キャヴァナー三兄弟を擁するイギリスはリヴァプール出身のオルタナティブ/アトモスフェリック・ロックバンド ANATHEMA の約7年振り、通算8作目となる待望のスタジオ・アルバム「We're Here Because We're Here」を紹介。
01. Thin Air ★★★★★
02. Summernight Horizon ★★★★★
03. Dreaming Light ★★★★★
04. Everything ★★★★★
05. Angels Walk Among Us [feat. Ville Valo] ★★★★★
06. Presence ★★★★
07. A Simple Mistake ★★★★★
08. Get Off, Get Out ★★★★☆
09. Universal ★★★★☆
10. Hindsight ★★★★☆
かつてはデス色の強いドゥーム・メタルバンドとしてデビューし、90年代初頭の頃にはMy Dying Bride やParadise Lost と並び「UKゴシック御三家」などと呼ばれる一時代を築き、「90年代のメタル・バンド」としてその名を残したANATHEMA ですが、その後2000年以降になるとまたもや音楽性の変化が現れはじめ、2001年にリリースされた6th「A Fine Day To Exit」と2003年にリリースされた7th「A Natural Disaster」では、同郷のRADIOHEAD やColdplay などの「UKオルタナ」寄りの作風に変化を遂げ、2007年にはフィメール・ボーカリストのLee Douglasを正式メンバーに迎え入れ、翌年の2008年には過去の名曲にアコースティック・アレンジを施した「Hindsight」をリリースし、そのアコースティック作から約2年振りで、オリジナル・アルバムとしては2003年の7th以来となる待望のニュー・アルバム、その名も「We're Here Because We're Here」は、Anathema によるセルフプロデュース作品で、ミックスにはPorcupine Tree のスティーヴン・ウィルソン、ジャケにはPTのビジュアル面を担当しているLasse Hoile、マスタリングにはLED ZEPPELINなどを手掛けたJon Astleyを迎え、これ以上ない理想的な体制で作られたアルバムです。
全体的な印象としては、やはり、今まではゲストVo的な扱いだったLee Douglasさんの正式加入がバンドや本作品に大きな影響を与えていて、今回、ほぼ全ての曲にボーカルとして参加しているのは勿論の事、作品の雰囲気的には、そのLeeさんが加入して初めての作品となる「Hindsight」が持つポジティブな明るさと柔らかなウェットな空気感、そして神々しくエピックな高揚感を正確に踏襲しつつも、「オルタナティブ」 「90sメタル」 「ゴシック」 「ポスト・ロック」 「アトモスフェリック」 「スペーシー」 「メランコリック」 「プログレッシブ」 「ピンク・フロイド」etc...などの、本来のAnathema が持ち合わせる様々な音楽的要素の全てを曝け出し、2000年以降から続く「オルタナ/ポスト・ロック的なAnathema」を明確にするかのような、「今のAnathema」のセンスがギュゥっと凝縮された、まさに集大成と呼べる内容となっており、当ブログのバナーでわざわざ宣伝するほどの大きな期待に応える「傑作」を作ってくれました!!
かのスティーヴン・ウィルソンを今作のミックスに迎えた事により、予想どおり「音質」が若干モダンに変わっているが、90年代後半以降のAnathemaが一貫して筋を通してきた「90sのギター・サウンド」は相も変わらず健在で、「90sバンドらしいAnathema」の姿が変わりなくココにあるので、「音」の面での違和感は特にないです。もちろん、曲の中で「Porcupine Treeっぽいなぁ」と思う所が存在するのは「言わずもがな」な話で、音質から楽曲に関する所まで「スティーヴン効果」があり、それにより、これまで以上にサウンドの「洗練化」が進み、Anathemaのディスコグラフィーの中では一番「大衆向け」又は「大衆受け」が良さそうなアルバムだと感じる事ができます。つまりは、結果として「スティーヴン × Anathema 」が望んだ通りの相乗効果が得られたと言っていいでしょう。・・・ふと思ったんだけど、Porcupine Treeがいわゆる「ヘヴィ路線」に移行せずにいたら、今頃こんな感じになってたんじゃないかなーって。そう、PT&スティーヴンが本来理想としていたサウンドの形がこの「We're Here Because We're Here」にあるような気がしてならないんだ。本作から伝わってくる「PT色」はそれだけでなく、PTのビジュアル担当で有名なLasse Hoile氏が手掛けたジャケも、今作の神々しいほどにエピックな世界観を的確に表現してくれています。つまり、黄金に光り輝く中央の海岸に位置する人間=聴き手であるリスナーという事なんだよ・・・!!てか、今回の「We're Here Because We're Here」っつータイトルってさ、フロイドの「あの名盤」のタイトルを若干意識してたりするのかな??
2007年に「バンドのメンバー」として正式に加わった、繊細で美しい歌声を持つLee Douglasさんが与える影響も大きく、今作には「王道的バラード」などと呼べる曲が多く収録されていたり、楽曲が「良い意味でポップ」そして「聴き易さ」が大幅に増し、「良い意味で歌モノ」という感覚を強め、結果的に先ほどにも書いた「大衆受け」が狙える一つの要素となっている。が、ここまで「ポップ(良い意味で)」で「聴きやすい」曲が多く存在する一方で、本来のAnathemaらしいアトモスフィアー&スペーシーな空気感や独自のオリジナリティが少なからず減退しているのも事実で、この辺の比重の変化はコアなAnathemaファンからはブーイングが出そうな予感はする。要するに、フロイド的な浮遊感を全面に押し出したスペーシーな世界観を築いていた「アトモスフェリックなロック」は前作の7th「A Natural Disaster」でやり終えたという事らしく、今作は完全にメジャーを意識した「大衆向けオルタナティブ・ロック」という風に理解したほうが無難か。よって、フィメールVoが好きかそうでないかで、このアルバムに対する評価というのがまた変わってきそう。思うに、ニューシンガーを迎え新体制となったThe Gathering の昨年リリースされた新作「The West Pole」が好きな人ならドストライクだと思う。
Anathema の中心人物であり頭脳である ヴィンセント・キャヴァナー(Vo,G)の音楽的指向は更に「UKオルタナ」へ触覚を伸ばし、本作のボーカル・パートに関しては、完全にRadioheadっつーかトム・ヨークからの多大な影響を受けているのが分かります。その辺からも自然と「大衆向け」な感覚を強めますね。兎に角、これまで以上にメランコリックな、かつ透明感のあるウェットな歌声に男ながらに惚れてまうやろ~~。って思う事ウケアイ。
Anathemaの独創的かつアトモスフェリックな世界観を構築するメロトロンやシンセ等の「環境音」的な音は控えめで、今作では明るいピアノからシリアスなピアノなどの比較的シンプルな分かりやすい音をメインに使っており、これも「Hindsight」の流れを確実に踏襲しているポイントで、つまりはキーボードプレイヤー Les Smithさんの一歩前に出た存在感にも注目度が高い作品だなぁ、と。後はやはり、今回積極的に取り入れられたストリングスの巧みな使い方にも要注目すべきポイントです。
まぁ、彼らの初期の音源を聴いた事がなくて、4th「Alternative 4」以降から聴き始めたノンポリ・リスナーな僕としては、Anathemaがこのようなバンドにチェンジ!!する事はなんとなーく想像できる範囲だったので、特別な驚きはないし、むしろAnathemaが歩むべき正しい方向性だと、今作を聴いて確信した。ちゅーか、前作の「Hindsight」からその兆候は既にあったしね。そりゃ初期のデス/ドゥームの頃から聴いているコアな人には、まさかAnathemaがこんな風になるなんて全く想像できないでしょ(笑)かつて、初期と後期の音楽性を比べてこれほどにも違いがあるバンドが存在しただろうか、ってくらいにね。もちろん、「初期のAnathema」がなければ「今のAnathema」は存在し得ないわけだけども。・・・兎に角、2000年以降のAnathemaが追い求めていた一つ到達点=答えに辿り着いた、ある意味「ゴール」でもある作品、と同時に新しいAnathemaの「スタート」という門出を祝う名作がここに誕生しました!!
その「新しいAnathema」を感じさせ、エピックかつドラマティックに展開するプログレ・ナンバーの1曲目”Thin Air”は、どことなしかエンヤっぽい雰囲気があるポスト・ロック的な序盤から始まり、同郷のPure Reason Revolution の1stアルバムを想起させる神聖なコーラスを聴かせる場面は、この手の音楽を取り込むのが巧みなスティーブンからの意見か、それとも前作から7年振りという年月の中で、UKの若手=PRRからの影響をアナシマ自身しっかりと受けているという事、なのか。兎に角、エピックなトリップ感に心奪われる事ウケアイな素晴らしいオープニング・ナンバーです。オイラ的には盛り上げ方が上手いドラムがめっちゃ好き。
シリアスかつスリリングなピアノの音色と曲が持つスピード感に引き寄せられる2曲目の”Summernight Horizon”は、ファスト~スローに展開する場面の切り替えに「幸せ」という名のキモチの高揚感を覚えるし、爽快感のあるエピックかつクールなギターソロにも要注目!!
今までのAnathemaがプレイしてきたバラードとは一味違い、洗練されたメジャー感にバンドの成長が伺える王道的バラードな3曲目”Dreaming Light”は、Voヴィンセントの柔らかくて優しいメランコリックな歌声が心に染み渡り、ピアノの綺麗で安らかな音色とスケールを広げるストリングスを使い感動的に盛り上げます。中盤からの神々し過ぎるパートもエピックかつドラマティックで、キモチの高揚感がヤバイ。これを初めて聴いた時、「あっ、Anathema君メジャーな路線へまた一歩進んだな」って思ったほど「大衆受け」が良さそうなキラートラック。オイラ的に今作の中で1番フェイバリットな曲。
新加入したLeeさんのビューティフルな歌声とデュエットする、これまた「大衆向け」王道バラードな4曲目”Everything”は、ピアノの華麗で軽快な音色をメインに美しく神々しくジックリと聴かせ、微妙にPTっぽい雰囲気とポスト・ロック的な要素アリ。兎にも角にも「癒される」曲であります。
HIM のヴィレ・ヴァロがバッキングVoとして参加している5曲目”Angels Walk Among Us”は、実に「Anathemaらしい」としか言いようのないアトモスフェリックな耽美性を全面に押し出したキラーバラード。初めて聴いた時はガチで天に召されるかと思いましたwマジで神=ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムが宿ってますよこの曲はよォ・・・。マジでオンリーユーだよOnly You、ホントに。・・・どうやらこの曲は本来「Hindsight」に収録される予定の曲だったとか?なのでアレンジ面も微妙な変更があるっぽいです。聴けば確かに、「Hindsight」に収録されている”Angelica”に近い雰囲気を持ってるね。
6曲目の”Presence”は、5曲目と繋がってる曲で、5のエンディング的な扱いをなされています。
約8分を越える7曲目”A Simple Mistake”は、Porcupine Treeの影響が確実に出ているプログレッシブなナンバーで、幻想的かつ若干サイケな雰囲気とヴィンセントの優しく包み込むような美声で序盤を進み、ヘヴィに刻む「プログレ・メタル」的な中盤過ぎの展開はモロにPTっぽく、この流れを継いでの終盤の雰囲気は魂が解放されそうなほどの高揚感があり、とにかく感動的過ぎてもうどうしようもない・・・。というかもう泣くしかない。。。この曲は「ヤバイ」の一言。
8曲目の”Get Off, Get Out”は、中期のPT的なポップネスとアップテンポなノリが軽快で、ヘヴィネスの効いたハードなパートとの対比がカッコイイ、疾走感溢れるクールなロックナンバー。
荘厳なオーケストラとヴィンセントの物哀しい歌声がKATATONIAを想起させる9曲目の”Universal”は、ジャジーでアダルティーな雰囲気というかレトロ映画的な雰囲気が漂ってる曲で、終盤のストリングスとピアノの絡みが目まぐるしい部分も優雅な感情が爆発するかの如くドラマティックに盛り上げる。
前作の「Hidsight」がタイトルの10曲目”Hindsight”は、「Anathema風ポスト・ロック」とでも呼んじゃいたいインスト。ゆったりした曲調で、ジャケの海岸にワープしたような錯覚を覚えるほど、神々しい優しさに癒される曲。USのポスト・メタル勢にも通じるメロディが印象的。
序盤はゆったりした曲調で、中盤から終盤にかけてドラマティックかつエピックに盛り上がる曲が多く、全曲名曲って言いたくなるほど、洗練されたハイクオリティな曲ばかりで、特に1から5までの流れが凄すぎて言葉にならない。3~5のバラード3連発の流れには昇天する事ウケアイです。ホント、聴いてるだけで幸せになれます。汚れた心がクリーン=「無」に洗浄されるほどに、、、例えるならば「心の開放」・・・そう!!これはもはや「人類補完計画」ですよ・・・!!ミサトさーんっ!!「人類補完計画」の「答え」をこの中に見つけましたよっ!!えっ、逃げてないっす、えっ、逃げてないっす・・・・・っと、そんな冗談は置いといて、、、兎も角、今作めっちゃエピック過ぎんだろォ、こりゃあ最早「エピック・ロック」とでも呼びたいくらいにね。
本作を安易に「最高傑作」とは呼びたくないし、実際、オリジナリティ等の面で完全に過去作に劣る・・・・・というのは今更どーでもいいッ!!、オイラ的にアナシマの最高傑作だと思ってる4thの「Alternative 4」、5thの「Judgement」、7th「A Natural Disaster」の3作と同列に並ぶ「最高傑作!!」と声高らかに叫ぶ事を許された確かなクオリティがココにあります・・・!!いやはや、去年のKATATONIA といいこのANATHEMAといい、「ゴシック」的な音楽性から「オルタナ」に歩み寄って、ベテランの域に入ってから「大化け」するバンドのカッコ良さっつーのはハンパないモノがあるね。いわゆる「ゴシック御三家」=Anathema,My Dying Bride,Paradise Lost、何故ここまで差が付いたか・・・慢心、環境の違い・・・!?
という事で、あっという間に上半期が過ぎ去った所で、少々気が早いかもしれませんが、本作「We're Here Because We're Here」は2010年度のNo1に確定しました!!・・・・・俺にここまで書き殴らせたANATHEMAェよぉ・・・あぁ・・・貴様が真の「黄金長方形」だッ!!!!(ババ~ン!!)
9.0 / 10 点
We're Here Because We're Here
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神盤誕生です^^<br />思いっきりストレスを抜きたい時聴くとヤバイですね。<br /><br />聴くと完全にアルバムに入りこんでしまうので抜け出すのに大変なんですけど(笑)<br /><br />でも最高のANATHEMAの世界があるとおもいます!<br /></p>