Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

2022年04月

Undeath - It's Time​.​.​.​To Rise From the Grave

Artist Undeath
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Album 『It's Time​.​.​.​To Rise From the Grave』
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Tracklist
01. Fiend For Corpses
02. Defiled Again
03. Rise From The Grave
04. Necrobionics
05. Enhancing The Dead
06. The Funeral Within
07. Head Splattered In Seven Ways
08. Human Chandelier
09. Bone Wrought
10. Trampled Headstones

コロラドのBlood IncantationやカナダのTomb Moldと並び三大モダン・デスメタルの一角を担う、ニューヨークはロチェスター出身の5人組、Undeathの約二年ぶりとなる2ndアルバム『It's Time​.​.​.​To Rise From the Grave』は、持ち前のインテリヤクザ並にプログレスな不規則性を内包したリズミカル&グルーヴィなリフやGojiraにも精通するソリッドに刻むスラッシーなリフ、そして同ニューヨークの残虐王ことカニコーやスレイヤーに肉薄する殺傷力高めのツインギターを活かした、ブルータルな暴虐性を孕んだタイトなヘヴィネスやソロワークのコンビネーションによる緩急を織り交ぜたダイナミックな展開力を見せつける、今年のデスメタル界を代表するデスメタルらしいデスメタルをやってる件について。

残虐王リスペクトなNYデスメタルを現代的にアップデイトした#1“Fiend For Corpses”を皮切りに、四天王スレイヤーばりに猟奇的なソロワークを披露する#2“Defiled Again”、80年代の伝統的なスラッシュ・メタルにデスメタルならではのアグレッションをブチ込んだ#3“Rise From The Grave”、Tomb Moldばりにタイトなヘヴィネスを刻む#4“Necrobionics”、変則的なインテリズムを孕んだトリッキーな展開力を発揮する#5“Enhancing The Dead”、Gojiraに通じるグルーヴィでエクストリーミーなモダンさを垣間見せる#6“The Funeral Within”、“インテリヤクザと化したカニコー”としか例えようがない#7“Head Splattered In Seven Ways”など、(もはやGojira並のキャッチーをはじめ)昨今のモダンなデスメタル勢のみならず、モビエンに代表される80年代デスメタルを嗜んでいた懐メタラーにもオススメしたい一枚。

moreru - 山田花子

Artist moreru
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Album 『山田花子』
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Tracklist
01. skrr............
02. 知恵
03. kireta otaku
04. 海へ行けてなんという
05. あの夏 (feat. Iida Reo)
06. 季節 (feat. ~離)
07. 呪いのビデオ
08. 主に、傘がないです
09. 花子、主観

昨年の記事の中で東京のアンダーグランドシーンにParannoulのような存在が生まれない時点で今の東京はクソだとかドヤ顔で書いたけど、ありゃ嘘だ。というのも、2021年にBandcamp界隈を震源地としてバズった韓国はソウル出身のParannoulが発表した2ndアルバム『To See the Next Part of the Dream』といえば、それこそ岩井俊二監督の青春映画『リリィ・シュシュのすべて』の市原隼人演じる主人公や庵野秀明監督の『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジをはじめとする、日本の90年代サブカルチャーを代表する映画やアニメの主人公にインスパイアされたぶっ壊れローファイメンタルの負け犬(ケーセッキ)による負け犬(ケーセッキ)のためのサブカル系シューゲイズの歴史的名盤で、また同年には同郷のAsian Glowやブラジルはサンパウロのsonhos tomam contaという(同じくして彼らも日本のオタク文化の影響下にある)二人のZ世代ミュージシャンと“ぶっ壊れローファイメンタル三人衆”を結成し、スプリット作品となる『Downfall of the Neon Youth』を発表している。

何を隠そう、東京のアンダーグランドシーンで活躍するZ世代のバンドであり、ビリー・アイリッシュと同世代のギター/ボーカルの夢咲みちる率いるmoreruは、2019年作の1stアルバム『itsunohinikabokunokotowoomoidasugaii そして……』のアートワークやSpecial Thanksにおいて『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジくんや綾波レイ、そして『ひぐらし』の竜宮レナや『ぼくらの』のチズこと本田千鶴という闇深鬱アニメのキャラクター名を挙げている事からもわかるように、同作品の影響下にある“ぶっ壊れローファイメンタル三人衆”と不安/恐怖や悪夢/トラウマを共有する日本のサブカル代表、要するにエヴァの碇シンジや押見修造の『惡の華』の文学少年・春日高男に代表される心の闇を抱えた10代の心音をダイレクトに反映させた、破滅的な痛みとスーサイドな自傷行為を誘発するハイファイが過ぎるローファイなノイズ・ミュージックを繰り広げている。

例えるなら、東京のアンダーグランド/ノイズシーンを牽引するShapeshifterMerzbowを連想させるエモバイオレンス系のグラインド/ノイズコアをベースに、ブルックリンのLiturgyに肉薄する激情的かつ超越的なトランス性、そして神聖かまってちゃん春ねむりなどのノイズロックの影響下にあるオルタナティブなJ-POP、そして現代日本のオタク文化の権威と化したビレバンに蔓延る限界チー牛オタクを三本の槍でミナゴロシにする勢いのカオティックな殺傷力、これら全てをひっくるめて高密度のノイズで真空圧縮したかのような、とにかく情緒(不)安定な抗鬱性を孕んだ猟奇的かつ狂気的な感情の渦に巻き込んで聴く者のメンタルをゴリゴリに削ってくる。

moreruが2020年に発表したEP『粛 粛』『消えない / 壊れない』の中で垣間見せた、(彼らもフェイバリットバンドに挙げている)初期のDeafheavenと共鳴するエモ/スクリーモやシューゲイザーの影響下にある激情ハードコア、MONO顔負けの抒情的なポストロックや“ぶっ壊れた凛として時雨”みたいなマスロック成分に象徴される、そのオルタナティブかつブラックゲイズ的な側面を兼ね備えた超ハイブリッドなエクストリーム・ミュージックは、今作の2ndアルバム『山田花子』においても不変だ。

それこそShapeshifterさながらのノイズコアの#1“skrr............”を皮切りに、まるでクラシック/オペラのフォーマットにLiturgy譲りのtranscendentalな超越性を孕んだグリッチ/ノイズを射精の如くぶち撒けたようなぶっ壊れ狂想曲の#2“知恵”、台湾の限界オタクが抱えた心の闇を描いた映画『よい子の殺人犯』の主人公をイメージさせる「オタクはキレると怖い」みたいな格言を裏付ける曲で、もはや“ぶっ壊れたConverge”としか他に形容しようがないカオティック/ハードコア・パンクの#3“kireta otaku”、もはや”moreruなりの青春ポップパンク”を代代代『MAYBE PERFECT』と共鳴するバグリッチを応用してハイパーポップに昇華した#4“海へ行けてなんという”、釈迦坊主とのコラボやFor Tracy Hydeと対バン経験を持つさしずめ“八王子のスロウタイ”こと団地出身のラッパーIida Reoをフィーチャリングした曲で、ミレニアル世代にとっての懐メロで知られるホワイトベリーの“夏祭り”を「ぶっ壊れ青春夏祭り」として再解釈したような#5“あの夏”は、ミレニアル世代の記憶にある「あの頃」のノスタルジーを孕んだ淡い黒歴史がフラッシュバックして㍉のATフィールドをバッキバキにブチ破ってくる。

その次の日 私は図鑑に射精した」という『惡の華』の春日高男が好みそうなパワーワードならぬEワードを含む詩を、フィーチャリングした~離春ねむりばりにポエトリー・リーディングする#6“季節”は、まさに“ぶっ壊れローファイメンタル三人衆”と共鳴するmoreruのオルタナティブな資質を裏付けるような曲で、それこそParannoulが映画『リリィ・シュシュのすべて』の劇中会話をサンプリングした名盤『To See the Next Part of the Dream』はもとより、春ねむりの楽曲や押見修造漫画の世界観とリンクする世界線で描かれている。で、現代の邦画界における百発百中でクソなホラー映画よりも全然怖過ぎて漏らしかける#7“呪いのビデオ”から#8“主に、傘がないです”、そしてラストを飾る#9“花子、主観”までの流れは、とにかくヘタなホラー映画なんかよりよっぽどホラーな映画『シン・トイレの花子さん』を鑑賞している錯覚に陥り、夜な夜な山田花子が枕元に現れて「アタシ、キレイ?」と囁き続ける『悪夢』にうなされること必須。

なんだろう、昨年2021年のParannoulを震源として今年2022年のDynastic代代代へと続く一連の流れの伏線回収と言っても過言じゃない『山田花子』の凄みって、過去作と同じようにノイズやハードコアの文脈で全て完結する作風と見せかけて、Z世代ならではのジャンルの垣根を超えた多様性あふれるコラボに象徴されるハイパーポップとしての側面をさらけ出し始めた事で、それぞれの文脈を等しくNEXTステージにアップデイトさせている点←これに尽きる。それこそ“ぶっ壊れローファイメンタル三人衆”に対する日本からの回答とばかり、エゲツないノイズ混じりに「本場のぶっ壊れ限界オタクコアここにあり」と宣言している。

要するに、このmoreruは昨今のBandcampを中心とした(ミッドウェスト・エモをルーツに持つ)限界オタク集落と同じ文脈で語るべき存在であり、もはや彼らこそぶっ壊れサブカルムーブメントの芽を生み出した真の源流なんじゃねぇか説まである。また、マヒトゥ・ザ・ピーポー率いるGEZANの影響を匂わせるリリカルなポエトリー系アーティスト的な意味でも、フジロックの主催者は彼らをブッキングするくらいの気概を見せるべきだと思う。

Messa - Close

Artist Messa
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Album 『Close』
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Tracklist
01. Suspended
02. Dark Horse
03. Orphalese
04. Rubedo
05. Hollow
06. Pilgrim
07. 0=2
08. If You Want Her To Be Taken
09. Leffotrak
10. Serving Him

「Messaめっさ(Messa)いい!」みたいなしょうもないダジャレしか思いつかないくらい、イタリアはヴェネト出身の4人組、Messaの3rdアルバム『Close』がめっさ良い件について。というのも、本作の幕開けを飾る#1“Suspended”からして、古き良きトラディショナルなドゥームメタルを源流としながらも、ネオ・プログレ/サイケやブルース/ストーナー・ロック、そしてダークジャズやフュージョン等の多彩な表情を兼ね備えたヴィンテージなサウンド・スタイルと、いかにもこの手のヘヴィサイケに映える紅一点フィメールボーカルのサラによる呪詛を唱えるかの如し妖艶な歌声が、そのオカルティズムに溢れた(それこそPS版『ワールド・ネバーランド』的な)スピリチュアルでミステリアスな異世界を司(祭)る祈祷師さながらの怪異的な存在感を放っている。なんだろう、例えるならスウェーデンのPaatosCynicの前身バンドのPortalがドゥームメタル化した感じと言ったら変だけど。

追い込み馬並にスロースターターなドゥームメタル然とした冒頭から一転して、逃げ馬のごとしBPMのギアを上げてストーナーロック然とした「動き」のあるムーブで砂を駆ける#2“Dark Horse”、ゲストミュージシャンによるイントロのサックスソロを皮切りに、アラブ諸国の民族楽器であるウードやダルシマー、そしてアルメニアやアゼルバイジャンの民族楽器であるドゥドゥクが織りなす、それこそジャバンノリもといJambinaiを想起させる民族音楽的なトライバリズムを垣間見せる#3“Orphalese”、MastodonBaronessを連想させるプログレッシブな展開力を発揮するストーナーロックの#4“Rubedo”、短尺インストの#5“Hollow”のオリエンタルな流れを引き継いで、そして本作のハイライトを飾る#6“Pilgrim”では、アマゾンの奥地に棲む未接触部族に伝承する密教的なリチュアリズム、伝統的なドゥームメタルというよりはThouやニューロシス的なスラッジ/ポストメタル寄りの重厚なヘヴィネスが織りなす、それこそTOOLや在りし日のOpethに肉薄する一般的なドゥームメタルとは一線を画す緩急を効かせたプログレスな展開やドラマ性を孕んだエクストリーミーな楽曲構成は、ただのトラディショナルなドゥームメタルへの回帰にとどまらない、現代的(モダン)なトレンドを正確に捉えた彼らの審美眼の高さを裏付ける一曲となっている。

MastodonBaronessらのハードコア由来のストーナーロックをはじめ、それこそボストンのConvergeにも精通するハードコア・パンクならではの破天荒なリフメイクはMessaの「めっさいい」ところの一つで、そんなMessaの動的な側面を体現する#8“If You Want Her To Be Taken”のアウトロにおけるブラックメタル然とした悪魔的な黒魔術を唱える勢いに乗って、俄然カオティック/ハードコア・パンク然としたエクストリームーブを1分弱の中に集約した#9“Leffotrak”など、とにかく「めっさイイ」以外の言葉が見つからないくらいの完成度。

Soul Glo - Diaspora Problems

Artist Soul Glo
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Album 『Diaspora Problems』
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Tracklist
01. Gold Chain Punk (whogonbeatmyass?)
02. Coming Correct Is Cheaper
03. Thumbsucker
04. Fucked Up If True
05. Jump!! (Or Get Jumped!!!)((by the future))
06. Driponomics (feat. Mother Maryrose)
07. (Five Years And) My Family
08. The Thangs I Carry (feat. BEARCAT)
09. We Wants Revenge
10. John J (feat. Kathryn Edwards and Zula Wildheart)
11. GODBLESSYALLREALGOOD
12. Spiritual Level Of Gang Shit (feat. McKinley Dixon and Lojii)

フィラデルフィア出身の4人組、Soul Gloの2ndアルバム『Diaspora Problems』の何がヤバスンギるって、カリフォルニアのGulch並に頭のネジが飛んじゃってる系のカオティック/ハードコア・パンクをベースに、RATM直伝のアナーキズムを吐き散らすラップメタルや本作と同じウィル・イップ案件で知られるテキサスのportrayal of guiltに肉薄するスクリーモならではの激情と焦燥、コアさを伴ったバチクソタイトでポストメタリックなヘヴィネスやノイズロックを孕んだ一癖も二癖もあるトリッキーなリフメイクが織りなす目まぐるしい楽曲構成、そしてラテン系らしいサックスやトランペットを擁するスカパンクの要素がエクストリーム合体した、それこそ“エピタフ系の最終兵器”と称すべきオルタナティブな(一種の)トラップメタルを展開している件について。なんだろう、2019年の1stアルバム『The Nigga In Me Is Me』における脳直的なトラップメタルmeetノイズラップを、天才エンジニアことウィル・イップという名の神の手によって著しくブラッシュアップした結果、とんでもない傑作が生まれちゃった感じ。

あくまで1stアルバム由来のアンダーグラウンドなハードコア/パンクを、次世代のエピタフ系を担う存在としてメジャー寄りに正統進化させた#1“Gold Chain Punk (whogonbeatmyass?)”を皮切りに、変則的なリズムとアソビの緩急を効かせた#2“Coming Correct Is Cheaper”、ノイズロックにアプローチしながらグルーヴィかつカオティックに展開していく#4“Fucked Up If True”、本作のリード曲でありコテコテの王道ハードコアパンクながらもデンゼル・カリーの『タブー』ばりの高速ラップを刻む#5“Jump!! (Or Get Jumped!!!)((by the future))”、そしてスカパンクとしての本領を発揮する#3“Thumbsucker”など、アルバム前半は従来のSoul Gloらしいハードコア/パンク路線をウィル・イップ節に裏打ちされたメタリックな質感(プロダクション)の良さをもって現代的にアップデイトさせている。


リード曲における現代ラッパーの面影を匂わせる伏線を回収するかの如し、それこそ本作のヤバさを象徴するフィメールラッパーのMother Maryroseをフィーチャリングした#6“Driponomics”では、いわゆるトラップメタル的なフロウや瞬間的に垣間見せるハイパーポップ的なアレンジまでも日本の4s4kiを想起させると、これまでの混沌とした雰囲気を一旦リセットするオルタナ風のイントロから素っ頓狂なハードコア/パンクに一変する#7“(Five Years And) My Family”、テネシー・ハードコアの有識者とラッパーのZula Wildheartを異種格闘技させた曲で、それこそportrayal of guiltばりの自傷作用をもたらす邪悪スンギる激情ノイズコアの#10“John J”、いわゆる90年代のヌーメタルというかRATM直系のグルーヴィなヘヴィロックを現代的なトラップメタルに昇華させた#11“GODBLESSYALLREALGOOD”、そしてフィラデルフィアのLojiiやリッチモンドのMcKinley Dixonをフィーチャーしたネオソウルなジャズラップと持ち前のスカパンク~ハードコアの全部乗せ、すなわち本作の根幹部にある“ケイオス”を総括するに相応しい#12“Spiritual Level Of Gang Shit”まで、アルバム前半ではハードコア/パンクの要素を強調しているのに対して、アルバム後半では複数のラッパーをフィーチャーしたヒップホップ的な側面を強く打ち出しており、そのSoul Gloを司るアンダーグラウンドなハードコア/パンクと現代的なブラック・ミュージックの二つのアイデンティティがエクストリーミーに交わる瞬間の刹那的なエモさったらない。

ちょっと異質、というか常軌を逸した実験的なハードコアパンクという意味ではThe Armed『ULTRAPOP』を、アングラ系のハードコアな作風からオルタナティブな化けっぷりでは、Turnstile『Glow On』がイメージとしては近いのかもしれない。要するに、ウィル・イップ最強!
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