Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

2022年06月

代代代 - 威威威

Artist 代代代
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EP 『威威威』
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Tracklist
01. 4ME
02. ブラクラサバス(ターボ)
03. 8 BEAT GANG
04. LASE (REMIX)

今年の2月23日にリリースされたフルアルバムのMAYBE PERFECTは、先日お色気ゲー『ラストオリジン』の新シナリオを手がける事を発表したシナリオライター虚淵玄が創造するポスト・アポカリプス的なSF世界観の中で、『最終兵器彼女』として魔改造された四人の代代代メンバーが第三次世界大戦を阻止するため悲劇的な運命に翻弄される物語を紡ぎ出す、それこそアイドルの概念を超越(transcendental)させるようなグリッチ/ノイズが奇々怪々に入り乱れた、この日本のアイドル史におけるエポックメイキングと呼ぶべき大大大傑作だった。

そのMAYBE PERFECTを象徴する、もはや今年のベストアイドルソングと言っても過言ではないシングルの“LASE”は、2021年に一足先に発表された「シングル版」と「アルバム版」それぞれ別のアレンジ(魔改造)を施すことで、いわゆる多次元理論的な解釈をもって「甲盤」と「乙盤」に世界線を分岐させた、その焦燥と刹那がバグやウイルスのように駆け巡るSF然としたギミック、および様々な考察を促すような緻密なストーリーテリングに唸ったのは、今でも昨日の事のように思い出す。

4と書いてA(ア)と読ませる#1“4ME”は、アルバムMAYBE PERFECTおよびシングルの“LASE”の延長線上にあるビートとグリッチーなトラックメイクに始まるやいなや、突如として(およそ)2秒で暗転直下するとTOOLCult of Lunaを連想させる、それこそディストピア映画を代表するSFの名作『メトロポリス』然としたモノクロームの暗黒世界の奈落に突き落とされたかと思えば、一転して今度はワリオないしはワルイージのサンプリングみたいな辛気臭い雰囲気を醸し出しながら、最終兵器彼女である代代代メンバーの儚くも刹那い歌声と80年代のAOR風のシンセが織りなすレトロフューチャーリズム、および昨今の電子音楽シーンのトレンドであるヴェイパーウェイヴに肉薄する近未来都市(トロピカルワールド)を描き出す。

そのヴェイパーウェイヴなマリオワールドから飛び出してきたワルイージの召喚に引き続き、テキサスのGonemageNeupinkを彷彿とさせるサイバーグラインド/デジタルハードコアを披露する(ブラック・サバスがバグった)#2“ブラクラサバス(ターボ)”、そして在りし日のBiSの正統後継者として“オルタナアイドル”を20年代仕様のハイパーポップにアップデイトさせた#3“8 BEAT GANG”など、(これは自意識過剰かもしれないが)今作の歌詞は自分が書いたMAYBE PERFECTの考察レビューに対するアンサーとして機能している気しかしなくて、つまり終末戦争を阻止するため最終兵器彼女としてDNA操作された彼女たちの哀しい想いを反映した歌詞みたいな。

そして、アルバムMAYBE PERFECTの物語を補完するEP『威威威』にかけての「始まりの曲」でもある“LASE”のリミックス版は、それこそヴェイパーウェイヴやローファイヒップホップ的なチルなリラクゼーション効果のあるジャズ風のアレンジが施され、フルアルバムの考察レビューにも書いた多次元理論および世界線の交わりを司るような「もう一つの物語」として新たなストーリーを紡ぎ出している。とにかく、近年稀に見る大大大傑作のMAYBE PERFECTにおける最終兵器彼女たちの刹那的かつ激情的な想いを補完し、さらなる考察を促すとともに奥深い世界設定の解像度を著しく高めるような一枚。

Kreator - Hate über alles

Artist Kreator
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Album 『Hate über alles』
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Tracklist
01. Sergio Corbucci Is Dead
02. Hate Über Alles
03. Killer Of Jesus
04. Crush The Tyrants
05. Strongest Of The Strong [feat. Patrik Baboumian]
06. Become Immortal
07. Conquer And Destroy
08. Midnight Sun [feat. Sofia Portanet]
09. Demonic Future
10. Pride Comes Before The Fall
11. Dying Planet

デイヴ・ムステイン率いるスラッシュ四天王の一角であるメガデスも、今やギタリストがex-Angraのキコ・ルーレイロ、ドラムにはex-Soilworkのダークらを中堅バンドから引き抜いて寿命を延命させているバンドだが、同じくジャーマンスラッシュを代表するKreatorもその「若返り」の潮流を汲むようにして、2019年にベーシストのクリスティアンが脱退した代わりに、ex-DragonForceのフレデリクを迎えてからは初となる本作の『Hate über alles』は、前作の『Gods of Violence』から約5年ぶり通算15作目のフルアルバム。

近作のKreatorといえば、10年代のメタルシーンを裏方の立場から支えたエンジニア/プロデューサーのイェンス・ボグレンを迎え、バンドの「若作り」もとい「若返り」を模索するかのように、積極的な新陳代謝を促していた。そんな彼らは、本作の『Hate über alles』においてイェンス・ボグレンとの決別を果たし、新たなプロデューサーとして現行メタルシーンを裏から支配する“ポスト・イェンス”の最有力候補と名高いUSのアーサー・リザークを迎えるという、それこそ未だ衰えを知らない攻撃的な音楽性とシンクロするかの如く、シーンにおけるトレンドその審美眼をピンズドに捉えた用意周到っぷりは、改めてUKのパラダイス・ロストと双璧をなす“メタル界のイケおじ”と呼ぶに相応しい存在であると。

幕開けを飾るイントロの#1に次ぐ#2“Hate Über Alles”の冒頭のリフからして、2009年作の『Hordes of Chaos』への回帰を予感させるが、ひとえに回帰と言ってみても、サウンド・プロダクション的には『Hordes of Chaos』以前の寒色系ではなく、近作すなわちイェンス以降の暖色系を素直に踏襲した比較的フラットなスラッシュメタルの印象で、しかし一方でイェンス時代の音とも明確な違いがあるのも事実。とにかく、“イェンス”に「近づくタイミング」と“イェンス”から「離れるタイミング」を熟知しているKreatorほど信頼できるメタラーは他にいないかもしれない。事実、イェンス・ボグレンという名の『未知との遭遇』を図った2012年作の『Phantom Antichrist』に対して、継続してイェンスを起用した2017年作の『Gods of Violence』は、その内容に「ん?」と懐疑的な気持ちが微塵も浮かばなかったと言ったら嘘になる。

その「脱イェンス」を印象付ける、アーサー・リザークが手駒にしていた今はなきPowe Tripの新世代スラッシュメタルの意志を受け継ぐ男臭いコールを交えた#5“Strongest Of The Strong”や、在りし日のMACHINE HEADを彷彿とさせる#7“Conquer And Destroy”に象徴されるように、本作は様々な面においてアメリカナイズされた作風と言えなくもないが、そんな雑念すらも芸歴ウン十年のバンドとは思えない柔軟性に溢れたイケおじムーブを前にすれば無価値だ。事実、メタル文脈とは無関係のドイツの女性ボーカルSofia Portanetをフィーチャーした8曲目の“Midnight Sun”では、今なお現役バリバリのモテモテなイケおじっぷりを見せつけている。

総評すると、ヘヴィメタル全盛の時代に第一線でシノギを削ったバンドだからこそ成せるオールドスクールのヘビメタイズムと、トレンディなプロデューサーならではのモダンなUSスラッシュ勢からの影響、そしてイケメン要素などの若くてフレッシュなエネルギーがシナジーを引き起こすエクストリーム・ミュージックの良作です。

Artificial Brain - Artificial Brain

Artist Artificial Brain
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Album 『Artificial Brain』
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Tracklist
01. Artificial Brain
02. Glitch Cannon
03. Celestial Cyst
04. A Lofty Grave
05. Tome Of The Exiled Engineer
06. Embalmed With Magma
07. Parasite Signal
08. Cryogenic Dreamworld
09. Insects And Android Eyes
10. Last Words Of The Wobbling Sun

昨年、デスメタルシーンの話題を掻っ攫ったイタリアのデスメタルバンド、Ad Nauseamが2ndアルバム『Imperative Imperceptible Impulse』が昨今のデスメタル界のトレンドとして注目されているDissonant Death Metalを体現するような傑作だったのに対して、このNYはバレー・ストリーム出身のArtificial Brainが約5年ぶりに放つセルフタイトル作品は、今年のデスメタルはもとより、まさしく今年のDissonant Death Metalを象徴する一枚と言っても過言ではない傑作となっている。

というのも、本作はいわゆるDissonant Death Metalならではの不協和音が乱雑に入り乱れるリフメイクを軸としたテクデス的な楽曲構成と、Deathspell OmegaKralliceなどのブラックメタルにも精通する高涼感溢れる粗暴なブラストビートや不気味なトレモロリフが織りなす病的なケイオスと邪悪ネス、そして絶望の淵でゾゾゾと寄り添うメランコリックなギターのリフレインやアトモスフェリックなシンセ、そしてアヴァンギャルドなサックスフォンが非常に高い水準でエクストリーミーに交錯する、その類まれなるソングライティング能力の高さに唸ること必須。

それこそアルバムの幕開けを飾る一曲目からして、「セルフタイトル作品の表題曲」というパワーワードを掲げた、もはやバンドのアイデンティティそのものを打ち出す姿勢からも本作に懸ける意気込みは過去イチで、なお且つ「Dissonant Death Metalとはナンゾや?」という疑問に百点満点の答えとして示すような、その“不協和音”を司るトレモロ・リフが重戦車並のヘヴィネスと共に濁流の如く押し寄せる#1“Artificial Brain”を皮切りに、元祖テクデスで知られるNocturnus ADのマイク・ブラウニングをフィーチャーした#3“Celestial Cyst”、SF系デスメタルならではの不気味なシンセがたゆたう#4“A Lofty Grave”、そしてDissonant Death Metalを体現したブルータリティ溢れる#5“Tome Of The Exiled Engineer”や#7“Cryogenic Dreamworld”、そしてGorgutsのリュック・ラメイをフィーチャーした#9“Insects And Android Eyes”における魅惑のメランコリックなアプローチは、コロラドのBlood IncantationがDissonant化したような感覚すら憶える。

何を隠そう、彼らはかのProfound Lore Records所属のコリン・マーストン案件という折り紙付きっちゃ折り紙付きのエリートデスメタル集団だ。しかし、本作のレコーディングを最後にオリジナル・ボーカリストのウィル・スミスがバンドを脱退したのは、気がかりな点というか唯一の遺恨を残したのも事実。とは言え、2014年作の1stアルバムから続く三部作の最終章を締めくくる本作において、このポスト・アポカリプス的な世界観および物語を預言者として後世に伝承するかの如し、この上なく個性的なグロウル/ボイスパフォーマンスを披露してくれたウィル・スミスにはビンタ、もとい心から盛大な拍手を送りたい。

Soreption - Jord

Artist Soreption
Soreption-2022

Album 『Jord』
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Tracklist
01. The Artificial North
02. The Forever Born
03. Prophet
04. Each Death More Hollow
05. A Story Never Told
06. The Chasm
07. The Nether Realm's Machinery
08. Död Jord

いわゆるテクデスと聞いて一般的?にイメージするものといえば、直訳的に言ってしまえば楽器隊のバカテクなスキルを惜しげも無く発揮したデスメタルだと思われるが、2005年にスウェーデンはスンズヴァルで結成されたSoreptionは、それこそ一般的にイメージされるようなテクデスとは一線を画す、誤解を恐れずに言うと「ポップなテクデス」、あるいは「楽しいテクデス」という新ジャンルを開拓している気鋭のデスメタルバンドだ。

確かに、「ポップ」という表現は語弊を生むかもしれない。しかし、「ポップ」という言葉を用いたくなるほどに彼らのスタイルは、複雑な変拍子や緩急を効かせた転調で構築されたテクデスらしい楽曲を基調としながらも、一方でバチクソにタイトでリズミックかつトリッキーに刻むリフ回しをはじめ、コンセプトを司るSFライクなミステリアスなカーニバリズムを内包したアレンジに関しても、カナダを代表する「ポップ」なテクニカルメタルバンドことProtest The Heroの初期を彷彿とさせる。それもそのはず、本作は2021年に脱退したギタリストの代わりに、カナダのテクデスコアバンドArchspireのギタリストをはじめ、多数のゲストギタリストやキーボーディストの協力のもと完成にこぎ着けた作品であり、あらゆる面で過去作とは一線を画す一枚となっている。

その「(さしずめ)テクデス化したPTH」とでも称すべき、Soreptionならではのモダンなテクデスは本作の4thアルバム『Jord』でも不変で、前作の3rdアルバム『Monument Of The End』を若手のモダンなメタルバンドを数多く有するSumerian Recordsからリリースしたその意外性に裏打ちされたモダンさと、界隈のレジェンドであるカニコーやクリプトプシーに認知されているOSDMならではの暴虐性が調和したエクストリーミーなサウンドは一聴の価値あり。

Imperial Circus Dead Decadence - 殯――死へ耽る想いは戮辱すら喰らい、彼方の生を愛する為に命を讃える――。

Artist Imperial Circus Dead Decadence
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Album 『殯――死へ耽る想いは戮辱すら喰らい、彼方の生を愛する為に命を讃える――。』
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Tracklist
01. 禊祓の神産は宣い、禍祓の贖罪は誓う。
02. 夜葉:罪と罰の螺旋――。
03. 腐蝕ルサンチマン、不死欲の猿楽座。
04.
05. 百鬼夜行-Pandemonic Night Parade-
06. 嚮導 BRING+ 瞳 EYES= 死 DEATH+ 齎 INVITE
07. 神罰を辿り狂骨に至る
08. 黒キ桜ハ愛∴其ノ死ヲ乞ウ
09. 分裂した道化と≒発狂の修道女
10. 黄泉より聴こゆ、皇国の燈と焔の少女。-殯-
11. 悲痛なる跫音は哀しき邂逅 (mode:α)
12. 悲痛なる跫音は哀しき邂逅 (mode:Ω)
13. 天聲

ブルータル・デカダンスを信条として掲げる、2007年に結成されたICDDことImperial Circus Dead Decadenceのフルアルバムとしては約11年ぶりとなる3rdアルバム『殯――死へ耽る想いは戮辱すら喰らい、彼方の生を愛する為に命を讃える――。』は、自身で「制作に6年以上もの歳月を費やしたキャリアの総括」と語るように、フィンランドのStratovariusやドイツのBlind Guardianに代表されるハイトーン系ネオクラ/メロパワ、スウェーデンのIN FLAMESSoilworkに代表される北欧メロデス、イギリスのCradle Of Filthに代表されるシンフォニック・ブラックメタル、DIR EN GREYLynch.に代表されるヴィジュアル系、そしてアニソン界を代表するSound HorizonJAM Projectの厨二精神を継承した、彼らにしかなし得ないエクストリーム同人メタルは不変、かつ本作において過去最大級のスケールでカムバックしている。そのブルータル・デカダンスという誇大広告に嘘はないとばかり、リードボーカルのリブユウキを案内役(預言者)として、否応にもリアル世界と共鳴するこの素っ頓狂を装ったシニカルでアヴァンギャルドな退廃したディストピアへと誘い、そして荒廃した劇場の舞台の上で業火に焼かれながら狂言/演舞する激情のからくりサーカスを目の当たりにしたルサンチマンの僕たちは、「スッ...」と高らかにメロイックサインを掲げながら天へと召される・・・

十贖罪十

それこそエヴァに代表される90年代サブカルチャーのセカイ系、あるいは同人界隈とも親和性の高いシナリオライターの虚淵玄が創り出すポスト・アポカリプスの世界観とシンクロする、ex-Sound Horizonあらまりをフィーチャーした冒頭の#“禊祓の神産は宣い、禍祓の贖罪は誓う。”からして、この壮絶的かつ悲劇的な退廃藝術を未来へと語り継ぐ「此れは永劫の果に紡がれた宣いと贖罪の結実」というナレーションを合図に、初っ端から90年代の北欧メロデスシーンを象徴する殺傷力高めのイエテボリスタイルを継承した単音リフをはじめ、あらまりとリブユウキが織りなすJAM Project顔負けの90年代アニソン風のクサビメロやギタリストのKIMが奏でる慟哭のメロディ、そして壮大さを司るシンフォニックな編曲やブラストビートを交えて複雑に入り乱れる、超弩級のスケールで描かれる贖罪の狂想曲をエクストリーム同人メタルとして昇華した十神曲十となっている。


ICDDのカオティックでエクストリーミーな同人メタルを司どる楽器隊のテクデス然とした暴虐性とリブユウキのスクリームを中心に美しくも儚く、そして残酷に展開するクラシカルな#2“夜葉:罪と罰の螺旋――。”、再びシンフォニック・ブラック然とした楽器隊をバックにリブユウキと紅一点サポートメンバーの奈槻晃が贖罪のハーモニーを奏でる#3“腐蝕ルサンチマン、不死欲の猿楽座。”は、中盤以降のDIR EN GREYリスペクトな道化師が暗黒舞踏を演舞するアヴァンギャルドな場面を垣間見せたかと思えば、続くリード曲となる#4“獄”では、DIR EN GREY史上最高のメロデスチューンで知られる“激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇”のパクリ、もとい「同人メタルらしさ」を存分に発揮するヴィジュアル系オマージュ曲で、更にはDIR EN GREYの名曲“VINUSHKA”における京リスペクトな「アッチョンブリケ」ボイスまで完コピしている。とにかく、アルバム冒頭の流れからしてメタルの醍醐味が凝縮されたような、溢れんばかりのメタル愛に満ちた激アツ展開を畳みかけてくる。

モダンなエクストリームメタル・リフを奏でる#5“百鬼夜行-Pandemonic Night Parade-”、今度はLynch.の葉月顔負けのナルシシズムに溢れたリブユウキを誇示する#6“嚮導 BRING+ 瞳 EYES= 死 DEATH+ 齎 INVITE”、ブラガmeetディルみたいな#7“神罰を辿り狂骨に至る”、VTuberのトラックメイカーとしても知られるThe Herb Shopをフィーチャーした曲で、ネオクラ界の貴族であるインギー顔負けのソロワークを聴かせる#8“黒キ桜ハ愛∴其ノ死ヲ乞ウ”、再び中期DIR EN GREYリスペクトなパンク~アヴァンギャルドを経由した素っ頓狂なリズムを刻む#9“分裂した道化と≒発狂の修道女”、例えるならアニメ『シドニアの騎士』シリーズの主題歌を担当する音楽ユニット=angelaがエクストリーム/ブラックメタル化したような#10“黄泉より聴こゆ、皇国の燈と焔の少女。-殯-”、本作唯一のバラード志向の強いmode:αとDIR EN GREYの“激闇”はもとより迷曲の“The inferno”的なエクストリーム志向の強いmode:Ωの組曲となる“悲痛なる跫音は哀しき邂逅”を挟んで、この贖罪の物語のクライマックスを飾る#13“天聲”では、ジャーマンメタル界のレジェンドHalloweenの名曲“Eagle Fly Free”リスペクトなクサメタル然としたサウンドをバックに、初代ボーカルのカイケル・キスク顔負けの超絶ハイトーンボイスを披露するリブユウキと対をなす、「このフィーチャリングしてる女性ボーカル誰かな?」と思ったら、イヤホン界隈の重鎮である声優の小岩井ことりだと知った瞬間は、リアルに「feat.小岩井ことりィ?!」ってなって大団円を迎える。

パッと見、偏見を抱きがちな“同人メタル”と決して侮ることなかれ、ブラストビートを乱発する急転直下型のエクストリームメタルを奏でる技巧派集団の楽器隊によるスキル/パフォーマンスのハイポテンシャルのみならず、一段と凄みを増したクラシック/オペラ級のより(演)劇的でドラマティックなアレンジ力の向上、そして狂言師としての語り役はもとより、Lynch.の葉月ばりのナルシシズムを内包したV系ボイスやDIR EN GREYの京に肉薄するホイッスルボイスや金切り声、デスボイスやアッチョンブリケボイス、そしてヘヴィメタルを司るハイトーンボイスを変幻自在に操るリブユウキの狂言ならぬ狂声は、このICDDを同人メタルから本格的なガチメタルへとアップデイトたらしめる唯一無二の煉獄さん的な存在、すなわち十神十としてここに君臨している。

これまでのキャリアの総括と語るに違わず、過去最大のスケール感とボリュームに富んだ傑作なので全世界のメタラー必聴盤だし、少なくとも本家DIR EN GREYの新譜よりも優先して聴くべき「今年の一枚」なのは確かです。
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