れ動くギャップレス・サウンドはもはやプログレッシヴ・メタルと表現していいレベルだ。ちなみに、この曲の歌詞には”Nine Inch Nails”というフレーズがある。続く#4”Into the Night”は、Chelsea Wolfeを彷彿とさせるMolly Deanの神の使い感ほとばしる妖艶なボイスとダイナミックなドラムスが、アトモスフェリックな音響空間の中で神々しく荘厳に響き渡るアンビエント系ヒップ・ポップで、それこそ”ヒップ・ホップ化したCBL”と呼ぶに相応しい神秘的な楽曲だ。次の#5”Cubic Zirconia”では、持ち前のミニマリズムをもって#4と同様に神秘的かつオリエンタルなスポークン・ワードを構築していき、終盤ではロッテとコディによるラップのハモリが聴ける非常にレアなトラックとなっている。そして、前半戦のハイライトを飾るのは→レーベルメイトであり、前作でもお馴染みのシューゲイザーバンドChild Actorを迎えたOrangeで、美しい女性ソプラノボーカルと男性ボーカルによるシューゲ然とした儚くも幻想的な浮遊感および今にも消えてしまいそうな透明感をもって、それこそ山吹色の波紋疾走のように温かくラブリィな多幸感と清らかでエピカルな世界観にチルアウトしていく、もはやSadistik屈指の名曲と言っていいだろう。あらためて、ヒップ・ホップの世界でこんなコッテコテなシューゲイザーやってのけるコディってやっぱスゲーわって再確認した。正直この一曲だけで今年の年間BESTに入れる価値あります。この曲はホントにスゲーです。

【ファッキンオバマッ!ファッキンオサマッ!】・・・後半戦からは→Nacho Picassoとフューチャリングした東南アジア風のオリエンタルな雰囲気を持つ#8”Witching Hour”、前作の”Snow White”ばりの黒人ラッパー風高速ラップを披露する#10”Blue Sunshine”Sticky FingazTech N9neとフューチャリングしたファンキーなイントロから始まる#11”Death Warrant”は、まるで「ファッキンニガーくらいわかるよ馬鹿野郎」と言わんばかりの、GTAシリーズに出てきそうな二人の屈強な黒人ギャングによる本場感あふれるラップと「Die...die...die...」と囁く癒し系白人女性ボイスのギャップが織りなす、まるで洋物ハードコアポルノのフィストファックを見ているかのような光景は”壮絶”の一言で、この極悪なブレイクダウンはもはやプログレッシヴ・デス・メタルと言っていいだろう。この曲、歌詞も現代アメリカに対する強烈な風刺が込められているのがまた凄い。その流れで→前作でもお馴染みのYes Alexanderちゃんとフューチャリングしたエキゾチックな#12”Gummo”Terra lopezとフューチャリングしたラストの”The Rabbithole”は、オープニングからJulianna Barwick的な聖なるボイスとATMSフィールド全開で始まって、インダストリアルな電子音やミニマルなギターを織り交ぜながらリリカルに展開していくオルタナチューン。ここまでの後半は前半の曲と比べると小粒な印象は否めないが、Tech N9neなどの著名ラッパーやYes Alexanderちゃんとのフューチャリング曲の完成度は流石で、その中でも#11のヨ~メ~~~ン?ファッキンニガッ!っぷりったらないし、ラストの#13は前作を踏襲したオルタナ全開の曲で最高にCoolだ。

オレンジレンジ・・・あらためて、前作は天国のダディに捧げる、”生死感”をモチーフにしたコンセプトアルバムなだけあって、メンヘラの過呼吸のように刹那的な焦燥感やシリアスな重い緊張感だったり、ダディに対するコディの張り裂けそうな想いが今にも爆発しそうな作品だった。しかし、この『Ultraviolet』は前作のような胃もたれしそうなほどクドい印象は微塵もなくて、とてもシンプルかつスタイリッシュな作風だ。持ち前のチルいインストゥルメンタルというよりコディのオーガニックなラップを中心に、と同時にミニマル・アンビエント感を押し出した作風となっている。名曲オレンジをはじめとした、前作にはないポジティヴな雰囲気を持った楽曲もあったりするんで、作品としての取っ付き易さは前作より上か。確かに前作ほどの衝撃というのはないが、少なくとも楽曲の質は同等、いや、6曲目のオレンジだけで言えば前作よりも優っていると言っていいかもしれない。音的にもしっかりと差別化されているので、前作にハマった人なら間違いなく楽しめる名作だと。
 
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