Artist 代代代

EP 『威威威』

Tracklist
01. 4ME
02. ブラクラサバス(ターボ)
03. 8 BEAT GANG
04. LASE (REMIX)

EP 『威威威』

Tracklist
01. 4ME
02. ブラクラサバス(ターボ)
03. 8 BEAT GANG
04. LASE (REMIX)
今年の2月23日にリリースされたフルアルバムの『MAYBE PERFECT』は、先日お色気ゲー『ラストオリジン』の新シナリオを手がける事を発表したシナリオライター虚淵玄が創造するポスト・アポカリプス的なSF世界観の中で、『最終兵器彼女』として魔改造された四人の代代代メンバーが第三次世界大戦を阻止するため悲劇的な運命に翻弄される物語を紡ぎ出す、それこそアイドルの概念を超越(transcendental)させるようなグリッチ/ノイズが奇々怪々に入り乱れた、この日本のアイドル史におけるエポックメイキングと呼ぶべき大大大傑作だった。
その『MAYBE PERFECT』を象徴する、もはや今年のベストアイドルソングと言っても過言ではないシングルの“LASE”は、2021年に一足先に発表された「シングル版」と「アルバム版」それぞれ別のアレンジ(魔改造)を施すことで、いわゆる多次元理論的な解釈をもって「甲盤」と「乙盤」に世界線を分岐させた、その焦燥と刹那がバグやウイルスのように駆け巡るSF然としたギミック、および様々な考察を促すような緻密なストーリーテリングに唸ったのは、今でも昨日の事のように思い出す。
4と書いてA(ア)と読ませる#1“4ME”は、アルバム『MAYBE PERFECT』およびシングルの“LASE”の延長線上にあるビートとグリッチーなトラックメイクに始まるやいなや、突如として(およそ)2秒で暗転直下するとTOOLやCult of Lunaを連想させる、それこそディストピア映画を代表するSFの名作『メトロポリス』然としたモノクロームの暗黒世界の奈落に突き落とされたかと思えば、一転して今度はワリオないしはワルイージのサンプリングみたいな辛気臭い雰囲気を醸し出しながら、最終兵器彼女である代代代メンバーの儚くも刹那い歌声と80年代のAOR風のシンセが織りなすレトロフューチャーリズム、および昨今の電子音楽シーンのトレンドであるヴェイパーウェイヴに肉薄する近未来都市(トロピカルワールド)を描き出す。
そのヴェイパーウェイヴなマリオワールドから飛び出してきたワルイージの召喚に引き続き、テキサスのGonemageやNeupinkを彷彿とさせるサイバーグラインド/デジタルハードコアを披露する(ブラック・サバスがバグった)#2“ブラクラサバス(ターボ)”、そして在りし日のBiSの正統後継者として“オルタナアイドル”を20年代仕様のハイパーポップにアップデイトさせた#3“8 BEAT GANG”など、(これは自意識過剰かもしれないが)今作の歌詞は自分が書いた『MAYBE PERFECT』の考察レビューに対するアンサーとして機能している気しかしなくて、つまり終末戦争を阻止するため最終兵器彼女としてDNA操作された彼女たちの哀しい想いを反映した歌詞みたいな。
そして、アルバム『MAYBE PERFECT』の物語を補完するEP『威威威』にかけての「始まりの曲」でもある“LASE”のリミックス版は、それこそヴェイパーウェイヴやローファイヒップホップ的なチルなリラクゼーション効果のあるジャズ風のアレンジが施され、フルアルバムの考察レビューにも書いた多次元理論および世界線の交わりを司るような「もう一つの物語」として新たなストーリーを紡ぎ出している。とにかく、近年稀に見る大大大傑作の『MAYBE PERFECT』における最終兵器彼女たちの刹那的かつ激情的な想いを補完し、さらなる考察を促すとともに奥深い世界設定の解像度を著しく高めるような一枚。