13位 スティーブン・ウィルソン 『ザー・フューチャー・バイツ』

ソロ6作目となる本作リリース後に本家Porcupine Treeの復活を宣言したことが全てで、わかりやすく端的に言ってしまえば、2009年のPT活動休止前最後の賛否両論作『The Incident』がSWソロにおけるこの『ザー・フューチャー・バイツ』というわけ。逆に言えば、音楽的にもコンセプト的にもソロとして描きたいことは全て描ききったって事なんだと思う。自身でインターネットコミュニティが存在しなければ自分の音楽キャリアは既に終わっていたと語るだけあって、SWはその辺の(評判に対する)見極めが本当にうまいね。とにかく、2021年に起こった出来事の伏線が本作のコンセプトみたいな所あって、というのもシングルのMVにディープフェイクとして登場するFacebookのCEOマーク・ザッカーバーグが社名をMeta(メタバース)に変更したり、アマゾン元CEOのジェフ・ベゾスや前澤友作が宇宙旅行というコロナ禍で拍車のかかった格差社会を象徴する“金持ちの道楽”を見せつけたり、任天堂が有機ELモデルのスイッチを発表したり、日本を含む世界中で火山の噴火が活発化すると同時に富士山噴火の危機感を煽る陰毛論者が活発化したり、SDGsのハンパないゴリ押し、そして一部の曲で引用しているカニエ・ウェストがイェに改名したりと、本作は一種の未来予測的な作品となっていたのも事実。そんな2021年を象徴する一枚として、内容云々よりも今年の年間BESTのドンケツを飾るに相応しいという理由でのランクイン(これ以上は順位で察してとしか言えない)。ともあれ、来たるべき2022年に完全復活を予定しているPTが一足先にFソニーUK(Music For Nations)から発表したシングルの“Harridan”は、黒歴史もとい賛否両論の問題作となった『The Incident』ではなく、一作前の『Fear Of A Blank Planet』を彷彿とさせる作りで、恐らく来年リリースされるであろうアルバムが今から待ち遠しいし、その暁には2018年に行われたSWソロの奇跡の来日公演以来となる、そして伝説のウドーフェス以来?となる本家PTでの来日公演を期待したい(ドラムのギャヴィン・ハリソンは先日のキンクリで一足先に来日してるけど)。しかし、未だにこれが今年の作品なのが信じられないというか、もう遠い昔のような気がする。
12位 Deafheaven 『Infinite Granite』

本作をレビューする前に前作の『普通の堕落した人間の愛』の(当時のままストップしていた)レビューを書き終わらなきゃで、やっとのことでその記事を完成させた後にTEAM-ABCの一員である某ノクティス王子が『普通の堕落した人間の愛』すなわち『不倫』をやらかしたという文春砲をブチ込まれたかと思えば、満を持して本作のレビュー記事をアップした直後に本作の鍵を握る「浜辺に寄せて返す美しい波」こと女優の浜辺美波が文春砲をブチ込まれてから、その直後に本作におけるもう一つの鍵を握る『シン・エヴァンゲリオン』の庵野秀明監督が手がける『シン・仮面ライダー』のヒロインとして浜辺美波が抜擢されたと聞いた時は、流石にSWもビックリの未来予測感あって笑った。でもOLDCODEXの解散は「シャレにならない、もう笑えない」し、同じTEAM-ABC男子部の立場からアドバイスするなら、ノクティス王子は硬派ゲーことFANZA版ラスオリのロボット役から人生やり直せばいいと思うよ。そのノクティス王子繋がりで例えるなら、少なくとも前作の『不倫』までは「私はFF14を続けるよ!」ならぬ「私はブラックゲイズを続けるよ!」を貫いてきたが、本作ではついにその牙城が崩れ去った。しかし、本作におけるUKロックおよびシューゲイザー化の伏線として、パワハラやらかし芸人こと伊集院光の深夜ラジオで日本のシューゲイザーバンドFor Tracy Hydeの曲が流れたのはちょっとした引力というか、ある種の未来予知だったのかもしれない。本作もSWの新譜と同様に賛否両論あるかもしれないが、少なからず個人的な今年の「Spotifyまとめ」の音楽ジャンルランキング2位にブラックゲイズが支持された大きな要因の一つである事には変わりない。
11位 For Tracy Hyde 『Ethernity』

前途したように、今年の初めに伊集院パワハラ光の深夜ラジオから流れてきた時に「シューゲイザー化したYUKIじゃん」と思ってビビッときたバンドの一つ。そして、Deafheavenの『不倫』における西海岸と中西部のemo(イーモゥ)を紡ぎ出すロードムービー要素と、『Infinite Granite』におけるシューゲイザー/ドリーム・ポップ路線をつなぎ合わせる中間地点がフォトハイであり本作だった。もはや日本でツーマンしても全然おかしくないくらい、とにかく近作におけるDFHVNとのシンクロ率が異常で、往年のJ-POPを経由したフックに富んだキャッチーでノスタルジックなメロディとシューゲ/ドリーム・ポップあるいはインディフォークなどの様々なスタイルが調和したフォトハイ流のギターロックは、インディーズの青春ロードムービーさながらの物語を映し出す。また、作中にオバマ前大統領の演説をサンプリングしてるのもSWの新譜と共振してて面白い。
10位 CVLTE 『HEDONIST』

今年のBMTH枠。正直、今年に入ってBMTHがシングルとしてポスト・マローンをオマージュした“DiE4u”をリリースした意図が全く読めなかったんだけど、先日リリースされた同曲のハイパーポップ風リミックスを耳にしたら、『amo』はもとより昨年末のEP『Post Human: Survival Horror』に始まりK-POPのaespaを経由してCVLTEの本EPまで一直線に繋がった瞬間、全てに納得した。要するに「最近のBMTHってハイパーポップ路線だったのか」と。本作の何がすごいって、一言で例えるなら「K-POP化したFuneral For A Friend」でありながらも、新世代メタルのコード・オレンジ・キッズが産み落とした日本の新世代ラウドシーンを代表するペことPaleduskをフィーチャリングする事で、ハイパーポップ化した近年のBMTHと直接的ではなく間接的に繋がるしたたかな頭の良さ、この一点に尽きる。そして、本作でフィーチャリングしている日本のハイパーポップ界におけるシャイニングスターである4s4kiは、(今年のフジロックで初めて観たけど)日本のアーティストで唯一BMTHとコラボできる存在だと確信させた。
9位 Mastodon 『Hushed and Grim』

今年の俺感読者なんじゃねぇか説。というのも、昨年にDeftonesが発表した『Ohms』がヘヴィミュージックシーンに提示した“20年代のヘヴィネス”に対するドンからの回答が本作。その伊集院パワハラ光もといDeftonesとHum、そして盟友のBaronessが提示したオルタナティブな現代ポストメタルをはじめ、SWソロ等の対外的な要素で成り立った一枚。
8位 Every Time I Die 『Radical』

曲がいい。
7位 ZillaKami 『DOG BOY』

もう一つのBMTH枠。というのも、BMTHのフロントマンであるオリヴァー・サイクスがロシアの国民的音楽ユニットのIC3PEAKとのコラボ曲を発表したのは、BMTHのハイパーポップ化の流れを汲んだ動きなのは理解できたけど、まさか既に、というか昨年にトラップメタル界の二大巨頭であるジラとGhostmaneがIC3PEAKとコラボしてるなんて思ってもみなかったから、それを知った時は素で「嘘だろ・・・そこに直結する案件なのかよ」ってなった。ジラが敬愛するコリィ・テイラーのアナウンスから始まる本作は、Nirvanaに代表される90年代のオルタナ/グランジ、そして90年代後半に一世を風靡したKornやDeftonesに代表されるヌーメタルの解釈を通したエモラップならぬエモロックの傑作で、もはやラップそっちのけでカート・コバーンやコリィリスペクトに溢れたボーカルワークは愛しかない。紛れもなく昨年末の『Post Human: Survival Horror』以降のつながりの一部として組み込まれている一枚。完全に同じZ世代であり日本の(sic)boyをワンパンKOしちゃってる。
6位 Ulver 『Hexahedron』

今年のエヴァ・インフィニティ枠。いわゆるライブ音源って普段なら年間ベストに入れるもんじゃないと思うけど、本作だけは完全に別。2020年に発表された『惡の華』の再構築であり、さしずめUlverフィーチャリング坂本龍一&久石譲&岡田拓郎みたいなインプロ感に溢れたミニマル・ミュージックは、聴いているだけで無限(インフィニティ)にトリップからのマトリックス状態に陥ること請け合いの一枚。
5位 The Armed 『Ultrapop』

今年の俺的GOTYである『サイバーパンク2077』のサントラにも参加しているバンドならではの「ハイパーポップ!ハ~イ!」ならぬ「ウルトラポップ!ハ~イ!」な一枚。日本のハイパーポップ界を牽引する4s4kiは、それこそ『サイバーパンク2077』にビジュアル的にも音楽的にも適合するアーティストで、自分の中でThe Armedと4s4kiはほぼほぼ同ジャンル扱い。
4位 Parannoul / Asian Glow / sonhos tomam conta

今年の碇シンジ枠。韓国ソウルとブラジルのサンパウロで活動するブッ壊れローファイメンタル三人衆が碇シンジ級のパリパリATフィールドを互いに中和させて、最終的に3本の槍(ガイウス・カシウス・ロンギヌス)を自分自身に突き刺してメンタル完全崩壊しちゃう傑作。
3位 Parannoul 『To See The Next Part Of The Dream』

いわゆるぶっ壊れローファイメンタル三人衆のリーダー格が放つ、『新世紀エヴァンゲリオン』や『リリィシュシュのすべて』をはじめとする日本の90年代サブカルチャーの影響下にある新世代シューゲイザーの歴史的ぶっ壊れ名盤。
2位 Ad Nauseam 『Imperative Imperceptible Impulse』

今年の俺的「Spotifyまとめ」の音楽ジャンルランキング3位の“デスメタル”を象徴する一枚。
1位 東京事変 『音楽』

あくまで林檎ソロ派で、復活以前の事変は全くと言っていいほど刺さらなかったんだけど、本作は今年の年間ベストにランクインした全13枚の作品を一つに『総合』するに相応しい伊澤っち無双であり、「誰か」や「何か」に代わってドドンパ級にドンピシャのポスト・プログレッシブやってる名盤。事実、この年間ベスト記事も先日リリースした『総合』を聴きながら書いている。しかし、ドンケツとド頭がスティーヴン・ウィルソンと(日本のスティーヴン・ウィルソンである)椎名林檎なのは示唆的というか対比的というか、この二人でランキングの中道(センターライン)を保ってる気がして、とにかく色々な意味であまりにシックリし過ぎて好き。
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最後に年間BEST書いたのっていつだ?って、直ぐに思い出せないくらい久々の年間BESTを今年は何故書けているのか理由を述べると、それは11年間勤めたブラックメタル企業から退職してニートtokyoになったから、それ以上でもそれ以下でもないです。このランキングの選考理由としては、単純に今年を振り返って頭ん中に思い浮かんだ順から上に書いていっただけの雑なランキングでしかないんだけど、トップオブザ・トップを飾る東京事変が先日リリースしたオールタイム・ベストアルバム『総合』的な意味でも、一枚一枚の個人力は低いけど総合力だけは異常に高いAlbum of The Yearみたいな。また、事変や斉藤和義が参加したOriginal Loveのカバーアルバムというシティポップを経由して、今年の年間ベストソングの一つであるDADARAYの“花は買わない”や竹内まりや、そしてYUKIKAからのIUに繋がる感じも好き。
今年の俺的AOTY(Album of The Year)が上記の13枚の作品ならば、今年の俺的GOTY(Game of the Year)は間違いなく『サイバーパンク2077』だ。というのも、ハイパーポップ界の女王であるグライムスや日本のナマコプリ、年間BEST入りしたThe ArmedやデスメタルのTomb Moldなど多種多様な音楽ジャンルを網羅したハイパーポップなサントラをはじめ、『ポストヒューマン』以降にハイパーポップ路線に移行したBMTHを起点にPoppyやDana Dentata等のプレイリスト「Misfits 2.0」勢を経由して、日本の4s4kiやCVLTEまで今年一年の繋がりを示すような神ゲーであり、その音楽的な影響力や諸々の引力を加味したら余裕のGOTYですね。要するに、なぜ人々がPS5やXbox seriesXに飛びつくのかというと、サイパンのような本物のAAAタイトルのゲームを快適にプレイするためであり、決してインディーゲームをプレイするためではないんですね。
それに少し関わる話で、2021年は日本の音楽コンテンツで久々にくっせーコンテンツが登場して話題を呼んだ。それがFソニー案件の「THE FIRST TAKE」である。個人的に、最近のクソつまんねぇ日本の音楽業界には何かが足りないと思ってたんだけど、その回答とばかりに「THE FIRST TAKE」なるコンテンツが出てきて一周回って嬉しくなった。正直、「THE FIRST TAKE」に出てる奴ら全員消えたら日本の音楽偏差値バク上がりするんじゃねぇか説あって(←コラ)、ベセスダ期待の新作『スターフィールド』や『TES6』がプレイできない=負けハードが確定しているPS5を抱えたゲーム業界においても、超弩級にクッサいコンテンツを抱えた音楽業界においても、全てにおいてクソダサいことやってるFソニーは2秒で倒産しろって感じの2021年でした。ともあれ、来年2022年に期待する新作としては、FソニーUKからリリースされるであろうPTの復活作は当然の事ながら、DIR EN GREYの京とラルクのyukihiroを中心に結成されたPetit Brabanconのアルバムに期待したいのと、元ZOCの香椎かてぃが始めたガールズバンドHazeの動向に注目したい。というか、Petit BrabanconとHazeの対バンに期待w
晴れてニートtokyoとなった僕個人の2022年の目標としては、ベーシックインカムすら議論にならない時代遅れの化石国家日本は過去に置いてきたつもりで、暫くというか半年くらいは人ではなくお馬さんから毎月の給料を頂く未来人として生きていきたいと思います(Fソニー煽ったら先日の有馬記念でF4勝ってもうたやん・・・だる)。しかし、ニートになった途端に(少なくとも日本では)コロナ終息しつつあって笑うというか、ニート2秒で早くも世界が俺に労働を強制してきている・・・。そんなエセ未来人である僕が2022年の未来予測をするなら、11年前に仕事を始めた翌年に大きな災害が起こったので、その11年後に仕事を辞めた翌年となる2022年に(僕をトリガーとして)再び大きな災害が起こる予感がするので、日本列島の皆さん気をつけてください!富士山噴火!日本沈没!(←オメーが一番の陰毛論者だよw)