Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

2022年08月

dynastic - Rare Haunts, Pt. I

Artist dynastic
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Album 『Rare Haunts, Pt. I』
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Tracklist
01. the actor
02. 54320 (feat. DJ Re:Code)
03. lovely aka fire away (feat. Jedwill)
04. 8 months in my head (feat. goji!)
05. brand new rainbow
06. still watching? (feat. PSX)
07. bela fujoshi's dead
08. karma! (feat. mothgirl)
09. mary kate & executioner (feat. Eichlers, oldphone)
10. pining, revisited
11. dattebayo

さしずめ“ハイパーポップ化したマイケミ”とでも称すべき、記念すべき1stアルバムI Know There's Something Left for Youを今年の2月に発表したサンフランシスコ出身のdynasticといえば、それこそ「あの頃の洋楽」を象徴するマイケミさながらのエモ/ポップパンクとZ世代を象徴する音楽ジャンルであるハイパーポップ、そして昨今のBandcamp界隈のトレンドが混沌とした現代社会の闇渦の中で邂逅した、日本の(sic)boyとともに「第5世代のエモ」を司る次世代アーティストの一人だ。

そんなdynasticの約半年ぶりとなる2ndアルバム『Rare Haunts, Pt. I』は、それこそ幕開けを飾る#1“the actor”からして、「古き良き俺たちの洋楽」を司るコテコテのポップパンクにイマドキのトラッピーなビートを打ち込んだハイパーロック!を繰り広げると、互いの作品でフィーチャリングし合う仲の盟友DJ Re:Codeを迎えた#2“54320”、ハイパーポップならではのカオスを内包したグリッチーなアレンジとエモパンクが交錯する#3“lovely aka fire away”、いわゆるバンキャン・ミュージックとしての側面を垣間見せるローファイ志向の強い#4“8 months in my head”、ハードロックさながらのエッジを効かせたギターを打ち出したドライヴ感あふれるポスト・ハードコアの#5“brand new rainbow”や同曲よりも俄然ソリッドでヘヴィな#6“still watching?”、その全てを飲み込まんとする激情的なシャウトとポスト・メタリックな轟音ギターがブルータルなデカダンスを奏でる曲で、日本のサブカルを司る“腐女子”を冠する#7“bela fujoshi's dead”、米南部のカントリー/ブルース風の冒頭から一転してテキサスのGonemageMachine Girlさながらのカオティックなニンテンドーコアを展開する#8“karma!”を筆頭に、ローファイやノイズ/グリッチ、バキバキのオートチューンや“emo(イーモゥ)”特有の内省的なメロディ、そしてケロケロボニト的なバブルガム/サブカル要素の巧みなクロスオーバーを実現させた、ハイパーポップならではのバラエティに富んだ1stアルバムに対して、この2ndアルバムはあくまでフィーチャリングの楽曲を中心としながらも、ポップパンク・リバイバルの視点はもとより、俄然ポストハードコアに肉薄するエッジを効かせたギター・サウンドに著しく傾倒している印象。もはやハイパーポップ云々は抜きにしてメロコア好きなら絶対に聴いてほしいレベル。


そしてdynasticのサブカルヲタクっぷりを確信付ける#10“pining, revisited”では、冒頭から見栄なり流行なり妄想なり阿呆なり、あらゆるものを呑み込んで、たとえ行く手に待つのが失恋という奈落であっても、暗闇に跳躍すべき瞬間があるのではないか(それができりゃ苦労しないよ)。今ここで跳ばなければ、未来永劫、薄暗い青春の片隅をくるくる回り続けるだけではないのか。このまま彼女に想いを打ち明けることなく、ひとりぼっちで明日死んでも悔いはないと言える者がいるか。いるならば前へ!とかいう、湯浅政明監督のアニメ映画『夜は短し歩けよ乙女』の先輩役CVの星野源のセリフのサンプリングが飛び込んできたと思ったら、最後は同作に“黒髪の乙女”のCVとして出演している花澤香菜さんの大切にしますのサンプリングで締めくくる神オチ。なんだろう、今回のサンプリングはParannoulがアニメ『NHKにようこそ!』からサンプリングした某曲を彷彿とさせる激情ハードコア味を感じた(サンボマスターじゃないけど)。


まさかの星野源、まさかの花澤香菜さんのサンプリングは流石に笑ったけど、その謎めいたJapanese fujoshi要素は、実はdynasticが2021年に発表した“火事! 金玉で!!”とかいうタイトルのコラボ曲(謎すぎるタイトルや下ネタ全開の歌詞に反してめっちゃいい曲)において、日本語の歌詞を交えてフィーチャリングしたのが今回の伏線として存在しているのも事実。中でも、地元がサンフランシスコの“外人”が英語の歌詞が思いつかなかったから日本語でてめぇの爆乳さわってもいい?とか言っちゃうスクールカースト最底辺の非モテを極めたリリックは、もはやEワードを超えたDT(童貞)ワード過ぎて笑う(この曲がたった500再生程度とか...もう人類は音楽を聴く資格ないです)。

The Halo Effect - Days Of The Lost

Artist The Halo Effect
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Album 『Days Of The Lost』
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Tracklist
01. Shadowminds
03. The Needless End
04. Conditional
05. In Broken Trust
06. Gateways
07. A Truth Worth Lying For
09. Last Of Our Kind
10. The Most Alone

先日のダウンロードフェスジャパンで初来日を果たした、ex-IN FLAMESのメンバーが同窓会とばかりに集結した“シン・フレイムス”ことThe Halo Effectの全世界のメロデサーが待ち望んだ1stアルバム『Days Of The Lost』は、当時のIN FLAMESの黄金時代を築き上げたギタリストのイェスパーを擁しているだけあって、イェスパー在籍時...つまりメロデスメロデスしてた頃...要するにイェーテボリ・スタイルを踏襲した単音リフをはじめ、昨年にIN FLAMESを脱退したニクラス・エンゲリンとの新旧インフレエンサーによるツインリードが全盛期並みに炸裂しまくっているかと言われたら実はそうでもなくて、あくまで「北欧の吉井和哉」ことボーカルのミカエル・スタンネが在籍するDARK TRANQUILLITYの近作、その延長線上にある印象を受けた。

イェスパーはもとより、ベースのピーターとドラムのダニエルという、それこそ黄金期IN FLAMESを縁の下で支えたリズム隊を従えている時点で、どちらかと言えば背乗りした側のアンダースとビョーンが仕切ってる現IN FLAMESよりも全IN FLAMESなんじゃねぇかって、もはやどっちがシンのSIN FLAMESなのか疑問を呈したくなる状況はさて置き、いわゆる北欧メロデスと一蓮托生的な存在であるイェンス・ボグレンをエンジニアとして迎えた、本作の幕開けを飾る1stシングルの#1“Shadowminds”からして、「最近のdtにこんな曲なかったっけ?」ってなるくらいモダンな曲で拍子抜けしかけるも、しかし初期IN FLAMESさながらのイェスパー節全開の慟哭のツインリードが炸裂する次の#2“Days Of The Lost”で「これこれぇ!」みたいにガッツポーズさせると、イェーテボリ・スタイル以前に広義の意味で北欧メタルとしての真価を発揮する#3“The Needless End”、北欧メロデスらしい殺傷力高めの単音リフで血飛沫を撒き散らす#4“Conditional”、そして「北欧の吉井和哉」ことミカエルがdtで培ったイケおじならではの色気を醸し出すクリーンボイス主体の#5“In Broken Trust”や#7“A Truth Worth Lying For”、この辺りで「イェスパー節消えたな...そういえば先日のダウンロードフェスからもイェスパー消えてたな...」とか思った瞬間、再び初期IN FLAMESさながらの叙情的なツインリードが慟哭のハーモニーを奏でる#8“Feel What I Believe”は本作のハイライトで、アルバム後半はチクビームのキイチきゅんが登場して例のトラウマをフラッシュバックさせる#9“Last Of Our Kind”など、少なくとも「あり得たかもしれないif世界線のインフレ」あるいは【イェンス・ボグレン×イン・フレイムス】として、往年のメロデスフリークなら必聴である事だけは確かです。

しかし、そのキイチ参加の楽曲からも察しがつくように、言い方は悪いけどどうしても「商業的」な酒代もといゼニの匂いというか俗っぽい思惑が透けて見えるのも事実で(そもそもケツモチがニュークリア・ブラストの時点で)、一作目でこの感じなら二作目は「もういいかな」みたいな変な満腹感があるのも事実。確かに、母国スウェーデンでチャート1位を獲得するのも納得の内容だけれど、「おもてたんと違う」ほどではないが、「ほぼdtじゃねこれ?」と感じる人も少なくないと思う。

World of Pleasure - World of Pleasure & Friends

Artist World of Pleasure
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EP 『World of Pleasure & Friends』
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Tracklist
01. Domination 2 (feat. Dominic Vargaz)
02. Carbon Copy (feat. Shaun Alexander)
03. Everybody Finds Love (feat. Jaxon Craig)
04. Penitence (feat. Chad Pingree)

カナダはカルガリー出身のWorld of Pleasureが文字通りフレンズ達と制作した1st EP『World of Pleasure & Friends』の何が凄いって、それこそ現代ボストン・ハードコアのVeinさながらのマシズモみなぎるカオティックなハードコアをベースに、いわゆるドラムンベースや昨今のParannoulに代表されるBandcampミュージックのトレンドである90年代サブカルを象徴するジャパニーズアニメのサンプリングを邂逅させた、それこそヴェイパーウェイヴ然としたアートワークが示唆するように、頭のネジがぶっ飛んだパーリーピーポーな音楽性を特徴としており、それこそヴェイパーウェイヴならではのゲーム音楽的なキラキラシンセのイントロから幕を開ける#1“Domination 2”からして、初期のVeinに肉薄するゴリゴリのメタルコアをブチかました後のブレイクに、ローファイ・ヒップホップmeet日本アニメのサンプリングを導入する大胆不敵な曲展開を垣間見せると、同様にVein顔負けのブルータルなメタルコアを展開する#2“Carbon Copy”、そして#3“Everybody Finds Love”ではグルーヴィなハードコアmeetドラムンベース=ハイパーメタルコアを聴かせたりと、この先どうメガ進化していくのか、俄然フルアルバムに期待がかかる要注目のバンドです。

Crestfallen Dusk - Crestfallen Dusk

Artist Crestfallen Dusk
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Album 『Crestfallen Dusk』
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Tracklist
01. Beneath The Cool, Calm Soil
02. The Blackness Come Creepin' In
03. Burn In Hell
04. Our Old, Rotting Cabin
05. On The Outside Of Town
06. My Clouds Have Not A Silver Lining

1900年代前半に米国南部でアフリカ系アメリカ人の間から生まれたブルースを著しく発展させた60年代のブルース・ロックと現代のブラックメタルをエクストリーム合体させたのが、スイス出身ニューヨーク在住のマニュエル・ギャノーによる音楽プロジェクトことZeal & Ardorだとするなら、この米国南部はテネシー州出身のライアンとショーンによる2人ブラックメタルプロジェクトのCrestfallen Duskは、ブルースはブルースでも特に呪術的とされる“ミシシッピ・ヒル・カントリー・ブルース”を代表するR.L. バーンサイドやジュニア・キンブロウの影響下にあるブルース・ロックをはじめ、先日伝記映画となり話題を呼んだエルヴィス・プレスリーばりにファンキーなカントリー/アメリカーナと、ミネソタの独りブラックメタルことPanopticonさながらの「ただ独り」の小屋アートワークが示唆するプリミティヴかつローファイなブラックメタルが、物理的にローファイな音の悪さと音楽ジャンルを意図するローファイな音の悪さが次元を超えて邂逅したような、それこそ真の意味で田舎同士を結ぶ“ブラック・カントリー・ニュー・ロード”と称すべきアヴァンギャルドな音楽性を繰り広げている。

セルフタイトルのデビュー作となる本作は、冒頭の#1“Beneath The Cool, Calm Soil”からして、グルーヴ感溢れる古き良きブルース・ロックならではの呪詛的なリフメイクとブラックメタルならではのプリミティヴなプロダクションが違和感なく絡み合いながら、シンセを駆使したアトモスフェリック・ブラックらしいトレモロ・リフや金切り声、そして粗暴なブラストビートがDissonantな不協和音を端的に表現するや否や、続く#2“The Blackness Come Creepin' In”の古き良きブルース・ロック然としたファンキーな歌声を披露する60年代パートと荒涼感溢れるブラストビート&トレモロを駆使した2000年代のブラックメタルパートが時を超えてスムースに切り替わる楽曲構成は、まさにCrestfallen Duskの特異的な音楽性を裏付けている。

南部のいい意味で汚らしいブルースならではのイカしたカッティングギターやソロワークに対する、もはや激流葬ばりに雪崩込んでくるトレモリーなブラックメタルの切り返しが斬新すぎる約10分に及ぶ#3“Burn In Hell”、南部は南部でも南部ゴシックさながらのポスト・パンクな魅惑のリフレーンをフィーチャーした#4“Our Old, Rotting Cabin”、「ただ独り」の孤独を極めた人間の背後に流れる崇高なシンセをバックに、本作において最も南部っぽいというか汚くてダイナミックなギター・サウンドを響かせる、それこそ90年代のグランジとシンクロするさしずめブルース・メタルとでも呼ぶべきミドルテンポの#5“On The Outside Of Town”、そして本作で最もブラックメタルの濃度が高い約10分を超える大作の#6“My Clouds Have Not A Silver Lining”まで、既存のブラックメタルとカントリー/フォークを調和させたメタルバンドとは一線を画す、全く新しいブラックメタルのあり方を提示している。それこそ、Zeal & Ardorよりも南部特有のダーティさとブラックメタルならではの呪詛的な側面を深く理解した一枚かもしれない。

Ashenspire - Hostile Architecture

Artist Ashenspire
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Album 『Hostile Architecture』
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Tracklist
01. The Law Of Asbestos
02. Béton Brut
03. Plattenbau Persephone Praxis
04. How The Mighty Have Vision
06. Apathy As Arsenic Lethargy As Lead
07. Palimpsest
08. Cable Street Again

ニューヨークのImperial Triumphantが生み出した、かのケニー・Gを客演に迎えたアヴァンギャルド・メタルの傑作に対抗するかのように、スコットランドを代表するポスト・ブラックことFallochのメンバー擁するグラスゴー出身のAshenspireによる2ndアルバム『Hostile Architecture』は、壮麗優美なヴァイオリンやケニー・Gさながらのサックス、そして中東の民族楽器であるダルシマーが織りなすジャジーなアヴァン・プログmeetブラックメタルをベースに、CynicVoivod...ひいてはTOOLの近作を連想させる現代ポストメタル風の無機的なポスト・キザミ成分、資本主義を確立した産業革命が後の社会に及ぼした影響、そのUKという名の階級社会において抑圧された労働者階級の視点で描かれるアナーキズムに溢れたパンキッシュなリリック、および権力への抵抗を示す喜劇的なボーカルワークが(血税が投入された)バロック的な建築様式に則って、さしずめシニカルなスコティッシュ・ブルータル・デカダンスを繰り広げている。


幕開けを飾る#1“The Law Of Asbestos”からして、過去に同レーベルのCode666に在籍していたOGのネ・バブリシャスさながらの超絶epicッ!!なヴァイオリン擁するdissonantなアヴァン・ブラックと、近年のCynicを彷彿とさせるインテリジェンスなポスト・キザミが交錯するプログレッシブかつカオティックな楽曲構築力を垣間見せたかと思えば、継続してネ・バブリシャス的な粗暴なブラストビートを効かせたブラックメタルらしい#2“Béton Brut”、ローズ・ピアノとヴァイオリンが奏でる内省的なアプローチを内包した悲壮感溢れるデプレッシブ・ブラックメタルの#3“Plattenbau Persephone Praxis”、それこそImperial Triumphantさながらのコンテンポラリーな喜劇を演じるかの如しオペラティックなボーカルとクワイアが織りなす#4“How The Mighty Have Vision”、冒頭からMastodonを想起させるスラッシュメタルmeetテック/ポストメタル然としたモダンなリフ回しを叩き込むパンク/ハードコア精神に溢れた#5“Tragic Heroin”、継続してタイトなポスト・キザミを中心にプログレ・メタル然とした転調を繰り返す#6“Apathy As Arsenic Lethargy As Lead”、在りし日のKATATONIAを彷彿とさせるイントロのリフレインを皮切りに、シタールが奏でる民謡的なフレーズとジャジーなサックスが織りなすミニマルなインストの#7“Palimpsest”、冒頭からネ・バブリシャスやICDDさながらのエクストリームメタル然としたブルータリティを粗暴に吐き散らしながら、一方で悪夢の如し生々しいトラウマをフラッシュバックさせるKATATONIAのBサイドさながらの陰鬱で内省的なブレイクパートを織り込んだ、それこそ“スコティッシュ・ブルータル・デカダンス”と呼ぶに相応しい大作の#8“Cable Street Again”まで、Imperial Triumphantや初期のネ・バブリシャスなどのエクストリーム/ブラックメタル勢のみならず、最近のVoivodCynicに肉薄するポスト・スラッシュおよびポスト・メタルを経由したポスト・キザミの使い手として、今年のメタルアルバムの中ではマストの傑作と断言できる(Fallochフアンはもとより)。
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