Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

2022年01月

40 Watt Sun - Perfect Light

Artist 40 Watt Sun
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Album 『Perfect Light』
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Tracklist
01. Reveal
02. Behind My Eyes
03. Until
04. Colours
05. The Spaces In Between
06. Raise Me Up
07. A Thousand Miles
08. Closure

90年代から00年代にかけて活躍したUKトラディショナル/ドゥーム・メタルバンド、Warningの中心人物であるパトリック・ウォーカーのソロプロジェクトとして始動した40 Watt Sun。彼らが2011年に発表した伝説のデビュー作『The Inside Room』といえば、古巣のWarningを基にした古典的なドゥームメタルの系譜にありながらも、USテキサスのTrue Widowを彷彿とさせるスロウコアやシューゲイザー的なノイズ要素、そして90年代に一斉を風靡したUKフューネラル/ドゥームメタル然とした内省的かつ叙情的な泣きのメロディをクロスさせた名盤で、その5年後には2ndアルバム『Wider Than The Sky』を発表すると、そこではドゥームメタルから足を洗い、俄然スロウコアの方向性に舵を切ったサウンドを展開していた。

パトリック以外のバンドメンバーが全員脱退し、名実ともに完全なるシンガーソングライターの立場から放たれる本作の3rdアルバム『Perfect Light』は、愛用のエレキギターを窓からぶん投げて、代わりにアコースティック・ギターを手にしたフォーク・ミュージックmeetスロウコアと称すべき作風となっており、音数を最小限に抑えたミニマルスティックな曲調と90年代にUKドゥーム御三家の一角として活躍した(Kscope時代の)ana_themaの影響下にある耽美的なポストロックが邂逅した、美しくも儚いメランコリックな天上の音楽を繰り広げている。まるで慈悲を乞うかのように、ただ繰り返されるだけの和音のアルペジオと優美なピアノが織りなす、聖水のごとし浄化作用を内包したアトモスフェリックなフォーク・ミュージックと、言わば“宅録系おっさんSSW”として震える声を絞り出すように歌い上げる、その中年くたびれ親父の背中から加齢臭と共に滲み出る情熱的なパッションとあゝ無情なエモーション、そんな中年オヤジの激シブな姿にただただ男泣きすること請け合い。

確かに、本作において鳴らしている音楽性にはドゥームメタルの片鱗も残されていないが、アイデンティティである初期のドゥームメタル時代に培った泣きメロの資質そのものは不変で、むしろ今回アコギを主軸とした事により一層その泣きメロにリソースを全振りしている印象。そもそも、伝説のデビュー作の時点でスロウコアをはじめとするミニマル・ミュージック寄りの気質を持ち合わせていた事を考えれば、今回のアコースティックなスタイルへの変化はごく自然で、あくまで流動的な変化でしかない。それこそ過去二作のアルバムジャケットが示すように、嵐の如く暗雲に覆われた荒涼感と死臭を醸し出すジャケの魑魅魍魎がクリーンに浄化されて徐々に光が差し込んでくる様は、まさに40 Watt Sunがこの10年の間に歩んできた音楽性の変遷を視覚的にメタしている。また、パトリックは今年のRoadburn FestivalにてロサンゼルスのSSWことEmma Ruth Rundleとのコラボを予定しており、メタルシーンのみならずオルタナ界隈からも高い支持を得ているのがわかる。

40 Watt Sunが1stアルバム→2ndアルバム→3rdアルバムで歩んできた音楽的変遷は、それこそドゥームメタル→オルタナ→ポストロックという風な音楽的変遷を辿ったana_themaを彷彿とさせ、中でもana_themaが過去作をアコースティック・アレンジで再構築した『Hindsight』のサウンド・スタイルが最もシックリくる。特にこの『Perfect Light』を象徴するかのような、ポストロック然としたアルペジオ・ギターと後期ana_themaに直結する耽美的なATMSフィールドがリリカルに、しかしドラマティックに広域展開する#2“Behind My Eyes”、ミニマリストを極め過ぎたギタリストが奏でる和音のアルペジオとアンビエント・ポップ的なピアノが至極シンプルに美しい#5“The Spaces In Between”、中期Anathema的なオルタナ味を感じる#7“A Thousand Miles”は本作のハイライトと言える。個人的に、この手の癒やし系アコギ作品と言えば、知る人ぞ知る伝説のフォークバンドことTrespassers Williamを要所々々でフラッシュバックさせる本作の凄みったらない。

宇多田ヒカル - BADモード

Artist 宇多田ヒカル
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Album 『BADモード』
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Tracklist
01. BADモード
05. 
Time
06. 気分じゃないの (Not In The Mood)
07. 誰にも言わない
09. Face My Fears (Japanese Version)
10. Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー

Bonus Track
11. Beautiful World (Da Capo Version)
12. キレイな人 (Find Love)
13. Face My Fears (English Version)
14. Face My Fears (A.G. Cook Remix)

2010年の「人間活動」と称した活動休止、そして2016年に活動再開してからのヒッキーといえば、それこそ2016年作の6thアルバム『Fantôme』は復活を祝すに相応しい個人的にもパンチラインな作品だったけど、一転して2018年作の7thアルバム『初恋』はイメージ通りバラード志向の強い、いわゆる一般的なJ-POPの域を出ない作風で個人的に全くと言っていいほど刺さらなかったというか、単純にディープなヒッキーファンではない自分が聴くような音源ではなかった。

そんな風にノラリクラリしてたら、この度は約4年ぶりとなる待望の8thアルバム『BADモード』がリリースされたとの事で、いざ表題曲の#1“BADモード”を再生してみて(厳密に言えば)2分18秒までは「まぁ、いつもの感じかなぁ」くらいに思った次の瞬間→「な、なんじゃこりゃああああああああああああああ」と椅子から転げ落ちるくらいの、それこそ「いつものポップス(と見せかせて)」から日本のSSWこと岡田拓郎や本家SW、そして雷猫ことサンダーキャットもビックリのアンビエント・ポップ~ニューエイジ~ファンク~ジャズへと緩やかな流動性をもってスムースに展開していく楽曲構成、それはまるで森は生きている『グッド・ナイト』を想起させる場面の転換を伝えるアルペジオ・ギターと幽玄なアトモスフィアを運んでくるプログレ然としたシンセが「宇多田ヒカルなりの美しきポスト・プログレッシブの調べ」を奏で始めたこの瞬間、僕は今回の宇多田ヒカルは「なにか違う、なにか絶対にヤバい」と全てを察する事となった。


そのイギリスに籍を置く音楽レーベル=Kscopeに象徴されるアートポップ/ポスト・プログレッシブを連想させる、それこそ近二作とはかけ離れた本作の『BADモード』における岡田拓郎を凌駕する鬼ヤバいトラックメイク、そのトラックの「ヤバさ」を司る象徴的な楽器が存在する。それこそがドラムを構成するハイハットの「鳴り」に他ならない。

近年、ハイハットをトラックの基とした音楽ジャンルといえば、いわゆる現代ヒップホップにおけるトレンドの一つであるトラップ、そのトラップにおけるハイハットの概念に新たな解釈を加えたハイハットの表現法を、世界中のアーティストが自身の楽曲内で披露する熾烈な争い、それは現代音楽シーンにおける「ハイハット鳴らし大合戦」に宇多田ヒカルが満を持して電撃参戦してきた事を意味しており、本作におけるヒッキーは“日本の歌姫”ではなく“ハイハット使いの女王”の異名を持つ一人のトラッピストとして堂々君臨している。

例として挙げると、『GOODモード』な旋律を奏でるピアノと対をなす『BADモード』な旋律を奏でるシンセが人間の心や感情が持ちうる二面性のメタファーとして繰り返し鳴り響く#2“君に夢中”における独立した強い意思を持ったハイハットの「鳴り」を皮切りに、いわゆるトラップにおけるハイハットの王道的なビートを打ち込む#5“Time”、在りし日のPerfumeみたいな中田ヤスタカサウンド感を醸し出すエレポップな#8“Find Love”のハイハッティな三曲がそれに該当する。

冒頭のシンバルの鳴りからしてムーディなジャズの調べを奏でる前半パートから、シームレスにアンビエント~ニューエイジ化していく美しい流れがポスト・プログレッシブ然とした#6“気分じゃないの (Not In The Mood)”は、ジャズ本来の姿であるインプロヴィゼーションを示唆するような、続きの存在を想像させる曲の終わり方もより生々しいライブ感を印象づける(終盤に入るメルヘンチックな少女の歌声は猛烈なデジャブを感じた)。そのジャジーな雰囲気から、チェンバー・ミュージックとシェイカーやパーカッションによるトライバルなアプローチとエレクトロな打ち込みが交錯する、俄然コンテンポラリーかつアヴァンギャルドな気質を兼ね備えた#7“誰にも言わない”では、完全に岡田拓郎の上位互換とでも呼ぶべき年の功と格の違いを見せつけている。このハイハットの「鳴り」とアンビエント/ニューエイジを経由したアートポップの邂逅といえば、それ即ち日本の岡田拓郎とノルウェーのUlverが現在進行系で探求している現代音楽のソレに他ならなくて、それこそ(2021年のAOTYにも挙げた)Ulver『惡の華』を再構築したライブアルバム『Hexahedron』におけるコンテンポラリーかつインプロ的な生バンドならではのライブ感は、まさに宇多田ヒカル『BADモード』におけるライブ感と波長が同じで、そういった意味でも本作は一種の“ライブ音源”と認識すべき作品と言えるのかもしれない。

その実質ライブ音源である『BADモード』『Hexahedron』の共鳴を著しく裏付ける、現代ポップ・ミュージック界におけるトレンド、その条件の最重要項目である「3分以内の曲」には一切見向きもしない、まるで“宇多田ヒカルなりのポップス”をシーンに再提示するかのような本編ラストを飾る約12分に及ぶ#10“Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー”に象徴される本作の革新性と実験性、その宇多田ヒカルの音楽史を司るオルタナティブな流動性と『Hexahedron』という名の“エヴァ∞インフィニティ”案件、およびUlverの音楽史を司るオルタナティブな流動性が骨の髄まで共振しまくる点からも、この『Hexahedron』は本作の『BADモード』を紐解く上で欠かせない最重要作品なんですね。また、映画『シン・エヴァンゲリオン』の冒頭のシーンに赤く染まったフランスのパリ旧市街とエッフェル塔の描写があって、この“ーマルセイユ辺りー”における岡田拓郎風のパーカションやハイハッティをはじめ、テクノミュージックのビートを刻む打ち込みとシンセ✝ウェイブが織りなすミニマルスティックな曲調が本作の中で最も『Hexahedron』のライブ感に近いのは俄然面白いし、俄然“エヴァ∞インフィニティ”の共∞鳴を感じる。とにかく、そのヒッキー史上最も前衛的でありレフトフィールド内で音を鳴らしている作風といい、普段からJ-POPをナメてる岡田拓郎をワンパンKOするかのようなサウンドメイクに終始『GOODモード』気分。

確かに、活動再開してからのヒッキーは明らかにKscope界隈に通じる気質が芽生え始めていたし、過去作におけるヒップホップ/ラッパーとのフィーチャリングはもとより、クラブミュージックの重鎮であるSkrillexとのコラボに象徴されるような、現代音楽シーンにおけるトレンディな音を自身の楽曲に常識の範囲内で巧みに取り入れてきたアーティストの一人で、本作におけるローファイ・ヒップホップばりに気分はBADモードなリラクゼーション効果のあるアンビエント~ジャズ~ニューエイジを経由した現代ポップスは、彼女にとってあくまで流動的な変化に過ぎないと捉えるべきというか、そう考えれば考えるほどあまりにも流動的で必然的な結果と言える。それこそ、本作の楽曲一つ一つを司る物質や原子の流動性がそのままダイレクトに宇多田ヒカルという存在、また彼女が歩んできた「嫉妬されるべき人生」の流動性へと直結している。要するに、2010年の活動休止を挟んで前作から約8年の『空白』が生んだ復活作『Fantôme』における音の変化と、2018年作の『初恋』から約4年の『空白』が生んだ2022年作の『BADモード』における音の変化、どんぶり勘定で倍の時間差があるにも関わらず、その変化量(前作比)の差は言わずもがな『Fantôme』よりも『BADモード』の方が遥かに大きい。その『空白』部分は、ヒッキーが本作において成し遂げている事の大きさを如実に現している。

結局のところ、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』および『新劇場版:破』の主題歌である“Beautiful World”、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の主題歌であり「宇多田ヒカルなりのポスト・プログレッシブ」の源流である“桜流し”、そしてシリーズ完結編となる『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』の主題歌となる“One Last Kiss”と本作のボートラに収録された“Beautiful World (Da Capo Version)”という、新劇エヴァシリーズの『音楽』を背負っている宇多田ヒカル岡田拓郎Ulverは、現代ポップ・ミュージック界におけるトラッピスト的な意味でも、“エヴァ・インフィニティ”案件的な意味でもニアリーイコールの立ち位置から音楽と向き合っている事を証明してみせたのが本作の『BADモード』なんですね。

また話の文脈的に全く関係なさそうなスクリレックスの存在は、過去のKORNBMTHのコラボ相手あるいはEDM(Trap)もしくはキンハーくらいしか繋がりを見出すこと以外のネタも関心もないし、そして伊集院パワハラ光のお笑い枠も含めて、要するに2021年の俺的年間BESTと地続きで繋がってる案件、それこそ13位のスティーヴン・ウィルソンと1位の東京事変(椎名林檎)が対角線上で守護するAOTYを真の意味で『総合』するかのような完全究極体伏線回収アルバムなんですね。ある意味で、2021年の年間BESTのランキングで『BADモード』の内容を潜在的に未来予知していたと考えたら、やっぱ俺って未来人(ニート)なんかなぁ?w

この『BADモード』は「カラオケで歌われること」を前提としていない音楽、ミックスもプロダクションも根本から一般的なJ-POPとは一線を画した、それこそヒッキーの「声」が「歌」以前に楽器の一つとして機能している作品、みたいなチープな表現でしか言語化できなくて大変恐縮だけども、とにかく近代J-POP最大のクソダサコンテンツこと「THE FIRST TAKE」に出演してマジ顔で歌ってるようなカラオケマイスターとの(比べるまでもない)立場の差というか、長年のヒッキーファンがヒックーもとい戸惑いそうなくらいには『音楽』としての次元がダンチ。今後、J-POPとかいうジャンルはコレを最低基準にしなきゃダメだと思うホントに。あれ?でも本作って「THE FIRST TAKE」のケツモチであるFソニーミュージックからリリースされてね?wっつー話は置いといて、これが年明け早々に登場するのはもはやチートでしかなくて、ともあれ昨年のAOTY(1位)である東京事変からバトンを引き継いだ、今年2022年のAOTY暫定1位の作品です。

Turnstile - Glow On

Artist Turnstile
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Album 『Glow On』
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Tracklist
01. Mystery
03. Don't Play
04. Underwater Boi
05. Holiday
06. Humanoid / Shake It Up
07. Endless
08. Fly Again
09. Alien Love Call
10. Wild Wrld
11. Dance-Off
12. New Heart Design
14. No Surprise
15. Lonely Dezires

ロードランナーの秘蔵っ子ことメリーランドはボルチモア出身の5人組、Turnstileが昨年リリースした3thアルバム『Glow On』がめちゃんこヤバい。ハードコア/パンクを根っこのルーツに持ちながらも、ソリッドでエッジーなリフを中心に、カウベルやクラップ、ハイハットやパーカッションの細部にまで“こだわり”を感じさせるユーモラスなアレンジ、その「ユニークでありながらキャッチーでエッジーなオルタナティブ・ロック」って、それこそ「10年前の自分が好んでよく聴いていた奴じゃん」と少しノスタルジックな気持ちにさせる、爽快感溢れるメロディック・ハード(コア)ロック・サウンドを展開している件について。

まるで相対性理論ばりにメルヘンチックなシンセが鳴り響くイントロから、それこそ『宇宙人ポール』みたいなコメディ&SF映画を彷彿とさせる、例えるなら宇宙人転生系のラノベで可愛い宇宙人が空から舞い降りてくるシーンの効果音みたいな雰囲気で始まる#1“Mystery”からして、ドライブ感溢れるエネルギッシュかつハードロック的なリフや過去作には見受けられなかったギターソロが織りなすオルタナティブなポスト・ハードコア然とした、少なからずオールドスクール寄りだった過去作とは一線を画すような曲となっている。

1stアルバム『Nonstop Feeling』の系譜にあるハードコアならではの強靭なリフとヘヴィなブレイクダウンを交えながらダイナミックに展開する、ハイハットやパーカッションをはじめカウベルみたいなユニークなアレンジが光る#2“Blackout”、クラップやパーカッションを交えたポップなピアノの旋律と身体を突き動かすパンクビートを刻むエッジーで破天荒なリフが織りなすテンションアゲアゲなロックンロールの#3“Don't Play”、メンフィスのSSWジュリアン・ベイカーをコーラスに迎えた、90年代のオルタナを象徴するシューゲイザー/ドリーム・ポップの影響下にあるリヴァーブを効かせた曲で、ほのかにジュンスカ味というかAOR的なノスタルジーを漂わせる#4“Underwater Boi”、冒頭のド直球のパンクスからの転調パートが鬼カッコいい#6“Humanoid / Shake It Up”、UKのSSWブラッド・オレンジがコーラスで参加した#7“Endless”、デンマークのVolbeatばりにダークでメタリックなリフやメタル然としたソロワークまでもメタルメタルしてる#8“Fly Again”、再びブラッド・オレンジをスポークン・ワードとしてフィーチャリングした曲で、そして再び『宇宙人ポール』とのアブダクションを試みるかのような90年代のUKドリーム・ポップ然とした#9“Alien Love Call”、クラップに釣られてついついジャンピングモッシュしたくなる#10“Wild Wrld”、90年代から一転して今度は80年代のニューロマンティック/ポストパンク的なヘアメイクを施した#12“New Heart Design”、出自の根っこにあるハードコア・パンクに直結したサウンドとヒップホップ的なアウトロのギャップがセンスしかない#13“T.L.C.”、三度ブラッド・オレンジをメインボーカルに添えた#15“Lonely Dezires”まで、まるでおとぎ話のようなポップネスとハード(コア)の絶妙なバランス、メタル耳からしても魅力しかないエッジを効かせたリズミカルなリフの数々とエゲツないオルタナティブなアレンジセンス、そして素直に聴いてて楽しい爽快感溢れるロックンロールのキャッチーさを兼ね備えた名盤ここにあり。

それもそのはず、前作の『Time & Space』は界隈の重鎮ウィル・イップがプロデュースを担当、そして今をときめくアーサー・リザークがレコーディングに携わったド直球のハードコア/パンク作品だったのに対し、本作の『Glow On』ではエミネムやアヴリルの作品でもお馴染みのプロデューサーことマイク・エリゾンドを迎えた影響か、コアとなる音のベースはそのままに、オルタナ化およびメタル化が著しく進行した、すなわちオルタナティブ・ヘヴィとしての素質が開花した(ゲストのジュリアン・ベイカーやブラッド・オレンジの存在も含めて)メジャー感マシマシの大衆性に富んだロックンロールとして大化けしている。2021年の鬼マストアイテム。

foxtails - fawn

Artist foxtails
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Album 『fawn』
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Tracklist
01. ego death
02. star-crossed
03. ataque de nervios
04. gazelle
05. bbq
06. gallons of spiders went flying thru the stratosphere
07. so it goes
08. space orphan
09. life is a death scene, princess
10. catalyst
11. la belle indifférence
12. paper tiger

コネチカット出身の4人組、foxtailsの4thアルバム『fawn』が良い。いわゆるミッドウェスト・エモの影響下にある荒涼と寂寥が互いに譲り合うアルペジオを軸としたスクリーモ/ポストハードコアをベースに、彼らのオルタナティブな側面を司る叙情的なチェンバー・ミュージックが織りなす、それはまるで静謐な日常が不協和音を奏でながら崩れ落ちていく様を描き出すかの如く、その痛みと苦しみを叫びながら冷静と激情の狭間で揺れ動く喜劇とも呼べる狂奏の音世界は、時にプログレッシブでマッシーなインテリジェンスを、時にカオティックでブルータルな暴虐性を垣間見せる。

いわゆるロックミュージックにクラシカルなチェンバー・ミュージックを添えたスタイルといえば、最近ではジャンルこそ違えどブラックゲイズのSo Hideousに近いジャジーでアヴァンギャルディな雰囲気がある。また、フロントウーマンでありベースボーカルのメガネ女子ことメーガン・カデナ=フェルナンデスは、有色人種として直面する差別や自身の実体験を元にしたPTSDをテーマに、パンク魂全開のロックアイコンとしてその絶望と苦しみを金切り声に変えて外界へと吐き散らしている。

著しくミッドウェスト・エモに傾倒していた過去作と比較しても本作はバンドを喰らう勢いでクラシカルなチェンバー・ミュージックが全編にわたって広域展開している印象で、この変貌ぶりは「化けた」と表現しても差し支えないほどの強度がバキバキの傑作と言える。中でも積極的な転調や変拍子を駆使したマシズモ全開のプログレッシブな楽曲構成が俄然ハードコアなダイナミズムとスケール感を寄与しており、これはバンドとしてのパフォーマンスがネクストレベルに到達した事の証左でもある。要するに最高傑作なのでオヌヌメ。

Shapeshifter - Dark Ritual

Album 『Dark Ritual』
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Tracklist
01. Dark Ritual
02. Black Liquid
03. Erase
04. Rust
05. Dead Man
06. Mind Twist
07. Hereditary
08. Hollow
09. Abortive Flower
10. Psycho Eyes
11. Toxic

2020年に結成された東京のグラインドコアバンド、Shapeshifterの2ndアルバム『Dark Ritual』の何が凄いって、例えるなら灰野敬二やBoris、そしてENDONに代表されるジャパニーズ・ノイズとカニコーも裸足で逃げ出す殺傷性の高い残虐性を内包したパワー・バイオレンス/グラインドコアを量子レベルの光の速さで衝突させたような作風で、何と言ってもその聴いてるだけで脳ミソが掻き回されそうになるエゲツないサウンド・プロダクション、それはまるで“ノイズキング”ことスティーヴ・アルビニの文脈で語られるべき音作りの尋常じゃないほどの“こだわり”、この「音作り」一つ取ってみても彼らの非凡さが伺える。

再生ボタンを押した途端、言わば実質アルビニ仕様のノイズが約50秒流れるだけの曲と呼べないような曲を表題としている所からして「こいつらただもんじゃない」と約50秒で理解させてから、そのノイジーな波長を維持した状態のままカニコーばりにグロテスクかつブルータルなリフでエゲツない殺戮を繰り広げる#2“Black Liquid”、いわゆるDビートを刻みながらカオティックに展開する#3“Erase”、一転してマスロック的な一般人アピールというかインテリジェンスな側面を垣間見せるユルいイントロから急転直下にノイズ地獄へと突き落とす#4“Rust”、クラブのDJがハイになりながらターンテーブルをキュッキュしてる雰囲気の近未来型ノイズ/ポスト・ハードコアの#7“Hereditary”は本作のハイライトで、そしてBPMを抑えてThouやENDON級のドゥーム/スラッジーな轟音ヘヴィネスを叩き込む#9“Abortive Flower”、グリッチ/ノイズでバグり散らかしている#10“Psycho Eyes”、オルタナティブな側面を垣間見せながら18秒に全てを濃縮した#11“Toxic”まで、そのサウンド・プロダクション並びにソリッドなリフメイク、並びに海外バンドと比べてどうしてもキレ負けする印象の国産バンド特有のモタつきを一切感じさせないキレッキレな演奏力の高さにも驚かされるというか、とにかく今年のInfant Island枠およびportrayal of guilt枠として認知できるバンドが、まさか日本のアンダーグラウンドシーンから出てくるなんて夢にも思わなかった。

シンプルに気になって2021年作の1stアルバム『The Darkest Night』を(8分だし)チョロっと聴いてみたら、わりとありがちなDビート/ブラッケンドコアで少し意外だったというか、それ故に本作のノイズ象印の音作りは一体どこで学び、この一年も満たない短いスパンで一体どんな暗黒儀式(黒魔術)に手を染めたのかと変に邪推せざるを得なかったのも事実。それこそ幽霊や爬虫類人など、さまざまな姿に変身する妖怪とされる“シェイプシフター”という名が体を表すように、#4のイントロをはじめ要所で垣間見せるオルタナティブな側面もステレオタイプのグラインドコアとは一線を画す、その独自の革新性とエクストリーミーな思考回路に裏打ちされた彼らの実験的および超越的(Transcendental)な音楽スタイルを紐解く鍵は、レーベルメイト(ungulates)である日本のスリーピースオルタナバンドことdowntの音源を聴けば自ずと理解できるはず。大袈裟じゃなしに、もはやノイズの神様に取り憑かれたとしか思えないような覚醒の仕方というか。とにかく、その辺の裁量は個人レベルの感想でしかないけど、少なくとも彼らが世界基準の新鋭バンドであることには変わりないです(正直、ピッチフォークのメタル担当にフックアップされても何らおかしくない)。
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